“ジョーダン・ポティート”シリーズ。巻き込まれ型。殺人容疑を掛けられる。[?]

ジョーダン・ポティート:ミラボー図書館館長
アン:ジョーダンの母
アーリーン:ジョーダンの姉
マーク:アーリーンの息子
キャンディス・タリー:ジョーダンの助手
ビッドウィル・ポティート:ジョーダンの叔父, 弁護士
ベータ・ハーチャー:バプテスト教会の信者
シャノン・ハーチャー:ベータの姪
ユーラ・メイ・クリフ:ロマンス小説作家, 図書委員会委員
ルース・ウィルズ:看護婦, 図書委員会委員
アダム・ハフナゲル:牧師, 図書委員会委員
タマ:アダムの妻
ボブ・ドン・ガーツ:カー・ディーラー, 図書委員会委員
グレッチェン:ボブの妻
マット・ブラロック:退役軍人
ジャニス・シュナイダー:ジョーダンの親戚, 図書委員会委員
ハリー:ジャニスの息子
ジョシュ:ハリーの弟
チェルシー・ハート:ハリーのガールフレンド
ビリー・レイ・バメル:地方検事補
ジューンバッグ・モンクリーフ:警察署長

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



ミラボー図書館館長・ジョーダン・ポティートは、忘れ物と思しきバットを拾い上げ、館内で預かることにした。そして、いつものように貸し出しカウンターに座っていたところ、図書館に置かれた本についていつも口うるさいベータ・ハーチャーが、いつも以上に怒りを爆発させた。D.H.ロレンスの著書を猥褻本と断じ、閲覧禁止を求めるベータと、ジョーダンとの見解の相違は埋まらず、ついにベータはその本でジョーダンの顔面を打ち据えた。負傷したジョーダンは、ベータに即刻立ち去るように告げる。彼女は、その場を取り巻いていた者に引きずられるように立ち去った。ジョーダンは、「あんな女はあの世に送ってやりたいくらいだ」と、吐き捨てるように言った。

図書館業務が終了し、ジョーダンは帰宅する。しかし、母の薬を館内に置き忘れてきたことに気づき、図書館に引き返す。館内に入り、抽斗から薬を取り出し、外へと向かう。そこで何かの異変を感じたが、見渡しても特に異常はなさそうだった。さては気のせいかと、図書館を立ち去った。

翌朝、出勤したジョーダンは、館内に殺害されたベータを発見する。凶器は前日に彼が拾い上げたバット、彼女の死亡推定時刻はどうやら彼が図書館に引き返してきた辺りらしい。前日の発言も相まって、彼の容疑が濃厚となる。疑いを晴らすためにも真犯人を突き止めようと、彼は事件を調べ始める。



ベータは恐喝犯で、関係者がことごとく秘密を持ち、それを暴くことに骨を折るという物語。中には、組織的麻薬栽培も絡む人物も居て、事件が複雑化する。パズラー的興味は薄い。

主人公・ジョーダンは癇癪持ち。話を訊きに行くと、ほとんど毎回のように喧嘩腰になり、相手を怒らせてしまう。ときには、なぜか厭味を言うためだけに、電話で一方的に新情報を伝えたりする。そして解決編では、取って付けたようなその遣り取りを持ちだして、「ほら、ここに手掛かりがあったじゃないか!」と宣言する。

ジョーダンは、麻薬栽培事件も、ベータ殺害事件も、相手が目の前で銃を構える、あるいはその寸前までは犯人と気づかない。

関係者がそれぞれ秘密を抱え、犯人でもないのに嘘をつくという、あまりよろしくない古典ミステリ的スタイルを用いつつも、ジョーダンとその家族についての描き方は、社会派・文学派への傾倒を示す。資産家の娘ながら、パートタイムで図書館に勤める、ボランティア活動家の美女・キャンディス・タリーに恋を迫られる主人公、などという設定は軽薄だけどw

誰だったか、「(ある程度の年齢になったら、)人生を感じさせないミステリは読む気がしなくなった」みたいなことを言っていたけど、今の僕にはまだ、人生は感じさせなくてもゲーム的なミステリのほうが良いですw

このジョーダンを主人公とした物語はシリーズ化され、少なくとも四作はあるらしいので、人気はそこそこ高いのだろう。
作家アリスシリーズの短編集。[???]

火村英生:犯罪学者
有栖川有栖:推理作家, 火村の友人

<動物園の暗号>:暗号。
<屋根裏の散歩者>:ノートに記された謎の記号。
<赤い稲妻>:密室殺人。
<ルーンの導き>:ダイイング・メッセージ。
<ロシア紅茶の謎>:毒物混入の手段。
<八角形の罠>:闇の中での殺人。

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。




有栖川有栖初の短編集。エラリー・クイーンへの敬愛を表す“国名シリーズ”第一作。




<動物園の暗号>

動物園の猿山に飼育係が突き落とされ、殺された。被害者の右手には紙片が握られていた。そこにには「鶴牛鰐…」と動物名らしきものがひたすら並んでいた。



鉄道好きという作者ならではの暗号。




<屋根裏の散歩者>

アパートの一室で管理人が倒れていた。うつ伏せで、両足はまっすぐ揃い、まるで十字架に磔にされたような姿だった。その片腕は、部屋の中央の囲炉裏へと伸びていた。

日記から、管理人の悪趣味が判明する。彼は夜な夜な屋根裏へと這い出し、住人を覗き見していたのだ。そこには、それぞれの住人を指すと思われる、「大」「太」「く」「ト」「I」という符丁があった。ともかく日記を読むと、どうやら彼は住人の中に連続婦女殺害事件の犯人を発見し、探りを入れていたようで、その返り討ちに遭ったと見られた。



符丁については読者は推測までしかできないが、短編ならそれも仕方ない。オチも着いてる。




<赤い稲妻>

雷雨の夜に、田宮孝允の愛人である米国人モデル・ジェニファーがマンションから転落死した。そのとき、偶然にも向かいの部屋から目撃した者があり、すぐに救急車を呼び、警察に通報した。警察へ通報したのは、転落する寸前にほかの人影も見ており、その雰囲気に何か引っ掛かるものを感じていたからであろう。そして現場へと駆けつけてみれば、そこにはやはり女の死体があった。被害者のマンションの室内が調べられた。彼女は日本でも母国のスタイルを貫いており、その部屋には靴を脱ぐ所がない。部屋は内側からチェーンまで掛けられ、しっかりとロックされており、中には誰も居なかった。これは被害者のほかにも、もう一人の人物が居たという目撃証言とは矛盾したが、目撃者はその証言に自信を持っていた。部屋の片隅には大きなイヤリングが落ちており、それは彼女の死体の耳に付いている物の片割れであることが確かめられた。

奇妙な符号があった。ジェニファーの死から30分と経たずに、田宮の妻・律子が踏切で立ち往生して、轢死していたのだ。



ロックされた室内に、突き落とした人物が居ない。ならばその人物は…と常識的に考えれば、ごく当たり前の解答であるが、盲点を突いている。咄嗟の犯行にしては手際が良すぎるとか、バッグに鍵を入れたまま、室内に残してしまってるというほうが自然なんじゃないかという気がするが。




<ルーンの導き>

シカゴの出版社に勤める中国系米国人・サイモン・リーが殺害された。容疑者は五名。家の主である、ドイツ語教師のドイツ人・ウルリッヒ・フローゼとその妻・アルベルティーネ。英語学講師の英国人・ジョージ・ウルフ。日本美術研究家で、貿易会社勤務のフランス人・アンナ・レネ。そして翻訳家の日本人・辻佐治(すけはる)。辻はもちろん、フローゼ夫妻もウルフも、いずれも日本語が堪能。レネは、警察の尋問に当たっては、フランス語が堪能な辻の同席を申し出たが、充分な日本語会話能力を持っている。

被害者は、四つの石を握り締めていた。そこにはルーン文字が書かれていたが、それが何を意味しているのか、誰にとっても不明だった。



文字自体には意味はなく、おそらく四つの石という点がポイントなのだろうという推測は的中したものの、正解は解決編までわからなかった。まあ、これはわからなくても仕方ないと思うw 名前の読みには一応引っ掛かるものを感じたんだけど、「この作者の小説の登場人物には、読みづらい名前多いしなぁ。ありふれた名前はミステリには使いづらいから仕方ないんだろう」と、流してしまったw

スリッパについては確かにそのとおりだけど、そんなのは記憶に残るかどうかも怪しいし、アリバイの証拠とされるとも思えないし、それが目撃されたことでさえ偶然によるもの。もし何か偽装するとしても、そんな脆弱な手段に頼るかなぁ。それに、そんな偽装したとなると、犯人の自供の殺意についての部分には疑いが出てくる。




<ロシア紅茶の謎>

忘年会にて、奥村丈二が毒殺された。彼のカップの中のロシア紅茶から毒物が検出された。現場には被害者のほかに、妹・真澄、金木雄也、桜井益男、内藤祥子、円城早苗の五名。真澄以外は皆、丈二との間にそれぞれ確執があった。

丈二が殺されたのはカラオケの最中だった。丈二に頼まれ、妹・真澄はいつものロシア紅茶を淹れるためにキッチンに向かった。早苗は換気のため、部屋の窓を開け、外気を取り入れた。そして、カップを自分が運ぼうと早苗に声を掛け、そのままキッチンへと向かい、ちょうど真澄が注いだばかりの五人分のカップが乗った盆を両手で受け取った。盆はいっぱいになってしまったため、乗せ切れなかった砂糖壺は真澄が持ち、早苗のすぐ後に続いた。そして早苗はテーブルの上に盆を置き、全員にカップを配った。

まず、祥子が砂糖を自分のカップに入れ、最初に口を付けた。そして、丈二のカップにも砂糖を入れようとした際に、砂糖壺を倒してしまう。中身が少しこぼれた壺を起こし、丈二のカップに砂糖を入れた。丈二はそれを飲んだ直後に、苦しみ始めた。

他のカップや、砂糖壺からは毒物は検出されなかった。そうなると、最も疑わしいのは、真澄と早苗。カップに毒物を入れるだけなら、真澄にとっては簡単にできることだが、相手を選ぶことはできないと思われる。誰でもいいから…というのは考えづらい。もし早苗が入れたとすると、その機会はあったのかという問題になる。真澄からカップを受け取った際は両手がふさがっており、それを運ぶ姿も真後ろから真澄に見られている。そしてカップを配るときも、もしカップに何かを入れるような動きをすれば、誰かが気づいたはずと、他の皆は証言した。



毒物の容器と投入については実験を繰り返せば充分可能と思われるが、実行するタイミングと、その際に不自然さを感じさせないようにすることは、なかなか難しそう。しかしこれが破滅も覚悟の上でのトリックということなら納得。だったら、いっそのこと真正面からナイフで突き刺してもいいんじゃないかとも思うが、そこは微妙な心理のせめぎ合いだねw




<八角形の罠>

一階の練習室で劇団員たちが揉めている。すると、突然停電し、真っ暗闇になってしまった。カーテンを開けて外の明かりを入れてみると、そこには首に毒物を注入され、既に事切れた西尾裕司の姿があった。

調べてみると、分電盤にタイマーがセットされ、西尾の服の襟に夜光塗料が塗られていることが判明し、計画殺人の疑惑が濃厚となった。注射器は、二階にある鉢に深く埋められていたのを発見されることになる。

練習室に居た全員は既に身体検査されている。誰も注射器の類は所持しておらず、唯一、練習場から飛び出し、ロビーに居る探偵を呼びに来た吉沢も、足音からして、真っ直ぐ向かってきたのは明白で二階へは行っていない。その後、探偵と一緒に二階へ行き、分電盤を操作しているが、その際は常に探偵とともにあったので、処分するなど不可能だった。

そして、場面は再び練習室。矢島は、椅子の背に掛けてあったジャケットのポケットから取り出したタバコを吸い始めた。すると突然、苦悶に呻いた。「騙しやがった…」 彼は死んだ。タバコには、その一本にだけ、小さな針の跡。



タバコで犯人を特定するのは、枝葉の部分として、とりあえず、良しとしてもいい。しかし、第一の事件での凶器の処分方法はどうだろう? 実行は充分可能だろうが、おおっぴらには練習できないであろう点は引っ掛かる。そして、もし停電中にカーテンを開ければ、光が室内に入り、必ず気づくから、外部から侵入することは不可能という説明があるのに、この処分方法を成し遂げたというのも、納得しがたい。
作家アリスシリーズ。密室ミステリで知られる作家が、自宅の密室で殺される。[???]

火村英生:臨床犯罪学者
有栖川有栖:火村の友人, 推理作家, “私”
真壁聖一:推理作家
真壁佐智子:聖一の妹
真壁真帆:佐智子の娘
桧垣光司:同居人
高橋風子:推理作家
石町慶太:推理作家
杉井陽二:編集者
船沢辰彦:編集者
安永彩子:編集者
鵜飼:群馬県警警視
大崎:北軽井沢署警部

※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



密室物の大家・真壁聖一宅でクリスマスパーティーが催される。そして夜も老けて、招待客が部屋へと引き上げてみると、それぞれに奇妙な悪戯が仕掛けられていた。ある部屋の前からは石灰が絨毯のように敷き詰められ、別の部屋の窓にはスプレーでハートマークが描かれ、また別の部屋にはワインが注ぎ込まれた靴が置かれ、そして…と、共通点としてはどれも"白"にちなんでいるようだ。悪戯は誰の仕業なのかは不明だったが、とりあえず皆は自室に引き上げた。

有栖川有栖はふと、目を覚ました。窓から外を眺めると、積もった雪の上に足跡がこの家の裏口へと続いていた。まさか泥棒かと、部屋を出た。何やら物音を聞き、書斎を覗いてみた。中に見えたのは、暖炉に上半身を突っ込み倒れている男の姿。その瞬間、有栖川は頭に強い衝撃を受け、気を失った。

15分ほどして、有栖川は石町慶太に揺り起こされた。二人で書斎へと向かうが、掛金が下りており、扉が開かない。中に犯人でも居るのかと、加勢を呼ぶために、階段を昇る。下りてきた石町の足跡を、その上から踏んだような跡があることに気づいた。

眠っていた火村英生を起こし、外へと回り、窓から書斎内を覗けば、やはり上半身を暖炉に突っ込み、倒れた男。ほかに人影は見当たらない。窓を破って侵入すると、そこには焼け焦げた、ここの招待客ではない人物の死体があるのみだった。

家の主である真壁がどうしても見当たらない。捜してないのは書庫である地下室だけかと行ってみれば、こちらも掛金が下りているらしい。ぶち破ってみれば、そこにあるのは書斎と同じ光景。上半身を暖炉に突っ込み、焼け焦げた死体。真壁だった。



「ディクスン・カーとエラリー・クイーンの混血児を創りだそうとした」という作者のことばにも納得。確かにそんな雰囲気もある。足跡の手掛かりなんて、いかにもクイーンっぽい。

伏線の張り方は素直で、風子が石町と彩子との関係をほのめかした場面や、誤変換エピソードといった、「おや?」と思うところは、「やはり」だ。

事件が発覚して以降は、捜査側以外の人物がまったく存在感をなくしてしまう。そのせいで、真相解明は唐突な感もあり、まるで犯人がいきなり登場したような印象を受ける。

家の見取り図が欲しいところ。一読では、トリックがいまいちピンと来なかったw

結局、犯人の偽装工作はまったく破綻しちゃってるんだよなぁ。主人公の力なくしても、遅かれ早かれ、犯行は暴かれたんじゃないかという気もするw