モース警部シリーズの長編第1作。殺害された女と同行していた、名乗り出ない女。女たちを乗せた、名乗り出ない赤い車の運転手。[???]

シルビア・ケイ:生命保険会社のタイピスト
パーマー:同社支配人
ジェニファー・コルビー:シルビアの同僚
スウ・ウィドウスン:ジェニファーのルームメイト
メリー:同
バーナード・クローザー:大学の英語講師
マーガレット:バーナードの妻
ピーター・ニューラブ:バーナードの親友
ジョン・サンダース:インテリア資材店の従業員
ゲイ・マクフィー:“ブラック・プリンス”のホステス
メーベル・ジャーマン:未亡人
ルイス:部長刑事
モース:主任警部



ウッドストック行のバスはなかなか来なかった。しびれを切らしたシルビアはヒッチハイクすることにして歩き出した。最初は反対していたもう一人の女も、結局はシルビアの後を追った。


駐車場に女の死体が転がっていた。無残に頭を打ち砕かれたその女はタイピストのシルビア・ケイと判明した。警察の捜査により、彼女には連れの女がいて、二人は赤い車に乗ったこともわかった。しかしその女も赤い車の運転手も、警察の呼び掛けにも関わらず名乗り出て来なかった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



クロスワードパズルの鍵作りチャンピオン経験者という経歴の作者による第一作。天才型探偵のモース警部が仮説の構築と崩壊を繰り返しつつ真相に迫るスタイルは本作から既にほぼ確立されている。その作風は新保博久曰く、「天才にのみ許された書き方で、余人には真似が出来ない」。

この作者の作品の魅力は最後の解決編以上にそれに到達する過程にあるので、最後だけ読んでも作品の要点は掴めない。明白な趣向や派手なトリックに依った作風ではないので、あらすじを掻い摘んだ推理クイズの問題としては不向き。

事件解決の最初の障害となるのが、シルビアの連れの女と彼女たちを乗せた車の運転手が名乗り出てこないこと。運転手の男が名乗り出ない理由の一つは非常にありがちなものであり、シルビアの連れの女にしてもそれは似たようなもの。ところがその二つの表面的にはありがちな理由の組み合わせの中に、別の事実が隠されているのが面白い。



[プレリュード] 二人連れの女。バスを待ちくたびれ、ヒッチハイクに向かう。
[第一部 娘を捜せ 1 9月29日(水曜日)] ウッドストックの“ブラック・プリンス”にて、死体発見。
[2 9月29日(水曜日)] シルビア・ケイの死体は塀のそばに置かれている。ブロンドの長髪の女性。後頭部に打撃痕。タイヤ・スパナが落ちている。着衣はダーク・ブルーのミニ・スカートと白いブラウスのみ。ウェッジ・ヒールの靴を履いている。
[3 9月30日(木曜日)] モース警部、シルビアの部屋の調査。彼女の勤務先で訊き込み。
[4 10月1日(金曜日)] 水曜日のシルビアの行動。午後5時に会社を出て、徒歩でバス停留所へ。午後5時35分に家に着き、夕食。午後6時30分に家を出た。その後、ウッドストックに辿り着いた。モース警部、シルビアはウッドストックへはヒッチハイクで向かったと推測。
[5 10月1日(金曜日)] モース警部、メーベル・ジャーマンの証言を聞く。シルビアに連れの女があったことを知る。シルビアが「明日の朝は笑い話になるわ」と言っていたことから、連れの女は翌朝に再び会う予定のあった者、会社の同僚に目を付ける。しかし同僚たちは誰もそれを窺わせる証言をしていない。
[6 10月2日(土曜日)の午前] メーベルにシルビアの同僚を面通しさせるが、彼女は自身が目撃した相手を断定できなかった。
[7 10月2日(土曜日)の午後] モース警部、シルビアの会社で押さえた手紙の一通に注意を向ける。ジェニファー・コルビー宛の不採用通知。スペルミス多し。Gから始まる署名は判読不能。ジェニファーは、件の女かもしれないとメーベルが告げた三名の中の一人。ジェニファーの当夜の証言には怪しい点がある。彼女は図書館で木曜以降に借りた本を水曜に借りたと偽っている。
[8 10月2日(土曜日)] マーガレット・クローザーの憂鬱な週末。夫の毎週のような浮気に気づいている。
[9 10月3日(日曜日)] モース警部、ジェニファーの不採用通知の中に暗号を見出す。「Say Nothing(一言も喋るな)」。モース警部、問題のヒッチハイクの運転手を知っているのではとジェニファーを問い詰めるも、彼女は断じて認めず、のらりくらりと交わす。
[10 10月6日(水曜日)] ピーター・ニューラブ、ゲイ・マクフィーとの親密なひととき。
[第二部 男を捜せ 11 10月6日(水曜日)] マーガレット、先週は休んだクラスに今回は出席。
[12 10月6-7日(水-木曜日)] モース警部、前夜に日曜大工作業で右足を負傷。木曜の午後にルイス刑事が訪問した際、モース警部は一つの推論を開陳。オックスフォードの人口=10000、その成人男子=2500、その35歳から50歳=1250、その妻帯者=1000、その酒飲み=500、その知能の高い(トップ5%の)人物=25、女にとって魅力ある者=15、車の所有者=10、赤い車=1。数字上ではシルビアを乗せたヒッチハイクの運転手を一人に絞る。
[13 10月9日(土曜日)] バーナード・クローザーの車を警官が調査。
[14 10月9日(土曜日)] バーナードの供述。シルビアともう一人の女を乗せたことを認める。それを隠していたのは、そのドライブが妻に隠れた愛人との密会を目的としていたため。愛人の正体についての証言は拒否。もう一人の女については知らない。
[15 10月11日(月曜日)] モース警部、足の治療のため病院へ。ジェニファーのルームメイトの看護婦・スウとのデートの約束を得る。
[16 10月12日(火曜日)] モース警部、ジェニファーの不採用通知の指紋調査を怠り、それは既に手遅れになったことに気づく。
[17 10月13日(水曜日)の午前] モース警部、負傷した足が入る靴を購入。
[18 10月13日(水曜日)の午後] モース警部、スウとのデート。彼女に婚約者がいることを知る。
[19 10月14日(木曜日)] シルビアの死体の発見者であるジョン・サンダースはここしばらく気分が優れぬ様子。
[20 10月15日(金曜日)の午前] 9月29日(水曜日)の夕方6時15分に、ジェニファーはタイヤ交換の依頼をし、断られている。
[21 10月15日(金曜日)の午後] モース警部、タイプライター調査。ジェニファー宛の不採用通知はピーター・ニューラブのタイプライターで打たれたもの。ジェニファー、バーナード、ピーター、出掛けてしまっている。
[第三部 殺人者を捜せ 22 10月17日(日曜日)] スウ、帰宅。モース警部が彼女のルームメイトのメリーと楽しそうに会話している。スウ、嫉妬する。
[23 10月18日(月曜日)] ジェニファーとバーナード、お互いを知人と認めたが、愛人関係については否定。
[24 10月18日(月曜日)] マーガレット、自宅でガスによる自殺。バーナード、そのショックによる心臓発作で入院。
[25 10月19日(火曜日)の午前] マーガレットからモース警部宛の手紙。シルビア殺害を認めている。夫・バーナードの浮気を疑い尾行したこと、“ブラック・プリンス”の駐車場でバーナードがシルビアとキスしていたこと、落ちていたスパナを拾い上げ、彼が去った後に駐車場に残っていた彼女をそれで殴ったことなどが綴られている。
[26 10月19日(火曜日)の午後] ピーターは自分がジェニファー宛の不採用通知を作成したことを否定。彼のタイプライターは他人が使うことも可能。シルビアは腕の骨折により毎週火曜日と木曜日に通院中だった。
[27 10月21-22日(木-金曜日)] バーナード、シルビア殺害はマーガレットによるものではなく自分が行ったものと認め、死亡。
[28 10月22日(金曜日)の午前] モース警部、シルビア殺害前に凶器のスパナの置かれていた位置からするとマーガレットが拾い上げたとは考えづらいとし、マーガレット犯人説を退ける。
[29 10月22日(金曜日)の午後] モース警部、スウの勤務先の病院を訪ねるが、看護婦との接触は婦長のガードが固く、苦労する。モース警部、パーマーから彼の秘密を訊き出す。
[30 10月23日(土曜日)] モース警部、犯人と面会する。
[31 10月25日(月曜日)] モース警部、真相を語る。
[エピローグ] モース警部、ついにクリスチャンネームを伝えられず。
ブラウン神父シリーズの第1短編集。ストーリーテリングの妙。今やスタンダードとなったトリックの数々。[???]

J・ブラウン神父:神に仕える蝙蝠傘がトレードマークの小男
ヘルキュール・フランボウ:巨大な身の丈と不敵な腕力の持ち主, 驚くべき軽業師, 天才の閃きも持ち合わせる, 犯罪界の大立者として知られた人物

「青い十字架」:行く先々で奇妙な行動を取る二人連れの神父。
「秘密の庭」:閉ざされた庭に残された、首を切断された死体。
「奇妙な足音」:二種類の足音を使い分ける人物。
「飛ぶ星」:パントマイム劇と宝石盗難事件。
「見えない男」:姿なき脅迫者。
「イズレイル・ガウの誉れ」:真っ正直な男。
「狂った形」:奇妙な形に切られた遺言書。
「サラディン公の罪」:復讐者に追われる公爵。
「神の鉄槌」:恐るべき怪力による一撃。
「アポロの眼」:エレベーターの穴での転落死。
「折れた剣」:将軍の無謀な行動の秘密。
「三つの兇器」:殺すには多すぎる凶器。

※以下の反転表示部はネタバレ注意。




第100回記念として少し趣向を変えて…と思ったけど、まったく何一つアイデアが思いつかないので、結局今回も基本的にはいつもどおりですw

それはともかくとして、こういうブログ書こうと思い立ち、平日の空き時間に文庫本1日1冊で週5冊を基本とするくらいは軽い…まあすぐにそのペースに慣れるだろうと考えていたが、とんでもなかった。まったく慣れません。結構キツイっす><

余計なことばかり書き殴っているのがその一因なのは間違いないが、さりとて精査などしていたらさらに時間が掛かるのも確実。いったいどうしたらいいものか、未だに迷走中…。




とは言え一応記念すべき回なので、それに相応しいのはやはり名作とされる作品だなw wikiなどを見れば充分という気もするが、まあいい。というわけで、世界三大探偵にも数えられるというブラウン神父の短編集の中でも最も知られる第一作を。

ブラウン神父譚は本格推理物の古典として語られても個人的には妥当と思うが、手掛かりを正しく組み合わせれば正解を得られるという、通常の意味での論理的なパズラーでは決してない。少なくとも読者の目にはブラウン神父は推理ではなく直感によって真相は暴いているように映る。ブラウン神父の説得力を以ってすれば、真相とは別の解答であろうともそれを真相と錯覚させることは可能だろう。ブラウン神父譚の面白さは、主にその奇妙な謎とそれを解き明かす寓話的な物語。そしてそれを描く皮肉混じりのユーモア溢れる文章が極めて魅力的であること。(もちろんブラウン神父のキャラクターの魅力も)

手掛かりから真相を導き出すという点では確かに不完全でアンフェアではあるが、かと言ってまったくのその場凌ぎの話ではなく、真相に繋がる示唆を含む伏線は事前に張られている。(きちんと繋げるためにはちょっとした霊感が必要であろうが) まあ、まったくの行き当たりばったりの単なるホラ話と見ようとも、これが後の世代の多くの作品、またはその中のトリックの“基本編”となっていることもあり、最低限押さえておくべき古典作品なのは間違いない。歴史的な重要度で言えばホームズ譚に劣るかもしれないが、その作品の質ならば決して劣るものではなく、現代においてもその輝きは色褪せていない。作中の多くのトリックは今ではあまりにも知られてしまっているにも関わらず本作に惹き付けられるのは、トリック・ゲーム以上に、その物語に普遍的に近い面白さがあるからだろう。





「青い十字架」
アリスティード・ヴァランタン:パリ警察主任, 司法制度にも影響力を持つ大物, 名探偵



パリ警察の名探偵ヴァランタンはフランボウを追って英国へとやって来た。とは言えこれという手掛かりもない以上、ヴァランタンは偶然に頼ることにした。しかしヴァランタンは合理的な人物なのである。偶然に頼るにしても、当然そこにも合理性がなくてはならない。というわけで彼は街を歩き、奇抜なものを探した。彼が足を停めるようなものなら、追跡される側も足を停めた可能性が高いからである。

食堂に入ったヴァランタンはついに探し求めていたものを見つけた。砂糖の瓶に塩が、塩の瓶に砂糖が入っていたのだ。店主に話を訊くと、二人連れの神父が怪しいという。その一方は帰り際に壁にスープを引っ掛けた。

ヴァランタンはその神父たちを追った。すると今度は青果店の前に積まれたクルミとオレンジに目が留まった。クルミの山には「オレンジ」と書かれた札が立ち、オレンジの山には「クルミ」と書かれた札が立っていたのだ。このユーモアセンスに先ほどの食堂での一件との繋がりを見出したヴァランタンは店主に話を訊いた。やはりこれも二人連れの神父が関わっていた。その一方はリンゴの山を崩して行ったのだという。

次にヴァランタンは窓が破れたレストランに入った。給仕の話によると、二人連れの神父の一方が勘定を払って出て行き、もう一人の神父も遅れて付いて行った。そのとき給仕が支払いが多すぎることに気づき、後ろの神父に声を掛けた。ところが勘定書きには4シリングと書いたはずが14シリングとなっていた。すると神父はそれは窓ガラス代だと答え、窓ガラスを割って去って行ったという。

二人連れの神父は駄菓子屋にも寄っていた。神父の一人は店を出た後に引き返してきて、店の女に小包の郵送を頼んでいた。女は小包はもう送ってしまっていた。



ヴァランタンはついに二人連れの神父に追い着き、木陰に隠れて彼らの会話を聞き、その一方こそフランボウであると知った。

もう一方の人物・ブラウン神父は語る。青い宝石付きの銀の十字架を持つブラウン神父は連れのフランボウを怪しみ、ちょっとしたテストを行った。砂糖と塩を入れ替えたり、勘定を多く書き直したりしたのだ。フランボウは塩入りコーヒーにも、明らかにぼったくり価格の勘定にもまったく黙っていた。これは彼が断じて騒動を避けねばならぬ理由があるからである。

手掛かりも残さぬ狡猾な人物を警察に追わせるにはどうしたらいいか? その人物の代わりに手掛かりを残してやればいいのである。というわけでブラウン神父は壁にスープを掛けたり、窓ガラスを破ったりした。

フランボウはブラウン神父の十字架を狙っていたのだが、その十字架が既に駄菓子屋の女の手によって郵送されていたことすら気づいていなかった。



ブラウン神父の行動がフランボウ逮捕に結び付くとは、実際にはまずあり得ない話に思えるが、そこがブラウン神父の恐ろしさ。彼の洞察力はヴァランタンという人物の行動パターンを即座に見抜き、フランボウも知り尽くしてしまったのだ。彼らはブラウン神父に完全に操られていたのである。ブラウン神父はフランボウ視点で見ると、途轍もなく怖ろしい、いや畏ろしい人物だw

ヴァランタンの追跡の取っ掛かりなどはいかにも寓話的。このどこか幻想的な非現実性もまたブラウン神父譚の魅力。


「あんたが警察のために手掛かりを残そうとしないからには、誰かが手掛かりを残さなければならん」




「秘密の庭」
アリスティード・ヴァランタン:パリ警察主任, 司法制度にも影響力を持つ大物, 名探偵
イヴァン:ヴァランタンの召使
ギャロウェイ卿:英国大使
ギャロウェイ夫人:ギャロウェイ卿の妻
マーガレット・グレアム:ギャロウェイ夫人の娘
モン・サン・ミシェル公爵夫人
シモン博士:科学者
ネイル・オブライエン:フランス外国人部隊司令官
ジュリアス・K・ブレイン:合衆国の富豪, 様々な宗教団体に寄付している
ルイス・ベッカー:ギロチンに掛けられた死刑囚
アーノルド・ベッカー:ルイスの双子の兄弟



ヴァランタン宅のパーティーの最中、庭に首を切断された死体が発見された。その人物の顔は招待客の見知らぬものだった。凶器は周囲にはなく、後に血まみれのサーベルが家の外の道端で見つかった。ほかの手掛かりといえば、死体の近くに切断された小枝が見つかった。

ブレインが姿を消していた。

シモン博士は五つの謎を指摘した。第一の謎は、人を殺すのになぜ小さなナイフではなく、わざわざかさばるサーベルなど用いたのか? 第二の謎は、なぜ被害者は相手が大きなサーベルを振りかざしても騒がなかったのか? 第三の謎は、高い塀に閉ざされ、唯一の出入り口の玄関には見張りのいる庭に、見知らぬ男はどのように入り込んだのか? 第四の謎は、そのような状況でブレインはどのように家を出たのか? 第五の謎は、首の断面にはそれを切断した後に付けられた傷があったことである。

切れ者のイヴァンは被害者の正体に思い当たった。アーノルド・ベッカーという人物だ。彼にはルイスというそっくりな双子の兄弟がいるが、そのルイスは既にギロチンに掛けられてしまったので、ここにいるのは残ったアーノルドというわけである。

家の外で別の生首が発見された。それはブレインの頭部だった。



ブラウン神父は語る。第一の謎の答えは、首を切断する必要があったから。第二の謎の答えは、殺人者は小枝をサーベルで切断する曲芸を見せて被害者を油断させた。第三の謎の答えは、庭には見知らぬ男などいなかった。第四の謎の答えは、ブレインは完全には庭から出なかった。第五の謎の答えは、頭部と胴とを繋げる加工をするため。

ブラウン神父は死体の胴の上に載った生首を取り去ると、その代わりにブレインの生首を載せた。首を切断された死体はブレインのものだった。

犯人は予め庭に生首を持ち込んでいた。それはギロチンに掛けられたルイスのものである。そしてブレインを殺害すると彼の首を切断し、代わりにルイスの頭を載せた。そしてブレインの生首と凶器のサーベルを塀の向こうへ投げ捨てたのだ。

ところでルイスは死刑囚であり、その頭部を容易に持ち出し、庭に隠しておける人物がこの屋敷にはいたのである。



米のアレは、仏のアレよりも本作に影響受けてそう。本作では短編な上に下準備が少なすぎるのが残念。チェスタトンほどの人物なら、下準備を重ねることによってさらに効果が高くなったであろうと気づかなかったはずはないと思うのだが。


「論争で片付くことに正気を失う男を正直者だとすれば、彼は正直な男です」




「奇妙な足音」
オードレイ:真性十二漁師クラブの会長
チェスター公爵:同副会長
パウンド大佐:同会員
リーヴァ:ヴァーノン・ホテルの主人



ヴァーノン・ホテルでの恒例の真性十二漁師クラブの会食の席で、銀製の食器が盗まれた。そしてそれに先立ち事務所で書き物をしていたブラウン神父は、奇妙な足音を立てる人物の存在に気づいていた。その人物は廊下の半分をゆったりと歩いていたかと思えば、残りの半分をせかせかしつつも静かな競歩のような足音を立てて進むのである。



ブラウン神父はその足音に思い当たった。二種類の足音の一方は紳士のそれであり、もう一方は給仕のそれであった。その人物は真性十二漁師クラブの紳士たちに対しては給仕の振りをして、給仕たちに対しては紳士の振りをしていた。そうして給仕として食器を片付けるかのように自然に銀食器を持ち出し、紳士として堂々と立ち去ろうとしたのである。



給仕が一人死んで、紳士からは給仕が定員どおりに見えたいたのはまったくの偶然だろうから、それは犯人にとっては幸運だったが、その結果としてブラウン神父がその場に居合わせたのは不運とも言えるw


「紳士になるのはちょっとやそっとのことではできません。だが、給仕になるのもまた同じくらい骨の折れることではないでしょうか」




「飛ぶ星」
ジョン・クルック:新聞記者, 社会主義者
ルビー・アダムズ:ジョンと親しい間柄
アダムズ大佐:ルビーの父
ジェイムズ・ブラウント:大佐の義弟
レオポルド・フィッシャー卿:ルビーの名付け親
フロリアン:フランスの曲芸師兼喜劇役者, ジェイムズの知人



ひょんなことからパントマイム劇となったクリスマス会は、ジェイムズ・ブラウントの知人である喜劇役者フロリアンの登場を以ってクライマックスを迎えた。警官に扮したフロリアンを振り回す、ハーレキンに扮したブラウントの演技は見事なものであった。警官を倒し、その上を越えて庭へと走り去る彼の後ろ姿は、銀紙と模造宝石で飾り立てられたとは思えぬほど神秘的な輝きすら見せていた。

ところがそんな彼の名演も目に入らぬとばかりに、落ち着かぬ様子で自分のポケットを慌ただしく探っている御仁もおられる。どうやらレオポルド・フィッシャー卿が“飛ぶ星”と称される高価な宝石を紛失したらしい。



大佐の義弟にまんまと成り済ましていた人物は、警官が自分を捕らえに来ることを知ると、それを利用して宝石を持ち去ろうという、自らの芸術心を満足させるアイデアを思いついた。本物の警官をまるで警官に扮した役者のように見せたのである。



ブラウン神父がブラウントに会った瞬間にその正体に気づかないのはいかがなものだろう?w


「人間というものは、善良な生活なら一定の水準を保つことができるかもしれぬが、悪事の一定水準を保つなんてことは無理なんだよ」




「見えない男」
ローラ・ホープ
ジョン・ターンブル・アンガス:ローラへの求婚者
イジドア・スマイス:ローラにかつて求婚, 小男
ジェイムス・ウェルキン:ローラにかつて求婚, 藪睨み男



かつてローラ・ホープは二人の男に求婚された。答えに困った彼女は、自力で成功した人物でなければ結婚する気はないという口実をでっち上げ、それを断った。そのうちの一方の小男・スマイスは後に大成功した。もう一方の藪睨み男・ウェルキンのその後は杳として知れなかった。

ある日、ローラのもとにメッセージが届いた。スマイスと結婚すれば彼が死ぬというものである。彼女はスマイスからの成功を告げる手紙を読んでいる際に、ウェルキンの声を聞いたような気もするという。

スマイスはとりあえず自宅の防御に務めたが、あっさりと殺害され、その上その体は自宅から連れ出され、川に浮いていたのだ。

スマイスの自宅の警備に当っていた者たちは、侵入者なんて誰も見ていないという――



手紙を読んでいるときに声が聞こえたなら、それはそばに誰かいたからだと、ブラウン神父は言う。他人は必ずしもこちらの質問を意図どおりには受け取らない。たとえば田舎の別荘の主人に、「誰か一緒に滞在していますか?」と訊いて、「いいえ、誰もいません」という答えを得たとしても、その主人の背後に執事や使用人が立っていないとは限らないのだ。その場合、言わば使用人は心理的に見えない男なのである。

神父にそう説かれても、その聞き手たちは腑に落ちない様子。そこで神父は近くにいた一人の人物に注意を向けさせた。そこにいたのは手紙が届くときに必ずそこにいる人物。小男が入るほど大きな袋を抱えていても不審ではない郵便配達員だった。



映像化するのが難しい作品。時代性の考慮も要するかも。だがこの「見えない男」というアイデアはアイザック・アシモフや他の作家も用いており、スタンダードなテーマとなっている。


「他人というものは、こちらの言ったことに答えようとしない。人は相手がこういうつもりなんだろうと考えたことに対して答えるのです」




「イズレイル・ガウの誉れ」
グレンガイル伯爵:グレンガイル城主, 故人
イズレイル・ガウ:グレンガイル城の従僕
クレイヴン:スコットランドヤードの警部



城主亡き後のグレンガイル城に残っていたものは少々奇妙だった。第一品目として、大量の宝石が金属の台にも付けられず、バラバラに置かれている。第二品目として、嗅ぎ煙草が箱にも入れられずに様々な場所に積まれている。第三品目として、何らかの機械仕掛けを分解した部品のようなバネや歯車。第四品目として、燭台がまったくないのに蝋燭だけがある。そしてグレンガイル伯爵の死体からはその頭部が失われていた。

さて、そのとき少々知能が足らない様子の従僕・イズレイル・ガウは畑作業していた。ブラウン神父はその作業を観察すると、そこに埋められていた伯爵の頭部を見つけ出した。



グレンガイル伯爵の遺言はイズレイル・ガウに黄金を遺すというものだった。イズレイル・ガウは真っ正直な人物であり、彼の主人の遺言に忠実に従った。金製の台から宝石を取り除き、金製の嗅ぎ煙草入れから中身を取り出し、金時計から鉄の部品を外した。金の燭台は遺言によりイズレイル・ガウのものだが、蝋燭はそうではない。つまり彼は城内の黄金“のみ”を頂き、それ以外はその場に残したのである。

イズレイル・ガウはブラウン神父によって埋め戻された伯爵の頭部から金歯を取り外すと、伯爵の墓へと向かった。



日本語だと金がmoneyなのかgoldなのか紛らわしい…。


「でたらめを言う十人の哲学者の説も宇宙にぴったり合う」




「狂った形」
レナード・クイントン:詩人
クイントオン夫人:レナードの妻
アトキンソン:夫人の弟
ジェイムズ・アースキン・ハリス:医師
インド人の隠者



施錠された自室内でレナード・クイントンは死んでいた。彼の脇腹には奇妙な形の短剣が突き立てられている。そのそばには遺書と思しき紙片が置かれていた。だがその紙片の隅は切り取られ、短剣と同様に奇妙な形状を描いていた。

クイントンの部屋は、彼が義弟であるアトキンソンにカネを与えた後にすぐハリス医師によって閉じられていた。だからもしこれが他殺であるならば、あるいは姿を消したインド人の魔術によるものなのだろうか――



紙片の切り取り方は、どう見てもクイントンの美意識にそぐわないとブラウン神父は見抜いた。そこには何かが書かれており、それを不都合と見做した者が切り取ったのだ。

神父の推察どおり、そこには引用の印があった。殺人犯はクイントンが引用した文章を都合良く利用したのだ。そして犯人がクイントンを殺害したタイミングは、アトキンソンがカネを受け取って去った後、部屋を閉じるまでの間であった。



作品の出来はさほど良いとは思わないが、このトリックもまた他の作家によって後に応用され、多く使われている。

東洋と西洋との美意識・感性の齟齬が垣間見えるところは面白い。インド人隠者の扱いはもうちょっとなんとかならなかったものかw


「キリスト教徒のほうがまだ謙譲だ。キリスト教徒なら、何かしら欲しがってくれますから」




「サラディン公の罪」
サラディン公爵
スティーヴン・サラディン大尉:公爵の弟
ポール:執事
ミセズ・アントニー:家政婦
アントネリー:復讐者



湖沼地帯に居を構え隠遁したサラディン公爵を復讐者・アントネリーが追って来た。アントネリーが公爵に決闘を挑むと、公爵は堂々とそれを受けて立った。そして戦いは終わり、公爵は再び立ちがることはなかった。アントネリーは満足気な様子で死刑台へと向かって行った。

ところが公爵の屋敷では不思議なことが起きていた。庭に倒れた公爵を残したまま、彼の忠実なる執事・ポールは亡き主人の席に着き、家政婦のミセズ・アントニーとともに悠々と晩餐に勤しんでいるのである。そしてさほど注意深い者でなくても、ポールの顔に微笑みが浮かんでいると知るのは容易なことであった。



サラディン公爵は二人の敵を抱えていた。一人は復讐者・アントネリー。もう一人は実の弟・スティーヴである。スティーヴは公爵の弱みを握っており、恐喝していた。そこで公爵の思いついたアイデアが、弟に一時的に財産と立場を譲ることでその恐喝から逃れ、そして弟をサラディン公爵として復讐者に殺させ、その復讐者を殺人罪で死刑台に送るというものだった。敵二人がお互いを殺すように仕向けたのだ。



ブラウン神父はほとんど傍観者に徹している。そして相棒であるフランボウは傍観すらせずに呑気に釣り三昧w


「二人の敵は一人の敵よりもマシだ」




「神の鉄槌」
ウィルフレッド・ボーハン師:神に仕えることに熱心な牧師
ノーマン・ボーハン大佐:神に仕えることに不熱心な人物, ウィルフレッドの兄
シメオン・バーンズ:怪力の鍛冶屋
“気ちがいのジョー”:バーンズの甥
ギッブス:靴屋



教会のそばに一人の男が倒れていた。その男――ノーマン・ボーハン大佐――は激しく頭を砕かれていた。それを行なったと思しきハンマーはとても小さかったが、それを行なうにはとても大きな力を要することは明瞭だった。

もし殺人犯が怪力の持ち主なら、なぜこんな小さなハンマーを凶器として選んだのか? あるいはもし殺人犯がこの小さなハンマーしか扱えぬような非力な人物ならば、どのようにしてこれほどまでに強力な一撃を加えたのか?



ブラウン神父はもう一人の人物と連れ立って教会の塔を上った。眼下には大地が広がり、人々がまるで小さな虫のようだった。ブラウン神父はもう一人の人物に語り掛けた。

「その男はすべての人が虫けらのように蠢いているのを見てしまった。中でも目立ったのは、すぐ足元で闊歩する毒虫だった。誘惑の種はもう一つあった。最も怖ろしい自然の力、重力が自分の手中に握られていたことです。今私がこの欄干から一粒の小石でも落としたら、下にいる人に当たる頃には弾丸のようなスピードになっているでしょう。もしハンマーを…」



さすがにこれを誤認するというのは、いくら20世紀初頭の話とはいえ想像し難いが、当時はそんなものだったのかなぁ。


「こういう高い場所にいるのはなんとなく危険な気がしますね。体が墜落しなくても、魂が堕ちるかもしれない」




「アポロの眼」
カロン:太陽崇拝者
ポーリン・ステーシー:カロンの信徒, 資産家, 現代職業婦人, エレベーターを賛美し眼鏡を侮蔑する機械科学の信奉者
ジョーン・ステーシー:ポーリンの妹



太陽崇拝の教祖であるカロンは日に三度、バルコニーに出て日課の祈りを行なう。その祈りの最中に彼の崇拝者であり愛人のポーリン・ステーシーが、エレベーターの穴をエレベーターに乗らずに下階に降りようとして失敗したのか、転落死してしまった。

ポーリンはカロンの愛人であり、その上多額の財産を残す遺書を書いていると、彼は自身の不利な点を自ら指摘した。しかしそれと同時に、彼女が転落したときには彼はバルコニーで祈りを捧げ、通りの皆の注目を集めていたので彼女を突き落とすことは不可能と、自らの潔白を示した。

以上の説明を落ち着き払って語っていたカロンであったが、遺言書を見た途端、彼の態度は豹変した。ポーリンの遺言書は途中までしか書かれていなかった。



ポーリンは視力が弱かった。加えて信仰のために太陽を直視することによって、それはさらに低下していた。しかし眼鏡などというものに頼るのは自分を弱さを助長するだけと軽蔑していた彼女は、ほとんど目が見えない状態だった。それを知るカロンは遺言書を書く彼女に、エレベーターを待たせてあると声を掛け、そのエレベーターを静かに階上に引き上げた。彼女は遺言書を書き終える(少なくとも彼女はそうしたと思い込む)と、愛人の言葉を疑うことなくエレベーターの穴の中に足を踏み出し、そのまま遥か下の床に叩き付けられた。

ところでポーリンの視力が弱いことを知る人物がもう一人いた。その人物は遺言書を書くポーリンの手に、インクの切れたペンを渡していた。目が見えないポーリンは、自身がインクの出ないペンで紙を擦っているだけと気づくはずもなかった。



先日の金環日触の際に、太陽を直視しすぎて病院へ運ばれたひともいたねぇ。そういや僕も昔はさほどの危険性も感じずに結構見てたなぁ…。それはともかく、太陽の正確な大きさが未だにわかってないとは驚き。


「たった一つの魂の病は治せるのかな? 自分がまったく健康だと考えることは」




「折れた剣」
アーサー・セント・クレア将軍:英国の英雄
キース大尉:セント・クレアの部下, セント・クレアの娘の婚約者
クランシー大佐:セント・クレアの部下, 陽気な男
マレー少佐:セント・クレアの部下, アイルランド北部出身の清教徒
“禿げ鷹”:正体不明の人物
オリヴィエ:ブラジルの大愛国者
エスパード:スペイン人, ブラジルの士官



英国の英雄・アーサー・セント・クレア将軍の最後の戦闘は奇妙なものだった。慎重な指揮官として知られる彼が明らかに無謀な作戦を採り、大惨敗を喫したのである。

そしてその相手であるブラジルの英雄・オリヴィエの行動もまた奇妙だった。彼はその寛大さが知られており、彼に敗れ捕虜となった兵士が帰還するときには彼の信奉者になっているというほどの人物である。実際にセント・クレア最後の戦闘においてもその捕虜は解放されている。だがそこでの唯一の例外がセント・クレア将軍なのだ。セント・クレアは首に彼の折れた剣を掛けられ、木に吊るされるという非道な報復を受けたのである。

この件に関して当時のセント・クレアの部下たちは多くを語らない。しかしその中の一人、後にセント・クレアの娘の夫となったキース大尉は、この戦闘はセント・クレア将軍の無能の証ではなく、彼の生涯で最も深慮なものであったと書き残している。それと同時に、オリヴィエは決して蛮行を犯したのではなく、日頃以上の善良な人間味を示したことも断言している。そしてキース大尉はそれ以上のことは決して語らなかった。



アーサー・セント・クレア将軍はその折れた剣をシンボルに、英国の英雄として語り継がれている。ブラウン神父は最後の戦闘について調べるうちに奇妙な点に気づいた。それはセント・クレアの“折れていない”剣を見た者がいないということだった。

実はセント・クレアの剣は最後の戦闘に入る前に折れていたのだ。なぜ折れたのか? それは己の醜聞を握る人物を刺し殺した際に折れてしまったからである。死体もそうだが、折れた剣も己の殺人を示す証拠となる。そんなときに彼の頭に一つのアイデアが浮かんだ。この死体を死体の山に紛れ込ませてしまえば目立たなくなると。そのために彼は死体の山を作った。自軍を無謀な戦闘に駆り立てて。

しかしセント・クレアの策略は部下の一部に勘付かれてしまった。戦闘が終わり、オリヴィエの寛大な処置で捕虜となった――セント・クレアも含む――全員が解放されると、セント・クレアは部下たちの手で処刑された。そして彼らは沈黙によって将軍と英国軍の名誉を守り通したのである。



これも後の多くの作家にインスピレーションを与えた作品。「葉を隠したければ森に隠す。森がなければ森を作る」というのは異様な不気味さも感じられる。


「賢い人は樹の葉を森の中に隠す。森がなかった場合は森を生やす」




「三つの兇器」
エアロン・アームストロング卿:スコッチ神学からスコッチウィスキーに宗旨変えした末に陽気な禁酒主義者となった男
アリス・アームストロング:エアロンの娘
パトリック・ロイス:エアロンの秘書
マグナス:エアロンの従僕
マートン:刑事
ギルダー:警部, マートンの上司



エアロン・アームストロング卿が屋根裏部屋の窓から転落死した。その脚にはロープの切れ端が巻き付いている。彼の秘書・ロイスは告白した。エアロンを殺害した犯人は自分であると。

屋根裏部屋を調べてみると、そこには六発の銃弾を床に撃ち尽くした拳銃と、栓の開いているがまだ中身が残っているウィスキーの瓶、切られたロープなどが乱雑に散らばっており、惨劇の跡が見て取れた。

エアロン卿の娘・アリスは語る。屋根裏部屋の騒ぎを聞きつけそちらへ向かうと銃声が鳴り響き、中に入ると、まだ銃口から煙を吐き出している拳銃を手にしたロイスがいた。次に彼はロープをエアロン卿に巻き付けた。それを見た彼女は落ちていたナイフを掴み、二人の間に飛び込んでロープを切った。そこで彼女は意識を失ったという。

ロイスの告白とアリスの目撃談は、どちらもロイスの有罪を指し示していた。



ブラウン神父は一つの指摘をした。凶器が多すぎると。そして真相を語った。エアロン卿は自殺をしたのだ。

エアロン卿は陽気な仮面の裏に深い悲哀を秘めていた。そして再び酒に溺れ、彼の中の自殺願望が抑えられなくなってしまったのだ。彼は屋根裏部屋で死のうとして、部屋中に己の命を奪う道具を撒き散らした。そこに現れたロイスは拳銃を撃ち尽くして使用できなくした。ロープとナイフと拳銃という手段を手元から失ったエアロン卿は、窓から飛び降りることを思いついた。それに気づいたロイスはエアロン卿の脚にロープを巻き付け動きを封じた。ところがその様子を勘違いしたアリスがロープを切ってしまい、エアロン卿は我が身を窓から投げることに成功したのだ。ロイスはアリスが自らの行動で父親の命を奪ったと知られるのを避けるために、自らが罪を被るつもりだった。



古典ミステリの女性は気絶して事件を引っ掻き回すのがお約束だねw


「世間の人はなぜ、あの人に少しは涙を流させてあげられなかったのだろうか?」
ヒッチコック作品をモチーフにした連続殺人。[?]

フレッド(アマデオ)・サントマッシモ:ロス市警警部補
ウィルトン・B・エメリー:警部, フレッドの上司
ルー・ブロンテ:部長刑事
ジョン・ヘイバー:刑事
ジム・ビショップ:同
アル・ギルバート:検死官
ケイ・クイン:南カリフォルニア大学(USC)映画研究課程助教授
ブラッドリー・バウアーズ:映画学科の講義助手
クリス・ハインズ:映画学科の学生
マイク・リース:同
サッド・ゴメス:同
スティーヴ・サフラン:ニュースレポーター
ウィリアム・ハズブルーク:広告業“ハズブルーク・アンド・クレンター”の経営者, ビーチのランナー
ナンシー・ハモンド:“ウィンザー・リージェンシー”1207号室の滞在者, 輸出入貿易会社秘書大会の出席者
N・B・エイツ:1207号室の前滞在者。
チャールズ・ピアス:引越し業者
ミッチェル・ブレナー:鷹の購入者
カーラ・メンドーサ:売春婦



浜辺での日課のジョギング中にウィリアム・ハズブルークは命を落とした。爆弾を積んだラジコン飛行機に体当りされたという珍しい死に方だった。次にナンシー・ハモンドがホテルの浴室で感電死した。排水口に仕掛けられた装置によってだった。ロス市警のフレッド・サントマッシモ警部補は、その2件の殺人に何か符合を感じた。

サントマッシモの勘は正しかった。それは同一犯による連続殺人の幕開けだった。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



謎解き物かと思ったら実は単なるサスペンスで、「騙されたっ!」という作品がたまにあるけど、これもその一つ。トリックや犯人について推理しつつ読むと確実にガッカリ作品><

しかもサスペンスとしても大したことない中途半端な捜査小説って感じなんだよなぁ。作者の狙いが何なのかよくわからない。彼は放送分野でいくつか賞を得ている作家らしいので、映像化を前提とした作品なのかも。



[0] 誇大妄想狂の独白。
[1] 浜辺をジョギングしている男をラジコン飛行機が襲撃する。
[2] 爆殺事件現場に警察が到着。目撃者のボビーは残念ながらまだ幼く、喋れない。
[3] 被害者はウィリアム・ハズブルークと推定。
[4] 指紋により被害者をハズブルークと断定。
[5] ナンシー・ハモンド、ホテルの浴室の排水口に仕掛けられた装置により感電死。
[6] チャールズ・ピアス、絞殺される。
[7] サントマッシモ警部補、犯人の手口にヒッチコックのモチーフを見出す。浜辺の殺人は「北北西に進路を取れ」、ホテルの殺人は「サイコ」。
[8] ピアスの死体が発見される。ヒッチコックの「ロープ」に見立てられる殺人。3件の殺人事件現場にはそれぞれポップコーンが一粒ずつ落ちていた。
[9] スティーヴ・サフラン、鐘楼の階段から転落死。「海外特派員」の見立て。現場には一粒のポップコーン。
[10] 自身がUSCの“ヒッチコック500”のクラスの学生であるという犯人の独白。
[11] ケイ・クイン、自室内にて鷹に襲撃される。現場にはポップコーン。鷹は窓から逃亡。
[12] モチーフは「鳥」。
[13] ケイ、飛行機でUSCのニューヨーク旅行へ向かう。助手のブラッドリー・バウアーズと学生のクリス・ハインズ、マイク・リース、サッド・ゴメスも同乗。
[14] サントマッシモにケイからという小包が届く。USC映画学科のラベルが貼られている。「サボタージュ」に思い当たったサントマッシモはそれを窓から外へ投げ捨てる。直後にそれは爆発。
[15] USC映画学科のラベルは教職員でも学生でも、大学の関係者なら容易に持ち出せる。サントマッシモ、ケイと旅行中の4人に目を付ける。
[16] クリスの部屋からプラスチック爆弾やポップコーンが見つかる。テープレコーダーにはクリスの独白が記録されている。
[17] カーラ・メンドーサ、ネクタイで絞殺される。「フレンジー」。
[18] サッド、マイク、ブラッドリー、ベッドの上で麻薬の過剰摂取のような症状。
[19] 自由の女神。「逃走経路」。
[20] ラストシーン。