モース警部シリーズの長編第5作。自殺したアン・スコットの家の扉には鍵が掛かっていなかった。彼女の死の動機の謎。彼女の死後にその近所で殺人。恐喝絡み? モースが最も怪しむ人物には鉄壁のアリバイ。[???]

アン・スコット:個人教師
マードック夫人:未亡人
マイケル:マードック夫人の息子
エドワード(テッド):同
チャールズ・リチャーズ:出版社の経営者
コンラッド・リチャーズ:チャールズの弟
シーリア・リチャーズ:チャールズの妻
ジェニファー・ヒルズ:チャールズの愛人
ジョージ・ジャクスン:キャナル・リーチの住人
パービス夫人:同
グライムズ:錠前屋
ビーバーズ夫人:郵便局の事務員
グエンドラ・ブリッグズ:ブリッジ・クラブの経営者
キャサリン・エッジリー:ブリッジ・クラブの会員
ジョン・ウェスタビー:アン・スコットのかつての恋人, 故人
マックス:警察医
ベル:主任警部
ウォルターズ:刑事
ルイス:部長刑事
モース:主任警部



詩についての講演を聞くためにジェリコ街を訪れたモース警部。以前に一度会い、好意を抱いたアン・スコットがこの近所に住んでいることを知っていた彼は、彼女の家を訪問した。2階の明かりが点いていた。

モースは彼女の家の扉をノックした。しかし返事はない。ノブに手を掛けてみると扉が開いた。彼女に呼び掛けてみる。やはり返事はなかった。渋々彼女の家に背を向けた彼は、その正面の家の2階の窓の中のカーテンがわずかに揺れたような気がした。諦めの悪い彼は彼女の家のほうにもう一度目をやった。2階の明かりは消えていた。


講演は素晴らしいものだった。その後に他の出席者たちと会話を楽しんでいたモースだが、近所で何か事件があったことを聞くと、すぐにそちらへと向かった。事件現場はアン・スコットの家だった。彼女が首吊り自殺したというのである。


おそらく講演の前にモースがスコットの家を訪れたときには、彼女は既に死体となっていたのだろう。彼女の家を(多少なりとも下心を持って)訪問していたことを言い出しづらいモースは、それを同僚に隠したまま、独自に捜査を始める。しかしそれは結局バレてしまい、そして今度は彼女の家の隣家で殺人事件が発生する。

モースはその一報をまたもや講演後の会合の席で知った。しかし今回の件については、彼には既に犯人の目星まで付いていたのだ。ところが被害者の死亡推定時刻を知り、彼は愕然とする。その時間帯には彼の容疑者はちょうど講演の最中であり、それをモース自身が見ていたからである。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



二人の容疑者のどちらかを犯人とするにはそれぞれ障害があり、モースを悩ます。現実には犯人のかなりの幸運が求められそうな、ゲーム的なトリックが用いられている。本作ではそのトリックの成立自体にモースの相棒・ルイス刑事の存在が大きな意味を持っている。真相を意識して読むと、フェア・プレイを意識した作者の苦労の跡がその記述に見て取れるw

ゲーム的であるという要素の一つが登場人物の性格付け。元々犯人がこのトリックを用いる発端はその性格ゆえなのだが、裏を返せばそのトリックを作中で用いるために登場人物の性格がそのように設定されているのだ。それにしてもこれをバレずに済ませようとは、なかなか大胆な犯人だ。(当初は殺す気まではなかったからこそだろうか)

アン・スコットの自殺にはオイディプスの神話がモチーフとして使われているが、これはモースが言う通りのまったくの偶然であり、あっさりと片付けられる。彼女の精神状態に影響を及ぼした可能性は否定できないが、作品の本筋には特に影響はない。こういうところを掘り下げて、話を膨らませたりはしないのも、作中の要素をパズルのピースのようにドライに扱う作者、コリン・デクスターならではの作風なのだろう。これがもし横溝正史だったら、ドロドロの愛憎渦巻く物語になっていただろうw

今回のモースは登場人物とあまり好い仲にならない。気になる相手のアン・スコットはすぐに死んでしまう。



[プロローグ] モース警部、アン・スコットと知り合う。
[第一部 1] 10月3日(水)、モース、講演を聞くためにジェリコ地区へと向かう。午後3時25分、スコットの自宅が近いので、ついでに寄ってみる。通りには駐車禁止違反カードが差し込まれたライト・ブルーのロールスロイスが停車してる。スコットの家である9号棟の2階の明かりが点いている。扉をノックするが応答なし。施錠されていなかったので扉を開けて呼び掛けるが返事はない。2階への階段の下に羊毛付きの薄茶色の革のジャケットが畳まれて置かれている。諦めて引き返すと、正面の10号棟の2階の窓のカーテンがわずかに揺れた気がする。もう9号棟のほうへ一度振り返り、その窓の明かりが消えていることに気づく。
[2] 講演後、会員たちと会話していたモース、近所で事件発生との報を聞き、現場に駆け付ける。スコットが自宅の台所で首を吊って死んでいる。彼女は妊娠していた。警官は匿名の通報によりここを訪れ、死体を発見した。家の扉は施錠されていなかった。扉の内側には郵便受けから投げ込まれたらしきこの家の鍵が落ちていた。モースが以前に見た、男用の黒い洋傘はなくなっている。モース、10号棟の前に置かれた自転車の魚の匂いに気づく。街をぶらつき電話ボックスに入る。設置された電話帳に魚の匂いが付いている。
[3] スコットが自殺する際に蹴り飛ばしたはずの踏み台代わりの椅子は、ぶら下がった彼女の足から1.7メートルほど離れた辺りにきちんと立っていた。
[4] スコットが死体となる日の朝、彼女の教え子のエドワードは彼女からの切手のない手紙を読んでちょっと失望した。「親愛なるエドワード。申し訳ありませんが、今日はいつものレッスンができません。アン (スコット)」
[5] ベル警部、スコットの部屋の卓上日記に注目。「10月2日(火)、午後8時、サマータウン・ブリッジ・クラブ」「10月3日(水)、E・M、2・30」 スコットは若い頃にジョン・ウェスタビーの子を身籠り、二人でどこかへ去り、3ヶ月半後に彼女は彼と別れ、帰って来た。腹の子がどうなったのかは不明。相手の男は今から一年ほど前に酒酔い運転の末に自動車同士の衝突事故で死亡。
[6] ウォルターズ刑事、スコットの隣家、7号棟の住人・パービス夫人を尋問。相手の落ち着かない様子を感じる。次に錠前屋から話を聞き、10号棟の住人・ジャクスンがスコットの家の合鍵を持っていたことを知る。ジャクスンは彼女の家の仕事を片付けた後、鍵を郵便受けから返したという。ジャクスンはモース警部が9号棟を初訪問するのを目撃していた。
[7] ウォルターズ刑事の推理。スコットの自死後、鍵を持っているジャクスンが彼女の家の扉を解錠して中に入る。台所の扉を開け、倒れた椅子に気づいてそれを起こし、次の瞬間に彼女の死体を発見。その場で通報しなかったのは、彼がつい出来心で何か金目のものを盗んだから。
[8] 土曜日の朝、チャールズ、コンラッドに電話。浮気を疑う妻を誤魔化すため、アリバイ工作を依頼する。スコットの卓上日記にあった「E・M」とはモース警部のことではないかと疑う。
[9] 検死医の見解では、スコットは自殺。
[第二部 10] 10月13日(土)、モース、錠前屋を買収し、9号棟の合鍵を入手。
[11] 10月13日(土)朝、チャールズ・リチャーズ、彼とスコットとの関係についての恐喝の手紙を受け取る。
[12] モース、密かに9号棟に侵入し、内部を探る。その帰り道でウォルターズ刑事に捕まる。
[13] モース、スコットの死体が発見される前に彼女の家を訪問していたことなどをウォルターズ刑事に打ち明ける。
[14] スコットはその死の前日、ブリッジ・クラブの会合の最中にエドワードへの手紙を書いた。頼まれてエッジリーはそれを届けた。
[15] 10月16日(火)。朝、チャールズ、恐喝者からの電話を受ける。マードック夫人、薬物使用により入院した息子・マイケルが自ら目を突き、失明の可能性が高いことを知らされる。夜、チャールズ、自身の講演の会場入りを遅らせることを主催者に通知。
[16] モース、エドワードがスコットから手紙を受け取ったことなど、彼女に関することを聞き出す。
[17] ジャクスン、恐喝したカネを入手する。そこから自宅に戻までの彼を誰かが見ている。
[18] 10月19日(金)。チャールズ・リチャーズの講演会にモースも出席している。リチャーズは8時の6分前に到着。彼とモースとは初対面。リチャーズは10時に会場を後にした。まだそこに残り、協会の会長らと会話していたモース、近所での事件発生を知り、現場へと向かう。ジャクスンが自宅にて殴られて死んでいる。9時15分に匿名の通報があった。ジャクスンは8時5分に酒場へ行き、スロットマシンで遊んで、8時20分に店を後にした。モースはチャールズ・リチャーズによる7時30分前後の犯行と考えていたが、8時20分以降の犯行となると、その時間帯の講演を目撃していたモース自身がアリバイの証人となってしまう。
[19] チャールズ、スコットがかつて彼の愛人であったことを認める。
[20] スコットの寝室にはカーテンがなく、正面の家の窓から中が丸見え。
[21] スコットも出席していたブリッジ・クラブの会合の際、誕生日についての話題が出た。
[第三部 22] モース、駐車禁止違反調査によって、チャールズ・リチャーズのロールスロイスがスコット宅付近に停めてあったことを突き止める。10月5日にオックスフォード・アベニュー216番地のC・リチャーズ名義の口座から罰金が払い込まれている。
[23] モース、チャールズ・リチャーズの社長室を訪問。停車していたロールスロイスについて追求されたリチャーズはスコット宅を訪問したことを認める。さらにモースが追求すると、チャールズの妻・シーリア・リチャーズが現れ、スコット宅を訪問したのはチャールズではなく自分だと告げる。
[24] シーリアによると、スコットからチャールズ宛の手紙を読み、浮気を確信した彼女は(鍵が開いていた)スコット宅に入り、そこにあったチャールズからスコット宛の手紙を見つけた。モースが訪問した際に家の中に潜んでいたのはシーリアで、彼が去った後に彼女もすぐに家を出た。死体には気づかなかったという。駐車違反の罰金を支払った“C・リチャーズ”とは“チャールズ・リチャーズ”ではなく、“シーリア・リチャーズ”だと彼女はモースに告げた。
[25] モース、ジャクスンは文盲ではなかったかと推測。
[26] モース、スコット宅の焼けた紙の切れ端が“ジェリコ医療検査所”のレターヘッドの一部と気づく。スコットは10月1日(月)に結果を問い合わせ、検査所は10月2日(火)に妊娠を確認したものを投函した。チャールズの会社が現在の地域に引っ越してきたのは3ヶ月ほど前。スコットの妊娠時期とちょうど重なる。
[27] モースの推理。スコット宅へ入ったジャクスンは彼女からチャールズ・リチャーズ宛の手紙を見つけ、それを元に恐喝を働いた。チャールズから・リチャーズについては講演会のアリバイがあるが、その弟・コンラッドにはそれはない。
[28] ルイス、コンラッド・リチャーズを初訪問。指紋を取る。ジャクソン死亡時のアリバイを訊くが、やはりはっきりしない。チャールズは商用でスペインへと旅立ってしまったという。モース、チャールズの愛人であるジェニファーを訪問したが、彼女はスペインへと旅行中で会えなかった。ルイスが取ってきた指紋は、ジャクスンの寝室に残された正体不明のそれとは一致しなかった。
[29] マードック夫人の嘆き。
[30] モース、チャールズ・リチャーズへの脅迫状はジャクスンが書いたものではないと断言。
[31] パービス夫人、ジャクスンが持ってきた手紙を彼に読んであげたことを認める。全部を読んだわけではなく詳しくは覚えていないが、「愛しいチャールズ」から始まる内容だった。
[32] シーリア・リチャーズの供述書には住所の番地が“261”と記されている。駐車違反の罰金の支払いの書類の番地は“216”となっている。モース、罰金を支払った“C・リチャーズ”とはコンラッド・リチャーズと知る。
[第四部 33] モースの推理。ブリッジ・クラブの会合で養子の話題があった。誕生日の話題があった。マードック夫人の長男・マイケルが養子であることと、彼の誕生日を知ったスコットは、彼こそ自分が昔養子に出した子であると確信する。知らずに実の子と男女の関係を持ち、その間に子を宿してしまったスコットは、堕胎の費用のために昔の愛人・チャールズに金銭援助を求める。しかしその手紙はチャールズの手に渡る前にその妻・シーリアに持ち去られ、返事は来ない。そうとは知らぬスコットは絶望し、己の命を絶った。
[34] マイケルはスコットの子ではないことが判明。
[35] モース、コンラッド宅よりも遥かに立派なチャールズ・リチャーズ宅を訪問。近いうちにルイス刑事立ち会いのもとで供述書を書くように要求。
[36] エドワード、自供。容疑者を逮捕。
[37] モース、容疑者を尋問。
[38] モース、自身のうっかりミスを認める。
[39] モース、自身に宛てられた手紙を見つける。
[エピローグ] ウォルターズ刑事の転職。
御手洗潔シリーズ。上半分がガラス張りのピラミッド。塔の7階の密室で溺死。古代エジプトとの因縁。“怪物”。シリーズ・ヒロインの一人、松崎レオナも出るよ。(「・ω・)「にゃおー [??]

[現代]

松崎レオナ:女優
エルヴィン・トフラー:映画監督
エリック・ベルナール:美術監督
ステファン・オルスン:エリックの助手
ハリソン・タイナー:エリックの助手
ブライアン・ホイットニー:撮影監督
ボブ・エロイーズ:アシスタント・ディレクター
エドワード・フリンブル:第一カメラマン
ドナルド・オスマン:その助手
スティーヴ・ミラー:第二カメラマン
フェリス・タイラー:その助手
ジェイムズ・オコーネル:第三カメラマン
ヨランダ・フリーマン:その助手
マーガレット・フォスター:レオナの衣装係
トム・ゲイリー:小道具係

ポール・アレクスン:考古学者, ビッチ・ポイントのピラミッドの作者
リチャード・アレクスン:ポールの弟, 兵器産業会社・アレクスン・カンパニーの取締役
リッキー・スポルディング:リチャードのボディガード
ロドリゴ・グラッペリ:同
ヨーゼフ・オコーナー:同
ティモシー・ディレイニー:リチャードの主治医

ジュディ:ビッチ・ポイントの“怪物”の目撃者
ビル:ジュディの恋人

デクスター・ゴードン:ニューオリンズ警察署の部長刑事
ネルソン・マクファーレン:FBI職員
チャーリー・ルパートン:検死官

御手洗潔:探偵
石岡:その友人

[タイタニック号の船上]

J・ブルース・イスメイ:タイタニック号の発案者, ホワイト・スターライン社のオーナー
トーマス・アンドルーズ:タイタニック号の設計主任
エドワード・J・スミス:タイタニック号の船長
ヘンリー・ワイルド:航海士長
ウィリアム・マードック:一等航海士
チャールズ・ハーバード・ライトラー:二等航海士
ボクスホール:四等航海士
ジェームズ・ムーディ:六等航海士
ロバート・ヒチンズ:操舵手
ハロルド・ブライト:無線士
ジャック・フィリップス:無線士
フレッド・フリート:見張り番
レジナルド・リー:見張り番
ジャック・ウッドベル:作家
ナンシー・ウッドベル:その妻
ウォルター・ホワイト:考古学者
ジェーン・ホワイト:その妻
ロバート・アレクスン:アメリカへ移住した英国の富豪, ガン・メーカーのオーナー
デヴィッド・ミラー:ロバートに誘われ同船した友人
ジョージ・ワイドナー夫妻:アメリカの大富豪, 路面電車製造業
バット少佐:富豪軍人
アンドリュー・オブライエン:ロンドンの証券取引所所長
ジョン・ジェイコブ・アスター大佐

[古代エジプト]

ミクル:マーデュの女
ディッカ:ファラオの第二王子
ロイ:ミクルの世話係
セメトペテス:ディッカの許嫁
ハームワヒト:神官
カマル:プケに住む船主



ビッチ・ポイント岬の先端にある橋を渡ると、“エジプト島”と呼ばれる島がある。その島の大部分を占めているのが、この事件の舞台となる奇妙な建造物である。それは変わり者として知られる金持ちの考古学者が建てたもので、エジプトはギザにある通称“クフ王のピラミッド”をそのままコピーしたもの。ただし大きく異なる点として、その上半分は透明な強化ガラスで作られているのだった。

このピラミッドの作者であるポール・アレクスンはもう何年も行方知れずとなっており、外国で既に死んだと噂されていた。


エジプト島で映画が撮影されることとなった。その撮影スタッフの中にリチャード・アレクスンが混じっていたのも当然で、彼はピラミッドを作ったポールの弟だった。その彼が死んだ。


この島のピラミッドには7階建ての円塔が隣接している。両者は空中回廊で繋がっているが、ピラミッド側からその通路に到達するのはかなり困難であるという不思議な作りになっていた。

彼が死んでいたのは円塔の7階。部屋の中で倒れていた。死体発見時には扉は固く閉ざされており、密室状態だった。不可解なことに、その死因は海水による溺死で、自殺とは考えづらい。そして死亡推定時刻も奇妙だった。検死医を信じるならば、彼は死後も映画撮影スタッフらとともに島を歩き廻っていたことになってしまうのだ。


ところで警察は決して事実とは認めない出来事がある。それは裂けた口に鋸のような歯を覗かせる、直立した白い肌の鰐のような奇妙な怪物がこの周辺で何度か目撃されていることである。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



文庫本で700ページ超。長い…。

その長さは大作と呼ぶべきだが、内容的には「やっちまったなぁ~」という珍作の部類。島田荘司ファンの間でもハマる者にとっては傑作、そうでない者にとっては駄作と、はっきり好き嫌いが分かれる傾向の作品。また、作者の“社会派”としての側面にうんざりな読者も多かろう。

現代の事件をメインに扱っているが、序盤の200ページほどはほぼ古代エジプトとタイタニック号沈没(をモデルにしたフィクション)とが交互に綴られ、そこを読み終える頃には、冒頭で示された現代の事件の内容などすっかり忘れてしまうw しかもその200ページは現代の事件解決にはほぼまったく寄与せず、単なる雰囲気作りだけの代物。(登場人物などが後のミス・ディレクションの伏線になってる程度)

いやまあ物語的には作者にとって必要な部分なのだろうが、僕には各々では弱いものをまとめて、なんとかそれなりのものに見せかけてるようにしか思えない。エジプト編の「ミクル」とか、タイタニック号編の「ジャック・ウッドベル」などという登場人物の名前が可笑しいが、それは作品の面白さとはまた別だw

御手洗潔が最初に提示する事件の解決はスケールは大きいが珍妙で、捜査陣もよくもこれで納得したというもの。室内から聞こえた声を「聞き間違い」で片付けてしまうのはともかく、死亡推定時刻の問題はもう少し突っ込むべきでは。

その後に明かされる真相の中の密室トリックの部分にもまた唖然とさせられる。御手洗の台詞にほのめかされているように、「モルグ街の殺人」を意識したものであろうが、いまどきこのトリックはちょっとねぇ。

最終的には事件には合理的な解決が着けられるが、“怪物”がレオナと対面した際に「ミクル…」と呟くなど、作中ではその理由が説明されない古代エジプトとの奇怪な因縁が描写されており、オカルティックな要素も残している。あるいはそれは御手洗が機上で語った「ちょっとしたトリック」に含まれるものなのだろうか。

「ミクル…」については、“怪物”が何かの書物で読んだことをレオナを見た際に連想したという解釈もできる。しかし“怪物”が目にしていたのが父親しかいなかったから、人間の女というものが珍しかったというのはちょっと引っ掛かる。幼い頃よりただ一人の父親しか目にせずに成長した少年がいた場合、彼にとって男と女の違いは、果たして父と他の男との差異以上のものなのだろうかという疑問が湧く。そもそも他の人間それぞれの個体差を簡単に認識できるのだろうか? たとえば競馬ファンでもなければ馬の性差などが見分けられないように、女という存在を知らずに育った者は人間は、男も女もどちらも同じように「人間」としか認識できないんじゃないかと。ひょっとして、かすかに残る母の記憶を呼び覚まされたということかもしれないな。

“怪物”が初めて見た女としてレオナに心を動かされたというのは、冒頭で登場したジュディの立場がちょっと哀しい。



[ビッチ・ポイント、アメリカ 1] ジュディ、海に怪物を見る。
[エジプト島、アメリカ 2] 1986年8月15日夜、ビッチ・ポイントの塔の最上階でリチャード・アレクスンが溺死体となって発見される。その部屋の出入口には内開きの頑丈な鉄製扉。扉と金属枠がゴム製のストッパーによって完全に密着し、糸が通る隙間もない。扉に鍵穴はなく、部屋の内外双方から操作できる水平方向のスライドバーによって閉ざされ、さらに内側の上部には押し上げ式の閂によっても固定できる。室内に死体が置かれていたとき、扉はその二つの閂によって閉ざされていた。部屋には小さな通気孔が二つあり、それらは金網が厳重に嵌められ、虫除け布が室内側からビス留めされている。部屋には金網入りのはめ殺しの小窓がある。15日午前10時には部屋の前の3人の人物が扉越しに、「頭痛がするのでもう少し寝かせてくれ」というリチャードの声を聞いている。
[オーストラリア] 1984年3月、オーストラリアのブリスベーン。レンタカーの中から男の焼死体が発見された。室内と自らの体をガソリンまみれにして火を点けたと見られる。レンタカー会社に残っていた資料から、死体の身元はポール・アレクスンと判明した。
[マーデュ、エジプト 1] 古代エジプト。ナイル川に浮かぶ島・マーデュに箱が流れ着く。島の少女・ミクルが箱を開けると、中には男が閉じ込められていた。
[船上 1] タイタニック号の船上。作家・ウッドベル、考古学者・ホワイトと知り合う。
[マーデュ、エジプト 2] 箱に入っていた男・ディッカは故郷のギザへと帰った。ミクルとの別れの際、もしギザへ行くことがあれば彼を訪ねて来るようにと言い残し、彼は彼女に指輪を贈った。
[船上 2] ウッドベル、ロバート・アレクスンについて語る。ロバートは畸形の生物の標本の収集家で、ウッドベルはそれを見せられた。
[ナイル、エジプト 3] ディッカが去ってから2年後、ミクルはギザへと向かった。
[船上 3] ホワイト、エジプトのクフ王のピラミッドについて語る。
[ギザ、エジプト 4] ミクル、ギザに到着。ディッカとともに暮らすようになる。ディッカはミクルをモデルにした神像を作る。
[船上 4] タイタニック号、氷山に接触。
[ギザ、エジプト 5] ディッカ、戦場へと向かう。彼の許嫁・セメトペテスはミクルに敵意を剥き出し。
[船上 5] タイタニック号の沈没が開始。女子供を優先として、乗客は救命ボートへと移る。
[ライオン岩、エジプト 6] ディッカ、敗戦。その行方は知れず。ミクルは生贄に捧げられることとなった。連れて行かれる際、彼女の指から落ちた指輪はそのまま砂に埋もれた。ミクルの死後、ディッカがギザに戻る。敵に捕えられ、嬲りものにされた結果、顔中を焼かれ、頭髪を失い、両手の指は三本ずつになっている。数日前にようやく機会を得て逃亡してきたという。ミクルの世話係だったロイから事情を聞いたディッカは、ミクルを殺した一派の一人である神官・ハームワヒトを殺害する。
[船上 6] タイタニック号、取り残された者たちとともに沈む。
[ジッグラト、エジプト 7] ディッカ、巨大な石の神殿の奥に封じ込められる。
[船上 7] ウッドベル、沈み行く船内に怪物を見る。
[エジプト島、アメリカ 3] ビッチ・ポイント岬の先端に掛かった小さな橋の向こうにはエジプト島と呼ばれる島があり、そこにはクフ王のピラミッドを模した建造物が存在している。大きな違いとして、その上半分は透明な強化ガラスを用いて作られている。作者は資産家の考古学者であるポール・アレクスンだが、彼は既に外国で死んだと噂されている。所有者が失踪しているため、ピラミッドと付属の塔は空き家となっていたが、その中に財産が隠されているという風聞を信じる者たちは跡を絶たず、大勢の宝探し人がそこに侵入し、荒っぽい調査が行われた。しかし宝は発見されていない。1986年1月、削岩機を用いて壁を崩している一団が、その向こうに空洞を見つけた。通廊を進む彼らは怪物を見た。怪物はスペイン語のような声を発した。警察が調査すると、通廊はセメントで固められた石積みの壁に突き当たっていた。つまりここは外壁に孔が空けられるまではずっと密閉空間だったのだから、生物がそんな長期間に渡って生きていられるはずがない。怪物などいなかったと結論付けられた。
[ニューオリンズ、アメリカ 4] 島のピラミッドはポール・アレクスンが何かの実験のために建てたもので、クフ王のものと同じ寸法に作られている。付属する円塔の意味は不明。
[エジプト島、アメリカ 5] 映画の撮影が行われている。レオナ、暴風雨と高波が暴れ廻る岩盤に立っている。ふと、5メートルほど離れた場所にいる怪物に気づく。撮影スタッフは誰もその存在に気づかなかったという。
[エジプト島、アメリカ 6] 7階建ての円塔の1階はトイレと洗面所。2階は厨房。3階は書庫。最も居住性の高い7階がリチャードの寝室で、6階は彼のちょっとした着替え部屋として使われている。空いている4階と5階には、リチャードの3人のボディガードが分かれて入っている。リチャードに会うために塔の階段を上るなら、ボディガードたちの部屋の前を通過する必要がある。ピラミッド側から空中回廊を渡る方法もあるが、ピラミッド内部からよじ登るのは人間業としてはまず不可能。しかもここには多くの撮影スタッフがおり、仮に空中回廊に辿り着いたとしても、誰かに見咎められる可能性が高い。ピラミッドの外側の石積みを登り切っても、この上半分は強化ガラス製で手掛かりがないため、回廊はまだ5メートルほど上にある。さらに空中回廊へ出る扉の鍵はリチャードしか持っていない。
[エジプト島、アメリカ 7] リチャードが部屋から出て来ない。扉は固く閉ざされ、呼び掛けても中からの反応がない。
[塔、アメリカ 8] ガス切断機を使ってリチャードの部屋の扉に孔を空ける。リチャードはクロールで水掻きしているような妙な姿勢で倒れ、死んでいた。
[塔、アメリカ 9] 美術監督・エリックは扉を観察した。ワイヤーなどで閂を扉の外から閉めるのは不可能と思われた。室内には誰も潜んでいなかった。死体には全体的に微量の黒い粉末が付着している。死体の着衣のポケットに回廊への扉の鍵を見て取った。二つの小窓――扉の横の方にある床に接したものと、空中回廊に面したもの――はのどちらも内側から虫除けの布が張られており、外から細工した形跡はない。室内の照明器具は着脱可能な石油ランプのみ。懐中電灯などもない。ライターやマッチは見当たらなかった。昨夜はボディガードがランプに火を点けたという。リチャードは海水による溺死と判明。
[ピラミッド、アメリカ 10] リチャードの死体は発見時、死後30時間と推定。しかしもしそうであるならば、リチャードは死後も映画スタッフとともに島をうろついていたということになってしまう。
[ハリウッド、アメリカ 11] 事件捜査のために映画撮影が中断し、トフラー監督は悲鳴を上げる。リチャードは生前に、自分の身に不可解な出来事が起こることを予感していたかのように、全米一頭の切れる名探偵を呼んでくれと言っていたという。
[ロサンゼルス、アメリカ 12] 第二カメラマンのスティーヴ・ミラー、失踪。レオナ、知人の名探偵を呼びに行く。
[横浜、日本 1] 名探偵・御手洗潔は可愛がっていた犬が死んだことでひどく落ち込んでいた。依頼にやって来たレオナが事件を説明しても興味を示さない。散々頼み込まれ、ようやく腰を上げた御手洗は、まずエジプトへと向かう。
[機上] 石岡、本物のピラミッドの謎を語る。御手洗、それに対する解釈を述べる。
[車中、エジプト 8] 石岡、ピラミッドの近くで指輪を拾う。
[ギザ、エジプト 9] 御手洗、石岡、レオナと合流。ピラミッド内部を見て廻る。石岡、先日に拾った指輪をレオナに贈る。
[カイロ、エジプト 10] 石岡、少年の石像に惹かれる。モデルは女性であると確信する。レオナにも似ていると感じる。“死者の書”を見たレオナ、驚く。そこに描かれたアヌビスこそ、彼女が島で見た怪物だった。
[ナイル、エジプト 11] レオナ、アヌビスが島の殺人鬼説を唱える。
[ビッチ・ポイント、アメリカ 13] リチャードの部屋の扉の外側の取っ手には小さな引っかき傷。はめ殺しのガラス窓の外側に靴跡。石油ランプには八分目ほどまで水が入り、金魚鉢のようになっている。御手洗、それは海水であり、死体発見時にはベッドも湿っていたはずと断言。
[エジプト島、アメリカ 14] 御手洗、ピラミッドを探索する。海へと潜る。海底に石造りの神殿。内部を進むと水面に出た。水から出てさらに進む。畸形児の死体がガラス瓶の中の液体に漬けられている。怪物が出現。御手洗、怪物と会話。石岡、御手洗の指示でレオナを照らす。御手洗、石岡とレオナを先に引き返させて、さらに怪物と話している。石岡たちと再び合流した御手洗、やって来たときとは別のルートで水中を進む。水中を抜けた先はピラミッド内へと通じている。通路内には火を焚いた形跡がある。壁に抜け穴を発見。ピラミッドの2階部分の外側へと出る。
[ハリウッド、アメリカ 15] 御手洗、ピラミッドのポンプ説を説明し、事件の解決を着ける。映画撮影の再開が許可され、御手洗はレオナの依頼を解決した。
[馬車道、日本 2] 御手洗は妙に浮かない様子。試写会の招待にも渋々応じる。
[ハリウッド、アメリカ 16] 試写会。
[ロサンゼルス、アメリカ 17] 御手洗、仮病を用いて、リチャードの元主治医・ディレイニーと話す機会を設ける。
[ビヴァリーヒルズ、アメリカ 18] 御手洗、嘘を認める。
[エピローグ] 御手洗、石岡、レオナを見送る。
モース警部シリーズの長編第4作。礼拝中の殺人事件。牧師の転落死。[???]

モース:主任警部
ルイス:部長刑事
ストレンジ:主任警視
ベル:主任警部
ディクスン:当直の巡査部長代理

ライオネル・ピーター・ロースン:牧師
フィリップ・エドワード・ロースン:ライオネルの弟
エミリー・ウォルシュ=アトキンズ夫人:金持ちの老婦人
ポール・モリス:音楽教師
ピーター:ポールの息子
ハリー・A・ジョーゼフス:教区委員
ブレンダ:ハリーの妻
ルース・ローリンスン:教会の信者
アリス・ローリンスン夫人:ルースの母
キース・ミークルジョン:ロースンの後任の牧師
キャロル・ジョーンズ:ポールの生徒
メイヤー:元校長



セント・フリデスウィーデ教会で礼拝中に教区委員のハリーが殺害されるという事件が発生した。刺殺と見做すのが妥当であったが、彼の胃の中からは致死量に達するモルヒネが検出された。

そしてその翌月、牧師のロースンが教会の塔から転落死した。


何の予定もないまま、モース警部は休暇を迎えた。行き先はどこでも良かった。セント・フリデスウィーデ教会へと向かったのは、たまたまその名を耳にして、前年の事件を思い出したからだった。

教会に到着したモースは、事件について知るルース・ローリンスンとたまたま出会った。興味が抑え切れない彼は本格的に事件を調べ始めた。

モースは、転落した人物は本当にロースンだったのか疑問を抱いた。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



前作はなんとか及第点はクリアしていたように僕には思えるが、本作は駄目だった。

関係者の誰もが何らかの思惑を秘めて、曖昧に何かを仄めかす導入部。今一つスタンスが曖昧なまま事件に着手し、捜査を進めるモース警部。捜査の進展についての実感が薄いまま進行していく物語。

何もかもが曖昧模糊としたまま手応えが得られず、それが最後に唐突に急展開する。死体が次々に現れる派手な事件でありながら、印象はどうにも地味。

モースは読者が知っていることの多くを知らず、読者としてはどういう視点で事件に当たったらいいのか、最後まで掴めないのも不満。

前作に続いて、最終的に犯人の自爆によって事件が解決するというのも気になる。今回のモースはその人物を自身の目で確認するまではその正体に気づいていなかった。これじゃ雰囲気だけミステリ風なサスペンス物の三流探偵だよ。モースの推理には最後まで推測で補完した部分が多く、事件解決後、読者に対してはその推理の誤りも示唆される。

深読みすると、事件解決後のエピローグ的な部分は不気味な結論を示唆しているようにも思える。



[歴代史上 1] セント・フリデスウィーデ教会。牧師・ロースン、教区委員・ハリーによる献金窃盗の証拠を掴む。ハリーは一年間の運転免許停止中。
[2] ハリー、妻・ブレンダがモリスと密通していると確信している。
[3] モリス、ブレンダを手に入れるためにハリーの死を願う。同性愛について、息子・ピーターを問い詰める。
[4] モリス、牧師館に侵入する。十字架のような形状の鋭いペーパーナイフを見つける。小さなのみを用いて抽斗を探る。その姿をフィリップに見つかる。
[5] ルース、いつものように教会の清掃。彼女の存在に気づかず、モリスともう一人の男が立ち話している。「モリスさん、俺の兄に話したら、あんたも困るだろう…」 別のある日のモリス、生徒のキャロルを誘う。待つ彼の耳にノックの音。現れたのは彼女ではなくロースン。重要な話があるという。
[歴代志下 6] モース、休暇をギリシャで過ごす計画は頓挫し、行き先はどこでも良かった。昨年にちょっと奇妙な出来事があったというセント・フリデスウィーデ教会へと向かう。
[7] モース、教会に到着し、ルースに出会う。昨年の事件の概要、以下の内容を知る。礼拝中、信徒たちが賛美歌を歌っている間にハリーが刺殺される。集まった献金を彼が数えている最中の犯行と警察は見做す。死体のそばには献金皿もカネもなかった。凶器は研ぎ澄まされた刃を持つ十字架型のナイフ。死体の胃からは致死量のモルヒネが検出される。
[8] モース、事件当時の新聞の切り抜きを読む。ハリーの死の翌月、ロースンは教会の塔から転落死。
[9] ルース、妻子ある男から誘いを受けるが気が乗らない。彼女はごく最近に別の人物と関係を持っている。
[10] モース、転落直後のロースンを目撃したウォルシュ=アトキンズ夫人の視力は甚だ心許ないことに気づく。
[11] モース、礼拝に参加し、事件の様子を想像する。
[12] モース、アリスに会う。ルースとハリーとの関係を示唆される。
[13] モース、当時に事件を担当したベル警部と会う。ベルはロースンがハリーを殺害し、自殺したと見ている。ロースンは自身の死の少し前に3万ポンド以上の預金を引き出した。ロースンは数週間前にハリーに250ポンドの小切手を振り出した。ロースンの死体はウォルシュ=アトキンズ夫人のほかにモリスも確認している。
[14] ハリーは競馬にカネを注ぎ込んでいた。
[15] モースとルイス、塔に登り、正体不明の死体を発見。
[16] モリスやブレンダは事件の後に何処かへと移ってしまった。
[17] モリスは勤務先の学校にも告げずに突然に姿を消していた。
[18] ロースンよりも弟のフィリップのほうが高い能力を持っていたが、真面目で勤勉なロースンに対してフィリップは怠惰で忍耐力に欠けていた。ロースンはオックスフォードの受験に失敗したが、見込みがあったため来年の受験を目指して留年することになった。ところが彼は受験の少し前に学校を辞め、受験しなかった。当時の校長は詳しい事情を語ろうとしない。
[19] 牧師館にときどき泊まる、“スワンポール”という名のロースンの縁者がいた。
[20] 塔にあった死体の正体は未だに不明。
[21] 看護婦寮の自室にて、ブレンダの死体が発見される。彼女のバッグから“ポール”という人物からの手紙が見つかる。その手紙の中でその人物は、いずれ一緒になれる、この手紙はすぐに焼き捨てるようになどと彼女に伝えている。
[22] 未だ正体不明の死体の特徴は、モリスに当て嵌まる。“スワンポール”を綴り換えると、“P・E・ロースン”になる。
[23] モース、教会の鍵を入手する。鍵は4組あり、色々な用事で使用されている。
[24] モース、転落死した人物がロースンであることについて疑っている。
[25] ルース、男と会っている。
[26] 十年間は誰も入っていないはずの地下納骨堂に何者かが侵入していた形跡。入り口の梯子が破損している。コークスの山に隠された少年の死体を発見。
[27] モース、ブレンダの死を知る。
[28] ロースンはいつも眼鏡を掛けていた。転落死体は上衣のポケットに眼鏡を入れていた。モース、それは自殺者によくある行動だが、殺害者が偽装として通常思いつくアイデアではないと、ロースン自殺説に傾く。
[29] モース、ロースンには牧師補はいたのだろうかと疑問を持つ。
[30] ブレンダの手帳には、“SF”や“P”という記号が頻繁に記されている。“SF”はセント・フリデスウィーデ教会であることはほぼ間違いない。彼女は夫・ハリーを教会まで車で送っていた。“P”が記されているのはすべて水曜日。ポール・モリス? ピーター・モリス? あるいはフィリップ・ロースン? ハリーが殺害された9月26日には“SF”も“P”もなく、空欄だった。
[31] ミークルジョン、ロースンの同性愛の噂を何度か聞いたことを認める。
[32] モース、教会の記録簿を調べる。「9月26日、月曜日。聖アウグスティヌスの回心の祝日。荘厳ミサ。13人。ライオネル・ロースン」 ロースンの字できちんと書かれている。ミークルジョンは聖アウグスティヌスの回心について知らず、その日を祝ったことはない。ウォルシュ=アトキンズ夫人はハリー殺害の日の礼拝には出席していない。彼女は行事表を見忘れてしまったのだろうと思っている。モース、行事表を検める。そこには当の礼拝の予定は一切書かれていなかった。
[33] モース、ハリー殺害事件の犯人逮捕は間近で、もう一人の重要証人の存在を示す記事を新聞に掲載させる。
[34] モース、教会にてルースを密かに監視。もう一人の男が現れ、ルースに話し掛ける。
[35] ルース、男を殺人犯として追及する。男はルースの首にネクタイを巻き付け、絞め上げようとする。モース、それを阻止する。
[36] 男とモースは塔を上る。格闘が始まる。
[37] 男は死んだ。
[ルツ記 38-40] ルースの供述。
[黙示録 41] モースの推理。
[42] モースの証言。
[43] ルース、有罪となる。ルースの家にあった本が寄付され、売られ、たまたま“ピーター・モリス”という名の少年の手に渡る。
[44] モース、ルースと会う。