モース警部シリーズの長編第5作。自殺したアン・スコットの家の扉には鍵が掛かっていなかった。彼女の死の動機の謎。彼女の死後にその近所で殺人。恐喝絡み? モースが最も怪しむ人物には鉄壁のアリバイ。[???]
アン・スコット:個人教師
マードック夫人:未亡人
マイケル:マードック夫人の息子
エドワード(テッド):同
チャールズ・リチャーズ:出版社の経営者
コンラッド・リチャーズ:チャールズの弟
シーリア・リチャーズ:チャールズの妻
ジェニファー・ヒルズ:チャールズの愛人
ジョージ・ジャクスン:キャナル・リーチの住人
パービス夫人:同
グライムズ:錠前屋
ビーバーズ夫人:郵便局の事務員
グエンドラ・ブリッグズ:ブリッジ・クラブの経営者
キャサリン・エッジリー:ブリッジ・クラブの会員
ジョン・ウェスタビー:アン・スコットのかつての恋人, 故人
マックス:警察医
ベル:主任警部
ウォルターズ:刑事
ルイス:部長刑事
モース:主任警部
詩についての講演を聞くためにジェリコ街を訪れたモース警部。以前に一度会い、好意を抱いたアン・スコットがこの近所に住んでいることを知っていた彼は、彼女の家を訪問した。2階の明かりが点いていた。
モースは彼女の家の扉をノックした。しかし返事はない。ノブに手を掛けてみると扉が開いた。彼女に呼び掛けてみる。やはり返事はなかった。渋々彼女の家に背を向けた彼は、その正面の家の2階の窓の中のカーテンがわずかに揺れたような気がした。諦めの悪い彼は彼女の家のほうにもう一度目をやった。2階の明かりは消えていた。
講演は素晴らしいものだった。その後に他の出席者たちと会話を楽しんでいたモースだが、近所で何か事件があったことを聞くと、すぐにそちらへと向かった。事件現場はアン・スコットの家だった。彼女が首吊り自殺したというのである。
おそらく講演の前にモースがスコットの家を訪れたときには、彼女は既に死体となっていたのだろう。彼女の家を(多少なりとも下心を持って)訪問していたことを言い出しづらいモースは、それを同僚に隠したまま、独自に捜査を始める。しかしそれは結局バレてしまい、そして今度は彼女の家の隣家で殺人事件が発生する。
モースはその一報をまたもや講演後の会合の席で知った。しかし今回の件については、彼には既に犯人の目星まで付いていたのだ。ところが被害者の死亡推定時刻を知り、彼は愕然とする。その時間帯には彼の容疑者はちょうど講演の最中であり、それをモース自身が見ていたからである。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
二人の容疑者のどちらかを犯人とするにはそれぞれ障害があり、モースを悩ます。現実には犯人のかなりの幸運が求められそうな、ゲーム的なトリックが用いられている。本作ではそのトリックの成立自体にモースの相棒・ルイス刑事の存在が大きな意味を持っている。真相を意識して読むと、フェア・プレイを意識した作者の苦労の跡がその記述に見て取れるw
ゲーム的であるという要素の一つが登場人物の性格付け。元々犯人がこのトリックを用いる発端はその性格ゆえなのだが、裏を返せばそのトリックを作中で用いるために登場人物の性格がそのように設定されているのだ。それにしてもこれをバレずに済ませようとは、なかなか大胆な犯人だ。(当初は殺す気まではなかったからこそだろうか)
アン・スコットの自殺にはオイディプスの神話がモチーフとして使われているが、これはモースが言う通りのまったくの偶然であり、あっさりと片付けられる。彼女の精神状態に影響を及ぼした可能性は否定できないが、作品の本筋には特に影響はない。こういうところを掘り下げて、話を膨らませたりはしないのも、作中の要素をパズルのピースのようにドライに扱う作者、コリン・デクスターならではの作風なのだろう。これがもし横溝正史だったら、ドロドロの愛憎渦巻く物語になっていただろうw
今回のモースは登場人物とあまり好い仲にならない。気になる相手のアン・スコットはすぐに死んでしまう。
[プロローグ] モース警部、アン・スコットと知り合う。
[第一部 1] 10月3日(水)、モース、講演を聞くためにジェリコ地区へと向かう。午後3時25分、スコットの自宅が近いので、ついでに寄ってみる。通りには駐車禁止違反カードが差し込まれたライト・ブルーのロールスロイスが停車してる。スコットの家である9号棟の2階の明かりが点いている。扉をノックするが応答なし。施錠されていなかったので扉を開けて呼び掛けるが返事はない。2階への階段の下に羊毛付きの薄茶色の革のジャケットが畳まれて置かれている。諦めて引き返すと、正面の10号棟の2階の窓のカーテンがわずかに揺れた気がする。もう9号棟のほうへ一度振り返り、その窓の明かりが消えていることに気づく。
[2] 講演後、会員たちと会話していたモース、近所で事件発生との報を聞き、現場に駆け付ける。スコットが自宅の台所で首を吊って死んでいる。彼女は妊娠していた。警官は匿名の通報によりここを訪れ、死体を発見した。家の扉は施錠されていなかった。扉の内側には郵便受けから投げ込まれたらしきこの家の鍵が落ちていた。モースが以前に見た、男用の黒い洋傘はなくなっている。モース、10号棟の前に置かれた自転車の魚の匂いに気づく。街をぶらつき電話ボックスに入る。設置された電話帳に魚の匂いが付いている。
[3] スコットが自殺する際に蹴り飛ばしたはずの踏み台代わりの椅子は、ぶら下がった彼女の足から1.7メートルほど離れた辺りにきちんと立っていた。
[4] スコットが死体となる日の朝、彼女の教え子のエドワードは彼女からの切手のない手紙を読んでちょっと失望した。「親愛なるエドワード。申し訳ありませんが、今日はいつものレッスンができません。アン (スコット)」
[5] ベル警部、スコットの部屋の卓上日記に注目。「10月2日(火)、午後8時、サマータウン・ブリッジ・クラブ」「10月3日(水)、E・M、2・30」 スコットは若い頃にジョン・ウェスタビーの子を身籠り、二人でどこかへ去り、3ヶ月半後に彼女は彼と別れ、帰って来た。腹の子がどうなったのかは不明。相手の男は今から一年ほど前に酒酔い運転の末に自動車同士の衝突事故で死亡。
[6] ウォルターズ刑事、スコットの隣家、7号棟の住人・パービス夫人を尋問。相手の落ち着かない様子を感じる。次に錠前屋から話を聞き、10号棟の住人・ジャクスンがスコットの家の合鍵を持っていたことを知る。ジャクスンは彼女の家の仕事を片付けた後、鍵を郵便受けから返したという。ジャクスンはモース警部が9号棟を初訪問するのを目撃していた。
[7] ウォルターズ刑事の推理。スコットの自死後、鍵を持っているジャクスンが彼女の家の扉を解錠して中に入る。台所の扉を開け、倒れた椅子に気づいてそれを起こし、次の瞬間に彼女の死体を発見。その場で通報しなかったのは、彼がつい出来心で何か金目のものを盗んだから。
[8] 土曜日の朝、チャールズ、コンラッドに電話。浮気を疑う妻を誤魔化すため、アリバイ工作を依頼する。スコットの卓上日記にあった「E・M」とはモース警部のことではないかと疑う。
[9] 検死医の見解では、スコットは自殺。
[第二部 10] 10月13日(土)、モース、錠前屋を買収し、9号棟の合鍵を入手。
[11] 10月13日(土)朝、チャールズ・リチャーズ、彼とスコットとの関係についての恐喝の手紙を受け取る。
[12] モース、密かに9号棟に侵入し、内部を探る。その帰り道でウォルターズ刑事に捕まる。
[13] モース、スコットの死体が発見される前に彼女の家を訪問していたことなどをウォルターズ刑事に打ち明ける。
[14] スコットはその死の前日、ブリッジ・クラブの会合の最中にエドワードへの手紙を書いた。頼まれてエッジリーはそれを届けた。
[15] 10月16日(火)。朝、チャールズ、恐喝者からの電話を受ける。マードック夫人、薬物使用により入院した息子・マイケルが自ら目を突き、失明の可能性が高いことを知らされる。夜、チャールズ、自身の講演の会場入りを遅らせることを主催者に通知。
[16] モース、エドワードがスコットから手紙を受け取ったことなど、彼女に関することを聞き出す。
[17] ジャクスン、恐喝したカネを入手する。そこから自宅に戻までの彼を誰かが見ている。
[18] 10月19日(金)。チャールズ・リチャーズの講演会にモースも出席している。リチャーズは8時の6分前に到着。彼とモースとは初対面。リチャーズは10時に会場を後にした。まだそこに残り、協会の会長らと会話していたモース、近所での事件発生を知り、現場へと向かう。ジャクスンが自宅にて殴られて死んでいる。9時15分に匿名の通報があった。ジャクスンは8時5分に酒場へ行き、スロットマシンで遊んで、8時20分に店を後にした。モースはチャールズ・リチャーズによる7時30分前後の犯行と考えていたが、8時20分以降の犯行となると、その時間帯の講演を目撃していたモース自身がアリバイの証人となってしまう。
[19] チャールズ、スコットがかつて彼の愛人であったことを認める。
[20] スコットの寝室にはカーテンがなく、正面の家の窓から中が丸見え。
[21] スコットも出席していたブリッジ・クラブの会合の際、誕生日についての話題が出た。
[第三部 22] モース、駐車禁止違反調査によって、チャールズ・リチャーズのロールスロイスがスコット宅付近に停めてあったことを突き止める。10月5日にオックスフォード・アベニュー216番地のC・リチャーズ名義の口座から罰金が払い込まれている。
[23] モース、チャールズ・リチャーズの社長室を訪問。停車していたロールスロイスについて追求されたリチャーズはスコット宅を訪問したことを認める。さらにモースが追求すると、チャールズの妻・シーリア・リチャーズが現れ、スコット宅を訪問したのはチャールズではなく自分だと告げる。
[24] シーリアによると、スコットからチャールズ宛の手紙を読み、浮気を確信した彼女は(鍵が開いていた)スコット宅に入り、そこにあったチャールズからスコット宛の手紙を見つけた。モースが訪問した際に家の中に潜んでいたのはシーリアで、彼が去った後に彼女もすぐに家を出た。死体には気づかなかったという。駐車違反の罰金を支払った“C・リチャーズ”とは“チャールズ・リチャーズ”ではなく、“シーリア・リチャーズ”だと彼女はモースに告げた。
[25] モース、ジャクスンは文盲ではなかったかと推測。
[26] モース、スコット宅の焼けた紙の切れ端が“ジェリコ医療検査所”のレターヘッドの一部と気づく。スコットは10月1日(月)に結果を問い合わせ、検査所は10月2日(火)に妊娠を確認したものを投函した。チャールズの会社が現在の地域に引っ越してきたのは3ヶ月ほど前。スコットの妊娠時期とちょうど重なる。
[27] モースの推理。スコット宅へ入ったジャクスンは彼女からチャールズ・リチャーズ宛の手紙を見つけ、それを元に恐喝を働いた。チャールズから・リチャーズについては講演会のアリバイがあるが、その弟・コンラッドにはそれはない。
[28] ルイス、コンラッド・リチャーズを初訪問。指紋を取る。ジャクソン死亡時のアリバイを訊くが、やはりはっきりしない。チャールズは商用でスペインへと旅立ってしまったという。モース、チャールズの愛人であるジェニファーを訪問したが、彼女はスペインへと旅行中で会えなかった。ルイスが取ってきた指紋は、ジャクスンの寝室に残された正体不明のそれとは一致しなかった。
[29] マードック夫人の嘆き。
[30] モース、チャールズ・リチャーズへの脅迫状はジャクスンが書いたものではないと断言。
[31] パービス夫人、ジャクスンが持ってきた手紙を彼に読んであげたことを認める。全部を読んだわけではなく詳しくは覚えていないが、「愛しいチャールズ」から始まる内容だった。
[32] シーリア・リチャーズの供述書には住所の番地が“261”と記されている。駐車違反の罰金の支払いの書類の番地は“216”となっている。モース、罰金を支払った“C・リチャーズ”とはコンラッド・リチャーズと知る。
[第四部 33] モースの推理。ブリッジ・クラブの会合で養子の話題があった。誕生日の話題があった。マードック夫人の長男・マイケルが養子であることと、彼の誕生日を知ったスコットは、彼こそ自分が昔養子に出した子であると確信する。知らずに実の子と男女の関係を持ち、その間に子を宿してしまったスコットは、堕胎の費用のために昔の愛人・チャールズに金銭援助を求める。しかしその手紙はチャールズの手に渡る前にその妻・シーリアに持ち去られ、返事は来ない。そうとは知らぬスコットは絶望し、己の命を絶った。
[34] マイケルはスコットの子ではないことが判明。
[35] モース、コンラッド宅よりも遥かに立派なチャールズ・リチャーズ宅を訪問。近いうちにルイス刑事立ち会いのもとで供述書を書くように要求。
[36] エドワード、自供。容疑者を逮捕。
[37] モース、容疑者を尋問。
[38] モース、自身のうっかりミスを認める。
[39] モース、自身に宛てられた手紙を見つける。
[エピローグ] ウォルターズ刑事の転職。
アン・スコット:個人教師
マードック夫人:未亡人
マイケル:マードック夫人の息子
エドワード(テッド):同
チャールズ・リチャーズ:出版社の経営者
コンラッド・リチャーズ:チャールズの弟
シーリア・リチャーズ:チャールズの妻
ジェニファー・ヒルズ:チャールズの愛人
ジョージ・ジャクスン:キャナル・リーチの住人
パービス夫人:同
グライムズ:錠前屋
ビーバーズ夫人:郵便局の事務員
グエンドラ・ブリッグズ:ブリッジ・クラブの経営者
キャサリン・エッジリー:ブリッジ・クラブの会員
ジョン・ウェスタビー:アン・スコットのかつての恋人, 故人
マックス:警察医
ベル:主任警部
ウォルターズ:刑事
ルイス:部長刑事
モース:主任警部
詩についての講演を聞くためにジェリコ街を訪れたモース警部。以前に一度会い、好意を抱いたアン・スコットがこの近所に住んでいることを知っていた彼は、彼女の家を訪問した。2階の明かりが点いていた。
モースは彼女の家の扉をノックした。しかし返事はない。ノブに手を掛けてみると扉が開いた。彼女に呼び掛けてみる。やはり返事はなかった。渋々彼女の家に背を向けた彼は、その正面の家の2階の窓の中のカーテンがわずかに揺れたような気がした。諦めの悪い彼は彼女の家のほうにもう一度目をやった。2階の明かりは消えていた。
講演は素晴らしいものだった。その後に他の出席者たちと会話を楽しんでいたモースだが、近所で何か事件があったことを聞くと、すぐにそちらへと向かった。事件現場はアン・スコットの家だった。彼女が首吊り自殺したというのである。
おそらく講演の前にモースがスコットの家を訪れたときには、彼女は既に死体となっていたのだろう。彼女の家を(多少なりとも下心を持って)訪問していたことを言い出しづらいモースは、それを同僚に隠したまま、独自に捜査を始める。しかしそれは結局バレてしまい、そして今度は彼女の家の隣家で殺人事件が発生する。
モースはその一報をまたもや講演後の会合の席で知った。しかし今回の件については、彼には既に犯人の目星まで付いていたのだ。ところが被害者の死亡推定時刻を知り、彼は愕然とする。その時間帯には彼の容疑者はちょうど講演の最中であり、それをモース自身が見ていたからである。
※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。
二人の容疑者のどちらかを犯人とするにはそれぞれ障害があり、モースを悩ます。現実には犯人のかなりの幸運が求められそうな、ゲーム的なトリックが用いられている。本作ではそのトリックの成立自体にモースの相棒・ルイス刑事の存在が大きな意味を持っている。真相を意識して読むと、フェア・プレイを意識した作者の苦労の跡がその記述に見て取れるw
ゲーム的であるという要素の一つが登場人物の性格付け。元々犯人がこのトリックを用いる発端はその性格ゆえなのだが、裏を返せばそのトリックを作中で用いるために登場人物の性格がそのように設定されているのだ。それにしてもこれをバレずに済ませようとは、なかなか大胆な犯人だ。(当初は殺す気まではなかったからこそだろうか)
アン・スコットの自殺にはオイディプスの神話がモチーフとして使われているが、これはモースが言う通りのまったくの偶然であり、あっさりと片付けられる。彼女の精神状態に影響を及ぼした可能性は否定できないが、作品の本筋には特に影響はない。こういうところを掘り下げて、話を膨らませたりはしないのも、作中の要素をパズルのピースのようにドライに扱う作者、コリン・デクスターならではの作風なのだろう。これがもし横溝正史だったら、ドロドロの愛憎渦巻く物語になっていただろうw
今回のモースは登場人物とあまり好い仲にならない。気になる相手のアン・スコットはすぐに死んでしまう。
[プロローグ] モース警部、アン・スコットと知り合う。
[第一部 1] 10月3日(水)、モース、講演を聞くためにジェリコ地区へと向かう。午後3時25分、スコットの自宅が近いので、ついでに寄ってみる。通りには駐車禁止違反カードが差し込まれたライト・ブルーのロールスロイスが停車してる。スコットの家である9号棟の2階の明かりが点いている。扉をノックするが応答なし。施錠されていなかったので扉を開けて呼び掛けるが返事はない。2階への階段の下に羊毛付きの薄茶色の革のジャケットが畳まれて置かれている。諦めて引き返すと、正面の10号棟の2階の窓のカーテンがわずかに揺れた気がする。もう9号棟のほうへ一度振り返り、その窓の明かりが消えていることに気づく。
[2] 講演後、会員たちと会話していたモース、近所で事件発生との報を聞き、現場に駆け付ける。スコットが自宅の台所で首を吊って死んでいる。彼女は妊娠していた。警官は匿名の通報によりここを訪れ、死体を発見した。家の扉は施錠されていなかった。扉の内側には郵便受けから投げ込まれたらしきこの家の鍵が落ちていた。モースが以前に見た、男用の黒い洋傘はなくなっている。モース、10号棟の前に置かれた自転車の魚の匂いに気づく。街をぶらつき電話ボックスに入る。設置された電話帳に魚の匂いが付いている。
[3] スコットが自殺する際に蹴り飛ばしたはずの踏み台代わりの椅子は、ぶら下がった彼女の足から1.7メートルほど離れた辺りにきちんと立っていた。
[4] スコットが死体となる日の朝、彼女の教え子のエドワードは彼女からの切手のない手紙を読んでちょっと失望した。「親愛なるエドワード。申し訳ありませんが、今日はいつものレッスンができません。アン (スコット)」
[5] ベル警部、スコットの部屋の卓上日記に注目。「10月2日(火)、午後8時、サマータウン・ブリッジ・クラブ」「10月3日(水)、E・M、2・30」 スコットは若い頃にジョン・ウェスタビーの子を身籠り、二人でどこかへ去り、3ヶ月半後に彼女は彼と別れ、帰って来た。腹の子がどうなったのかは不明。相手の男は今から一年ほど前に酒酔い運転の末に自動車同士の衝突事故で死亡。
[6] ウォルターズ刑事、スコットの隣家、7号棟の住人・パービス夫人を尋問。相手の落ち着かない様子を感じる。次に錠前屋から話を聞き、10号棟の住人・ジャクスンがスコットの家の合鍵を持っていたことを知る。ジャクスンは彼女の家の仕事を片付けた後、鍵を郵便受けから返したという。ジャクスンはモース警部が9号棟を初訪問するのを目撃していた。
[7] ウォルターズ刑事の推理。スコットの自死後、鍵を持っているジャクスンが彼女の家の扉を解錠して中に入る。台所の扉を開け、倒れた椅子に気づいてそれを起こし、次の瞬間に彼女の死体を発見。その場で通報しなかったのは、彼がつい出来心で何か金目のものを盗んだから。
[8] 土曜日の朝、チャールズ、コンラッドに電話。浮気を疑う妻を誤魔化すため、アリバイ工作を依頼する。スコットの卓上日記にあった「E・M」とはモース警部のことではないかと疑う。
[9] 検死医の見解では、スコットは自殺。
[第二部 10] 10月13日(土)、モース、錠前屋を買収し、9号棟の合鍵を入手。
[11] 10月13日(土)朝、チャールズ・リチャーズ、彼とスコットとの関係についての恐喝の手紙を受け取る。
[12] モース、密かに9号棟に侵入し、内部を探る。その帰り道でウォルターズ刑事に捕まる。
[13] モース、スコットの死体が発見される前に彼女の家を訪問していたことなどをウォルターズ刑事に打ち明ける。
[14] スコットはその死の前日、ブリッジ・クラブの会合の最中にエドワードへの手紙を書いた。頼まれてエッジリーはそれを届けた。
[15] 10月16日(火)。朝、チャールズ、恐喝者からの電話を受ける。マードック夫人、薬物使用により入院した息子・マイケルが自ら目を突き、失明の可能性が高いことを知らされる。夜、チャールズ、自身の講演の会場入りを遅らせることを主催者に通知。
[16] モース、エドワードがスコットから手紙を受け取ったことなど、彼女に関することを聞き出す。
[17] ジャクスン、恐喝したカネを入手する。そこから自宅に戻までの彼を誰かが見ている。
[18] 10月19日(金)。チャールズ・リチャーズの講演会にモースも出席している。リチャーズは8時の6分前に到着。彼とモースとは初対面。リチャーズは10時に会場を後にした。まだそこに残り、協会の会長らと会話していたモース、近所での事件発生を知り、現場へと向かう。ジャクスンが自宅にて殴られて死んでいる。9時15分に匿名の通報があった。ジャクスンは8時5分に酒場へ行き、スロットマシンで遊んで、8時20分に店を後にした。モースはチャールズ・リチャーズによる7時30分前後の犯行と考えていたが、8時20分以降の犯行となると、その時間帯の講演を目撃していたモース自身がアリバイの証人となってしまう。
[19] チャールズ、スコットがかつて彼の愛人であったことを認める。
[20] スコットの寝室にはカーテンがなく、正面の家の窓から中が丸見え。
[21] スコットも出席していたブリッジ・クラブの会合の際、誕生日についての話題が出た。
[第三部 22] モース、駐車禁止違反調査によって、チャールズ・リチャーズのロールスロイスがスコット宅付近に停めてあったことを突き止める。10月5日にオックスフォード・アベニュー216番地のC・リチャーズ名義の口座から罰金が払い込まれている。
[23] モース、チャールズ・リチャーズの社長室を訪問。停車していたロールスロイスについて追求されたリチャーズはスコット宅を訪問したことを認める。さらにモースが追求すると、チャールズの妻・シーリア・リチャーズが現れ、スコット宅を訪問したのはチャールズではなく自分だと告げる。
[24] シーリアによると、スコットからチャールズ宛の手紙を読み、浮気を確信した彼女は(鍵が開いていた)スコット宅に入り、そこにあったチャールズからスコット宛の手紙を見つけた。モースが訪問した際に家の中に潜んでいたのはシーリアで、彼が去った後に彼女もすぐに家を出た。死体には気づかなかったという。駐車違反の罰金を支払った“C・リチャーズ”とは“チャールズ・リチャーズ”ではなく、“シーリア・リチャーズ”だと彼女はモースに告げた。
[25] モース、ジャクスンは文盲ではなかったかと推測。
[26] モース、スコット宅の焼けた紙の切れ端が“ジェリコ医療検査所”のレターヘッドの一部と気づく。スコットは10月1日(月)に結果を問い合わせ、検査所は10月2日(火)に妊娠を確認したものを投函した。チャールズの会社が現在の地域に引っ越してきたのは3ヶ月ほど前。スコットの妊娠時期とちょうど重なる。
[27] モースの推理。スコット宅へ入ったジャクスンは彼女からチャールズ・リチャーズ宛の手紙を見つけ、それを元に恐喝を働いた。チャールズから・リチャーズについては講演会のアリバイがあるが、その弟・コンラッドにはそれはない。
[28] ルイス、コンラッド・リチャーズを初訪問。指紋を取る。ジャクソン死亡時のアリバイを訊くが、やはりはっきりしない。チャールズは商用でスペインへと旅立ってしまったという。モース、チャールズの愛人であるジェニファーを訪問したが、彼女はスペインへと旅行中で会えなかった。ルイスが取ってきた指紋は、ジャクスンの寝室に残された正体不明のそれとは一致しなかった。
[29] マードック夫人の嘆き。
[30] モース、チャールズ・リチャーズへの脅迫状はジャクスンが書いたものではないと断言。
[31] パービス夫人、ジャクスンが持ってきた手紙を彼に読んであげたことを認める。全部を読んだわけではなく詳しくは覚えていないが、「愛しいチャールズ」から始まる内容だった。
[32] シーリア・リチャーズの供述書には住所の番地が“261”と記されている。駐車違反の罰金の支払いの書類の番地は“216”となっている。モース、罰金を支払った“C・リチャーズ”とはコンラッド・リチャーズと知る。
[第四部 33] モースの推理。ブリッジ・クラブの会合で養子の話題があった。誕生日の話題があった。マードック夫人の長男・マイケルが養子であることと、彼の誕生日を知ったスコットは、彼こそ自分が昔養子に出した子であると確信する。知らずに実の子と男女の関係を持ち、その間に子を宿してしまったスコットは、堕胎の費用のために昔の愛人・チャールズに金銭援助を求める。しかしその手紙はチャールズの手に渡る前にその妻・シーリアに持ち去られ、返事は来ない。そうとは知らぬスコットは絶望し、己の命を絶った。
[34] マイケルはスコットの子ではないことが判明。
[35] モース、コンラッド宅よりも遥かに立派なチャールズ・リチャーズ宅を訪問。近いうちにルイス刑事立ち会いのもとで供述書を書くように要求。
[36] エドワード、自供。容疑者を逮捕。
[37] モース、容疑者を尋問。
[38] モース、自身のうっかりミスを認める。
[39] モース、自身に宛てられた手紙を見つける。
[エピローグ] ウォルターズ刑事の転職。