モース警部シリーズの長編第4作。礼拝中の殺人事件。牧師の転落死。[???]

モース:主任警部
ルイス:部長刑事
ストレンジ:主任警視
ベル:主任警部
ディクスン:当直の巡査部長代理

ライオネル・ピーター・ロースン:牧師
フィリップ・エドワード・ロースン:ライオネルの弟
エミリー・ウォルシュ=アトキンズ夫人:金持ちの老婦人
ポール・モリス:音楽教師
ピーター:ポールの息子
ハリー・A・ジョーゼフス:教区委員
ブレンダ:ハリーの妻
ルース・ローリンスン:教会の信者
アリス・ローリンスン夫人:ルースの母
キース・ミークルジョン:ロースンの後任の牧師
キャロル・ジョーンズ:ポールの生徒
メイヤー:元校長



セント・フリデスウィーデ教会で礼拝中に教区委員のハリーが殺害されるという事件が発生した。刺殺と見做すのが妥当であったが、彼の胃の中からは致死量に達するモルヒネが検出された。

そしてその翌月、牧師のロースンが教会の塔から転落死した。


何の予定もないまま、モース警部は休暇を迎えた。行き先はどこでも良かった。セント・フリデスウィーデ教会へと向かったのは、たまたまその名を耳にして、前年の事件を思い出したからだった。

教会に到着したモースは、事件について知るルース・ローリンスンとたまたま出会った。興味が抑え切れない彼は本格的に事件を調べ始めた。

モースは、転落した人物は本当にロースンだったのか疑問を抱いた。


※以下すべて反転表示。ネタバレ注意。



前作はなんとか及第点はクリアしていたように僕には思えるが、本作は駄目だった。

関係者の誰もが何らかの思惑を秘めて、曖昧に何かを仄めかす導入部。今一つスタンスが曖昧なまま事件に着手し、捜査を進めるモース警部。捜査の進展についての実感が薄いまま進行していく物語。

何もかもが曖昧模糊としたまま手応えが得られず、それが最後に唐突に急展開する。死体が次々に現れる派手な事件でありながら、印象はどうにも地味。

モースは読者が知っていることの多くを知らず、読者としてはどういう視点で事件に当たったらいいのか、最後まで掴めないのも不満。

前作に続いて、最終的に犯人の自爆によって事件が解決するというのも気になる。今回のモースはその人物を自身の目で確認するまではその正体に気づいていなかった。これじゃ雰囲気だけミステリ風なサスペンス物の三流探偵だよ。モースの推理には最後まで推測で補完した部分が多く、事件解決後、読者に対してはその推理の誤りも示唆される。

深読みすると、事件解決後のエピローグ的な部分は不気味な結論を示唆しているようにも思える。



[歴代史上 1] セント・フリデスウィーデ教会。牧師・ロースン、教区委員・ハリーによる献金窃盗の証拠を掴む。ハリーは一年間の運転免許停止中。
[2] ハリー、妻・ブレンダがモリスと密通していると確信している。
[3] モリス、ブレンダを手に入れるためにハリーの死を願う。同性愛について、息子・ピーターを問い詰める。
[4] モリス、牧師館に侵入する。十字架のような形状の鋭いペーパーナイフを見つける。小さなのみを用いて抽斗を探る。その姿をフィリップに見つかる。
[5] ルース、いつものように教会の清掃。彼女の存在に気づかず、モリスともう一人の男が立ち話している。「モリスさん、俺の兄に話したら、あんたも困るだろう…」 別のある日のモリス、生徒のキャロルを誘う。待つ彼の耳にノックの音。現れたのは彼女ではなくロースン。重要な話があるという。
[歴代志下 6] モース、休暇をギリシャで過ごす計画は頓挫し、行き先はどこでも良かった。昨年にちょっと奇妙な出来事があったというセント・フリデスウィーデ教会へと向かう。
[7] モース、教会に到着し、ルースに出会う。昨年の事件の概要、以下の内容を知る。礼拝中、信徒たちが賛美歌を歌っている間にハリーが刺殺される。集まった献金を彼が数えている最中の犯行と警察は見做す。死体のそばには献金皿もカネもなかった。凶器は研ぎ澄まされた刃を持つ十字架型のナイフ。死体の胃からは致死量のモルヒネが検出される。
[8] モース、事件当時の新聞の切り抜きを読む。ハリーの死の翌月、ロースンは教会の塔から転落死。
[9] ルース、妻子ある男から誘いを受けるが気が乗らない。彼女はごく最近に別の人物と関係を持っている。
[10] モース、転落直後のロースンを目撃したウォルシュ=アトキンズ夫人の視力は甚だ心許ないことに気づく。
[11] モース、礼拝に参加し、事件の様子を想像する。
[12] モース、アリスに会う。ルースとハリーとの関係を示唆される。
[13] モース、当時に事件を担当したベル警部と会う。ベルはロースンがハリーを殺害し、自殺したと見ている。ロースンは自身の死の少し前に3万ポンド以上の預金を引き出した。ロースンは数週間前にハリーに250ポンドの小切手を振り出した。ロースンの死体はウォルシュ=アトキンズ夫人のほかにモリスも確認している。
[14] ハリーは競馬にカネを注ぎ込んでいた。
[15] モースとルイス、塔に登り、正体不明の死体を発見。
[16] モリスやブレンダは事件の後に何処かへと移ってしまった。
[17] モリスは勤務先の学校にも告げずに突然に姿を消していた。
[18] ロースンよりも弟のフィリップのほうが高い能力を持っていたが、真面目で勤勉なロースンに対してフィリップは怠惰で忍耐力に欠けていた。ロースンはオックスフォードの受験に失敗したが、見込みがあったため来年の受験を目指して留年することになった。ところが彼は受験の少し前に学校を辞め、受験しなかった。当時の校長は詳しい事情を語ろうとしない。
[19] 牧師館にときどき泊まる、“スワンポール”という名のロースンの縁者がいた。
[20] 塔にあった死体の正体は未だに不明。
[21] 看護婦寮の自室にて、ブレンダの死体が発見される。彼女のバッグから“ポール”という人物からの手紙が見つかる。その手紙の中でその人物は、いずれ一緒になれる、この手紙はすぐに焼き捨てるようになどと彼女に伝えている。
[22] 未だ正体不明の死体の特徴は、モリスに当て嵌まる。“スワンポール”を綴り換えると、“P・E・ロースン”になる。
[23] モース、教会の鍵を入手する。鍵は4組あり、色々な用事で使用されている。
[24] モース、転落死した人物がロースンであることについて疑っている。
[25] ルース、男と会っている。
[26] 十年間は誰も入っていないはずの地下納骨堂に何者かが侵入していた形跡。入り口の梯子が破損している。コークスの山に隠された少年の死体を発見。
[27] モース、ブレンダの死を知る。
[28] ロースンはいつも眼鏡を掛けていた。転落死体は上衣のポケットに眼鏡を入れていた。モース、それは自殺者によくある行動だが、殺害者が偽装として通常思いつくアイデアではないと、ロースン自殺説に傾く。
[29] モース、ロースンには牧師補はいたのだろうかと疑問を持つ。
[30] ブレンダの手帳には、“SF”や“P”という記号が頻繁に記されている。“SF”はセント・フリデスウィーデ教会であることはほぼ間違いない。彼女は夫・ハリーを教会まで車で送っていた。“P”が記されているのはすべて水曜日。ポール・モリス? ピーター・モリス? あるいはフィリップ・ロースン? ハリーが殺害された9月26日には“SF”も“P”もなく、空欄だった。
[31] ミークルジョン、ロースンの同性愛の噂を何度か聞いたことを認める。
[32] モース、教会の記録簿を調べる。「9月26日、月曜日。聖アウグスティヌスの回心の祝日。荘厳ミサ。13人。ライオネル・ロースン」 ロースンの字できちんと書かれている。ミークルジョンは聖アウグスティヌスの回心について知らず、その日を祝ったことはない。ウォルシュ=アトキンズ夫人はハリー殺害の日の礼拝には出席していない。彼女は行事表を見忘れてしまったのだろうと思っている。モース、行事表を検める。そこには当の礼拝の予定は一切書かれていなかった。
[33] モース、ハリー殺害事件の犯人逮捕は間近で、もう一人の重要証人の存在を示す記事を新聞に掲載させる。
[34] モース、教会にてルースを密かに監視。もう一人の男が現れ、ルースに話し掛ける。
[35] ルース、男を殺人犯として追及する。男はルースの首にネクタイを巻き付け、絞め上げようとする。モース、それを阻止する。
[36] 男とモースは塔を上る。格闘が始まる。
[37] 男は死んだ。
[ルツ記 38-40] ルースの供述。
[黙示録 41] モースの推理。
[42] モースの証言。
[43] ルース、有罪となる。ルースの家にあった本が寄付され、売られ、たまたま“ピーター・モリス”という名の少年の手に渡る。
[44] モース、ルースと会う。