開運童子のブログ -98ページ目

雨のあとに虹 その68

「それでいつからはじめるの?」

都心の夕暮れの街角にある喫茶店の片隅で育子は翔太に言った。

「年が明けて落着いてからだね。」

翔太が言った。

「具体的には決まった事はあるの?」

育子は言った。

「まだ考えていないよ。」

翔太は言った。

「それは頼りないですね。」

育子が言うと

「全員揃ってから考えるよ。」

翔太は言った。

「本当にうまくいくの?」

育子は言った。

「今の時点では何と言えなくてね。」

翔太は言った。

「高村さんにばれないようにするのは難しいよ。」

育子が言うと翔太は

「久美子さんにも言ってないからね。」

と言った。

「言わないとダメじゃない。」

育子は半分がっかりして言った。

「付合わせてすまないね。」

俊之は言った。早起きをして俊之は久美子と待ち合わせた。都心から郊外へ向かう電車がホームに入って来たが乗客は少なかった。

「これから何処にくの?」

電車が走り出したところで久美子は言った。久美子は期待半分で不安半分の状態で言った。

「誰でも楽しい今日のイブをが楽しく過ごせるとは限らないからね。」

俊之は言った。

「そうですね。」

久美子は言うと

「そんな恵まれない施設の子供たちにクリスマスパーティをしようという企画に協力したくてね。」

俊之は言った。俊之の言葉に久美子は感心していた。俊之にそんな一面があったとは久美子にとってひとつ発見をしたのである。久美子は俊之の目を見て

「その施設は遠いのですか?」

と言った。

「これから1時間くらいのところだよ。」

俊之は言った。電車は静かに都心ビルの中を走っていた。

「おしゃれな店じゃないですか?」

育子は言った。育子はイブの都心を翔太と歩いていて翔太に進められるままにイタリアンレストランに入ったのだ。

「こう見えても僕はいろいろと情報が豊富だからね。」

翔太は悪びれずに言った。

「そんな事を言って!」

育子が言うと

「どんな情報でも早く入手できるよ。」

翔太は言った。

「この店は高くないですか?」

育子が言うと

「大丈夫だよ。」

翔太は言った。

「無理しなくていいからね。」

育子は言った。

「そのくらいは何とでもなるから大丈夫だよ。」

翔太は言った。

「悪いからこれでいいわよ。」

育子が言った。育子が示した安い料理を無視して翔太は高い料理示した。

「これをふたつください。」

翔太は元気よく言った。

「大丈夫なの?」

育子が言うと

「任せてよ。」

翔太は言った。少し無理をしているのは育子には解っていた。

雨のあとに虹 その67

「春香さんのご帰国便は決まりましたか?」

翔太は繁華街の雑踏で携帯の相手である春香に言った。

「1月1日の7時に成田着の便に決まったわ。」

春香は言った。

「その時にお出迎えできないですけど。」

翔太は言った。

「それは構わないわよ。」

春香が言った。

「おそらく高村さんもびっくりしますよ。」

翔太は言った。

「これは急ぎませんがお願いがあります。」

翔太は言った。

「お願いって?」

春香が言うと

「高村さんの事ですよ。」

翔太が言った。クリスマスを控えた年末の忙しさに翔太の声はかき消されていた。

「さすが育子さんだ。」

俊之は言った。

「このレース当たったの?」

久美子は言った。

「大当たりだよ。」

俊之は言った。最終レースが終わって場内の人たちは帰って行くところである。育子の霊感我が的中して俊之も久美子も1万円が20万円になっていた。ふたりあわせれば充分に1ヶ月の生活費分が軽く儲かったのである。

「いつもこんなに儲かるわけじゃないからね。」

俊之は言った。

「私もそう思いました。」

久美子が言うと

「ギャンブルは水物だからね。」

俊之は言った。

「今はどうしてもお金が欲しかったので競馬をしてしまいました。」

久美子は言ったがそれ以上は口をつぐんでいた。

「久美ちゃんに何か事情があるのはすぐに解ったよ。」

俊之が言うと

「俊さんにも解りましたか?」

と久美子は言った。

「良かったら僕に話してくれないか?」

俊之は言った。

「それでお金が必要だったわけだね。」

俊之は言った。

「はい。」

と久美子は言った。久美子の話を聞き終えた時には時間が経っていた。レストランは混雑しているが意外と落着いて話ができるのは幸運だった。

「どのような理由があっても新しい生命を大事しないのはいけないね。」

俊之は言った。俊之自身が今ここで生きている事は奇跡に近いのである。本来ならば中絶されるべき運命だった事を考えると俊之にはとても他人事ではなかったのである。

「純子はその彼と別れているからとても育てられる状態じゃないみたいです。」

久美子は言った。久美子なりに考えて協力しているのは俊之にも容易に理解ができた。

「僕に少し時間をくれるかい?」

俊之は言った。

「時間ですか?」

久美子が言うと

「3日間でいいよ。」

俊之久美子の目を見て言った。

「はい。」

久美子は短く言った
「競馬はそんなに儲からないけど楽しめたでしょ?」

俊之は言った。

「一所懸命に走っている馬に涙が出ました。」

久美子は言った。

「久美ちゃんも競馬を冷静に見ているね。」

俊之は言った。

「競馬でおかしくなった人が多いと聞いていますから少し心配でしたよ。」

久美子は言った。

「これはあくまでゲームだと思った方がいいよ。」

俊之は諭すように言った。久美子も安心して

「そうですね。」

久美子は言った。

「それに育子さんに感謝しないとね。」

俊之が言うと

「育子さんの予想がなければ的中は難しかったですね。」

久美子は言った。

「そうだね。」

俊之は言った。

「ところで明日はイブですね。」

久美子は言った。

「久美ちゃんは何か予定はあるかい?」

俊之は言った。

「それが何もない入っていないです。」

久美子が言うと

「たまには変わった過ごし方をしてみない?」

俊之は言った。

「変わった過ごし方ですか?」

久美子は言った。

「そうだよ。」

俊之は微笑んで言った。

雨のあとに虹 その66

俊之は朝早くに目が覚めていた。今日は久美子と競馬に行く約束である。ところが運が悪い事に年末のグランプリレースの開催日であるために競馬場は混雑していた。仕方なくいつもの場外に行こうと考えていた。俊之は駅で久美子と待ち合わせていた。改札口から駅の中を見ていると人ごみの中に久美子の姿が見つける事ができた。俊之は軽く右手を上げた。それを見て久美子は

「遅れてすみません。」

と言った。

「僕も今来たばかりだよ。」

俊之が言うとすぐに携帯に着信が入った。育子からの霊感情報だった。

「今日の中山はメインの9Rが1と5と12の三つ巴で阪神のメイン11Rは7と12と16の三つ巴です。」

とメールに書かれていた。

俊之は

「いつもありがとう。」

と返信した。すぐに育子からメールがあり

「今年最後のレースだからしっかり取りましょう。」

と書いてあった。俊之は

「お互いに優秀の美を飾りましょう。」

と返信した。

「今日はついているよ。」

と言った。久美子は意味が解らずに

「そうですか。」

と言うだけだった。

「運を天に任せて気楽に勝負しよう。」

俊之は言った。

「運を天に任せるって?」

久美子が言うと

「すべて育子さんの言うとおりに買ってみるつもりだよ。」

俊之は言った。競馬を全く知らない久美子は

「すべて俊さんに任せます。

と言った。

「気楽に勝負してみようよ。」

俊之は言った。

「あとで買い方を教えてください。」

久美子はいって俊之を見た。

「今日は競馬の雰囲気だけつかむようにね。」

俊之が言うと久美子は

「はい。」

と素直に言った。場外売り場はゆっくり歩いても駅からはそんなに遠くない所にあった。ふたりが歩いて場外売場の入口に来ると

「やはり混雑しているね。」

俊之は言った。

「凄い人だかりですね。」

久美子も言った。その時である。

「高村ちゃん!」

前田が大きめの声で言った。

「おはようございます。」

俊之が言った。

「今年最後のレースだからきっちり当て帰ってよ。」

前田が声をかけてきた。前田は横にいる久美子を見て。

「こんにちは。」

と言った。久美子も

「こんにちは。」

と前田に言った

「高村ちゃん。」

前が言うと

「はい。」

俊之が言って前田を見た

「こっちへ。」

前田は言って人ごみを避けて俊之と久美子を別の入口に案内してくれた。

「ここは?」

俊之は言った。

「俺と高村ちゃんの仲だからね。」

前田は言った。

「そんな事をして大丈夫ですか?」

俊之が言うと

「今日だけは特別だよ。」

と前田はいたずらっぽく笑いながら言った。

「すみません。」

俊之は言った。本当はいけない事なのだが前田は俊之のために特別な計らいをして指定席に案内したのだ。

「お嬢さん。」

久美子を見て前田は言った。

「はい。」

久美子は素直な声で言うと

「今日はグランプリレースだからゆっくり寛いでレースを楽しんでね。」

前田は優しく言った。

「ありがとうございます。」

久美子は言った。グランプリレースと言っても意味が解からない久美子だったが前田の優しさは久美子に伝わってきた。久美子は無理をして席を取ってくれた前田に感謝していたのだった。

「無理をしていただいてすみません。」

俊之は前田に言った。俊之の顔の広さにも久美子は驚いていたのだった。前田は売店で

「こちらへ珈琲と焼きそばをふたつずつね。」

と言った。

「そんなに気を使わないでください。」

俊之は言ったが

「気にしない!」

前田は言った。

「でもそんなにしていただいて悪いですよ。」

久美子も言った。前田は俊之の傍に来て

「ここは彼女にかっこ良いところを見せないとね。」

と俊之に耳打ちをした。