雨のあとに虹 その74
俊之と久美子が待合わせのレストランに入ってきた。久美子を見つけた純子が手を上げた。久美子は純子に気付き俊之に
「あそこです。」
と言った。俊之は
「うん。」
と言った。ふたりは純子の席に座った。
「早かったのね。」
久美子は言った
「今来たばかりだよ。」
純子は言いながら俊之を見た。
「こちらは私の友達の椿純子さん。」
久美子は言った純子は紹介されて
「椿純子です。」
と緊張気味に言った。
「こちらは高村俊之さん。」
久美子は言った。俊之は紹介されて
「高村俊之です。」
と言った。純子は久美子に
「久美子の嘘つき!」
と小声で言った。
「何が?」
久美子小声で言った。
「高村さんは46歳の汚くて臭い中年だって言わなかった?」
純子が言うと
「46歳とは言ったけど汚くて臭いは純子の早とちりでしょ?」
久美子が言った。
「高村さんは30代の後半に見えてかっこいいじゃない。」
と純子が言った声が俊之にも声が聞こえてきた。
「僕の事で何か?」
俊之が言うと久美子は顔が赤くなって下を向いた。純子は
「ちょっとこちらの話をしていました。」
と言った。俊之は
「そうですか。」
と言って純子を見た。冗談のような久美子と純子の会話が俊之にも話がしやすい雰囲気になっていた。
雨のあとに虹 その73
「田崎さん。」
俊之は言った。
「はい。」
田崎は言った。
「良い事も悪い事もあるのが人生だからあまり深く考えない方がいいよ。」
俊之は言った。俊之は崎が女性を意識し過ぎているのを気の毒に思っていた。女性は男が追いかけたら逃げるものである。本当は追いかけられればいいのだがそうはいかない。少なくとも自然に接する事を心がけないとうまくいくものもうまくいかないのである。
「解かっていますですけどね。」
田崎は言った。
「焦ってもしょうがないよ。」
俊之は言った。
「僕はもう28歳ですよ。」
田崎は言った。
「年齢はあまり関係ないよ。」
俊之は言った。
「それも解ってはいるつもりですけどね。」
田崎は言った。
「女性が引いてしまったら取り返しがつかないからね。」
俊之は言った。俊之が言い終わった時に俊之の携帯がなった。田崎が
「どうぞ!」
と言った。
「失礼するよ。」
俊之は言った。電話の相手は久美子だった。
「純子の予定ですけど。」
久美子は言った。
「今日は無理かな?」
俊之は言った。
「時間がとれるそうです。」
久美子は言った。
「それはよかった。」
俊之は言った。
「先に私たちだけ待合わせをしませんか?」
久美子が言った。
「いいよ。」
俊之は言った。
「仕事はいつもの時間に終わりますから駅でどうですか?」
久美子が言うと
「僕が着いたら久美ちゃんに電話するよ。」
俊之は言った。言い終わって電話を切った俊之に
「デートですか?」
田崎は言った。
「田崎さんもそう思う?」
俊之が言うと
「思いますよ。」
田崎が言うと俊之は
「違うけどね。」
と言った。
「田崎さんも野暮を言ってはダメですよ。」
横でみどりが言った。
「そうかな?」
田崎は言った。
「そうやって根掘り葉掘り聞くから女性に逃げられるのよ。」
みどりは言った。
「いつもきつい事をいうね。」
田崎は言った。
「年末で忙しくて余計な事が出来なかった。」
休憩中のひとみと外の公園に出た榊原は言った。
「忙しいのは解るけど。」
ひとみは言った。
「仕方がないだろう!」
榊原は言った。
「それで高村俊之はどうなの?」
ひとみは言った。
「これを使えよ。」
榊原は言って鞄から取出した紙袋をひとみに渡した。
「一体これは何?」
ひとみが言うと榊原は
「改造モデルガンだ。」
榊原が言ったひとみは驚いて
「そんなに危ないものを!」
と言った。
「高村にあびせてやれ!」
榊原は低い声で言った。その光景を物陰から翔太が見ていたのだった。
「いよいよ行動に出てきたか。」
翔太は言うと素早い身のこなしでガードレールを飛び越えると走り出していた。
雨のあとに虹 その72
「堀川さんは昨日のイブは楽しかった?」
開店前にひとみが言った。
「昼はボランティアで恵まれない子供たちが集まる施設に行きました。」
久美子は言った。
「そうだったの?」
ひとみが言うと
「貴重な体験をして勉強になりましたよ」。
久美子は言ったが俊之と一緒だとは言わなかった。
「堀川さんってそういう活動もしているの?」
ひとみが言うと
「活動と言うほど大げさなものではないですけど。」
久美子は言った。
「えらいわね。」
ひとみは感心して言った。
「友達に誘われただけですよ。」
久美子が言うと
「それはいいお友達ね。」
ひとみは言った。
「はい!」
久美子が言うと
「ボランティアをする人に悪い人はいないって言うわ。」
ひとみは言った。知らないとは言えひとみは俊之の人間性を肯定するという皮肉が訪れた瞬間だった。
「お前の意見を聞かせてくれないか?」
社長室で矢島は俊之に言った。
「新規事業に参入するのは反対しないがあくまで本業の利益の中ですることだよ。」
俊之は言った。
「お前ならそう言うだろうと思った。」
矢島は言った。
「それなら失敗しても本業には影響しないからね。」
俊之は言った。
「無理は禁物だよな。」
矢島が言った。
「細かい段取りなら僕がつけてもいいよ。」
俊之は的確に言った。
「それなら年明けからしっかり頼むぞ。」
矢島が言った。矢島は俊之の手腕を高く評価していて今でも矢島は新規事業に参入する決心は変わらなかった。
「社員のみんなには負担があってはいけないよ。」
俊之は言った。
「解っている。」
矢島は言った。
「負担を負うのはあくまで経営陣だけにしておかないとダメだよ。」
俊之は言った。矢島なら理解してくれると俊之は考えていた。年明けから具体的に動くと宣言した矢島を俊之はきちんとサポートするつもりでいた。
「いらっしゃいませ。」
久美子は言った。榊原は
「珈琲をひとつ。」
と言った。久美子が榊原の顔を見た時にはあまり良い印象を受けなかった。俊之と同世代の男だが健康的な俊之と違って病的な表情をしていた。どこかの商社マンといった雰囲気があるのだが正確の悪さが漂っていた。久美子は注文の珈琲を渡して榊原が席に着くのを見届けたると
「お次のお客様ご注文は何になさいますか?」
と言った。久美子はテキパキと仕事をこなしていった。何人か続けて客が来ると途切れてまた続けてお客が来た。久美子はのうちに仕込みを確認しようとして身体の向きを変えた時にひとみと榊原が何か話をしているのを見た。ひとみの表情はいつになく穏やかではなかった。久美子は榊原の事は何も知らなったのだ。