開運童子のブログ -95ページ目

雨のあとに虹 その77

「大人しくしていろ!」

関口は佐藤を押さえつけて言った。

「君は自分がした事が解かっていないようだね。」

俊之が言うと佐藤は反省の様子はなく反抗的な目で俊之を見た。

「高村さん。」

翔太の声に俊之が振り向くと翔太が久美子と純子を連れて傍に来ていたのだった。佐藤は関口たちに押さえ込まれたままである。

「俺の何が悪い!」

佐藤は言った。

「何だと!」

関口が言った。

「何が新しい生命だよ!」

佐藤は言った。

「もう一度言ってみろ!」

関口が言うと佐藤が

「あんなもの大事に出来るか!」

佐藤が言った。その言葉には温厚な俊之にも怒りが高まってきたのであった。俊之が拳を握り締めた瞬間である。素早い速さで横から佐藤を平手打ちをした音が響いたのだ。

「痛てえ!」

佐藤が言って頬を抑えた。俊之も翔太も関口たちも驚いて佐藤を平手打ちした久美子を見た。

「あなたって最低な男ね。」

久美子は大声で言った。

「何をする!」

佐藤が言うと

「女を馬鹿にしないでよ。」

久美子が大声で一喝した。その時になってやっと救急車のサイレンの音が少しずつ近づいてきたのだった。

 救急車には久美子が同乗した。俊之と翔太は純子を久美子に任せたあとで病院に立寄る事にした。佐藤にはきちんとした話が通じる相手ではないのは明らかだった。これ以上は関わらない方が懸命であると俊之は判断した。

「高村さん。」

タクシーの中で翔太が言った。

「何だい?」

俊之が言った。

「久美子さんがストーカーに悩まされていたのをご存知でしたか?」

翔太が言うと

「それは久美ちゃんから聞いたよ。」

俊之は言った。

「ストーカーの正体は同じ北西大学の2年生の及川友宣という24歳の男です。」

翔太が言った。

「久美ちゃんとは違う大学だね?」

俊之が言うと。

「かってに大学内に入ってストーカー行為を繰り返していたそうです。」

翔太が言った。

「浪人か落第をしているね。」

俊之が言うと

「過保護に育てられた悪い例ですよ。」

翔太は言った。

「その男は過去に何かありそうだね。」

俊之が言うと

「及川の過去を調査してみます。」

翔太が言った。

「うん。」

俊之が言うと

「今ごろ警察で反省していればいいのですがね。」

翔太は言った。

「久美ちゃん。」

俊之に声をかけられて久美子は顔を上げた。目の前に俊之と翔太が立っていた。ここは病院の廊下である。

「俊さん。」

久美子は悲しい声で言った。俊之は久美子の表情で事態を悟って

「純子さんの赤ちゃんはダメだったようだね?」

と言った。久美子は

「残念だけどダメでした。」

言いながら首を横に振った。

「そうだったか。」

俊之が小さく言った。

「それは残念ですね。」

俊之の横で翔太が言った。

「せっかくの生命だったのにね。」

久美子が言うと

「でも純子さんが無事ならよかったですよ。」

翔太が言った。久美子はまた翔太の存在に感謝をしたのだった。

「いつもありがとうございます。」

久美子は言って会釈をした。

「とんでもありません。」

翔太が言った。

「僕も翔ちゃんには感謝をしているよ。」

俊之は言った。

雨のあとに虹 その76

俊之は見かけによらず俊足だった。息を切らさずにマンションの入口にまで走ってきて周囲を見回した。階段の上を見るとしそうに純子がうなっていた。

「動いてはダメだよ。」

俊之は言って純子のそばにより身体をおこした。俊之は医者ではないから詳細は解からないが腹部を強く打っているように見えた。

「しっかりして!」

久美子がやっと追いついて言った。

「勝一さんが!」

純子はそれだけ言うのがやっとのようだ。

「すぐに救急車を呼んでくれないか?」

俊之が言って久美子が

「はい。」

言った。

「階段を一段ずつゆっくり降りるわよ。」

久美子が言うが純子の耳から久美子の声が遠ざかっていった。俊之はとっさに状況を理解した。どの方向へ逃げたのか周囲を見た。その時に

「お前は自分がした事を理解しているのか?」

と翔太の大きな声がした。

「誤れ!」

と関口の声も聞こえた。俊之がその方向を見ると佐藤勝一が関口たち4人に押さえ込まれていた。その後ろに翔太が立っていて

「到着が遅れてすみません。」

と言った。

「翔ちゃん。」

俊之が言うと翔太は

「もう少し僕が早く来ていれば防げていました。」

と言った。

「翔ちゃんのせいじゃないよ。」

俊之は言った。

「この男は最低ですよ。」

翔太は言った。

「それより久美ちゃんを手伝ってくれないか?」

俊之は言った。

「はい!」

と言うと翔太は頷いて美子の方へ走って行った・

「君が純子さんを階段から突き落としたのだね。」

俊之は言って佐藤の目を睨みつけた。

「それで榊原は焦っていると言う事か?」

山本は言った。静かなショットバーで山本は沢田と向き合って座っていた。

「はい。」

沢田は言った。

「そんなに焦っている理由は何かね?」

山本が言うと

「高村さんにはどうしても負けたくないと言っています。」

沢田が言うと山本は

「馬鹿な事を言うものじゃない。」

と言った。

「馬鹿な事ですか?」

沢田が言うと

「高村くんと榊原では最初から勝負にならない。」

山本は言った。

「私も今になってやっと気付きました。」 

沢田が言った。

「それに入江麗子くんの件は私も気になっているよ。」

山本は言った。

「その件は私も気になっています。」

沢田が言った。

「高村くんのためにも解決しなければならないね。」

山本が言った。

「はい。」

沢田が言った。

「君も解明に力を尽くしてくれ!」

山本が言った。

「はい!」

沢田が言った。

「ついでに貴志と田所の悪事も頼むぞ。」

山本は言った。

雨のあとに虹 その75

「誰だ。」

矢島は言った。矢島は地元の法人会の会合に出席するために会社を出たところだった。大通りから横道に入ったところで人の気配を感じたのだった。

「失礼します。」

翔太が後ろに立って言った。

「いつかのお前さんか?」

矢島が言うと

「お忙しいところすみません。」

翔太は言った。

「構わないが用件はなんだ。」

矢島は言った。

「矢島さんに高村さんの件で協力いただきたいのです。」

翔太は言った。

「高村のだと?」

矢島は言った

「そうです。」

翔太が言うと

「あいつのためなら何でもするつもりだぞ。」

矢島は言った。

「ありがとうございます。」

翔太は言って微笑んだ。

「男の僕が余計な口をはさんで気を悪くしたかもしれないね。」

俊之は純子に言った。

「いいえ。」

純子は言った。

「余計なお世話だけどね。」

俊之は言った。

「そんな事はありません。」

純子は言った。

「中絶は必ずしも否定しないよ。」

俊之は言った。

「私は生んでも養育は難しい状態です。」

純子が言った。

「できれば生まれてくる生命は世に出してあげたいよ。」

俊之は言った。

「もっとよく考えてみたら?」

久美子が言った。

「中絶は母体に負担もかかるよ。」

俊之は言った。

「はい。」

純子は力なく言うと。

「生むのも生命がけだよね。」

俊之は言った。

「こんな事を親には言えないですよ。」

純子は言った。

「何とか生命だけは助けられないだろうか?」

俊之は言った。

「でも!」

純子は言った。

「僕はそのための協力は惜しまないし施設も知合いを通じて探してみるよ。」

俊之は言った。純子は俊之の熱心な言葉に

「私の事なのに真剣に考えてくれてありがとうございます。」

と言った。この件では遠ざかる友達が多い中で俊之は真剣に考えてくれいる事が純子にとっては嬉しかったのだ。それが純子の正直な気持ちだった。

「純子さんは久美ちゃんの友達だから僕にとっても友達だよ。」

俊之は勤めて明るく言った。

「俊さんと行ったあすなろ会の子供たちのように元気に育ってくれればいいね。」

久美子は純子を励ますように自分の心の中で感じた事を口に出して言った。

 ひとみは部屋へ帰って来た。急いで榊原がくれた物をクローゼットの中に隠した。こんなものは必要ない。と思いながらも受取ってしまった。今は預かっておくがこれを使えば重罪である。榊原が言っている事は嘘ではない。ひとみは確かめたわけではないがそれは確信できた。正直に言えば嘘ではない可能性が高いと思っていた。ところが最近では嘘ではないと思いたい。と心の中が変化してきた。榊原は何を考えているか解からないところがある。本当に高村俊之は榊原が言うような悪人だろうか?いつの間にかひとみも自問自答していた。久美子はひとみに

「俊之は悪い人ではない。」

と言った。久美子は若いけど頭が良く物事の判断が的確である。こういうタイプの人間は性別に関係なく人を見る目を持っている事が多いのだ。考えるほどひとみはどうしたら良いのかがわからなくなって行った。今夜はひとみにとって虚無的な時間が流れているだけだった。

「送っていただいてすみません。」

純子は自分のマンションの近くまで送ってくれた俊之と久美子に言った。

「そんな事は気にしなくていいからね。」

久美子が言って

「歩く時には気をつけて!」

俊之が言った。

「はい。」

純子が言うと久美子も

「ご両親ともよく相談してね。」

と言った。ふたりは純子がマンションの入口に入って行くのを見ていた。純子の姿が消えると

「行こう。」

と俊之が言い久美子も

「はい。」

と言って歩き出した。その時である純子の悲鳴が聞こえたのだ。

「久美ちゃん。」

俊之が言った。

「純子の声です。」

久美子が言うと俊之は走り出した。