開運童子のブログ -97ページ目

雨のあとに虹 その71

都心のビルの谷間にクリスマスのイルミネーションが様々な形を提供している。俊之と久美子はゆっくりと歩きながら周囲を見てクリスマスの雰囲気に浸っていた。急に久美子が俊之の左手に久美子の右手を絡ませてきた。驚いて俊之は久美子を見た。久美子はさらに指を絡ませてきた。俊之は久美子の指先をしっかりと握り締めた。久美子も俊之を見るがすぐに前に視線を移して力強く握り返して。俊之はしっかりと久美子の力を込めた愛を受止めた。風はないがとても寒かった。俊之も久美子も手を握りしめることによりお互いの存在を意識しあっていた。久美子の方から身体を俊之に押付けてくる。ふたりの周囲だけ時間が止まったように静かになていた。その夜も久美子が俊之の部屋に泊まった。ふたりにも聖夜が訪れていのだ。そして再びふたりが結ばれひとつになった事でふたりの絆は確かなものになった。部屋の外は寒いがその寒さをものともしないほどふたりは深く愛を確かめ合っのである。俊之も久美子も自分に嘘はつかなかった。久美子は生まれて初めて歓喜の声を上げていた。俊之はそんな久美子が愛しかった。夜は静かに過ぎてやがて朝が訪れた。うすく太陽の光が射して1日がはじまる。久美子は静かに眼をさました。横には俊之が眠っている。顔を見るとまだ目を覚ましそうにない。

「子供みたいな表情をしている。」

久美子は言った。久美子は俊之を少しずつ意識し始めて結ばれた。今は俊之に対してはっきりと他の男性には感じない何を感じていた。いつの間にか恋をしているのかもしれない。少しずつではあるが俊之は久美子の心の中で大きな存在になっている。俊之は久美子にとっては誰にも変えられない男性になっていた。久美子は俊之が起きないようにそっと身体を起こした。

 俊之は深い眠りからさめた。目を開けて頭が回転を速めていた。久美子が部屋に泊まったのは2度目である。俊之もまた久美子をひとりのかけがえのない女性として意識し始めていた。自分の気持ちに嘘をつきたくはない。つきたくはないが本当に良いのだろうか?以前から俊之は人並みの幸福を求めてはいけないと思っていた。ところが久美子と出会ってその戒めが揺らいできたのだ。天門は仕事運と恋愛運が上がるからチャンスをしっかり掴むようにとアドバイスをくれた。太田は禊が終わったと言ってくれた。麗子は自分を許してくれるだろうか?俊之は気持ちを整理しながらゆっくりと起き上がった。

「おいしい。」

俊之は言った。

「そう言ってもらえて嬉しいです。」

久美子は言った。

「こうして朝食をとるのはいいものだね。」

俊之は言うと

「そういってくれると今度は別のジャンルに挑戦したくなりますよ。」

久美子は嬉しそうに言った。

「久美ちゃんは何を作ってもおいしく作れそうだね。」

俊之は言った。

「そんな事はないですよ。」

久美子は嬉しそうに言った。ベーコンが入ったオムレツにトースト。サラダにソーセージ。果物のデザート。オレンジジュースに珈琲。矢島のように家庭を持っていれば当たり前にとる食事のメニューも俊之にとっては羨ましいことであった。久美子が作ってくれた食事が俊之に安らぎをくれたのであった。

「できれば夕方くらいに純子さんと会えないだろうか?」

俊之が言った。

「純子に都合を聞いてみるね。」

久美子は言った。世の恋人たちがあたり前に迎える朝がふたりにも訪れたのだった。

「おはようございます。」

俊之は言って矢島建設のフロアーに入って来た。すぐに田崎が寄って来て

「昨日のイブどうでしたか?」

と言った。

「彼女と会っていたよ。」

俊之があっさりと言った。

「羨ましいな。」

田崎が言うと

「だったらいいなと思っただけだよ。」

俊之は言った。

「信用して損した。」

田崎がうと俊之は

「ボランティア活動していたよ。」

と言った。

「高村さんも冗談がきついですね。」

田崎が言うのを横に居たみどりが

「本当かもしれないわよ。」

と小声で言った。

「どうしてそう思うの?」

田崎も小声で言うと

「高村さんはもてると思うけどね。」

みどりは言った。

「どうして?」

田崎が言うと

「どこか言葉に出来ない魅力があるわよ。」

みどりが言った。

雨のあとに虹 その70

「ちょっといい?」

未来が言った。

「いいですよ。」

俊之は言って未来の方へ行った。俊之が未来の話をしているのを久美子は見ていた。未来と親しそうに話をする俊之をみて久美子は改めて気付いた事があった。久美子は俊之の家族や生い立ちなどは何も知らないのだ。出会って日にちが経っていないが俊之と久美子は男と女の関係になったのだ。久美子は俊之についてもっと知りたいと思っていた。久美子は俊之に何か不幸な過去でもあるような気がしていた。俊之が純子の中絶を知った瞬間に表情が変わった理由を久美子は知りたかった。その表情は怒りのようでもあり悲しみのようにも見えた。何とも形容できない複雑な表情だったのだ。

「お姉ちゃん。」

女の子が久美子に言った。

「はい。」

久美子は優しく言うと

「これにお姉ちゃんも絵を描いて。」

女の子が言て画用紙とクレヨンを出した。女の子とは久美子を見て微笑んでいるのである。久美子はこの懐こい女の子がかわいく思った。

「イブなのに高村さんも久美子さんもありがとう。」

未来はふたりに言った。

「僕は楽しませてもらいましたよ。」

俊之が言うと久美子も

「私も楽しかったです。」

と言った。

「本当に?」

未来が言うと

「施設の子供たちと触れ合う事が少ないですから。」

久美子は言った。

「高村さんも久美子さんも優しいわね。」

未来は言った。

「久美ちゃんは優しいですよ。」

俊之が言うと

「そうでもないですよ。」

久美子は言った。

「あの子供たちはほとんどが両親の勝手な都合であそこにいる子達ばかりなの。」

未来は強い口調で言った。俊之は未来と出会って2年ほどになるがこのように強い口調で話をする未来を見るのは初めてだった。

 電車に乗って俊之と久美子は席に座った時から心は都心のイルミネーションを待ちわびていた。

「ふたりだけのイブの方が良かっただろうけどね。」

俊之が言うと

「本当に楽しかったです」

久美子は言った。

「それはよかった。」

俊之は言った。

「あの子達はみんな不幸な状態かもしれないけどちゃんと輝いていましたね。」

久美子は言った。

「僕もそう思うよ。」

俊之は言った。

「みんな素直な子供たちでしたね。」

久美子が言うと

「あの子達に何かを教えられたような気がしたよ。」

俊之は窓の外を見て言った。

「俊さんは施設に入るはずだったのですか?」

久美子は言った。久美子は聞いてはいけないと思いながらも聞きたい気持ちを抑えられなかいでいた。

「イブだからその話はやめておこうよ。」

俊之は言った。

「はい。」

と久美子は言うしか返事でが出来なかった。

「近いうちに必ず話すよ。」

俊之は言った。

「それはいつでもいいですよ。」

久美子は言った

「それよりそろそろ日が落ちるからイルミネーションでも見に行こうよ。」

俊之は言った。電車は都心部に近づいて来て夕暮れが夕闇になり夜の帳が降りてきていた。

雨のあとに虹 その69

「高村さん。」

未来は言った。駅の改札を抜けた俊之と久美子を見つけたのだった。

「おはようございます。」

俊之は言った。

「おはようございます。」

久美子も言った。

「クリスマス会に参加してくれる堀川久美子さんです。」

俊之が言う。

「よろしくお願いします。」

久美子は言った。

「僕の仕事仲間の吉田未来さんです。」

俊之が言うと

「今日はよろしくね。」

未来が言った。

3人は施設までの歩きながら打合せをした。準備は他のメンバーがしてくれているので子供たちと触れ合って楽しいイブのひと時を過ごし希望を持たせてあげるのが主旨である。

「イブは夢がないとダメですよね?」

久美子は言った。

「俺が父親だと言うのか?」

佐藤勝一は純子に言われて頭が混乱していた。

「勝一さんしかいないのよ。」

純子が言った。

「そうは言われても俺にはどうする事も出来ないぞ。

佐藤は言った。

「解っている。」

純子は言った。

「結婚はするつもりは無い。」

佐藤が言った。

「私だって同じよ。」

純子は言った。

「俺にどうして欲しい?」

佐藤が言うと

「だから中絶費用を出してよ。」

純子は言った。

「中絶費用だって?」

佐藤は言うと純子は

「ただでは中絶できないでしょう?」

と言った。佐藤は純子に言われて言葉に詰まっていた。

「こちらは高村のおじさんです。」

この施設のあすなろ会の理事長である木暮守雄が言った。

「よろしく!」

俊之は言った。

「こちらは久美子お姉さんだよ。」

木暮が言った。久美子も

「よろしくね。」

と言った。

「みんなで楽しくゲームしながら楽しみましょう。」

木暮は元気よく子供たちに言った。この施設は幼稚園と小学校の低学年の子供だけである。彼らから見ればサンタクロースは夢を運ぶ実在するおじさんである。スタッフの中にはサンタの姿をしている人がいるのは当然だった。

「僕は施設で育っていたかも知れない状態だった。」

俊之は久美子に言った。久美子は

「それどういう事ですか?」

言ったが子供たちの声にかき消されていた。子供たちは久美子の傍で無邪気に遊んでいたのである。