開運童子のブログ -8ページ目

雨のあとに虹・Part2 その67

「明日は予定の飛行機に間に合うようにお願いします。」

田中が運転する社用車の後部座席で陽子が言うと

「僕と久美ちゃんは大丈夫だよ。」

俊之は陽子の横で言った。田中が運転する社用車は渋滞を避けて走っていた。

「わずか一週間とは言え3人で日本を留守にするのは始めてですね。」

助手席で立花は言った。

「今回ははじめて育子さんのメインスポンサーとして試合を見守るからみんなで応援しよう。」

俊之は言った。

「総武は欧米や中近東をはじめアフリカに南米とオセアニアならコネクションがありますが中国に何もありません。」

立花は言った。

「総武も中国にコネクションがあれば他の鉄道会社に遅れを取る事はなかったのにね。」

陽子が言うと

「そのような状態で10日間も五輪を見ていたら僕は社長を失脚させられるかもしれないね。」

俊之は言った。

「内堀が社長に反発をして何か言ってくると思いますが放っておきましょう。」

立花は言が言うと

「僕は五輪とは別に夏休みをとらないといけないらしいね?」

俊之は陽子に言った。

「もちろんです。」

陽子は淡々として言った。

「五輪行きは休暇ではなくて業務ですよ。」

立花は言った。

「そうだったね。」

俊之が言うと

「社長が休まないと秘書や専務が会社を休めないそうですよ。」

田中は笑みを浮かべて言った。

 

「すっかりご無沙汰してごめんなさい。」

平本栄子は歩きながら久美子に言った。すでに日が傾く時刻であるが真夏の都心は気温が高く駅前通りを歩く人たちも疲れたような表情であった。

「春にお店にいらして以来ですね。」

久美子も栄子の横を歩きながら言った。

「あのあとに北京の帝王百貨店に急遽赴任して4ヶ月経ったのでやっと戻って来られたのよ。」

栄子は言った。

「日陰になっているから座りませんか?」

久美子がオープンカフェに置いてあるあるおしゃれなベンチを指差して言うと

「ここならゆっくりお話できるわね。」

栄子は微笑みながら言った。ふたりにベンチに座って足を伸ばした。

「年末に母のプレゼントを買ってからのお付合いですね。」

久美子が言うと

「人の出会いは不思議ですよね?」

栄子は言った。

「私は明日から北京に五輪を見に行くから栄子さんと入れ替えみたいなものですね。」

久美子が言うと

「五輪の施設内は安全だけれど外には危険があるから気をつけてね。」

栄子は言った。

「そんなに危険なのですか?」

久美子が言うと

「テロの危険が大きいという情報が出ていますよ。」

栄子は行った。

「私は京野育子さんがメダルを獲れるように応援するつもりでいます。」

久美子が言うと

「京野育子さんはレベルが高い選手だから金メダルの最短距離にいるわよ。」

栄子は言った。

「私も育子さんなら金メダルが獲れると思います。」

久美子は自分の事のように言った。

「楽しみが増えたわね。」

栄子は嬉しそうに言った。太陽が傾いてきても気温は相変わらず高いままであった。

雨のあとに虹・Part2 その66

「こちらが新しくグループリーダーになった竹内です。」

和泉教授が言うと俊之と敏弘は目を合わせて

「先日は失礼しました。」

俊之が言うと

「こちらこそご無沙汰をしております。」

敏弘は言った。

「あの事件ではご迷惑をおかけしましたね。」

俊之が言うと

「あのあとにグループリーダーになって打合せにも参加させていただいています。」

敏弘は言った。

「詳細は立花から聞いていますよ。」

俊之が言うと

「あの事件があったから僕たちはより親しくなれたと思います。」

立花は言った。

「恐い思いをなさったのも不思議なご縁ですね。」

陽子が言うと

「久美子さんにも恐い思いをさせて心苦しいですよ。」

俊之は言った。

「久美子さんにもよろしくお伝えください。」

敏弘が言うと

「もうひとりの久美子さんにもよろしくお伝えください。」

俊之は言った。

「何だかドラマみたいですね?」

立花が言うと

「私もドラマに登場したかったよ。」

和泉教授は微笑んで言った。

「俺も出たかったよ。」

増田は残念そうに言った。

 

「国分さんはいつ北京に来てくれますか?」

三田は携帯電話の向こうで言うと

「一両日中に行くよ。」

国分は言った。

「僕は試合があって団体行動なので選手村から外に出るのは限られた場合だけです。」

三田が言うと

「俺も会社に睨まれて自由が利かなくなったよ。」

国分は言った。

「北京に来られなくなる可能性はありますか?」

三田が言うと

「必ず北京に行くよ。」

国分は言った。

「それはよかった。」

三田は言った。

「心配するなよ。」

国分が言うと

「待っていますよ。」

三田は確認するように言うとすぐに携帯電話を切った。周囲には各国の選手たちが行き来しているが誰も三田を気にしていなかった。日本の選手団もチーム単位で行動していて育子も疎ゆき乃と一緒に行動していた。育子は久美子にしつこくしていた三田の顔を見つけると立ち止まり離れた場所でじっと見ていたのであった。

「どうしたの?」

ゆき乃が育子を覗き込むように言うと

「サッカーの三田選手だよ。」

育子は言った。

「三田選手はイケメンでも性格が悪いからやめておきなよ。」

ゆき乃が言うと

「私はあんな弱い男は趣味ではないよ。」

育子は言った。

「あとで自由時間になったらいろいろ見て回ろうよ。」

ゆき乃は嬉しそうに言ったのである。

 

「何処に電話をしていたのでしょうか?」

オフィス街で電話をしていた国分の視線をさけて菊池が言うと

「恐らく北京だと思いますよ。」

桜田は言った。

「矢島正一さんと国分源太に三田人志だけでなく京野育子選手にどのような繋がりがあるのですか?」

菊池が言うと

「堀川久美子さんと川嶋陽子さんが絡んでいるはずですよ。」

桜田は言った。

「そのふたりとも繋がっている人物はひとりしかいませんね?」

菊池が言うと

「高村俊之さんです。」

桜田は言った。

「高村さんは犯人ではないですよね?」

菊池が言うと

「当然犯人ではありません。」

桜田は言った。

「石井純一に及川友宣をはじめ中西正則に山口武生と高村さんが絡んでいますね。」

菊池が言うと

「我々も北京に行きますか?」

桜田は言った。

「北京は海外だから管轄外ですよ。」

菊池が言うと

「そのために官房長の弱みを掴んでおいたのですよ。」

桜田は微笑みながら言ったのである。

雨のあとに虹・Part2 その65

「北京へは予定通りみんなで同じ便で行く事になります。」

陽子が社長室で俊之に言うと

「薬師寺さんは来られないの?」

俊之は陽子に言った。

「薬師寺さんは日本に残る予定です。」

陽子は言った。

「それは残念ですね。」

俊之が言うと

「今回は総武がメインスポンサーになっている育子さんを応援に行くのが目的ですので交渉案件はないですからね。」

陽子は淡々として言った。

「せっかくだからみんなで行きたかったけれど仕方がないね。」

俊之が言うと

「何か必要があればすぐに薬師寺さんが飛んで来る事になっています。」

陽子は言った。

「今回は直子さんも一緒に行くそうだから薬師寺さんにも見せてあげたいね。」

俊之は言った。

 

「せっかく北京に行くのだから楽しんで来てね。」

休憩室でひとみは言った。

「夏休みも別にいただくのにお休みを貰ってすみません。」

久美子は言った。

「遠慮しなくていいわよ。」

ひとみが言うと

「忙しいのにお店は大丈夫ですか?」

久美子が心配して言った。

「大石さんががんばってくれるから大丈夫よ。」

ひとみは言った。

「何かお土産を買って来ますね。」

久美子が言うと

「それなら育子さんの金メダルがいいわ。」

ひとみは言った。

「金メダルですか?」

久美子が驚いて言うと

「みんなで応援すれば育子さんの事だからきっと金メダルが獲れるわよ。」

ひとみは久美子の目を見て言った。

「店長の分まで育子さんを応援します。」

久美子が言うと

「私も矢島さんと一緒に日本で応援しているからね。」

ひとみは笑みを浮かべて言った。

 

「こちらが総武企画の高村俊之社長です。」

増田が言うと俊之は目の前にいる和泉晃一教授に会釈をした。首都圏大学の理工学部にある研究室はオフィスと違って落着いた雰囲気があり陽子と立花が横に立って俊之と和泉を交互に見ていた。

「高村です。」

俊之が名刺を取り出して言うと

「こちらは首都圏大学の和泉晃一教授です。」

増田は言った。

「和泉です。」

和泉教授は俊之を見て微笑みながら言った。

「担当者レベルでは綿密に連絡を取り合っていたのですが遅くなってしまい失礼しました。」

俊之が言うと

「私も忙しいとは言えお目にかかるの遅れて大変失礼しました。」

和泉は言った。

「高村は正式に社長になったばかりで大変な時期ですからご容赦ください。」

増田が言うと

「それはお互い様ですよ。」

和泉は言った。

「そう言ってくださり恐縮しています。」

俊之が言うと

「新しくプロジェクトリーダーになった竹内を紹介しましょう。」

和泉はよく通る声で言った。

 

「北京五輪を観戦に行けて久美子が羨ましいな。」

純子は喫茶店で久美子に言った。喫茶店は混んでいるが人の声がうるさいわけではなかった。
「純子も一緒に行けるとよかったのにね。」

久美子が言うと

「私はバイトに旅行とやる事がたくさんあるから遠慮しておくよ。」

純子は言った。

「お土産を買って来るからね。」

久美子が言うと

「笹川さんたちも行くの?」

純子は言った。

「みんなで行く事になると思うよ。」

久美子が言うと

「みんな大変ね。」

純子は言った。