雨のあとに虹・Part2 その61
「生田です。」
生田が言うと
「高村です。」
俊之は微笑んで言った。立花や恵子も笑顔であるが陽子だけが緊張の表情を隠せなかった。情報堂の応接室は広々としていて業界第一位の威厳さえ感じられた。
「いつも総武さんにはお世話になりましてありがとうございます。」
生田が言うと
「それが秋からは情報堂さんではなくてメディアエージェンシーさんにお願いしようと思ったものですからご挨拶に来ました。」
俊之は笑顔で言った。
「それはどういう意味ですか?」
生田が言うと
「詳細は専務の立場からお話させていただきます。」
俊之は言った。生田が立花を見ると立花は軽く頭を下げてから話す言葉を確認するように少しの間をおいた。
「遠慮をなさらないでおっしゃってください。」
生田が言うと
「情報堂さんの社員である国分さんが最近になって社長秘書の川嶋にストーカー行為に近い行動に出ましてね。」
立花は生田を見据えて言った。
「国分がストーカー行為をしたのですか?」
生田が言うと
「国分さんはかつて川嶋と交際していたと聞いていますからご本人は悪気はないかもしれません。」
国分が言うと
「それは申し訳ありませんでした。」
生田は言った。
「お互い大人の男女ですから会社とは関係ないプライベートな事だと考えています。」
立花が言うと
「私もそう思います。」
生田は言った。
「しかしながら会社に押しかけて来たとなると話は別になります。」
立花が言うと
「そんな事をしていたとは知りませんでした?」
生田は言った。
「情報堂さんも勤務時間内なのに社員の方が仕事をしていないでストーカー行為をされると仕事の信用性にも関係してきます。」
立花は言った。
「子供の喧嘩に親が口を出すようでいやなのですが情報堂さんも社員教育をしていただかないと弊社としても困るわけです。」
俊之は静かに言った。
「僕が7歳の時ですから高村さんは25歳になっていたはずです。」
翔太が言うと
「かなり以前ですね。」
菊池は言った。
「小学校2年でした。」
翔太が言うと
「どうぞ続けてください。」
桜田は言った。
「今後は再発防止に努めさせていただきます。」
生田が言うと
「プライベートな事はプライベートの範囲で行動してほしいと思っています。」
俊之は言った。
「それは当然の事だと私も思います。」
生田は俊之と視線を合わせて言った。
「僕が言いたいのはそれだけです。」
俊之が言うと
「国分については社内で調査をして処分を決めたいと思っています。」
生田はきっぱりと言った。
「高村さんはすでに三友商事の社員になっていましたね。」
桜田が言うと
「高村さんと笹川警部補にはどのような接点があったのですか?」
菊池が待ちきれない様子で言った。
「タンポポの花はご存知ですか?」
翔太が唐突に言うと
「あの黄色い花が咲くタンポポの事ですか?」
菊池が驚いたような顔で言うと
「存じていますよ。」
桜田は言った。
「友達と遊んでいてタンポポの花を採って帰ろうとした時の話です。」
翔太は珈琲を口に持っていきながら言った。
雨のあとに虹・Part2 その60
「安全運転を心がけていますから安心してください。」
関口が言うと
「関口さんは運転技術が上がったね。」
泰子は言った。育子を北京まで見送った久美子を後ろに乗せて関口が高速を走っていた。泰子は助手席で関口と久美子に話しかける事を忘れなかった。
「長時間の運転は疲れるでしょう?」
久美子が言うと
「暴走族だった頃は危険な事をたくさんしましたからね。」
関口は言った。
「私たちはバカな事もたくさんやったよね。」
泰子が言うと
「危ない運転をすると事故につながりますよ。」
久美子はふたりを諭すように言った。
「そのスリルが面白くてバカをやるわけですよ。」
関口が言うと
「亡くなったメンバーが何人かいたね。」
泰子は言った。
「今はそんな危ない事はしないですよ。」
関口が言うと
「そろそろ都内に入るわよ。」
泰子は標識を見てから言った。電光掲示板は都内まで渋滞3キロを表示していたのだった。
「元警視庁特殊部隊SITの有能な隊員である笹川翔太さんがお出ましとは驚きましたよ。」
喫茶店の片隅に座った桜田は翔太に言った。
「これからは共同作戦をとりませんか?」
翔太は桜田と菊池を交互に見ながら言った。
「我々に情報を提供しろとおっしゃるのですか?」
桜田が言うと
「警視庁捜査一課の凄腕警部さんならお解かりだと思いますよ。」
翔太は言った。桜田も菊池も黙っていたために重苦しい空気が流れていた。沈黙が続いたあとに桜田が目で合図するように菊池を見た。
「我々には解らない事がたくさんあります。」
菊池が言うと
「笹川警部補に答えていただきたい事があります。」
桜田はあえて翔太が警視庁に在職していた階級で言った。
「どのような事でしょうか?」
翔太が言うと
「笹川警部補はどうして高村俊之さんに協力するのですか?」
桜田は言った。
「それは総武の白仁春香さんとロンドンで出会って総武に引き抜かれたからですよ。」
翔太が言うと
「私を警視庁捜査一課の桜田だと知って言っていますか?」
桜田は翔太を鋭い視線で見て言った。
「警部。」
菊池が驚いたように言った。
「もっと他に明確な理由があるはずですよ。」
桜田が言うと
「それではお話をしましょう。」
翔太は余裕の表情で言った。
雨のあとに虹・Part2 その59
「高村社長。」
陽子は俊之が社長室に入って来ると受話器を持って言った。
「はい。」
俊之が言うと
「メガビューティの神宮社長からお電話です。」
陽子は言った。
「ありがとう。」
俊之が言うと陽子は電話機のスイッチを切り替えて俊之は受話器を手に持った。
「普通に話をしてください。」
陽子は言った。
「高村です。」
俊之が言うと
「今日の夜に食事をするお約束でした件ですけれどね。」
さよ子は電話の向こうで言った。
「夜に食事をするお約束でしたね。」
俊之が言うと
「急ぎの案件があってお約束が果たせそうにないのよ。」
さよ子は言った。
「それでしたら後日にあらためて時間をとりましょう。」
俊之が言うと
「そうしてくださると嬉しいわ。」
さよ子は言った。
「残念ですが日を改めましょう。」
俊之が言うと
「ごめんなさいね。」
さよ子は言った。
「それではまた連絡をください。」
俊之は言うと電話を切った。
「神宮社長に何かありましたか?」
陽子が言うと
「今日の食事は急用が出来てキャンセルだそうだよ。」
俊之は言った。
「ドタキャンですか?」
陽子が驚いたように言うと
「僕は約束を忘れていたよ。」
俊之は微笑みながら言った。
「ちょうどよかったですね。」
陽子が言うと
「これから川嶋さんに情報堂まで付き合ってもらおうと思っていたからキャンセルされてよかったよ。」
俊之は言った。
「我々の捜査もうまくいくようでいかないですね。」
菊池は歩きながら言った。都心のオフィス街は夏でも活気にあふれていたが桜田と菊池は観光客が訪れるアトラクションから離れて覆面パトカーの方向に歩いていたのであった。
「慌てることはないですよ。」
桜田は表情を変えずに言った。
「矢島さんの件はともかく12年前の入江麗子さんの事件も高村さんの周辺で起きていますね?」
菊池が言うと
「匿名で送りつけてきたビデオを見る限りは高村さんもかわいそうですね。」
桜田は言った。夏の日差しは強く桜田はネクタイを緩めて菊池はネクタイを取っていた。
「何か冷たいもので買いましょうか?」
菊池が飲み物の自動販売機を見つけて言った。
「菊池くん見てください。」
桜田は言うと目で合図をした方向に翔太が微笑みながら立っていたのであった。
「生田部長。」
いずみは生田和臣を見て言った。
「どうかしたかね?」
生田が言うと
「総武の高村社長がお見えになられて至急に会いたいそうです。」
いずみは言った。
「総武の高村社長かね?」
生田が言うと
「はい。」
いずみは言った。
「誰かミスでもしたかね。」
生田が言うと
「国分さんが何かをしたみたいです。」
いずみは言った。
「解かった。」
生田は急いで応接室に歩いて行ったのである。