雨のあとに虹・Part2 その39
「高村は接客中ですので私が対応させていただきます。」
立花は丁寧な口調で言った。
「すぐには会えないのかしら?」
40歳代半ばに見える女性は少し横柄な口調で言った。
「弊社の社長は多忙ですから事前にアポイントがない方にお会いするのは難しいです。」
立花は言った。
「私は高村さんとは親戚ですよ。」
その女性が言うと
「高村には身寄りがないと聞いていますがお姉さまでしょうか?」
立花は言った。
「弟が高村さんの妹さんと結婚したので義理の姉になります。」
女性は言った。
「失礼ですがお名前は教えてくださいますか?」
立花が言うと
「石井寿子です。」
石井寿子は言った。
「それは変ですね?」
立花は言った。
「何が変なのよ。」
寿子が言うと
「高村の妹さんは今では絶縁状態の上に離婚をなさっています。」
立花は言った。
「それは事情があって縁が切れているだけですよ。」
寿子が言うと
「それではご親戚とは言えませんね。」
立花は言った。
「どうしてあなたが決めるのよ。」
寿子が怒ったように言うと
「都合の良い時だけの親戚は迷惑なものですよ。」
立花は皮肉を込めて言った。
「私たちがふたりだけ出会うのは初めてね。」
直子が言うと
「今まで一度も会う機会がなかったですね。」
久美子は言った。
「久美子さんと駅前で偶然に会わなかったらゆっり話すのはもっと先になっていたわね?」
直子が言うと
「私もいい機会だと思って喫茶店にお誘いしました。」
久美子は言った。
「久美子さんの本業は大学生でしょ?」
直子が言うと
「北西大学の3年生です。」
久美子は言った。
「総武遊園地のキャンペーンガールや喫茶店の仕事もこなして忙しいわね。」
直子が言うと
「直子さんも女優さんやタレントさんとして仕事をしながらHARUKA-SHIRANIの専属モデルさんですから大変ですよね?」
久美子は言った。
「私は最初から女優やモデルを目指していたからそんなに大変でもないわよ。」
直子は言った。
「私もキャンペーンガールの仕事は楽しいですよ。」
久美子は言った。
「久美子さんもその才能があるかもしれないわよ。」
直子が言うと
「育子さんのような強力なインパクトがないのは印象が弱いですよ。」
久美子は言った。
「育子さんには北京五輪もあるから大変ね。」
直子が言うと
「私たちでサプライズを企画しているから一緒にどうですか?」
久美子が言った。
「仕掛け人は春香さんでしょ?」
直子は笑みを浮かべて言った。
「最初の話と違っていたね。」
俊之はさよ子が帰ったあとに陽子と恵子に言った。
「今日の神宮さんの態度は普通でしたね。」
恵子が驚いたように言った。
「神宮さんは男性を1メートル以内には近づけさせないのにね。」
陽子が言うと
「神宮さんが僕の前に立った時にはどうしようかと思ったよ。」
俊之は珈琲を飲みながら言った
「機嫌がよかったのでしょうね?」
恵子が言うと
「私にも解らないわよ。」
陽子が言った。
「僕はこれからも注意を心がけるよ。」
俊之は自分に言い聞かせるように言ったのである。
もうひとつの物語・8月の海
猛暑のあとに豪雨があって少しばかりの涼しさと照りつける太陽の日を浴びていると私はいつものように駅ビルのエスカレーターに乗っていた。暑さが人を変えるように開放的であり無防備の危険を帯びた女性がたくさん私の目に入っている。エスカレーターからいつもように珈琲ショップの入口に立つと今日もタイミングがよく空いていた。
「いらっしゃいませ。」
若い女性店員さんの元気な声が聞こえて私はそちらを見た。
「こんにちは!」
いつものように店長さんが言ってくれた。
「今日も暑いね。」
私は言った。
「連日暑くて体力がなくなりますね。」
店長さんが言った。
「外は太陽の日差しが痛いほどだよ。」
私が言うと店長さんも若い女性店員さんも涼しい表情で微笑んでくれた。私がやっと涼しい気分になれるひと時であった。
席に座って珈琲を口にすると気持ちに落着きが出てきた。この季節でも私はアイスではなくホットを飲むのであるがそれは私にとっては当たり前の事になっていた。
「インドネシアはもっと暑いのだろうね?」
ふと私の口からその言葉が出ていた。インドネシアは日本よりは暑いはずである。猛暑であることはまちがいないが意外と涼しいかもしれないと私は思った。日中は暑くても朝晩は涼しいかもしれない。店内を見回していると
「今日はびっくりするものがありますよ。」
店長さんが私の横に来て言った。
「びっくりするもの?」
私は意味が解らずに言うと
「何だと思います?」
店長さんはいたずらっぽい表情で言った。
「何だろうね?」
私は言った。それした言葉が出なかったのである
「これですよ。」
店長さんは言うと私の前にそっと何かを置いた。
「彼女も元気そうでよかったわ。」
店長さんは言うと
「いつもの笑顔だね。」
私は素直に言った。店長さんがおいたその写真には彼女が笑顔で写っていのであった。インドネシアの何処かで撮影した写真はひと目で彼女の状況が私には理解が出来たのである。そう彼女はすっかり現地の人たちに溶け込んでいて笑顔には心の裏側まで見えるようであった。
「一昨日に届きました。」
店長さんが言った声が私の耳を振動させると
「彼女の笑顔には嘘がないからいつ見ても素直だよ。」
私が言うと
「私もそう思います。」
店長さんは言った。
「この笑顔には癒されるね。」
私が言うと
「それが彼女の魅力かしら?」
店長さんも言った。私は写真に写る彼女の笑顔を脳裏に焼き付けていた。
「その写真を持っていてください。」
店長さんが言った。
「僕が持っていていいのかい?」
私が言うと
「あなたがいつまでも持っていてください。」
店長さんが言った。レジが少し混雑してくると
「失礼します。」
店長さんは言うとレジに戻って行った。
「意味深の理由が解りましたよ。」
若い女性店員さんが私の傍に来て言った。
「何が解ったの?」
私が言うと
「理由はその写真の方ですね。」
若い女性店員さんが言った。
「そうだよ。」
私が言うと
「南の国からラブコールなんて素敵ですね。」
若い女性店員さんはまじめな顔で言った。
「そんなではないよ。」
私が言うと
「本当ですか?」
若い女性店員さんは言った。
「ちょっとしたハプニングがあってね。」
私が言うと
「良いじゃないですか。」
若い女店員さんは言った。
「えっ!」
私が言い出せないでいると
「そう思わせておいてください。」
若い女性店員さんは言った。
「それは構わないよ。」
私が言うと
「真実を知らないと夢があるでしょ?」
若い女性店員さんは言った。」
「そういう時もあるね。」
私が言うと
「知ったら夢でなくなるからね。」
若い女性店員さんが言った。
「そうしておこう。」
私が言うと女性店員が微笑んだ。
「ありがとうございます。」
席を立った私を待っていたように店長さんが言った。
「ありがとうございます。」
若い女性店員さんも言った。
「ごちそうさま。」
私が言うと
「彼女の背景の海はとても綺麗ですね。」
店長さんは言った。
「とても綺麗だね。」
私は言った。
「素敵な青い海ですね。」
店長さんが言うと
「まさに8月の青い海だね。」
私はそういうと店を後にしていた。エスカレーターに乗る私に様々な風景が目に入ってきた。透き通った水の集まりが青く映っている写真の中で彼女が笑顔でいることが何よりも私は嬉しかったのである。
雨のあとに虹・Part2 その38
「ひどい目にあったね。」
冷房が利いているファミリーレストランの中で翔太が泰子に言った。
「私にはファンドマネージャーの彼氏は夢の夢だったね。」
泰子が言うと関口は黙ったままであった。
「人の価値は外見や肩書きだけでは決められないよ。」
翔太は言った。
「疑いもしないで信じてしまった自分はバカだわ。」
泰子が言うと
「終わった事を嘆いても仕方がないよ。」
関口は言った。
「あの時に偶然に居合わせた久保田直子さんが泰子さんを気にかけてくれたそうだよ。」
翔太は言った。
「そうだったのね。」
泰子は力なく言った。
「これからは僕たちと一緒に高村さんをサポートしてみる気はないか?」
翔太は直子に言った。
「私も高村俊之という男には興味を持ったよ。」
広い官房長室で岸田は言った。
「私も凄く興味を持ちましたよ。」
桜田は言った。
「増田が彼のために動いて江紫組の町島が助けに来るとは高村さんはただ者ではないよね?」
岸田が言うと
「高村さんにはにも数人の協力者がいますよ。」
桜田は言った。
「天門さんだね?」
岸田が言うと
「高村さんには特に好意的のようです。」
桜田は言った。
「天門さんは開運の先生だから依頼を受ければ力を貸すよ。」
岸田が言うと
「笹川翔太はどうですか?」
桜田は言った。
「どこかで聞いた名前だね。」
岸田は惚けて言うと
「SITの笹川ですよ。」
桜田が言うと
「あの男もそうだったのかね。」
岸田は言った。
「メガビューティの神宮社長がお見えです。」
陽子が言うと
「彼女はかなり神経質らしいね。」
俊之は言った。
「神経質というよりは男嫌いと言った方が正しい表現です。」
陽子は言った。
「僕も対応には気をつけるよ。」
俊之が言うと
「彼女は男性から直接手を触れられる事を極端に嫌います。」
陽子が言った。
「名刺交換する時には川嶋さんを渡してもらった方がよさそうだね?」
俊之が言うと
「立花さんの時はそうしました。」
陽子が言った。
「僕の時も川嶋さんから渡してください。」
俊之が言うと
「失礼します。」
恵子が言うと神宮さよ子を連れて社長室に入って来たのであった。
「神宮さよ子です。」
さよ子が俊之の目を見て言った。
「高村俊之です。」
俊之は言うと名刺を手に持って陽子に渡そうとしていた。俊之がさよ子の肌に触れないように陽子も恵子も気にしてなって俊之とさよ子を交互に見ていたのである。
「高村社長の名刺をいただけますか?」
さよ子は名刺を手に持つと俊之に言った。陽子が俊之の変わりに名刺を渡そうとするとさよ子は俊之の前に来て立ったのである。俊之は自分の手でさよ子に名刺を渡するさよ子の名刺を受取った。
「よろしくお願い致します。」
俊之が言うと
「こちらこそよろしくお願い致します。」
さよ子にしては珍しく男性である俊之に近づいて名刺を受け取る際に俊之の指が触れて平然としていた。
「メガニューティさんには総武ホテルや総武百貨店でテナントに入ってくださりありがとうございます。」
俊之が言うと
「こちらこそ総武さんのテナントに入れてくださりとても光栄ですわ。」
さよ子は言った。
「私は美容やエステには詳しくないので申し訳ありません。」
俊之が言うと
「そんな事は私が教えてあげますよ。」
さよ子は笑顔で言うと俊之の腕に軽く触れたのであった。その光景をを陽子と恵子はただ見ているだけであった。