雨のあとに虹・Part2 その44
「今日は矢島建設のあとに行く所があるから会社には戻れないよ。」
俊之は携帯で陽子に言った。
「矢島さんは思ったより元気だったのが救いですね?」
陽子が言うと
「矢島は不死身だよ。」
俊之は言った。
「私で出来る事があれば言ってください。」
陽子が言うと
「ありがとう。」
俊之は言った。
「困った時にはお互い様ですよ。」
陽子が言うと
「矢島も喜ぶよ。」
俊之は言った。
「会社の事はお願いします。」
俊之は言った。
「こちらは立花さんが対処しますから大丈夫です。」
陽子が言うと
「何かあったら遠慮なく連絡をしてきてください。」
俊之は言った。
「かしこまりました。」
陽子が言って俊之は電話を切った。
「会社の方は大丈夫ですが今日は高校のOB会活動の打合せがあります。」
みどりが言うと
「それは僕が出るよ。」
俊之は言った。
「雑貨店の3号店を何処にするかという件ですけどね。」
田崎が言うと
「総武百貨店の中に出店してはどうだろうね?」
俊之は言った。
「高村さんが悪い事をするはずないでしょ!」
育子が言うと声が狭い部屋に響いたのである。
「そう思われますか?」
桜田は言った。
「刑事さんのくせにそんな事も解らないのですか?」
育子は言った。
「まずは疑って考えるのが私たちの仕事でしてね。」
桜田が言うと
「こちらの刑事さんは柔道が強いですね?」
育子は菊池を見て言った。
「解りますか?」
菊池は驚いて言った。
「あなたは剣道ですね?」
育子が言うと
「さすがに合気道をなさっているだけの事はありますね。」
桜田が言うと
「それは私の事を調べたから合気道をしていると解ったのでしょう?」
育子が言うと
「失礼ながら調べさせてもらいましたよ。」
桜田は言った。
「あなたたちってダメですね。」
育子が言うと
「私たちの何処がダメなのでしょうか?」
桜田は笑顔で言った。
「調べないと解らなかったのでしょう?」
育子が言うと
「それは調べないと解らないよ。」
菊池が思わず言うと
「そちらの刑事さんは柔道の初段くらいね。」
育子は菊池を見て言った。
「どうしてそれが解るのですか?」
菊池が言うと
「あなたは剣道4段くらいでしょ?」
育子は菊池を無視して桜田と目を合わせてから言った。
「ちょっといいかな?」
三田は北西大学のキャンパスを歩く久美子に言った。
「私は急ぎますので失礼します。」
久美子は言うと三田を無視して歩き続けていた。
「少しくらい付き合えよ。」
三田が言うと久美子は立止まって振り返えると久美子と三田の視線があった。
「私はサッカー選手には興味がないです。」
久美子は言った。
「嘘を言うなよ。」
三田が言うと
「私は嘘が嫌いですよ。」
久美子は落ち着いて言った。
「どうような女性でも俺の傍に寄って来て何でも言う事を聞いてくれるぞ。」
三田が言うと
「特に横柄な態度をとる選手は好きになれないです。」
久美子は言った。
「君だってそのうちに俺の言う事をきくようになるさ。」
三田が言うと
「闘真拳をしている人なら仲良くしてもいいですよ。」
久美子は三田に言った。
雨のあとに虹・Part2 その43
「怪我は大丈夫か?」
病室のドアを開けて俊之が言うと
「来るのが遅かったな。」
矢島は俊之が思ったより元気な声で言った。
「ひどい怪我ですね。」
久美子が言うと一緒に病院に来た俊之の前にはベッドに横たわる矢島が笑顔をつくった。矢島の傍には田崎とみどりが居て翔太や育子も俊之よりも先に到着していた。俊之と久美子が最後になったようだと誰もが思った時に
「遅れてすみません。」
陽子が病室に入って来て言った。矢島は全身に包帯を巻いて手は添え木をしていて足は松葉杖であった。矢島は当分の間はひとりで歩けないのが誰の目にもすぐに解ったのである。
「高村さん。」
田崎が言うと
「どうしてこんな事になったのでしょうね?」
育子は言った。
「犯人の見当はついていますからこのけじめはしっかりつけますよ。」
翔太が言うと
「大丈夫ですか?」
久美子は矢島を心配そうに見て言った。
「矢島がこんな姿になるをはじめて見たよ。」
俊之は言った。
「順番に話すよから待ってくれよ。」
矢島が言うと矢島の妻であり矢島建設の副社長でもある矢島早苗が飲み物を持って病室に入って来たのであった。
「遅くなってすみません。」
俊之は早苗を見て言った。
「高村さんにまでご心配をかけてすみません。」
早苗が言うと
「矢島が怪我をしたのを見るのは高校以来始めてですから驚きましたよ。」
俊之は言った。
「主人が運転している乗用車のブレーキが利かなくなったみたいです。」
早苗が言うと
「整備はきちんとしていたよね?」
俊之は矢島に言った。
「これは誰かが乗用車に細工をしたのよ。」
育子は言った。
「今まではこんな事はなかったのにね。」
みどりは言うと
「関口たちが調査を始めています。」
翔太は言った。
「すまないけれど頼むよ。」
俊之は言った。
「育子さんの五輪までには身体を治すよ。」
暗い雰囲気の病室で矢島は言った。
「昨日の京野育子さんが見えましたよ。」
菊池が桜田の傍に来て言った。
「朝早いのに卓球選手が来てくれたのか?」
桜田が言うと育子が婦人警官に案内されて別の部屋に入って行くのが見えた。
「私は席を外しましょうか?」
菊池が言うと
「彼女は君より肝が据わっているから大丈夫ですよ。」
桜田は言った。
雨のあとに虹・Part2 その42
「こちらが新しい社長の高村さんですね?」
響雅子は言った。
「高村です。」
俊之が言うと
「ここはそんなに礼儀正しくしなくても大丈夫だよ。」
正樹は言った。
「もっとリラックスしてくださいね。」
雅子が言うと
「こういう店にはなれていなくてすみません。」
俊之は言った。雅子は銀座の真ん中でひときわ賑わっている一角にあるビルに白夜という名前の店を出していた白夜は政財界に関係者だけでなく医者や弁護士も来ているのであった。
「これから総武の新社長も白夜に来るからよろしく頼むよ。」
正樹が言うと
「総武の5代目社長だそうですね?」
雅子は言った。
「高村さんは私と違って人望があるよ。」
正樹が言うと
「それは過大評価ですよ。」
俊之は言った。
「春香の人を見る目に狂いは無かったよ。」
正樹が言うと
「高村社長はテレビにご出演なさっていませんでしたか?」
雅子は言った。
「最近はテレビのインタビューは受けていないですよ。」
俊之が言うと
「そう言えばテレビの取材はないね。」
正樹は言った。
「確か運気を上げて幸福を掴む番組でしたね?」
雅子は俊之に言った。
「陽子さんですか?」
久美子は突然陽子から携帯に電話があって驚いたように言った。
「変な時間にごめんなさい。」
陽子は言った。
「何かあったのですか?」
久美子が言うと
「今夜は高村社長とご一緒ではないですか?」
陽子は言った。
「今夜は別の用件があると聞いていますよ。」
久美子が言うと
「そうですか。」
陽子は困ったように言った。
「何かあったのですか?」
久美子が言うと
「矢島さんが事故にあって病院に運ばれたそうです。」
陽子は言った。
「矢島さんがですか?」
久美子は驚いて言った。
「またいらしてくださいね。」
雅子が言うと
「また来ます。」
俊之がは言った。
「私も来るからね。」
正樹が言うと雅子は会釈をして店の外までふたりを見送りに来ていた。夏の夜はとても蒸暑く立ているだけで汗が出てくるのであった。
「ありがとうございました。」
タクシーに乗ったふたりに雅子は頭を下げて言った。
「それではまたね。」
俊之は言った。
「今日はママの顔が見られて楽しかったよ。」
正樹が言うとタクシーが静かにスタートした。
「おやすみなさい。」
雅子は走り去るタクシーに向かって言った。
「これで私が高村さんにしなくてはならない事はほぼ終わったよ。」
正樹が言うと
「終わりとはどういう事ですか?」
俊之は言った。
「私は何もしなくてもママが黙っていても必要な人脈を繋いでくれるよ。」
正樹が言うと
「あのママがですか?」
俊之は言った。
「そのうちにママの凄さが解かるからね。」
正樹は微笑んで言った。
「時々は来るようにします。」
俊之が言うと携帯電話が静寂を破って大きな音で鳴りだしたのであった。
「電話に出た方がいいよ。」
正樹は言った。
「失礼します。」
俊之は言うと携帯を耳にあてて電話の向こうの声を聞いていた。
「俊さん。」
久美子は言った。
「どうかしたの?」
俊之が言うと
「矢島さんが大変です。」
久美子は少し慌てたように言った。