開運童子のブログ -13ページ目

雨のあとに虹・Part2 その55

「ここで会えるとは奇遇ですね。」

俊之は言った。

「またお会い出来て嬉しいです。」

久美子は照明を少し落としたレストランから見える夜景に自分の顔を映して言った。

「私は休みが取れたので大阪から遊びに来ていたところです。」

深澤久美子が言うと

「総武さんとは公私ともに親しく出来きて嬉しいですよ。」

敏弘は含みを持たせて言った。

「僕も同じ事を考えていましたよ。」

俊之が言うと

「長話はいけませんので失礼します。」

敏弘が言うと

「後ほどあらためて伺います。」

深澤久美子は言った。

「またゆっくりお話しましょう。」

久美子が言うと

「ゆっくり夜景を見ると良いよ。」

俊之は言った。

 

「遅くにすみません。」

桜田が言うと

「こちらこそ仕事が長引いてしまって失礼しました。」

榊原は言った。三友商事本社ビルのとなりに立つビルの地下にある喫茶店である。

「ご病気だったそうですね。」

菊池が言うと

「私は胃癌でした。」

榊原は言った。

「それは重いご病気でしたね。」

桜田が言うと

「不思議な事に手術で癌を切除したら身体が回復しましたよ。」

榊原は言った。

「総武の高村俊之さんとは親しいそうですね。」

桜田が言うと

「あいつには一度も勝てなかったよ。」

榊原は言った。

 

「あのおふたりは幸福そうでしたね?」

久美子が歩きながら言うと

「あのふたりはとても好感がもてるカップルだね。」

俊之は言った。ふたりはレストランから出て幅の広い散歩道を歩いていたのである。

「東京と大阪に離れているから心細いでしょうね?」

久美子が言うと

「500キロの距離を越える愛だね。」

俊之は言った。

「俊さんもロマンチストのような事を言うのね。」

久美子が言うと

「そうかな?」

俊之は言った。ふたりには散歩道の端でひとりライブをしている男性歌手の歌がかすかに聞こえていたのであった。

 

「矢島さんや高村さんに対するの怨恨からは犯人にへ辿り着けないですね。」

菊池がパトカーを運転しながら言うと

「久美子さんと育子さんに陽子さんからも辿ってみましょう。」

桜田は助手席で言った。

「女性から調べないとダメですか?」

菊池が言うと

「そろらく女性がらみの怨恨だと思いますよ。」

桜田は言った。

「よく解らない事件ですね。」

菊池が言うと

「これから少しずつ犯人が見えて来るはずですよ。」

桜田は言った。

「そうですか?」

菊池が言うと 
「パトカーを置いたら一杯やって帰りませんか?」

桜田は言った。

「たまには楽しみたいですね。」

菊池が言うと

「今夜は暑くて寝苦しい夜になりそうですよ。」

桜田は静かに言った。

雨のあとに虹・Part2 その54

「待ったかい?」

俊之は約束の時間より5分ほど送れて喫茶店に入って来て言った。

「私も来たばかりだから大丈夫です。」

久美子が言うと

「幹部のとの会議がある時には約束する時間に余裕を持たないとダメだね。」

俊之は言った。

「仕事は忙しいのですか?」

久美子が言うと

「そんなに忙しくはないよ。」

俊之は微笑んで言った。

「急に忙しくなったでしょ?」

久美子が言うと

「8月は五輪を行き休みを取るから今のうちに仕事をしておかないとね。」

俊之は言った。

 

「ただいま。」

増田はマンションの最上階にある自分の部屋に入ると言った。誰いないのは解っていても声を出していた。ネクタイを外すと増田の携帯が鳴り帯を耳に当てると

「今日も帰りが遅くなるからね。」

妻の増田貴久枝は言った。

「遅くまで何をやっているのだ。」

増田が言うと

「大学の友人と食事会なのよ。」

貴久枝は言った。

「仕方がないな。」

増田が言うと

「今はまだ会社にいるのでしょう?」

貴久枝は言った。

「今帰ったところだよ。」

増田が言うと

「まだ19時なのに早いわね。」

貴久枝は言った。

「俺も今日は身体が疲れているからな。」

増田が言うと

「先に寝ていていいわよ。」

貴久枝は言った。

 

「夜景が綺麗ですね。」

久美子は嬉しそうに窓外を見て言った。

「赤坂総武ホテルが都内では一番高い建物だからね。」

俊之は言った。少しだけおしゃれをして食事をするのも刺激があっていいものである。明かりを暗くしたレストランは小さく流れているクラシックが落着いた気分にさせてくれていた。

「飛行機が着陸するのが見えるよ。」

久美子が言うと

「ここから見る羽田が近く見えるね。」

俊之は言った。夏の夜空には小さな星が見え隠れしていた。

「育子さんが五輪で戦う北京はどんなところかしら?」

久美子が言うと

「今は夏だからいいけれど東京よりかなり寒いと思うよ。」

俊之は言った。

「ワインを飲むと酔いが回りそうです。」

久美子が言うと

「僕はノンアルコールだよ。」

俊之は微笑んでウーロン茶を手に持って言った。

「1年前には私たちは出会っていなかったですね。」

久美子が言うと

「僕たちが出会ったのは11月のはじめだったね。」

俊之ははじめて久美子を見た時の事を思い出して言った。ひとみのおかげで久美子は俊之と出会うきっかけが出来たのである。

「店長とも不思議な縁でしたね。」

久美子が言うと

「お話ところをすみません。」

俊之の横に来た深澤久美子が言うと俊之も久美子も深澤久美子と敏弘を見て顔に笑みを浮かべて言った。

「深澤久美子さん。」

久美子が言うと

「竹内さんだね。」

俊之は言った。

「高村社長。」

深澤久美子が言うと

「堀川久美子さん。」

敏弘は言った。初めて4人がプライベートで出会った瞬間であった。

雨のあとに虹・Part2 その53

「高村さん。」

吉田未来が言う千晴と別れて喫茶店から出て来た俊之に吉田未来が言った。

「未来さんは総武ホテルの社員にマナー教育をお願いしていましたね。」

俊之が言うと

「首都圏と北海道が終わって次が東北でそのあとに東海や中部に関西と回る予定よ。」

未来が言った。

「出張が多くなってすみません。」

俊之が言うと

「それもまた楽しいわよ。」

未来は言った。

「未来さんには大変な役割を引き受けていただいて感謝しています。」

俊之は言った。

「ところで高村さんはこれから本社に戻るの?」

未来が言うと

「このあとは社内で役員や執行幹部との打合せがありますから後日にゆっくり会いましょう。」

俊之は言った。

 

「みなさんから意見はありますか?」

立花は大きな声で言った。総武グループの幹部100人が揃った会議は活発な議論が行われていたが意見は出尽くしていたようであった。

「それでしたら総武鉄道と総武遊園地に関しては当初の予定を一部変更して新規案件を実行する事にします。

俊之が言うと

「私が高村社長を全面的にサポートします。

立花は言った。

「総武緑化と三友商事の提携成立後は立花さんが一括管理をする事でかまいませんね?」

恵子が言うと

「立花さんに集中してお願いするのは荷が重いでしょうが管理本部でコントロールするのが妥当だと思うよ。

俊之は落ち着いた声で言った。

「解りました。」

恵子が言うと

「内堀係長は発言がないですが意見が無いと判断して良いですか?」

立花は言った。

「特にありません。」

いきなり名前を言われた内堀は言った。

「高村社長に言いたい事があるのならここで言った方がいいぞ。」

立花が言うと

「僕は内堀係長の意見にも耳を傾けるつもりだから何でもいってください。」

俊之は言った。

「今はありません。」

内堀は小さな声で言った。

「ワールドコミュニケーションとの業務提携は今月中に締結できる予定です。」

恵子は俊之に大きな声で言った。

 

新幹線が東京駅のホームに入って来ると敏弘は開くドアに目を見ていた。乗客が降りて来る姿が目に映りしずかに通過して行った。敏弘はすぐにたくさんの人ごみの中から見慣れた深澤久美子の姿を見つける事ができた。

「久美子!」

敏弘が言うと

「敏弘さん。」

深澤久美子は敏弘を見ると笑顔になって言った。

「今回は僕が大阪に行かなければいけないのにすまないね。」

 敏弘は言った。

「仕事が忙しいから仕方がないわよ。」

深澤久美子が言うと

「総武緑化と首都圏大学の研究室が提携交渉をしているからね。」

敏弘は言った。

「高村社長の会社と業務提携とは縁があるのね。」

深澤久美子が言うと

「あの遊園地の事件から総武グループとは縁が深くなったよ。」

ホームを歩きながら敏弘は言った。

「もう一度久美子さんと会ってみたいな。」

深澤久美子が言うとすれ違う人が多く敏弘の耳に深澤久美子の言葉が聞きとれないほど東京駅は旅行客が多かったのである。