開運童子のブログ -116ページ目

雨のあとに虹 その14

「お母さん。」

千晴は純一が外出しているのを確認して言った。

「何?」

静江が言った。

「本当にそれで良いの?」

千晴が言った。

「兄さんの事?」

静江が言う。

「そうよ。」

千晴が言うと

「簡単に縁が切れるものなの?」

千晴が言った。静江は千晴が言う事は当たり前だと知りながらも

「仕方がないのよ。」

と言った。

「どうして?」

千晴が言った。

「理由はないわよ。」

静江は言った。

「そんな事は納得出来ないよ。」

千晴が言う。

「千晴こそ学校をサボってどうしたの?」

静江は言った。

「おい!」

町島義介は言った。すぐに柳田正人は

「なんでしょうか?」

と言った。町島は広域暴力団である江紫組の組長で柳田が若頭である。

「この建設現場はどこの会社だ。」

町島はビルの建設現場を前で見上げながら言った。

「矢島建設です。」

柳田が言った。

「矢島建設か!」

町島が言う。

「今回のターゲットですか?」

柳田が言った。

「久美子はこれから何処か行く予定でもあるの?」

と同級生の椿純子が声をかけてきた。久美子が北西大学のキャンパスを歩いていると純子が声をかけてきたのである。

「特にはないけどたまにはおしゃれな店でも見て回ろうと思ってね。」

久美子が言うと

「私も行こうかな?」

純子が言うと

「純子も一緒に行こうよ。」

と久美子が言う

「たまにはおしゃれな店を見て歩きたいね」

と純子が言った。

「そのあとで何か食べようよ。」

久美子が言った。都心のおしゃれな店を見て回るのは心が浮かれるものである。心なしか歩く速度も上がってくる。 久美子とたちが歩く数メートル後ろで先日久美子に声をかけてきた若い男がふたりを見つめている。目は焦点が定まらずに病人のようであった。

「高村さんは社長と同級生ですよね。」

仕事中ではあったが社員の田崎が言った

「そうだよ。」

俊之が言う。

「社長は昔からあんなに豪快だったのですか?」

田崎が言うと

「高校生の時から今みたいに豪快だったね」

俊之が言った。

「社長は若い頃から豪快な人だと聞きましたけど。」

田崎が感心したように言うと

「柔道の有段者だったからみんなに一目置かれていたよ」

俊之が言った。

「そうが想像できますね。」

田崎は感心したように言った。

「親分肌で豪快だからね。」

俊之が言うと

「社長は怖いけど言っている事は正論ですよね。」

田崎が言う。

「そこの部分も高校時代と同じだよ。」

俊之が言うと

「そこを尊敬しています。」

と田崎が言った。

「矢島は間違った事は嫌いだからね。」

俊之が言う。

「さすが社長だな。」

田崎が言うと

「ところでパソコンでデザインを作成するわけだよね?」

俊之が言った。

「そうですよ。」

田崎が答える・

「ちょっと見せてもらってもいいかい?」

俊之が言うと

「それは画面を開いてですね。」

と田崎が説明を始めた。

雨のあとに虹 その13

 久美子は最初のうちは義務感で俊之に声をかけたのだが落ちてよく響く声と言葉遣いがしっかりしていて自分の世界を持っている俊之に少し好感を持った。30歳代後半に見えるがもう少し年上のような気もした。素直に何でも話をして裏表がなさそうに見える好青年のようであるが久美子は俊之に何かを感じていた。目線を動かす時や僅かな微笑でも目の奥底は笑っていないところに何か過去がありそうである。年齢から言えば結婚しているはずだが独身のようである。俊之の服装に女性の影が見えなかったからだ。

 俊之は久美子が話しかけてきたのが以外であった。確かにアクシデントは少し迷惑ではあったが仕方のない事である。自分にそんなに気を使う事もないのにと俊之は考えていた。自分と話をしていて周囲の人に仕事をサボっていると思われたら大変である。俊之はと少し心配になっていた。久美子は20歳くらいだと思うがしっかりして素直ないいお嬢さんで頭も良さそうだ。俊之はかってに都合の良い事を考えていた。

「ありがとうございました。」

久美子が言った。俊之が立ち上がって帰ろうとしていた時である。

「ごちそうさま。」

俊之も言った。

「またお越しください。」

とひとみが横から顔をだして俊之に言った。俊之は微笑みながら

「また来ます。」

と言った。店内が少し込んできたようだ。俊之は人の流れに乗ってエスカレーターに乗ったざわつく人込みからに混ざって外に出るとすでに日が沈んでいた。 さすがに夜になると寒さが増してきて北風が弱く吹いていた。風の音に混ざって俊之の携帯に着信が鳴った。見ると育子からだった。

「先ほどは書き忘れたけど来月は卓球の大会があるから応援に来てくれると嬉しいです。」

と書いてあった

「来月は育子さんの試合だったね。」

と俊之は呟いた。

「今日はうまくいったようです。」

ひとみは自分の周囲に人が居ないのを確認しながら自分の携帯で話をしていた。久美子が更衣室の中に居るとひとみの声が聞こえたので久美子は

「店長が誰と話をしているの?」

と呟いて出て来た更衣室から出て来ていた。

「堀川さんという20歳の女子大生だから大丈夫です。」

ひとみの声が聞こえた。

「私の事を話しているみたい。」

久美子は言った。

「その前にも数回来ていましたよ。」

ひとみの声がはっきり聞こえた

「何に話かしら?」

久美子は小さい声で言った。

「彼女には私の店長としての最良で自給を上げて優遇すればいいと思います。」

ひとみは電話の相手に言った。

「何か嫌な予感がする。」

久美子は言った。

「これ以上は無理ですよ。」

ひとみは言うだけ言うと慌てて電話を切った。久美子はひとみに見つからないようにそっと更衣室に戻った。

「今日から顧問として来てくれる事になった親友の高村俊之くんだ。」

と矢島の大きな声は矢島建設のフロアー中に響いていた。そこに

「おはようございます。」

と言いながら遅れて田崎文夫が入って来た。

「遅刻したらダメでしょ!」

みどりが横から小声で言うと

「少し寝坊してね。」

田崎も小声ですまなさそうに言った。

「当社が組織として円滑に機能するために手伝って貰う事になったので高村の方から一言挨拶を頼む。」

矢島から言われて俊之は頭の中で言葉を考えていた。

「始めまして高村俊之です。」

俊之が言うと

「おはようございます。」

と社員たちが口をそろえて言った。

「私の役割はそんなに大げさなものではなくて会社が間違った方向へ行かないようにと調整する役割です。」

俊之の声も矢島に負けずにフロアー中に響いた。

「何かあったら高村に相談するようにしてくれ!」

矢島が言った。俊之も

「それでは皆さんよろしくお願い致します。」

と言った。矢島建設の規模は大きくなってきているが同族経営で矢島の妻の早苗も副社長として役員になっている。俊之にとって矢島の申し出は嬉しかった建設会社が新規事業参入するのは慎重にしなければいけないと心を引き締めていた。

雨のあとに虹 その12

「来週も顔を見せてよ。」

前田が言うと俊之は。

「来週もまた来ます。」

と言った。

「今日はこれから用事があるからダメだけど来週は珈琲でも飲もうよ。」

前田が言う。

「ゆっくりと反省会でもしたいですね。」

俊之が言うと

「高村ちゃんはしっかり当てたからさすがだよ。」

前田が俊之に微笑んだ。育子の霊感のおかげで馬券が当たったのだ。

「来週も来ますよ。」

俊之が言って

「待っているよ。」

前田が俊之の背中に言った。すでに夕方の人の流れが多い時間帯になっていた。俊之は軽く食事でもと思って周囲を見回してみた。いくつか店を除いて見たがどこも混んでいる。混雑を掻き分けて探しているうちにとうとう駅のそばまで来てしまった。

「あとは駅ビルしかないな。」

と言って俊之は駅ビルの前に来た。いつものようにエスカレーターに乗る。と家族連れの客が目立っている。婦人服売り場や紳士服売り場を通過してエスカレーターはさらに上に行く。そしてドレンドカフェの前に来た。俊之は店内を見た。タイミングが良かったのだろう。か席が空いているのを確認した。カウンターには知らない女性の店員が居るだけだ。

「いらっしゃいませ。」

小百合が笑顔で対応していた。

「ブレンド珈琲をひとつね。」

俊之は注文をした。

「少しお待ちください。」

小百合が言う。珈琲を受取った俊之は

「ありがとう。」

と言って空いている席に座った。休日にゆっくり珈琲を飲むのは寛げるものである。

「今日も育子さんのおかげでお小遣いが増えました。ありがとう。」

と俊之はメールを打った。 明日は矢島のところへ行かなくてはいけないなどと考えてみる。珈琲を口に持っていって店内を見回した。

「今日は霊感の的中が良かったです。来週もがんばります。」

と育子から来たメールを見ていると人の気配を感じて俊之は顔をその方向に向けた。見ると久美子が立っていた。

「こんにちは。」

と久美子が言うと俊之も

「こんにちは。」

と言った。

「先日はすみませんでした。」

と久美子が言った。

「もう気にしなくていいよ。大丈夫だから。」

俊之が優しく言った。

「これからは気をつけます。」

久美子が言うと

「あのあと店長さんに何か叱られなかった?」

俊之に言われて

「あまりに気にしないようにと言われました。」

久美子が言ったのを聞いて

「それはよかった。」

俊之が言うと久美子は

「あの時は誰かに押されたようなにバランスを崩しました。」

と言うと

「もう終わった事だよ。」

と俊之が言った。俊之の前に競馬新聞があるのを見つけた久美子は

「高村さんは競馬をなさるのですか?」

言った。

「少しだけだよ。」

俊之が言った。

「ギャンブルは恐くないのですか?」

と久美子は誰もが持つ疑問を言った。

「あまり深みにはまらないように軽く遊べば大丈夫だよ。」

俊之は言った。

「私は競馬の事を知らないですけど楽しそうですね。」

久美子が競馬に興味を持って言った。

「いろいろと面白い事があるよ。」

俊之は言った。

「恐い事はないですか?」

久美子は言った

「怒って新聞をゴミ箱に投げ入れるおじさんがるよ。」

俊之が言うと

「本当ですか?」

と久美子が言った。

「あくまで冷静にすれば競馬は楽しいものだよ」

俊之が言うと

「今度時間があったら私も連れて行ってください。」

と久美子が言った。

「時間があったら一緒に競馬に行こう。」

俊之が言と久美子は周囲を見てから

「ゆっくりしていってください。」

と言った。俊之も

「ありがとう。」

と言った。そんなふたりの会話を少し離れたところでひとみが見ていた。