毎年6月になると、「能登に来て〇〇年経ったのだなぁ」と、当時のことを思い返す。
能登暮らしも、もう15年。
お気に入りの書籍『ときをためる暮らし』の中に、つばた英子さんの『嫁入り道具』の話がある。
それを読んで
「あー、何か大きな勘違いをしていたかも!」と思った。
英子さんの言葉を紹介させていただく。
いいものって、使い込んでいくほど、どんどんよくなっていきますから、娘たちが嫁ぐときは、これらを持たせようと、いつの頃からか二人で決めて。
真新しい品を買って与えるのではなくてね。
本人たちにも、「これを持ってお嫁入するから、丁寧に扱いなさい」と言い聞かせて。
(中略)
結婚すれば、それまでとは異なる生活環境に身をおくわけで、心細くなったりすることもあるでしょ。
そんなとき、身近に使っていた道具に囲まれていたら、自分を守ってくれている気がするだろうと思って。
(ときをためる暮らし つばた英子・しゅういち著 P96、97より引用)
結婚したら、全て新しいものを揃えて、楽しむ!
もいいけど、今まで使ってきたものは、
私の強い味方になってくれるのか。
いいな、英子さんの考え方。
新しいものがいい!
心機一転するチャンス、全部買い替えよう!
おしゃれで最新のものにチェンジすることこそ幸せ。
それが当たり前かと思ったけど、それも一つの現代風な価値観でしかないよね。
あなたは、結婚する時に、嫁入り道具的なものを買いました?
私は、式も結納もしていないので、一般的な結婚にまつわるあれこれの経験がない。
(そういうのって必要?って感じで、その考えは今もあまり変わっていない。
結婚式を楽しみにできるのも、1つの才能だよなって思う。
一方で、私のように、全くピンとこない人もいるんだろう。
結婚式を挙げたかったのに、挙げれなかった、はかなり悔恨が残りそう。
挙げたくなくて挙げなかったは、挙げたくて挙げたと同じなので、よかった、しかない。)
嫁入り道具なんてものも、もちろんなくて。
きっとお義母さんは、ずいぶん呆れていたと思う。
石川県、能登の方は、しきたりをすごく大切にする文化だというのを、話に聞いてはいたけれど
結婚5年後くらいの時に、友達から『能登の結婚とは!』という話を聞いて、
「しまったー!!!」と思うような出来事もあったっけ。
でも、ありがたいことに、私は「よそ者」だったおかげで、非難は免れたんだと思う。
能登の年配の人って、県外からの人を普通に「よその人」って言ってくるんだけど、私にとってはラッキーだったかも。
「よそもん、って言われたー!」ってプンプンしていた子もいたけど、私は「そうですよ、よそ者ですよ」って思ってたから、何とも思わなかったな。
「ごめんなさい、知りませんでした。新潟出身なんで。アハハ」で丸く収まることも多々あったし。
お義母さんも「そうよねぇ、新潟の人だもんね」で諦めがついてた部分が、かなりあったと思う。
まぁ、それは能登だけでなく、日本各地の田舎では同じようなことが起きているのかもしれないけど。
少なくとも、私がそれまで暮らした生活圏とは全く異なる価値観の地域に来てしまったのは確かだ。
まぁ、東から西へ行くって、こんな感じかもね。
話は戻って、
結婚して、今の家に引っ越してきたとき、一人暮らしで使っていた家具家電は友人にあげたり、処分したりして、身軽にやってきたわけだけど、
なかなか、馴染めなかったな。
「家」に!
「家」自体というか、「家」という空間に。
それは、味方がいなかったからかもしれない。
全て揃っている家に、ポンと飛び込むって、
不便さはないけど、
私が一番新入りなわけで
心もとないというか、なじめないというか。
なんともいえない
アウェイ感を痛烈に感じた。
今ではすっかり忘れちゃった感覚だけど、数年前までは確実にあった。
最近、漆喰塗ったり、ペンキ塗ったり、家のメンテナンスにはまっていたんだけど
「今一番この家を愛しているのは私じゃん!」
ってはたと思った。
ウッドフェンス塗ってるときに!
家からも、頼りにしてまっせ感がひしひし伝わってきたんだよね。
不思議な感覚だったわ。
やっと「ホーム」になった感じかな。
時間かかりすぎ。
引っ越しの伴う結婚って、少なからず、アウェイ感があるものだと思う。
同居だったら特に!
そういう時に、ずっと使ってきた物たちは、あなたの強い味方になってくれるのかもね。
なんなら、旦那さんより頼りになるかもよ。
奥さんも大事だろうけど、やっぱり自分の親のほうが大事って部分は誰しもあると思うんだよね。
それを感じた時のアウェイ感はものすごいと思うけど。
今、インスタントな世界になってきて
プラスチック、安物で溢れていて
気に入らなければ、買い替えればいい、捨てればいいって価値観が主流。
または、極端に物を家に置かない暮らしとか。
一生使っていくつもりで買うものなんて、ほとんどない世の中だけど。
手入れして使い続ける物、子供が気に入れば譲っていくことができるくらい長持ちする物、っていいなぁって思う。
付き合いが長くなるにつれ、だんだんと、心が通じていく感じがするというか。
私の一部になっていくというか。
特に、家事を担う女性なら、大事にしたいのがキッチンにあるもの。
例えばお皿。
今ようやく、私好みのお皿がそろって、ものすごく安心している。
これからもし、引っ越すことがあっても、このお皿たちは連れていきたい!
そう思えるお皿たちが私の人生に登場してきた。
暮らすということは、生きる場に味方を作っていくことなのかもしれない。
それは人だけでなく、物も同様に。
wai