めだか屋で奮闘しまっせ(フィクションです。)
第二十五話 めだかも空を飛ぶの巻(1) <==以前はこちら
第二十五話 めだかも空を飛ぶの巻(2) <==以前はこちら
第二十五話 めだかも空を飛ぶの巻(3) <==前編はこちら
第二十五話 めだかも空を飛ぶの巻(4)
そして、一週間が経ち召田輔(めだすけ)とあかねは再び観賞魚協同組合の施設へ来ていた。
施設前には、熱帯魚展や日本産魚類展、めだか展の各展示企画メンバーの他、県の職員や教育委員会などからの招待客、出展協力団体やスポンサーの代表者、それに、設置に携わる作業担当者やボランティアなど、総勢150名が集まっていた。
それを見た召田輔は「こんなにおりまんのかいな。」と驚くと共に、急に身動きがぎこちなくなってきた。
召田輔とあかねは、整然と並べられた椅子の最前列に座らされ、司会の挨拶で厳かに発足式が始まった。
組合長の挨拶から始まる予定であったが、組合長は欠席のため助役が代行で挨拶し、観賞魚展示会の主旨や開催日程、段取りなどの大まかな説明を行っていた。
あかねは「組合長に会えると思ってたのに残念ね。」と言っていたが、「ほんまでんなあ。」と言いながらも緊張でそれどころではない召田輔だった。
続けて、各代表者の挨拶の後、熱帯魚展の監督から発足の挨拶となり、それぞれの監督が流暢に説明しているのを聞いて、何も考えていない召田輔は目の前が真っ暗になっていた。
三番目に召田輔の順番が回って来て、コチコチに固まった召田輔は一人で立ち上がれず、あかねに腰を押されて一緒に壇上に上がったものの、
「わいは、めだか展の監督でおます。こういうとこで話すのは苦手やさかい、あかねちゃんから説明さして貰いま。」と、いきなりあかねに振った。
あかねは「何、言うてんのん、冗談やないで。」と、突っぱねたが、
「せやかて、わい良う喋らんで。」
「そんなんやったら、先に言うといて。」と、もめているのを見て、静かだった会場がざわついた。
恥ずかしくて逃げ場も無くなったあかねは仕方なく、大阪から呼ばれたいきさつから説明を始めた。
「大阪でめだか屋をやってまして、何や知らんけど召田輔さんが招待されはって。」
すると、召田輔が「せやねん。何でか分かりまへんねん。」と合いの手を入れてくるが、あかねは無視して続けた。
「めだか展の企画を聞いてたら、凄い面白いのばっかしでして。」
「ほんまでっせ、めだかもビックリでっせ。」
「めだかのクイズみたいなんとか、冒険クルーズとか、家族で楽しめるんちゃうかと思いますし。」
「そうでんなあ、子供もビックリでっせ。」
「ビックリちゃうでしょ。ワクワクでしょ。」
「そうかいな。」
「それに、めだかが色んなとこ泳ぎ回ったり、空を飛んだりする企画もあって綺麗やと思います。」
「めだかが飛びまんねんで。わいも大阪から飛んで来ましたけどな。」
「ほんまに監督してくれって言われた時は驚きましたけど。」
「ほんまでっせ、何言うとんのか思てビックリでしたで。」
「ビックリばっかしでんねェ。」
「しゃーおまへんがな、ほんまにビックリなんやさかい。」
少し慣れて来た召田輔は、あかねの話に漫才のように上手く合いの手を入れるので、会場は爆笑の渦に巻き込まれた。
「こんな、デコボコな監督ですけど、精一杯やらして貰います。」
「わいもビシバシやりまっせ。」
「挨拶もまともに出来へんのに、何処がビシバシやのん。」
「いや、本番はビシバシでんがな。」
「良う言わんわ。お後が宜しいようで。」
盛大な拍手に包まれて、真っ赤になった二人は走るように席へ戻った。
雰囲気が一変した会場は、皆の笑顔を残したまま幕となった。
発足式の後、めだか展企画メンバーと共に開催地であるアリーナの下見と、段取りの打ち合わせを兼ねて懇親会が開かれた。
皆から「大阪の人は、皆、あんなに楽しいのですか。」と口々に聞かれ、「そんなことおまへんで。」と、照れまくる召田輔だった。
(つづく)
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