虹の約束♪ -21ページ目

虹の約束♪

「いつも喜んでいなさい・・・」

アルは人の悲鳴で眼を覚ました。

 

まだ漆黒の闇が周囲を取り巻き、夜明けには時間がある。

ラーモセが隣でうなされていた。

さっきの悲鳴はラーモセのものだった。

 

 

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アルが側によると息を荒げて寝汗をかいている。

おそらく怖い夢を見たのだろうと手を握る。

こんなことは初めてだった。

 

アルが額の汗を拭うと、ラーモセが眼を覚まし、半身を突然起こした。

アルは落ち着かせようと身体を横にさせ母親のように頭を優しく撫でる。

 

「大丈夫、何も心配しないで、きっと怖い夢を見たのね。安心して眼を瞑って」

 

「今、俺は何か言ったか?」

 

「ううん、ただうなされていただけよ」

 

ラーモセは眼を凝らすように一点を睨んでいた。

疲労からか、どうやら神経が過敏になっているようだった。

 

アルは穏やかに言う。

「眠るまで私が側にいてあげるから、今夜はゆっくり休んで。

この前、私が熱を出したとき、ラーモセ、ずっと側にいてくれたでしょう。

今度は私の番。だから大丈夫だよ」

 

 

 

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ラーモセはゆっくりアルに視線を移した。

アルは口元に微笑みをのせて頷いた。

 

ラーモセは眼を瞬いてはにかみ顔を逸らす。

身体は大きいがまるで駄々をこねる子供のようだった。

 

「お前の世話にならなくても俺は大丈夫だ。お節介焼くな。さっさと寝ろ。

いつも寝坊するくせに、偉そうに言うな」

 

ラーモセは口を尖らせた。

それが小さな男の子のように可愛くてアルは思わず笑った。

 

「何を笑っている?むかつくな」

 

起き上がろうとするのをなだめて寝かせた。

 

アルは静かに言い聞かす。

「いっつもラーモセにしてもらってばかり。たまには私もラーモセの世話をしたい。

ねえ、いいでしょう、ラーモセが眠る側にいても。私がそうしたいの」

 

「好きにしろ」

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

 

四角四面の枠にとらわれて身動きできなかった以前の自分とは違う、

別のもっと自由な自分がここにはいた。

 

仮にこの自分ともっと早く出会っていたら、私は死なずにすんだのだろうか。

ふいとそんな思いが過る。

 

 

 

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内心の声を振り払おうと頭を横に振ると、いきなりラーモセの視線と衝突し、

慌てて眼を逸らした。

 

執拗にラーモセは、疑視し続けていたのだ。

引きつった笑いを返す。

 

「やっぱりエセが来て、何か余計なことを言ったんだな。まあ、いい。

これからはもっと厳しくお前を監視してやる。覚悟しておけよ。もう疲れた、俺は寝る」

機嫌を損ねたのか眼を剥(む)き、ラーモセは珍しく早く床に就いた。

 

ラーモセの短気には多少慣れたものの、今夜の彼の眼にはいつもの力が抜け落ちてどこか違っていた。

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

 

翌日の陽が傾きかけた頃、ラーモセが戻った。

帰ってからもすぐ働くのはいつものことだが、さすがに疲れた顔をしていた。

 

働き者というより、ここでは生きることが即ち働くことなのだとアルは内心で頷く。

 

大人も子供も働くことを止めてとき、それは死を意味した。

 

 

 

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ジャッカルたちは主人の帰宅を素直に喜んだ。

アルは、自分の意識の中で占め始めたラーモセの座が広がるにつれ、

途端にうまく話せなくなってしまい焦った。

 

関係が気まずくならぬよう、夕食で出されたものはとにかく口に詰め込んだ。

嚙み砕くのもそこそこで、挙句喉を詰まらせてしまった。

 

「バカか、そんなに一遍に詰め込んで。何考えているんだ、まったく」

 

そう言いながらもラーモセはアルの背中をさする。

アルはこの一言で落ち着いた。

 

「だって、食べ物を残すと怒るじゃない、無理にでも食べなきゃって、それで」

 

ラーモセの笑顔に淋しさがこもるのをアルは見逃さなかった。

 

それは環境に耐え抜いた生命のきらめきのような、生きようとする直向きな意志のようであり、

アルの眼にはとても眩しく映った。

 

おそらくエセからラーモセの過去を聞かされたからに違いなかった。

 

その上、老婆から聞かされた忌ま忌まわしい試練とやらがそう思わせるのか。

ともすればアルの中ですでにその使命感が芽生え始めたとも言えた。

 

 

 

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そんな複雑な思いを表情に出すまいと、アルは懸命に、あえて明るく振る舞った。

ラーモセは野放図に、何も頓着しないように見せて、

実際は繊細な洞察力の持ち主で、その勘が優れていることをアルはとうに気付いていた。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

観察するような鋭い視線を向け威圧する。

 

ほうらきた、アルはこの敏感さに内心舌打ちする。

心の動揺を悟られまいと邪険に答えた。

 

「別に。いつもの同じです」

 

ラーモセは訝しげな表情を崩さずフンと鼻を鳴らす。

 

決して紳士的とは言えず、乱暴かつ短気で何を考えているのかわかり難い男だ。

一面では怖いほど冷たい表情を見せる。

なのに安心するのは何故だろうか。

 

コインの両面のように陰と陽が同居しているようだ。

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

 

 

 

 

突然現実感が返った。

風が渡り、鳥や蛙の鳴く声が戻る。

満天の星は一層輝きを増し、オレンジ色の月光がアルの視野に飛び込んだ。

 

 

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老婆は忽然と姿を消していた。

いつの間にかジャッカルたちが側にきて心配そうにアルの手を舐める。

 

アルはジャッカルの喉元を優しく撫でてやる。

「起きよ、光を放て」という老婆の声がいつまでも頭で響いた。

 

しばらくの間この恍惚状態から覚めることはできなかったが、

無性にラーモセに会いたかった。

 

もっともただ人肌が恋しかっただけなのかもしれない。

それでもラーモセの存在がアルの内で大きくなり、はっきりとそう意識し始めた。

 

 

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アルは自殺したことを悔やみ始めていた。

死んだら楽になれると思ったことは、間違いだった。

 

むしろ今は重荷を背負わされたように思えてならない。

生きるという重荷が伸しかかる。

 

しかしもうどこにも逃げられなかった。

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

 

 

 

 

アルは脱力感に陥りながらも抵抗を続ける。

熱いものが奥から喉を締め付けた。

 

 

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「神でもないあなたに何がわかるというの。

私がそんなに悪いことをした? 冗談じゃないわ。

それなら今すぐ死なせてよ。

誰が生まれたいって頼んだ?

帰して、私を元いた世界に帰して。

もうこんなところはいや。

普通に生きたい、平凡でいいから普通に生活がしたい。

お願い、もう死んだりしないから」

 

 

 

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老婆の声が哀れむように優しい。

 

「アル、もう遅いのです。

あなたは選んでしまったのですよ。

普通の生活から逃げ出し、命を絶ってしまったのはあなたです。

その後、周りの人間がどれほどの悲しい思いになるかを、全く考えずに。

これからはその命の尊さを思い知るでしょう。

でもそれがアルへの神からの最後の贈り物です。

知りさない、限りある命こそ世を照らす光であることを」

 

 

 

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アルは膝を折り泣き崩れた。

 

「起きなさい。そして希望の光を放ちなさい。

諸国の民と地は闇に覆われています。

しかしあなたの上には神の光が注がれています」

 

 

 

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「パピルスの詩」