虹の約束♪

虹の約束♪

「いつも喜んでいなさい・・・」

「いつも喜んでいなさい。
絶えず祈りなさい。
すべての事について、感謝しなさい。
これが、キリスト・イエスにあって
神があなたがたに望んでおられることです。」


★1テサロニケ人への手紙5章16-18★





心は憎んだり恨んだり妬んだり
イライラしたりするものではなく、
喜び感謝するためにある。

そのどちらを選択するかで、
自分の生き方を決める分かれ道となるだろう。

★「考えるにはきっかえがいる」より★





主よ。あなたは、みことばのとおりに、
あなたのしもべに良くしてくださいました。

よい分別と知識を私に教えてください。
私はあなたの仰せを信じていますから。

苦しみに会う前には、私はあやまちを犯しました。
しかし今は、あなたのことばを守ります。

あなたはいつくしみ深くあられ、
いつくしみを施されます。
どうか、あなたのおきてを私に教えてください。

高ぶる者どもは、私を偽りで塗り固めましたが、
私は心を尽くして、あなたの戒めを守ります。

彼らの心は脂肪のように鈍感です。
しかし、私は、あなたのみおしえを喜んでいます。

苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。
私はそれであなたのおきてを学びました。

あなたの御口のおしえは、
私にとって幾千の金銀にまさるものです。


★詩篇119:65-72★










☆感謝と喜びを音譜




by cho









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・・・

 

翌朝になり食事の時間にも、顔を全く見せないネフェレト姫が気になり、アルはアセネトに事情を訊いた。

 

昨日はファラオのところから夜分に戻ったので、二人はまだ顔を合わせていない。

アセネトの様子もどこかぎこちない。

何かただならぬ問題が起きたのに違いなかった。

それでも王女に呼ばれるまでアルは待つより他ない。

 

 

 

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昼が過ぎても王女は姿を現さなかった。

部屋に閉じこもったままなので、アルは自分が食事を運ぶと、自ら名乗り出た。

 

部屋の外からアルは声をかけた。返事がない。

諦めて戻ろうとしたとき、中から声がした。

 

「アルだけ入ってもいいわ。他の人はだめ」

 

アルが部屋に入ると、物が壊されひっくり返り、乱雑に飛び散っていた。

明らかに癇癪を起した名残だ。

 

ネフェレト姫は泣き腫らした眼をしている。

一晩中泣いていたようだ。

 

 

 

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アルは無言で王女の肩を抱きしめた。

王女は子供のようにアルの肩に頭を預けた。

 

「私、結婚するんですって。知らない国の知らないおじさんと。

昨日聞かされたわ」

 

アルは驚き、まるで他人事のように話すネフェレト姫の顔を凝視した。

 

「この王家に生まれたときから覚悟はしていたけど、私は十六歳よ。

まだ花の乙女で、恋だって一度もしたこともないのに。

収穫の時期になったら嫁がなくてはならないみたい」

 

アルは眉根を寄せ気の毒そうに訊く。

 

「お相手は誰なの?」

 

「ヒッタイト国の王様。もうかなりおじさんよ。

エジプトの歴史を見ても、政略結婚は当たり前。

身内同士の結婚もよくあるわ。父親や兄弟たちとね。

国の利益や権力を守るため。そう聞かされて育ってきたのよ。

ここに生まれた者に自由なんてない。

ただ言われるままに生きるしかないのよ。特に女はね。

だからそれに反発もしたし、男に負けないくらい勉強もしてきた。

所詮、無駄な抵抗だったけど。仕方ないのかもしれない。

一晩泣いたら少しは落ち着いたわ。

ただ悲しいのは、一度も愛されず愛することもできなかったこと。

燃えるような恋がしたかったわ。お話に出てくるような。

もうそんな時間もないし、そんな男の人もいないわ。

あきらめるしかないのかも」

 

・・・

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

 

・・・

 

夜が更け、漆黒の闇が空を覆うと、星たちが楽しそうに顔を覗かせる。

 

ベランダに出てアルは輝く星を見上げた。

東の空に一段と力強く光を放つ星を、アルはラーモセと名付けていた。

 

そしていつも話かける。

 

 

 

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「こんばんわ、ラーモセ」

 

アルはこの星を見る度にどれほど勇気をもらったかしれない。

気持ちの沈んだ日はなおのこと、明日への希望を与えられた。

 

独り夜回りを続けていたラーモセの足が止まった。

そしてゆっくり空を見上げた。

 

その顔に一瞬、弱気が乗せられる。

それでも夜の星を見続けた。

 

その瞳に星の光の微粒子が映る。

取り払ってもアルの顔が脳裏に浮かぶ。

 

「あきらめられるくらいならとっくにそうしている。

あいつに手を出せば必ず苦しむと、出会ったときからわかっていた。

それでもどうしようもない。

お前に俺の気持ちがわかってたまるかよ。

そんなの誰にもわからないさ。

だけどお前にだけは話していくよ」

 

 

 

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ラーモセは星に話しかけた。

誰にも打ち明けられない自分の気持ちを。

 

夜もまだ続く。ラーモセの仕事は夜に行う。

夜もまた悪くないと、ラーモセは心の声で自分に言い聞かせた。

 

夜でなければあの星とは出会えないのだから。

 

闇には闇の、美があるのだからと。

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

・・・

 

サブは罵った。

 

「勝手にしろ。人が心配してやっているのに。

何を呑気なことを言ってやがるんだ」

 

エセはサブの背中をポンポンと叩く。

 

「そう怒りなさんな。

ラーモセには彼なりの考えがあるんでしょう。

私たちがやきもきしても仕方ないわ。

それでもラーモセはアルの側にいたいのよ。

たとえ今は会えなくても」

 

 

 

 

 

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サブは沈んだ表情で、舌打ちする。

 

「だから俺はあいつの顔をみていられないんだ。

本当は辛いのに、会いたいくせに、

意地張って平静を装っているあいつをな。

もっと自分の気持ちを吐き出せばいいじゃないか。

せめて俺やエセの前だけでも」

 

 

 

 

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「それがラーモセでしょう。

私たちはいつまでもラーモセやアルを見守ってあげましょう」

 

サブはエセを見て、フンと鼻を鳴らす。

 

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

・・・

 

馬車の扉は閉じられ動き出した。

またもや馬に乗った衛兵たちに阻まれ外は見えない。

それでもアルは嬉しかった。

 

たった一目でもラーモセの姿を捉えたのだから。

 

 

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離れて行く一行を見送りながら、サブはラーモセの側でやかましく言った。

 

「いいのかこれで?

お前たちこのままでは本当に駄目になってしまうぞ。

見たか?ヨセフとアルはかなり親しそうにしていた。

お前はそれでも平気なのか?

全く会えもしないのに、このままここにいることがお前の望みか?」

 

ラーモセは不機嫌に顔を背けた。

 

サブは、

 

「俺もここへ来て色々なことを知った。

役人たちや高官たちを見ていて、なんて偉そうなんだって思った。

階級が全てみたいな態度だ。ヨセフその頂点に君臨している。

そのヨセフがアルに見せるあの気さくさは、普通じゃあり得ねえ。特別な間柄だ。

アルが男装しているので周りはさして気にしてないんだろうが、俺でさえ気を揉むほそだ」

 

と付け足した。

 

ラーモセは自分の足元を睨み黙ったままだ。

 

 

 

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エセが近寄り、アルの言葉を伝えた。

 

 

 

 

それを聞いたラーモセは沈んでいく太陽を見上げた。

そしてふいと自嘲的に笑う。

 

 

 

 

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「人間の営みや思いがどうであれ、明日もまた太陽は昇り、世界は回っていく。

何も変わらない。そこに何か付け加えることっも、取り除くこともできない。

アルが俺に教えてくれた。

俺たちはずっと太陽が、俺たちの周りを回っていると考えていたが、

俺たちのいる世界が太陽を中心に回っているんだってことを。

それが本当なら、なおさら俺に何ができる?

俺の気持ちがどうであれ、アルをどう思おうと、そこから逃げることもできないし、

変えることも、誰かが奪うこともできない。

俺のできることは、今日も働き、太陽と共に起きだし、一日を太陽と共に終えることだけだ」

 

ラーモセは仕事に戻った。

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

 

 

 

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・・・

 

(十三)

 

ネフェレト姫が公務を兼ねて、父親であるファラオに呼ばれ出かけた。

ちょうどそこへヨセフが到来する。アルに向かってこう誘った。

 

「今から仕事でピトムに行くことになった。王の倉庫の街だ。アルも一緒に連れて行く」

 

アルの顔がにわかに輝いた。

そこはラーモセやアケトみんなが働く場所だ。いきなり気持ちが躍った。

みんなに会える、そう考えただけで全てが肯定できるようだった。

 

 

 

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ファラオの馬車に再び乗せてもらい向かった。長い行列だった。

衛兵たちに前後左右囲まれ、窓の外を眺めることさえできない。

しかしラーモセの顔を思い浮かべ、どうしても口元がほころぶ。

 

到着すると、出迎えの者たちがこれまた行列を成していた。

みんなの顔を捜したが、敷地は広く見つからない。

穀庫を見て回り報告を受けるヨセフの後に付き、

アルはあちこちに眼を配るが依然会えない。

次第に焦りが生じる。

 

宿営所に入りそこで打ち合わせにヨセフは足を止められた。

単独で捜し回るわけにもいかず、アルの気持ちはすっかり萎えた。

 

ヨセフが立ち上がったときはすでに仕事は終了し、残酷にも帰宅のときがやってきた。

 

 

 

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宿営所を出ると夕刻が迫り、黄金色に染まっている。

半ば諦めていたアルの眼に、突然エセが飛び込んできた。

走ってきたかのか息が弾んでいる。

 

エセは無言で指を差した。

そちらに急いで視線を走らせると、ラーモセの姿があった。

遠くてもすぐにアルにはわかった。

 

側にはサブやアケトもいた。

駆け寄りたくてもそれは無理だった。

何度もアルは振り返った。

 

馬車に乗り込むその寸前、エセが衛兵に言葉をかけた。

 

「お花を渡したいんです。いいですか?」

 

 

 

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衛兵は難色を示したが、相手が若い女性だったので安心したのか、許可された。

エセがアルに花を差し出す。

 

アルは早口で囁いた。

「ラーモセに伝えて。毎日星が出る頃、東の空を見ているって。

星を見る度にラーモセを思っている、絶対忘れないからって」

 

エセは頷いた。

 

 

 

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「パピルスの詩」