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翌朝になり食事の時間にも、顔を全く見せないネフェレト姫が気になり、アルはアセネトに事情を訊いた。
昨日はファラオのところから夜分に戻ったので、二人はまだ顔を合わせていない。
アセネトの様子もどこかぎこちない。
何かただならぬ問題が起きたのに違いなかった。
それでも王女に呼ばれるまでアルは待つより他ない。
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昼が過ぎても王女は姿を現さなかった。
部屋に閉じこもったままなので、アルは自分が食事を運ぶと、自ら名乗り出た。
部屋の外からアルは声をかけた。返事がない。
諦めて戻ろうとしたとき、中から声がした。
「アルだけ入ってもいいわ。他の人はだめ」
アルが部屋に入ると、物が壊されひっくり返り、乱雑に飛び散っていた。
明らかに癇癪を起した名残だ。
ネフェレト姫は泣き腫らした眼をしている。
一晩中泣いていたようだ。
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アルは無言で王女の肩を抱きしめた。
王女は子供のようにアルの肩に頭を預けた。
「私、結婚するんですって。知らない国の知らないおじさんと。
昨日聞かされたわ」
アルは驚き、まるで他人事のように話すネフェレト姫の顔を凝視した。
「この王家に生まれたときから覚悟はしていたけど、私は十六歳よ。
まだ花の乙女で、恋だって一度もしたこともないのに。
収穫の時期になったら嫁がなくてはならないみたい」
アルは眉根を寄せ気の毒そうに訊く。
「お相手は誰なの?」
「ヒッタイト国の王様。もうかなりおじさんよ。
エジプトの歴史を見ても、政略結婚は当たり前。
身内同士の結婚もよくあるわ。父親や兄弟たちとね。
国の利益や権力を守るため。そう聞かされて育ってきたのよ。
ここに生まれた者に自由なんてない。
ただ言われるままに生きるしかないのよ。特に女はね。
だからそれに反発もしたし、男に負けないくらい勉強もしてきた。
所詮、無駄な抵抗だったけど。仕方ないのかもしれない。
一晩泣いたら少しは落ち着いたわ。
ただ悲しいのは、一度も愛されず愛することもできなかったこと。
燃えるような恋がしたかったわ。お話に出てくるような。
もうそんな時間もないし、そんな男の人もいないわ。
あきらめるしかないのかも」
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「パピルスの詩」
















