「どうしようもないんだ。俺がどんなに愛しても・・・」
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「どうしようもないんだ。俺がどんなに愛しても、アルを救えない。
あいつはなかなか食事が取れない。少しずつ痩せて確実に体力も以前より落ちている。
俺の母さんを憶えているだろう?
宮廷での生活に馴染んでいた母さんは、ここでの生活には耐えられなかった。
アルも同じなんだ。俺は母さんを救えなかった。
あのときはまだ子供で、仕方がなかったんだと思っていたが、今も俺はこんなに無力だ。
愛する女を守ることさえできない。
ヨセフなら、いや、あそこでの生活ならアルを救えるかもしれない。
医者もいるし、ここより楽な生活ができる。
俺はあいつに生きていてほしい。
他には何もいらない。ただ側であいつを見守ってやりたい。
あいつのことが大切なんだ。
あいつが死んだら、俺は生きている意味を失くす。
あいつを永遠に失ったら、俺はどうしたらいいかわからなくなる」
ラーモセの瞳から一筋の涙が流れた。

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サブはラーモセの肩を優しく抱く。
「全くお前って奴は。一途なんだか、バカなんおか。
母親が亡くなったときであさえ、俺たちの前で泣くこともなく、
泣き言一つも言わなかった奴が、女のためには涙を流すとはな。
こんなに純粋な男だったとは驚きだ。
自分の感情をお決死して表に出さないラーモセを、
こんなに変えてしまったアルは、ある意味偉大だな。
それとも愛の力の為せる業か?うん?」
ラーモセは素直に答えた。
「自分でも不思議なんだ。人を好きになったことが今までになかったから。
初めてなんだ、こんな気持ちは。世界の景色が一遍に変わった。
輝いて見えるんだ。何を見ても何を聞いても、優しい気持ちになれる。
世の中ってこんな美しかったんだって、アルが教えてくれた。
それまでくすんでいた周りが、突然光を放ったんだ。
なんでこんな気持ちになれたのか、自分でもよくわからない。
アルのためならなんでもできる。この命も惜しくない」
サブは呆れ顔で首を振る。
「わかった、わかった。お惚気(のろけ)はもういい。もう何も言わなない。
ただ俺はお前を応援する。ヨセフの言いなりになるんじゃない。
お前と一緒に仕事がしたいだけだ。お前には俺が必要だからな。
そうだろう、素直にそう言え」
腕を回し、戯れにラーモセの首を絞めた。
「俺はお前やエセのお蔭で、これまで生きてこれた。それは本当だ」
サブは大袈裟に肩をすくめた。
「どうしたちゃったんだ、熱でもあるのか?
お前がそんなに素直だと、気持ち悪いな。
よしてくれよ、お前には憎まれ口がお似合いだ」
「そうかよ、二度と礼は言わない」
サブは甘い声を出して擦り寄った。

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「なら最後にもう一度だけ言ってくれ。俺様のお蔭だって。
忘れないように頭に記憶するから。一生俺はそれだけで生きていける」
ラーモセは粘りつくサブを肘で追いやる。
「気持ち悪いのはお前だ。俺に触るな。
さっきの言葉は撤回する。だから近付くな」
二人は子供の頃に戻ったようにじゃれ合った。
夕暮れ時のナイル川が一番美しい光を放つ。
川面が星屑を撒いたように輝く。
澄んだ空は真っ赤に染まった。
ラーモセは空を仰いだ。
アルの笑った顔が脳裏に浮かぶ。
心が挫けそうになる。
アルの自由にさせてやりたいという思う反面、誰にも渡したくないという抑え切れない思いが沸き上がる。
強い光を放つ瞳に、深い憂いが沈んだ。
サブはそのラーモセの思いを汲んで、まるで気付かぬ振りをしたまま、どうでもいい話を続けた。
ラーモセの瞳に涙が滲むのを静かに見過ごしながら。
静寂の川瀬に、水の弾ける音だけが響いた。

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「パピルスの詩」