虹の約束♪ -11ページ目

虹の約束♪

「いつも喜んでいなさい・・・」

・・・

 

アルは快活に言った。「帰ろう、私たちの家に」

 

ラーモセのアルを見つめる瞳は優しい。

それでもアルは、その瞳をかわし、どこまでも突き抜けるような澄んだ空を見上げた。

 

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絵の具で描いたような優しい青だった。

ラーモセに守られ頼りたくなる気持ちを抑え込み、必死に前を見つめた。

 

そして笑って言う。

「ラーモセは私が怖くないの?みんなは私のことを魔女だと思っているのに。

みんな私から逃げて離れて行った。当たり前よね、あんなことが起きたんだもん。

自分でも驚いたよ。何でラーモセは私と一緒にいたいの?」

 

 

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ラーモセは顔を背け、不機嫌に言う。

「自分でもわからないよ。お前なんかのどこがいいのか。頭悪いし可愛くないし」

 

アルは軽く睨み、納得したように言う。「そうだよね、でもそこまで言わなくても」

 

「しいて言えば俺の直感だ。

お前がどこから来て、一体何者なのか、考えないわけでもない。

知りたくないと言ったら嘘になる。

でもそれ以上に、俺の直感が、俺に確信させる」

二人はゆっくり砂漠を歩きだした。

 

 

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「確信?何の確信なの?」

アルはラーモセの顔を覗いた。

 

ラーモセはいつものように少し偉そうに胸を反らす。

「俺はお前といると幸せになれるという直感だ。

俺は王宮で王子として生まれ育った。

何不自由なく暮らし、周りの大勢の人間がガキの俺に跪(ひざまず)いた。

何でも自分の思いのままだったんだ。でも幸せだなんて思ったことは一度もない。

いや、幸せがどういうものなのか知らなかった。

だから初めて知ったんだ。お前と会えて、幸せがなんのか。

それまでそんなものがあるって、誰も教えては教えてはくれなかった。

だからお前は俺にとって特別なんだ」

照れたようにラーモセは顔を伏せた。

 

アルにとってもそれは同じだった。

ラーモセと出会わなければ、どんなに惨めな人生で終わったことだろう。

 

最後の最後に、神様くれた最高の贈り物だった。

涙が溢れそうになるのを堪え、ラーモセの温かい背中を見続けた。

 

 

 

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「パピルスの詩」

 

 

 

・・・

 

ラーモセはアルの首に手を回した。

「うん、もう二度と自分から死のうとはしないよ。ごめんね」

 

「本当かよ、信じられない」ラーモセはアルを睨んだ。

 

「どうしてもラーモセに恩返しがしたかったの。何かしたかったの。

だって私、ラーモセにもらってばかりで、何も返せないんだもん。

ラーモセにはたくさん色んなものもらった。本当だよ」

 

 

 

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二人の視線が重なり合う。

 

少しだけアルは、ラーモセの胸でお休みたかった。

アルは自分からラーモセの胸に身体を預けた。

「ラーモセも私と約束して。絶対長生きするって。白髪のお爺ちゃんになるまでずっと」

 

ラーモセは腕をアルの背中に優しく回した。そして穏やかに答えた。

「約束するよ。少なくともお前よりは、一日でも長く生きてやる。

さっきお前の悲しそうに泣く姿を見て、胸が張り裂けそうに痛かった。

あんな思いを二度とお前にさせたくない。他人の死体を見てあんなに悲しむお前だ。

俺は必ずお前より先に死んだりなんかしない。あんなお前を二度と見たくないからな」

 

 

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アルはラーモセから自分の身体を離した。

これ以上甘えてしまえば、二度と離れなくなる。

 

勇気を失ってしまい、気持ちが弱くなってしまうからだ。

 

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

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・・・

 

「私はこの人を埋める。一人でもやるわ。人間はこんなふうに死んだらいけないよ」

 

 

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「勝手にしろ」ラーモセは身体を翻し歩き出した。

 

アルの眼から溢れて止まらなかった。

眼の前の腐った遺体が、まるで自分のように思えたからだ。

今、自分の魂はここへ来たが、自ら傷つけ見捨てた自分の身体は、果たしてどうなっているのだろう。

 

もしかすると誰にも気付かれずそのまま見捨てられなかった。

誰にも気付かれず、誰にも見つけてもらえず、誰からも葬ってもらえないのはあまりにも悲しい。

 

 

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アルは、この人が死ぬ最後のときにどんな気持ちだったのかと考えると、悲しくたまらなかった。

独りで死ぬのは誰だって淋しいに違いない。せめて身体だけでも埋めてやりたかった。

涙が後から後から溢れて、とうとう堪えきれず、アルは顔を覆い大声で泣いた。

 

 

 

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「何してる?早く穴を掘らないと陽が暮れるぞ。泣いている暇なんてない」

泣き崩れた顔を上げ津呂、ラーモセはが木の枝で穴を掘っていた。

アルもそれを手伝った。

 

 

 

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ようやくその死体を埋めるだけの穴を掘り、遺体を穴に入れ、その上から砂をかけた。

 

「これで満足か?とっとと帰るぞ、全く」

 

「ラーモセ、ありがとう」

 

 

 

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ラーモセは溜め息を洩らす。

「アル、俺と約束してくれ。もうあんな真似はしないって。

昨日、どんなに俺が怖かったのか、お前にはわからない。

あんなに怖かったのは初めてだった。

 

 

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お前が俺の前から消えていなくなると思ったら、頭が真っ白になった。

母さんが死ぬときだってあんなに怖くなかった。

心が壊れそうだったんだ。あんなお思いは二度としたくない。

他のむから、もう自分から死のうなんて絶対考えるんじゃないぞ」

 

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

 

 

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・・・

 

風が渡っていく。次第に朝日が差し始めた。

冷え切った赤茶けた砂漠も大地に、再び太陽が照り返す。

膝から力が抜けてしまい、太陽にへたり込んでいたアルの横顔にも陽が差した。

 

 

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気を取り直し、辺りを見渡すと、そこに誰もいない。

辛じて立ち上がり振り返ると、ラーモセが両膝を抱えて座っていた。

自分の膝の上に顔を埋め、まるで死んだように動かない。

叱られた子供のように肩を落とし、打ちひしがれていた。

 

アルはラーモセの側に近付き、肩を揺すった。

「ラーモセ帰ろう、もう終わったよ」

 

 

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ラーモセはゆっくり顔を上げアルを見た。悲しい眼をしていた。

アルは心がひどく痛んだが、あえて明るく子供をあやすように言う。

「もう大丈夫だよ。一緒に帰ろう。ね」

 

ラーモセはアルから視線を逸らし、立ち上がると歩き出した。アルはその後に続いた。

いつもなら足の遅いアルに合わせてゆっくり歩くラーモセだったが、速度を落とすことなく進んだ。

アルは極限まで身体が疲れていた上に、気温が徐々に上がり、ついには、ついていくのが困難になっていた。

 

ふいと立ち止まると、何かの物体が眼に留まった。

物体の周りはハエが群がっている。ひどい異臭だ。

間違いなく人間の遺体だった。

アルは自分の口を両手で押さえ、ラーモセを呼んだ。

 

 

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ラーモセはすぐには反応せず、無視して歩き進んでいたが、アルが何度も執拗に呼ぶので、渋々立ち止まり振り返る。

「なんだ、なんの用だ?」

 

愛想のない声で冷たく言うが、アルは答えない。

アルは死体の前で座り込んでいた。

 

「だからなんだと聞いている?」怒ったラーモセが近付き怒鳴った。

 

「この人を埋めてあげようよ。このままにしたらいけないよ。絶対だめだよ」

 

ラーモセは腰に手を置き、さらに声を荒げた。

「もう死んでいる。今さら何をしても同じだ。動物だってみんな死ぬときはこうだ。

放っておけ、俺たちにはなんの関係もない」

 

「この人は動物ではないよ、人間だよ」

 

 

 

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ラーモセは眼をむいた。

「だからなんだ?旅の途中で行き倒れる奴はどこにでもいる。

それが砂漠だ。珍しくも何ともない。

いいか、これ以上俺をいらつかせるな。行くぞ」

 

アルはそこを動かない。

 

「俺にこれ以上逆らうなら、お前をここへ置いていくぞ。命令だ、立て」

 

アルは立たなかった。

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

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・・・

 

サブはラーモセを振り返り、言う。

「お前、眼を覚ませ。この女は危険だ。この先、必ずお前を苦しめるぞ。

アケトを抜けたければ抜ければいい。だけどこの女はやめろ。

それにこの女は、ずっとお前の側にはいない。わかっているんだろう。

いつかお前を殺すか、呪いをかけるに違いない」

 

 

 

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ラーモセの身体を両端で押さえていた男たちは、側から離れた。

ラーモセは顔を伏せていて、その表情は読めない。

アルも無言でただ佇んでいた。

 

ラーモセが口を開いた。

「みんな俺の眼の前から消えろ。

さもなくば全員殺す。誰も俺にかまうな。何も聞きたくない。

今の俺は何をするかわからない」

 

サブはなおも何か言いかけて、口を噤んだ。

ラーモセの身体から殺気が漂っていた。

 

 

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本気で今のラーモセは何をするかわからない。

引き下がる以外ないことを悟る。

サブの顔に落胆と孤独が滲んだ。

 

もうすぐ夜明けだ。

常に移動を続ける彼らにとって、陽が昇ることは出発の合図でもある。

サブとエセは顔を見合わせた。相手の気持ちは充分理解していた。

 

長い間家族のように、気持ちを寄せ合って生きてきたのだ。

サブの心に沈殿した敗北感にも似た懊悩を、エセはその瞳から受け取った。

 

アケトというより、この旅路は、三人の関係が終焉したことを意味しているのだ。

サブとエセ、アケトと流れ者の集団は無言で立ち去った。

プント人もいつの間にか姿を消していた。

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

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