虹の約束♪ -10ページ目

虹の約束♪

「いつも喜んでいなさい・・・」

・・・

 

翌朝目覚めると、ラーモセはすでに出かけていた。突然イウイアが訪ねてきた。

 

「どうしたの?ラーモセなら出かけているけれど、少し待っていれば戻ってくるよ」

 

イウイアはどこか遠慮気味で、気まずそうだった。アルは椅子を勧めた。

だがイウイアは腰かけることなく、無理に笑いを作った。

 

「もういかなくちゃ。ラーモセに用なんじゃないんだ。

ラーモセがいないのを知って来たんだよ。

ラーモセがいれば僕が来たことはすぐに勘付かれるからね。

今日はエセに頼まれたんだ。アルに伝えてくれって言われた」

 

アルは納得し大きく頷いた。「サブやエセ、アケトのみんな元気?」

 

 

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あれ以来何の連絡もなく、アルは彼らの行方が気になっていた。

自分のせいでこのままラーモセたちを仲違いさせたくはなかった。

イウイアはそれに答えなかった。

 

「今夜、エセがナイル川のパピルスの茂みで待っているって。

アルに話したいことがあるんだって。

ラーモセには内緒で会いたいって。

だから・・・それだけ、伝えに来た」

 

「一緒にお昼食べない?ねえ、いいでしょう。ラーモセもきっと喜ぶよ」

 

アルはしきりに説得した。

 

「すぐに戻らないと。今日ここへ来たのはサブには言っていないんだ。

それに、もうここには・・・多分来られないと思う。さようなら」

そう言うなりイウイアは、引き止めるアルを振り切り、小さな身体を翻し走り去って行った。

 

アルは呆然とそれを見送るほかなかった。

それでも嬉しかった。何とかエセとはつながりが持てた。

ラーモセに友人を失わせるわけにはいかない。

 

アルは夜を待った。

 

 

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

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・・・

 

「ここにいたのか、出かけるときは一言声かけろ。心配するだろう」

 

ラーモセは隣に座った。眼が笑っていた。いつもなら間違いなく怒るはずだ。

あの決闘以来、さすがのラーモセも、アルが一人で出かけても怒らなかくなった。

 

「今度、お前を連れて行きたい場所がある。もっと元気になったら一緒に行こう」

 

「え? どこ?」

 

 

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ラーモセは意味ありげに笑った。見惚れるような本当に美しい横顔だ。

ときどき自分が嫌になるほどだ。本人は全く関心がないようだが。

一度顔のことを誉めたことがあったが、ひどく叱られた。

 

「まだ秘密だ。行ったらわかる」

 

「楽しみだな、もっと色んなところを見てみたいな。たくさん思い出を作りたい」

 

 

 

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ラーモセはいつにない神妙な顔をした。

 

「アルには、俺のことを全て知ってほしい。

お前は自分のことを話したくないなら何も言わなくていい。

アルは、今のままでいいんだ。だけど、俺はお前に俺のことを全て話しておきたい。

お前がどこに行こうと、俺のことを覚えていてほしいから。

それにお前が側にいてくれたら、俺は過去の嫌な記憶も、忘れられるような気がする。

そしたらきっと新しく始められる。そのためにもお前に見せたいんだ。俺の世界を」

 

 

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「見てみたい、ラーモセの世界。そして絶対忘れないよ。ラーモセと出会ったことを」

 

アルは、本当のことをラーモセに話すべきか迷っていた。

果たして話したところで、彼は信じるだろうか。

自分でも今の現実が、実際に起きていることなのか、ときどきわからなくなる。

 

 

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今のままでいたかった。

普通に暮らし、ただラーモセの側にいられれば、充分に幸せだった。

時折両親や、以前いた世界のことも思い出す。

それは未来でありながら、アルにとってはむしろ過去の記憶になっている。

薄れていく記憶の中で、父や母の顔が脳裏に浮かぶが、アルはあえてそれを頭から消した。

思い出せばやはり胸が痛むからだ。自分のしたことの重責を今は忘れたかった。

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

 

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・・・

 

ラーモセは献身的に看病してくれた。

親でさえこんなに心配などしてくれなかった。

ありがたくてどう応えていいのかわかないほどだ。

 

病に倒れ苦しくとも、ラーモセが常に側にいてくれたので、

アルは心が満たされ幸せだった。

 

 

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しかし、アルの容態が少しずつ回復すると、ラーモセは文句を言い始めた。

 

「お前が悪いんだぞ、あんな無茶するから。自業自得だ。

もう一度あんな真似したら、ただじゃすまないからな。張り倒してやる。

俺をどんなに心配させれば気がすむんだ。むかつくぜ。

人の気持ちをもてあそんでそんなに楽しいか、え?  思い出しただけで腹が立つ」

 

「何よ、病人なんだから、もっと優しくしてよ。そんなに怒らなくてもいいじゃない」

 

「怒るな? よくそんな偉そうなことが言えるな、何様のつもりだ」

 

「だったrもう看病なんかしないででよ。独りでいたほうがずっと気が楽だわ」

 

やはりまた喧嘩になる。しばらく互いに口も利かない。

 

八日目にはアルは床から起き上がった。

久しぶりに見上げた空が眩しかった。

 

 

 

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一人でナイル川に出かけた。

依然と変わらず優雅に流れる大河は貫禄があった。

アルは圧倒した。気持ちがすっと落ち着く。

 

この力は一体なんだろうと、いつもアルは関心した。

カバの親子が葦の茂みから現れ、仲睦ましく川の向こう岸へゆっくり渡っていく。

水面がキラキラと光り輝き、星をちりばめたようだった。

 

 

 

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こんな風景を当たり前のように眺めている自分が、嘘のようだ。

自然からもらう恵みは、こんなにも人を豊かにしてくれる。

何故、人はこんな素晴らしいものを壊してしまったのだろう。

 

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

 

 

・・・

 

家に戻るなりアルは再び高熱を出し倒れた。

一週間も熱は下がらず寝込んでしまった。

 

 

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アルは恐れた。

少しずつだが、確実に体力が落ちていた。

命の灯火が弱まり、泉が涸れていくようだった。

 

アルは自分に与えられた使命を果たしてはいなかった。

憔悴感に捕らわれる。

 

 

 

 

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一体自分の身体は、あるいは魂はどうなってしまうのだろう。

本当に地獄に落ちてしまうのだろうか。それは嫌だった。

まだ命が続くと思っているうちは、天国も地獄も考えずにすむ。

 

しかし限られた時間だけが残された人間には、死んだ先に魂の行方は深刻だ。

残された時間も浪費することは許されない。

 

 

 

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たとえ肉体は朽ちても、魂の命は永遠に安らぎたいと思う。

それは、その究極の場所に立たされた人間にしか思えない実感なのだろう。

 

何故なら、この場合、欲は何の意味も持たない。

実際に目で見えるほしいものなど何もなくなる。

しいて望むものは、自分がこの世に生まれた意味、

生きた証、死んでいく理由が知りたいのだ。

 

 

 

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それを見つけるためには、まず自分の使命が何なのか、

果たすために何をすればいいのか、それが大事になるのだ。

それでもアルは不幸だとは考えなかった。

 

以前は自分ほど不幸で惨めな人間はいないと思っていた。

 

「どうせ自分なんか」、これが口癖だった。

 

今はむしろ幸せだった。

こんなふうに思い、感じることができた自分を誉めてやりたかった。

 

 

 

 

「パピルスの詩」

 

 

 

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・・・

 

アルは快活に言った。「帰ろう、私たちの家に」

 

ラーモセのアルを見つめる瞳は優しい。

それでもアルは、その瞳をかわし、どこまでも突き抜けるような澄んだ空を見上げた。

 

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絵の具で描いたような優しい青だった。

ラーモセに守られ頼りたくなる気持ちを抑え込み、必死に前を見つめた。

 

そして笑って言う。

「ラーモセは私が怖くないの?みんなは私のことを魔女だと思っているのに。

みんな私から逃げて離れて行った。当たり前よね、あんなことが起きたんだもん。

自分でも驚いたよ。何でラーモセは私と一緒にいたいの?」

 

 

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ラーモセは顔を背け、不機嫌に言う。

「自分でもわからないよ。お前なんかのどこがいいのか。頭悪いし可愛くないし」

 

アルは軽く睨み、納得したように言う。「そうだよね、でもそこまで言わなくても」

 

「しいて言えば俺の直感だ。

お前がどこから来て、一体何者なのか、考えないわけでもない。

知りたくないと言ったら嘘になる。

でもそれ以上に、俺の直感が、俺に確信させる」

二人はゆっくり砂漠を歩きだした。

 

 

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「確信?何の確信なの?」

アルはラーモセの顔を覗いた。

 

ラーモセはいつものように少し偉そうに胸を反らす。

「俺はお前といると幸せになれるという直感だ。

俺は王宮で王子として生まれ育った。

何不自由なく暮らし、周りの大勢の人間がガキの俺に跪(ひざまず)いた。

何でも自分の思いのままだったんだ。でも幸せだなんて思ったことは一度もない。

いや、幸せがどういうものなのか知らなかった。

だから初めて知ったんだ。お前と会えて、幸せがなんのか。

それまでそんなものがあるって、誰も教えては教えてはくれなかった。

だからお前は俺にとって特別なんだ」

照れたようにラーモセは顔を伏せた。

 

アルにとってもそれは同じだった。

ラーモセと出会わなければ、どんなに惨めな人生で終わったことだろう。

 

最後の最後に、神様くれた最高の贈り物だった。

涙が溢れそうになるのを堪え、ラーモセの温かい背中を見続けた。

 

 

 

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「パピルスの詩」