古格漂う、桃山時代に焼成された、岸岳系周辺窯の系譜に連なる白斑唐津の筒盃です。
端正に立ち上がる筒形に穏やかな外反を添えた姿は均整が取れ、過度な誇張を感じさせない品格を湛えています。
掌中に収まる量感と落ち着いた佇まいは、桃山期酒器ならではの古格を伝えています。
器面を覆う白濁釉は長石釉のような作為的な白ではなく、藁灰釉を基調とした灰分の働きと還元焼成によって生じた自然な色調です。
土味をわずかに透かしながら柔らかな光を宿すその肌は、唐津本来の素朴さを保ちながらも、どこか澄んだ印象を与えます。
焼成環境がもたらした偶然性がこの器の大きな見どころとなっています。
口縁には窯中で生じた石ハゼ状の景色が見られ、焼成の偶然が桃山古陶ならではの力強さを伝えています。
高台内には縮緬皺が現れ、高台の力強い削りには岸岳周辺窯の気配が感じられ、白濁した静かな釉肌との対比に、古唐津ならではの野趣が息づいています。
見込みには細かな貫入が広がり、長い年月を経た器だけが持つ枯淡の表情が宿っています。
華美に走らず、しかし確かな存在感を備えたこの盃は、唐津酒器の中でも稀有な魅力を宿した器といえるでしょう。
白の静けさと焼成の力強さが同居する姿は、酒盃としての実用のみならず、掌の中で桃山の気配を味わう小さな古陶として愉しんで頂けます。
志野とも粉引とも異なる、唐津特有の白の景色を示す酒器は現存数が少なく、評価が高まりつつあります。
白き唐津の中でも、焼成の偶然がここまで豊かに現れた酒盃は稀少です。
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