天国からの宅配便

柊サナカ 双葉社 2022年2月



 

 

大切な人へ、あなたが最後に贈りたいものはなんですか?

友人に先立たれた孤独な老女、祖母と喧嘩別れした女子高生、
幼馴染みと結ばれなかった中年男、顧問の先生を喪った部活仲間……。

依頼人の死後に届けものをするサービス「天国宅配便」の配達人が贈る、心温まる感動の物語。




天国からの宅配便 時を超える約束」を先に読んだなが、これが最初の作品。



天国宅配便」とは、依頼人の死後に遺品の届けものを配達するというもの。


わたしたちの小さなお家

仲良し3人で住んでいたのに2人が亡くなり、生きる気力がなくなっていた夕子のところに、2人からの宅配便が届く。


オセロの女王

地方に住む高校生の文香は、東京からこの町にやって来た若いお嫁さんの茜にあこがれる。

しかし、祖母は厳しい人で、東京に行くことに反対する。


午後十時のかくれんぼ

真帆はかくれんぼが好きで、祐相手に高校生になっても誘いに来る…

かくれんぼも本格的だ。

真帆 がかくれるのは、祐に見つけてほしかったから……

女心が切ない。


最後の課外授業

高校3年生の時に入っていたサイエンス部顧問から手紙が届く。

「二十歳になったら、お祝いに土手で課外授業をして、みんなで集まろうって約束、守れなくてごめん。でもみんなで集まらないか」と、日時と集合場所が書いてあり、部員四人を集めてほしいと。


それぞれの違う持ち物を持ち寄って、先生はいったい、なにをしようとしているのか?


先生は、高校生の頃、部員のこと、よくみていたのだな。


天国宅配便の配達人の七星は、ただ配達するだけでなく、届け先の人に寄り添っているところがよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐






をんごく

北沢陶 角川書店 2023年11月



 

 

さんは、死んでもまだこの世にうろついているんだよ――

大正時代末期、大阪船場。画家の壮一郎は、妻・倭子の死を受け入れられずにいた。
未練から巫女に降霊を頼んだがうまくいかず、「奥さんは普通の霊とは違う」と警告を受ける。
巫女の懸念は現実となり、壮一郎のもとに倭子が現われるが、その声や気配は歪なものであった。
倭子の霊について探る壮一郎は、顔のない存在「エリマキ」と出会う。
エリマキは死を自覚していない霊を喰って生きていると言い、
倭子の霊を狙うが、大勢の“何か”に阻まれてしまう。
壮一郎とエリマキは怪現象の謎を追ううち、忌まわしい事実に直面する――。

家に、死んだはずの妻がいる。
この世に留めるのは、未練か、呪いか。




骨を喰む真珠

が印象に残る作品だったので、他の北沢陶さんの作品を読んでみた。


霊の話で、この暑い夏には、ぴったりな作品かも。


壮一郎は、亡くなった妻の倭子のことが忘れないでいる。 


霊として戻って来てくれたとしたら、うれしい気持ちがある。

全く、違うものになったとは、受け入れられない気持ちもある。


壮一郎は、巫女の紹介で、霊を喰って生きているというエリマキと会う。


壮一郎は、このエリマキと実家の秘密について調べる。


霊を喰って生きているというエリマキを、最初は恐ろしいと思ったけど、だんだん印象が変わり、やさしい存在に思えた。


大正時代、大阪の商人の風習やしきたりなど、その時代の様子 が目にうかぶ。


霊とエリマキが絡む場面は迫力十分だった。


ぞっとするホラーでありながら、切なさの感じられる作品だ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


いつか月夜

寺地はるな 角川春樹事務所 2024年8月



 

 

会社員の實成は、父を亡くした後、得体のしれない不安(「モヤヤン」と呼んでいる)にとり憑かれるようになった。
特に夜に来るそいつを遠ざけるため、とにかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩く。
そんなある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているのに出くわした。
中学生くらいみえるその連れの女性は、塩田さんの娘ではないという……。
やがて、何故か増えてくる「深夜の散歩」メンバー。
元カノ・伊吹さん、伊吹さんの住むマンションの管理人・松江さん。
皆、それぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため、歩き続ける。
いつも月夜、ではないけれど。





善く生きる」とはどういうことなのか。


實成は不安から逃れようと夜道を歩く。

そのうち、いっしょに歩くメンバーが増えてくる。


同僚の塩田さんといっしょにいる中学生は、塩田さんと血のつながりはないという。


伊吹さんのいびつな恋人の関係……


そして伊吹さんの管理人の松江さん……


みんな何かしらの悩みをかかえている人たちだ。


つかず離れずの関係……

この関係がずっと続くわけではないが、こういう場があったからこそ、それぞれが新しい一歩を踏み出していけたのだと思う。


やさしい物語。


お気に入り度⭐⭐⭐


フェイク-マッスル

日野瑛太郎 講談社 2024年8月



 

 

たった3ヵ月のトレーニング期間で、人気アイドル大峰颯太がボディービル大会の上位入賞を果たした。SNS上では「そんな短期間であの筋肉ができるわけがない、あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声が持ち上がり、炎上状態となってしまう。当の大峰は疑惑を完全否定し、騒動を嘲笑うかのように、「会いに行けるパーソナルジム」を六本木にオープンさせるのだった。
文芸編集者を志しながら、『週刊鶏鳴』に配属された新人記者・松村健太郎は、この疑惑についての潜入取材を命じられ、ジムへ入会する。馬場智則というベテラン会員の助力を得て、大峰のパーソナルトレーニングを受講できるまでに成長。ついに得た大峰との一対一のトレーニングの場で、ドーピングを認める発言を引き出そうとするが、のらりくらりと躱されてしまう。あの筋肉は本物か偽物か。松村は、ある大胆な方法で大峰をドーピング検査にかけることを考え付くのだが――?
フェイクが氾濫する時代の、「真実の物語」が始まった。




大峰颯太のドーピング疑惑について、潜入取材を命じられた松村健太郎。


松村は、大峰颯太と話をするために大峰のパーソナルトレーニングを受けようと、日々トレーニングを重ねる。


週刊鶏鳴では、お荷物的存在だった松村 だが、根は真面目なのだろう、トレーニングに取り組んだり、独自の方法でドーピングを証明しようとしたりと一生懸命だ。


そんな松村が仕事に目覚めていく様子が面白い。


3ヵ月のトレーニング期間でボディービル大会の上位入賞できるような筋肉はできるのか?


誰が誰をだましているのか?


途中、挿入される竹中彩佳。

彼女が、どう絡んでくるのか?


テンポよく話が進み、面白い展開だった。


ドーピング問題は、なるほどと納得のいくオチ。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐





腕が鳴る

桂望実 祥伝社 2025年3月



 

 

どんな部屋に住みたいか。
それは、自分の人生を見直すことでもございます。
片付けが、わたくしの使命――
スゴ腕の整理収納アドバイザーが、
驚きのアイデアで散らかった部屋と人生を大そうじ!
人生の棚卸し小説。

夫に先立たれ一人暮らしのタカ子は、ついモノを買い込んで、気づけば家は散らかり放題。整理収納アドバイザーの中村真穂に片付けを依頼すると、棚の奥からタカ子の編んだ大量のセーターが現れた。
タカ子は迷わず「捨てる」と言ったのだが……亡き夫の愛とタカ子の再出発を描く「買い過ぎた家」のほか、クセは強いが腕は確かな整理収納アドバイザーの、人生をも整えるお片付け連作小説。





 夫が亡くなって、自分の裁量で物を買えるのが楽しくて、物があふれてしまった主婦タカ子。


部屋が散らかっていることで、けんかが絶えない大輔と直子夫婦。


服がクローゼットにあふれている、自分を評価してほしい主婦康代。


亡き友だち光男が飼っていたオウムと暮らす泰久。引っ越した時の ダンボールのまま部屋に積んである。


入院している間、部屋が散らかつてしまった。退院後、脚本を書けなくなった千栄。




整理収納アドバイザー真穂の提案とは?


真穂は、何でもかんでも捨てろというわけではなく、片付けの提案をしていく。そして、その人の人生を整理していく。


片付けはこれまでの自分を見つめ直し、これからの生き方を考える、とても大事な機会になります。〉


片付けすることで部屋がスッキリ。気持ちもスッキリ。

新たな道を見つけ出していく。


相談者に寄り添う真穂がよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


キネマ探偵カレイドミステリー

会縁奇縁のリエナクトメント

斜線堂有紀 光文社 2025年3月



 

 

「終幕だ。ここから……始めよう」
キネマ探偵、華麗なる復活!  7年ぶり、待望のシリーズ最新刊
そうしてめでたく英知大学を卒業した翌日、俺はひっそりと旅に出た――
名コンビの痛切なる別れ、再会の顛末は?

映画にまつわる数々の奇妙な事件を解決してきた「引きこもりの名探偵」嗄井戸高久(かれいどたかひさ)。事件簿に刻まれる、6つの新たな物語。



シリーズ4作目なのか?

前作品読んでない。

それでも、十分面白かったが、前作読んでいたら、もっと感動してただろう。


映画の話がてんこ盛りで、映画好きにはたまらない話だ。


奈緒崎は、

嗄井戸がひきこもっていたから、自分が必要だったと考える。

嗄井戸が外に出られるようになったとき、自分は必要ない。

だから、嗄井戸に必要とされる人物になろうと……



奈緒崎が行った先々の砂やら木やらのおみやげを嗄井戸が大切に残している所など微笑ましい。


ラストに感動!


いつの間にか、ふたりはなくてはならない存在になっていたんだな。


そんなふたりの関係がたまらない。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


小説

野﨑まど 講談社 2024年11月


 

五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。
一二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会い、二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。
そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。
しかし、その屋敷にはある秘密があった。



小説を 読むのが好きな内海集司。


集司の影響を受け、本好きになった外崎真。


モジャ屋敷に住む、小説家の髭先生。


この三人の交流を描く。


髭先生の屋敷で小説を読んで過ごす集司と真。

真は、 読むだけでなく、小説を書き始める。


とても仲の良いふたりだったが、

真が集司に「小説を書かないのか」と問うた時の異常なまでの集司の反応に、驚く。


小説の世界に入りこむ。
感想を述べるわけでもなく、小説は読むだけではダメなのか。



小説は読むだけでいいという結論に、ホッとし、気が楽になった。


小説愛に満ちた物語。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


願わくば海の底で

額賀澪 東京創元社 2025年2月



 

 


あの日、菅原晋也は私たちの前から姿を消した。
彼が過ごした、高校三年間の軌跡の物語。

東北地方沿岸部のとある高校。そこで起こるささやかな謎の中心には、いつだって彼がいた。校舎が荒らされた前夜に目撃された青い火の玉。プールサイドで昼食を取っていたとき、話しかけてきた同級生を水中に突き飛ばしてしまった女子生徒の真意。テーマ不明の、花瓶に生けられた花の絵。そして、高校卒業後大学に入学するまでの何者でもなかった2011年の"あの日"以来、私たちの前から姿を消してしまった彼自身──。これは大切なものほどなくしてしまう悪癖に悩まされ、それでも飄々と振る舞う青年が歩んだ、高校生活3年間の軌跡を辿りなおす物語。




からもらった花束やボールペンなど、大切に思っているのに、なくしてしまう。

大事なものを大事にできない悪くせを持つ菅原。

この悪癖のせいで信頼を失いたくない。

そのために起こした行動……


1話から4話は、

この菅原に関わった美術部の人たちや 先生、クラスメイトなどの話で、青春時代の一コマを感じさせる作品だと思ったのだが……


5話、

ある大きな出来事により、一変する。

2011年、東北地方といえば、すぐに思いつく。


あの日の後悔を誰にも話せずに胸に秘めている人がいる。

行方不明のままでは、気持ちの整理がつかず、ずっと引きずっている人がいる。


今でも過去の出来事として割り切れない人 がいることを今さらながら実感した。


5話が最初に出来、後で他の章が加えられたらしい。

それにより、登場人物たちの様子や事情がよくわかり、5話の話がより深みがましたと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

目には目を

新川帆立 KADOKAWA 2025年1月



 

 

なぜ少年Aは殺されたのか?

【罪を犯した「本当は良い子」の少年たち。奪われた命が、彼らの真実を浮かび上がらせる。】

重大な罪を犯して少年院で出会った六人。彼らは更生して社会に戻り、二度と会うことはないはずだった。だが、少年Bが密告をしたことで、娘を殺された遺族が少年Aの居場所を見つけ、殺害に至る――。人懐っこくて少年院での日々を「楽しかった」と語る元少年、幼馴染に「根は優しい」と言われる大男、高IQゆえに生きづらいと語るシステムエンジニア、猟奇殺人犯として日常をアップする動画配信者、高級車を乗り回す元オオカミ少年、少年院で一度も言葉を発しなかった青年。かつての少年六人のうち、誰が被害者で、誰が密告者なのか?





少年Aに娘を殺された母親は、少年法で守られた少年Aを探し出し、少年Aを殺し、復讐をはたした「目には目を」事件。


娘を殺した少年Aが誰なのかを密告した少年B。少年Bは、当時少年院でいっしょに過ごした六人の内の誰なのか?


ライターの 仮谷が取材をする形で物語は進む。



娘を殺されたからといって、殺人犯を自分で処刑するなんてことは普通はしないだろうが、復讐したことで恨みをはらすことができたのか?


復讐とは?更生とは?贖罪とは?

考えさせられる内容だ。


ライターがなぜ、取材しているのかも明らかになる。


少年院で過ごした時間だけが更生でなくて、これからの人生すべてが更生の場なのだと思った。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



名探偵再び

潮谷験 講談社 2025年4月


 

 

私立雷辺(らいへん)女学園に入学した時夜翔(ときやしょう)には、学園の名探偵だった大叔母がいた。数々の難事件を解決し、警察からも助言を求められた存在だったが30年前、学園の悪を裏で操っていた理事長・Mと対決し、ともに雷辺の滝に落ちて亡くなってしまった……。
悪意が去ったあとの学園に入学し、このままちやほやされて学園生活を送れると目論んでいた翔の元へ、事件解明の依頼が舞い込んだ。どうやってこのピンチを切り抜けるのか!?




時夜翔の大叔母は、有名な探偵であったが、凡人の翔は、そんな能力はない。

優秀な人材だと見せかけ、名探偵っぽさを演出していく。


そして、幽霊の協力のもと、事件を解決していく。



翔に反感を抱く輩がいて、翔を陥れようとする。


はたして、時夜翔は、乗り越えられるのか?


最後の方で明かされる事実!

まさか……

私は、まんまとだまされた。



自己顕示欲の強い翔が人間くさいし、どの事件にも関係している 水間先輩 が不屈の精神の持ち主で、たくましく、この物語を面白くしている。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐