DANGER

村山由佳 新潮社 2026年2月



 

 

世界的振付家・久我一臣にインタビューをすることになった、編集者の水野果耶と記者の長瀬一平。久我の半生を辿りつつ、戦前戦後の日本バレエを紹介するつもりだったが、彼が語る壮絶な戦争体験は、二人が思ってもみなかった縁を掘り起こしてゆく。芸術と戦争を通し、過酷な運命に希望を見出す人々に迫った、入魂の輪舞曲(ロンド)。




編集者の水野果耶と記者の長瀬一平は、振付師久我一臣にバレエの取材に行く。どのようにしてバレエを始めたのかや、どの先生についたかの話だったのが、いつしか戦争体験の話となっていく。


久我一臣が語る戦争体験は、あまりに過酷で読むのがつらい。志願して看護婦となった女性達の話も残酷極まりない。

気分がどーんと落ち込んでしまった。それでも先を読まずにはいられなかった。

その途中に、取材している果耶と一平の話がはさまれていて、一息つけた。

思ったことを口にしてしまい、チャラい感じの一平だが、時々みせる鋭い感覚、そして、果耶に対する思いやりが感じられた。


戦時下を生き延びた人の再会には 胸が熱くなる。

久我のバレエの新しい挑戦、果耶の再出発を応援したい。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

この世の果ての殺人

荒木あかね 講談社 2022年8月



 

 

小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。



 

小惑星「テロス」が日本に衝突し、地球がもうすぐ滅びるというのに、自動車 教習所に通う小春というのが、なんともシュールだ。


殺人事件に遭遇した小春は、警察が機能していない中、教官のイサガワと共に調べ始める。


このイサガワは、元警察官で、正義への執着がすごく、小春は振りまわされている感じ。


その途中で出会う、兄弟だけで過ごす人や、中一の少女、逃げ遅れた人たちの避難所で暮らす人たちとも出会う


なかなか面白い展開だった。


地球滅亡を前に、

避難する人、自殺する人もいれば、最後に、悔いの残らないようにしたいという人もいる。

何をしてもいいという殺人鬼も現れる!?


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



ギアをあげて、風を鳴らして

平石さなぎ 集英社 2026年3月



 

 

38回小説すばる新人賞受賞作。
小学4年生の吉沢癒知は、宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として信徒から崇拝されていた。幹部の母からは、神聖な身体を持つ者として、食事や他者との触れ合いを厳しく制限されていたが、自分に寄せられる信徒の信仰心や日々の「儀式」に抵抗をおぼえはじめていた。そんな癒知の前に現れたのは、家庭の事情で何度も転校を繰り

返している渡来クミ。引っ越し当初、近所を散策中に見かけた「めっちゃきれかった」癒知に興味津々。ある日、学校のトイレで遭遇したことをきっかけに、ふたりは距離を縮めていく。そして繋がりを持ったのは癒知とクミだけでなく、母親同士も親交を深めるようになり……。




宗教二世の吉沢癒知は、「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として日々を送っていた。

本人の意思とは関係なく、降り子という立場になり、母と触れることもできず、食事も制限されてる。
まだ、小学校には通っていたことが救いかな。
でも、小学校でも、浮いている存在で、特殊学級だった。

その学校に転校してきた渡来クミ。
癒知とクミはケンカから始まった関係だが、次第に打ち解けていく。

宗教……
本人が望んでのことなら、仕方がないのかもしれないが、家族、特に子供に影響があるのは、なんとも理不尽。子供たちは犠牲者だ。

癒知は、降り子としての厳しい規律の中で幸せとはなんだろうと考える。そして、今の生活に疑問を持ち始める。


癒知とクミは、まだ小学生なので、どうすることもできないことはたくさんあるだろうが、それでも大人たちに抵抗しようと、ふたりでの行動に胸が熱くなる。

ふたりで過ごした日々のことは、決して忘れないだろう。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

おぼろ迷宮

月村了衛 角川書店 2025年3月


 

 

おんぼろアパート『朧荘』に住む女子大生夏芽は、まるで異次元に迷い込んだかのような不可解な出来事に遭遇する。〈謎〉を解決するのは、隣に住む正体不明の老人、鳴滝。尋常ならざる人脈と驚異の推理力を駆使する彼は一体何者なのか。街にはびこる不可思議な事件の謎を、凸凹コンビがスイーツを食べつつ華麗に解決!






表紙と題名と最初の話から、異世界へ紛れ込んでしまう話かと 思いきや、現実の話だった。

朧荘に住む大学生の夏芽が、隣の住民のおじいさんの鳴滝の力を借りて、謎を解決していく物語。

一話、二話は序章で 三話が、本題。

この鳴滝っていったい何者?
  強面の剛田やゼミの教授も話に絡んできて、謎の解明にあたる。

夏芽と鳴滝のふたり、プリン食べ歩きの人探しは、面白い部分ではあるが、そんないやになるほど食べなくても、聞くだけでもいいのに~とも思う。


事実は……
う~ん、
結果よければそれでいいのか。
釈然としないなあ。


でも、人のつながりを感じ、最後は、 オンボロとも言える朧荘にみんな集まり、いい終わり方だった。

お気に入り度⭐⭐⭐



君と29.5日の月夜を何度でも

清水晴木 スターツ出版 2025年11月



 

 

「うん、見つけた」——ある夜の幕張の海。大学生の藤峰海は不思議な少女・美月に出会いそう言われた。帰る家がないと言う彼女に対し、ひとり暮らしをしていた海は一緒に住むことを提案する。同じ家で暮らしていく中で距離が縮まっていくふたりだったのだが、出会いから1か月後、美月は突然姿を消してしまう。そして、海が次に出会ったのは少し大人びた見た目の美月だった——。29.5日、つまり月の満ち欠けとともに生まれ変わりをしてしまうという美月に、どんな姿の彼女でも愛すると誓う海だったが…。号泣必至、この世界に生きるすべての人に贈る究極の愛の物語。




29.5日で生まれ変わりを繰り返す美月を 海は、ずっと愛することができるのか?

それは、説明文より、年とった美月を想像したが、そうではなかった。


それはどういうことなのかは、読んでもらうことにして……


生まれかわった美月を海は、愛し続けた。


では、美月は、どうなのか?

幕張の海で、美月の「うん、見つけた」という言葉の意味がわかったとき、美月の深い想いを感じた。


ずっと、見守っていたんだな。


愛の物語。


お気に入り度⭐⭐⭐

アフターブルー

朝宮夕 講談社 2025年7月



 

 

納棺師、遺品整理士、生花装飾技能士……葬儀関係のプロ集団「株式会社C・F・C」。
とりわけ損傷の激しい遺体を専門に扱う「二課」は、無残な状態から生前の面影を復元するのがミッション。
事故、事件、自殺ーー二課には毎日のように遺体が運ばれてくる。入学式を明後日に控え線路に正座していた少年、ゴミ屋敷で餓死した男性、幼い我が子を残して事故に遭った母親、飛び降りる瞬間を動画配信していた少女ーー


二課の納棺師たちはその手で、失われた生前のおもかげを復元していく。

愛する人が突然この世を去った時、どうすれば立ち上がれるのか。あの人はなぜ命を絶ったのか。遺された者はどう生きればいいのか。
それぞれに「喪失」を抱えた納棺師たちもまた、明日を生きる微かな光を見出していく。




遺体の破損 の度合いが、激しく、それを生前と近い姿に 戻すというのが「二課」の納棺師の仕事。
どうやって仕事をしているのか、詳しく描かれていて、読んでいるだけでも、吐き気がしてきそう。
思っていたより、グロテスクでハードな仕事だと思った。

それは、
祖母の 「最後に生きていたときのままのふたりに会えてよかった。」という言葉のように、これからも生きていく人にとっての区切りのとしてのお別れの場が必要なのだと思う。

だから、なくてはならない仕事。

 ここで 働く納棺師たちは、それぞれ、過去や自分の嗜好に苦しみを抱えている。

それでも、ここで働いて、助けあい、前を向いていた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


謎の香りはパン屋から

土屋うさぎ 宝島社 2025年1月




 

 

大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でアルバイトをしていた。あるとき、同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして?

疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく……。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!




漫画家を目指す大学生の小春は、パン屋でアルバイトしている。
その小春が日常の謎を解くミステリー。

クロワッサン、フランスパン、シナモロール、チョココルネ、カレーパン……
パンがどれもおいしそう。
そのパンとミステリーがマッチしていて、ほんわかした気分になる。


シナモロールの高校生たちって、青春だなあ。
ご褒美のチョココルネのためにがんばる凜 ちゃんって微笑ましい。
思い出のカレー パンを探す3人の様子がおもしろい。

パンのうんちくもあり、登場人物たちがいきいきしていて、パンのおいしそうな香りが漂ってくるやさしいお話だった。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

森にあかりが灯るとき

 藤岡陽子 PHP研究所 2024年10月



 

 

お笑い芸人の夢に挫折し、特別養護老人ホーム「森あかり」で介護士として働くことになった星矢は、初めての夜勤の日に、利用者の鼻に酸素を投与するためのチューブが人為的に切断されているという医療事故に遭遇。さらにその原因が星矢にあるのではないかと施設長から疑われてしまう。介護士としての将来に自信を失くし、仕事へのやりがいも感じられないまま過ごしていた星矢は、ある日、施設で厄介者扱いされている医師・葉山彩子を街で見かけて、意外な場所に連れていかれる。
お笑い芸人になる夢に破れた新人介護士、自分の信念が周囲に理解されない医者、過去に利用者の遺族から訴えられた施設長――。それでも彼らがここで働く理由とは。





特別養護老人ホーム「森あかり」で働く介護士-溝内、看護師-古瀬、医師-葉山、施設長-福見の立場から介護の現場を描く。

人手不足、肉体労働、 ケガや命に関わる現場……

事故がおきると責任を追求される。

その割には給金が多いわけではない。

厳しい職業だと思う。

施設長は、事なかれ主義のように感じたが、 施設を守る立場から、仕方のない部分もあるのだろう。 

溝内は、丁寧に入居者と接しているのがいいな。

入居者にとって、介護士はなくてはならない存在。あかりでもある。

今後、介護は、AIやロボットの力も借りて、少しでも働きやすい職場になればいいと思う。


チューブを切断したのは誰なのか?
人生の最後をどのようにすごすのか?
〈人生最後の時間が幸せ なら、その人は幸せに生きたって思える〉

延命治療についても考えさせられる内容だった。


いいラストだ。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

花檻の園

北沢陶 角川書店 2026年3月



 

 

大正14年新世界。中学生の朔哉は母譲りの美貌でもてはやされているが、
“見世物”のようで不満を抱いていた。ある日、遊園地「ルナパーク」の跡地に行くとなぜか眩い光を発して蘇っている。
その日から奇妙なことが起こって――



ホラーミステリー。


朔哉は、ルナパークの跡地へ行くがそこは、記憶にあるルナパークとは違っていた。

そこで水坂という人物に会う……




中学生の朔哉は、その美貌から、みんなの憧れの存在だった。

姉の早葉子は、亡くなっていたが、生きていたときは、気ままな姉の面倒を 朔哉はみていた。


朔哉は、人のために生きているようなところがあって痛々しかった。


体に花が生える。

その花を抜く時の苦痛は、もう、絶えられない。

その花を欲しがる級友たちが恐ろしい。

しかし、妖艶で耽美な印象だった。


転校生の青路とは、新しい関係ができてよかったのではないか。


「をんごく」

の巫女も登場。


大きなものと対峙する朔哉の姿があった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



ブティック

池井戸潤 ダイヤモンド社 2026年5月



 

 

池井戸潤、2年ぶりの最新長編(全578ページ)。 「君、銀行辞めて、どうするの?」 入行3年目、エリート街道を歩んでいた雨宮秋都は、 ある案件をきっかけに、理不尽な戦力外通告を受けてしまう。 退職を決意した秋都が見つけた、新たな希望とはーー?





池井戸潤 さんの金融ものは面白い。


今回はM&Aの話。

業者には、

売る側と買う側の間を調整する業者と、どちらか一方のアドバイザーの業者がある。


ランパス東京は、後者なので、会社に親身になってアドバイスできる。



自分たちの利益しか考えてない人たちと、クライアントの会社の利益を重視する人たちとの戦い(?)


クライアントの将来を考えている方が勝つだろうという結末 は予想がつくが、 そこに至るまでの過程を読むのが楽しい。


実際には、こんな簡単なことではないだろうが、だからこそ、スカッとする。


世の中の会社の力になり、困っている会社を救いたいという、秋都の一途な想いが熱かった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐