地獄の底で見たものは

桂望実 幻冬舎 2024年10月



 

 


もう、だめかもしれない。
そこからも、人生は続く。
日常に突如現れた落とし穴から、したたかに這い上がる!


『県庁の星』の桂望実が描く、アラフィフ女の低温地獄。

長年夫を支えてきたつもりだったのに、急に離婚を切り出された専業主婦。
新規事業を立ち上げて15年、働きぶりを否定された会社員。
ともにオリンピックを目指した教え子に逃げられたコーチ。
22年間続けたラジオ番組をクビになり、収入が途絶えたフリーアナウンサー。

どん底に落ちた女たちの、新たな人生の切り開き方とは。



専業主婦の伊藤由美。

ウエルカムトラベルの会社員,足立秀子。

スイミングコーチの大野邦子。

キラキラ-アフタヌーンのパーソナリティの田辺綾子。


職は違うが、アラフィフの女性が味わったどん底。

彼女たちは戸惑う。


しかし、

大学に入って勉強し直したり、新しく仕事を始めたりと前向きだ。


したたかに新しい道を切り開いていく彼女たちはたくましいと思った。


どん底に陥ることになったきっかけを作った自分勝手な男を最後に突き放すシーンに、すっきりとした。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


右から二番目の星へ

 水庭れん 小学館 2025年9月



 

 

結末に涙する、仕掛けに満ちたひと夏の物語

ノイズに溢れたこの世界で、
「大人になる」とは一体どういうことなのだろうか。

「子どもの土地」で永遠の子どもだった「その子」は、心に曇りが生まれ、ある日飛べなくなってしまった。だから、地上に堕とされた……自らの代わりとなる子を一人、連れ去るために。
夏休みの始め、青森のボーイスカウトで、スナメリが座礁した熊本の海岸で、埼玉から繋ぐオンラインゲーム内で、悩める子どもたち3人に奇妙な出会いが訪れる。いなくなる子は、誰なのか。自由と不自由のあいだでもがく少年少女、それぞれの決意とは。

誰もが経験し、忘れてしまう、「あの頃」の怒りと光にいま向き合う。
意外なその結末にきっと涙する、仕掛けに満ちたひと夏の物語。








青森-五所川原、熊本-天草、埼玉-大宮での子どもたちの夏休み。


ボーイスカウトで知り合った理砂と環。


スナメリがうち上がった海岸で知り合った海璃ときよか


オンラインゲームで知り合った大成と楓人。


カラスが話す、「子どもの土地」に行かされる、身代わりとなるのは誰なのか?

それが気になりながらも、それぞれの子どもたちの話が、興味深く、どうなるのかと話にのめりこんだ。


大人に守られている分、 不自由なこともある子どもたち。

大人の嘘や欺瞞に満ちた行動に翻弄されることも……

純粋な分、傷つくことも多い 。


大人になるとは どういうことなのか、考えさせられる内容だ。


ファンタジーでありながら、子どもたちの話は、伏線のあるミステリーになっていて、驚いた部分もあり、楽しめた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


盗んで食べて吐いても

桜井美奈 小学館 2025年7月



 

 

どうかあなたに、希望の光がさしますように

「太ったら、食べちゃダメなの」。幼いころに聞いた母の言葉をずっと忘れられないでいる早織。

早織は小学校6年生ごろから体重が増えはじめ、体型を何よりも重視する母は彼女の食事量を厳しく制限した。お菓子はダメ、お代わりはダメ。でも、もっと食べたい、もっと痩せたい。

早織は食べて吐くを繰り返すようになり、吐くための食料を手に入れるため、食べ物を万引きするようになってしまう。結婚をして夫と娘と仲良く暮らしながらも、彼女は万引きをやめられないでいた。


そんなある日、早織は妹からの電話を受ける。それはずっと避けていた母の命が、もう長くないと告げるものだった――。

母の呪縛。痩せたいという願い。間違いだとは分かっているのに、今日も彼女は正解を選べない。





過食嘔吐を繰り返す主婦の早織。

食べてもすぐ吐いてしまうのだから、お金を払うのはもったいないと万引きを繰り返していた。


小学生の頃からの過食症が今でも続いているとは!

万引きは悪いことと理解していながら、気持ちとは反対に、万引きしてしまい、家族にも見放されていく過程が痛々しかった。


子どもの頃の母の影響が大きい。

万引きすることは悪いこととに違いないが、「窃盗症」という病気があることをまわりに理解してくれる人がいれば、結果は変わってきたのではないか。


麻里乃の万引きの現場を見た早織は、自分と同じものを感じ、麻里乃と話をする。

麻里乃を救うだけでなく、過去の自分と向き合う時間が持てたことで、早織は変わっていく。


ふとしたことである日突然、激しい衝動に駆られるかもしれないという不安を持ちながら、日々過ごすことはつらいことだろう。


それでも、早織は、前向きになれてよかったと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

あなたが選ぶ結末は

水生大海 双葉社 2021年10月



 

 


最後の最後で読者がそれまで見てきたものとは違った景色を提示する「どんでん返し」。
前作『最後のページをめくるまで』で見せた鮮やかなどんでん返しを、本作でも再び実現! 

「俺の話を聞け」から「真実」まで全五編を収録した驚きの短編集。



二週間後の未来
コロナ禍、リモートワークになった時の話。
題名はコロナ感染が二週間後にわかるところからきてい て、うまいと思った。

俺の話を聞け
廃ビルから落ちて死んだ同級生。
事故?自殺?それとも誰かに殺されたのか?

それは財布からはじまった
財布が盗られるのを未然に防げたことで知り合った老女と保険外交員。
保険外交員は、老女につきまとう。


きみのための探偵
結婚式の披露宴で、見知らぬ男が花嫁志帆を連れて出ていった。僕は、以前志帆が好きだった ので、その後の志帆が気になり、調べるが……

真実
俺の話を聞けの続き。

二転三転する話はおもしろかったが、
を読んだ時に感じた衝撃はなかったかな。

お気に入り度⭐⭐⭐

誘拐劇場

潮谷験 講談社 2025年8月



 

 

近畿地方のベッドタウン・水倉地区で起きた薬物事件。バニッシュと呼ばれるペーパーアシッド、最初の被害者は小学生だった。
県では薬物撲滅キャンペーンが展開され、イメージキャラクターとして俳優・師道一正が選ばれた。クリーンなイメージで俳優としても超一流、人を魅了することに長けた彼は、探偵としての能力も発揮。県警の義永誠刑事に協力して、事件の恐るべき真相を看破した。
事件解決の名声も手伝って師道は国会議員となり、水倉を地元として帰ってくる。そして囁かれはじめる黒い噂。
熱狂の最中にも師道に違和感を持っていた支倉彼方と義永刑事の娘・真理子は、師道の真実に迫ろうと仲間を集め、位置情報アプリ「MK2」を使って水倉丘陵に隠されているはずの秘密を調べ始める。
そして誘拐事件は起こった。
二転三転する物語と手に汗握る知的攻防。善とは悪とは? 『スイッチ 悪意の実験』『伯爵と三つの棺』の潮谷験が贈る、傑作ジェットコースターミステリー!





小学生が作った薬物が問題となり、

薬物撲滅を願って、俳優の師道一正が起用される。事件は解決し、師道は、国会議員になる。


この事件 を捜査していた義永刑事の娘、真理子と、子役で活躍したことがある支倉彼方は、師道が信じられず、ふたりは協力して師道を調べ始める。


そんな時、真理子が誘拐され……


誰が何のために誘拐したのか?

師道は噂通りの悪人なのか?



目的地がどこかを歩いて探すアプリって、面白そうと思ったけど、誘拐に関わってくるとなると、おもしろいではすまされない。


アプリには、裏に隠された意味がある!?


薬物 は一度でも使用すると、やめることはむつかしいのだろう。


師道 と 彼方&真理子 との対決!

真相が幾重にも重なっていた。


ここに登場するAIって、全然優秀じゃないけど、それが伏線になっていたとは!




お気に入り度⭐⭐⭐



波瀾万丈な頼子

真梨幸子 中央公論新社 2025年10月



 

 

法律事務所で事務職をしている高幡莉々子は、仕事の一環で見始めた、ある動画チャンネルが気になって仕方ない。
顔を隠した「頼子」という70代の女が、困窮した生活状況や波乱に満ちた人生を語る動画がどうにも鼻につくのだ。
おそらく投げ銭だけでも相当儲けているはず。

気になる、気になる、気になる! 

そんなちょっとした好奇心から、莉々子は次第に取り返しの付かない事態に巻き込まれていく……。



図書館の新刊コーナーに、借りられずに置いてあったので読んでみた。



法律事務所で事務職をしている高幡莉々子は、動画、【波瀾万丈】頼子の孤独な終活【70代】が気になって仕方がない。


ユーチューバー頼子って誰なのか?架空の人物?実在の人物?


莉々子は、同じ法律事務所に勤務する藤村の助けを借りて調べ始める。


莉々子は、ちょっとした好奇心から、自分で撮った動画を募集先に送ってしまう。

それが、大変なことに……

おそろしい!!


もうひとりの語り手、千栄子は、なぜ、それほど、この頼子の動画に、心酔しているのか?


どう関係してくるのか?



ユーチューバーの話なので、いまどきの物語。

投げ銭、クラウドファンディング…

詐欺まがいの出来ごとも……


なんて安易な名前の付け方って、思った場面があった。




死者が出て、かなりダークな話。

波瀾万丈な 展開!


お気に入り度⭐⭐⭐





その嘘をなかったことには

水生大海 双葉社 2024年11月



 

 

物語のラストでこれまでの景色が一変する「どんでん返し」。そんな短編を5つ、収録しました。――家に帰宅すると、なんと男が死んでいた……「妻は嘘をついている」。
人気ロックバンドの新曲MVに出演したことで、日常が嫌な方向に向いていく……「まだ間にあうならば」など、心地よさも心地悪さも味わえるミステリ短編集。


著者のヒット作『最後のページをめくるまで』『あなたが選ぶ結末は』も合わせて読みたい一冊です。




妻は嘘をついている

家に帰ると死体があった。泥棒に入った男が病死したという……


まだ間にあうならば

俳優の美南は人気バンドのマクミリの新曲MVに出演することを内緒にしていたことで、掲示板でたたかれて……


三年二組パニック

卒業式の日、誰かが誰かに仕返しするという噂があり、三年二組の担任の穂高が調べるが……


家族になろう

僕と花凜は義父から結婚を反対されていた。義父は亡くなくなり、その後、義母も亡くなり、妻花凜は、遺産分けで実家を相続することになり……


あの日、キャンプ場で

映研の撮影をしたキャンプ場で、いっしょに参加した千鶴の遺体が見つかる。千鶴を置き去りにして先に帰ったことを気に病んでいたが……



最後に今までの伏線がつながり、どんでんがえしがあり、ゾワゾワする内容ばかり。

おもしろかった。


男もネチネチしている人はいるけれど、女は特に執念深くて、恐ろしい。


嘘をなかったことにはできない。自分に跳ね返ってくる!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐




やがて訪れる春のために

はらだみずき 新潮社 2020年9月


 

 

会社を辞め、都会での生活に行き詰まっていた真芽(まめ)は、入院した一人暮らしの祖母・ハルに頼まれ、生家の庭の様子を見に行く。だが、花々が咲き誇っていた思い出の庭は、見る影もなく荒れ果てていた。ハルの言動を不審に思う真芽だったが、彼女の帰宅を信じ、庭の手入れをはじめる。しかし、次第にハルの認知症が心配され、家を売却し施設に入れる方向で話が進もうとする……。




都会での生活に傷心し地元に帰った真芽。以前暮らしていて、今は祖母ひとりで暮らしている家に行くが、祖母が 入院している間に、庭は荒れ放題になっていた。

真芽は、庭の手入れを始める。


祖母ハルの認知症の問題。

日々、忘れていくことに戸惑いながら、 自分らしく暮らしたいと願うハル。

ハルは、もう、この家に帰って来ることはないのか?

ハルを思う真芽の気持ちは、暖かいと思うが、それだけではどうにもならないこともある。


同級生や地域の人たちらの手を借りて、庭を手入れしていくうち、真芽の気持ちも整理されていく。


真芽が前向きに進み出せてよかった。


優しい気持ちになれる物語。

最後の1行の題名の意味、なるほど!


続編「されどめぐる季節の中で」を読むのが楽しみ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

僕たちは我慢している

藤岡陽子 COMPASS 2025年5月



 

 

中学から野球部で一緒だった三人。
千原道人は高校では受験に専念するつもりが、中小企業を営む父の病気が再発した……。
高校でも野球を続けている穂高英信は、総合病院の四代目として期待されているが、医学部受験には及ばない成績に迷う……。
唯一夏の大会を最後に引退した中森揮一は、周回遅れの受験勉強にまったく身が入らず、大学受験を辞めようかとさえ思う……。
もう一人、中一から学年トップを維持する香坂淳平。彼にも思い悩みが……。
それぞれに容易ならざる事情を抱えながらも、彼ら高校男子はどのようにして心を決めたのか--その軌跡と到達点を描く。




東大合格者を何人も出すような中高一貫の進学校。

そこに通う、中学で野球部だった千原道人、穂高英信、中森揮一。


高校になり、野球部を辞める者、途中で退部する者、最後までやり遂げる者。さまざま。


誰もが野球が好きで、続けたい気持ちはあるが、勉強との両立は難しく、迷い苦しみながらも、決断する。


常に成績トップの香坂淳平。人当たりもいい彼だが、彼にも、悩みはあった。




家庭の事情や将来に対しての不安や葛藤。

それをどのように乗り越えていったのか。


何かを我慢している。

苦しんで苦しんで、自分で決断し、努力を惜しまず、将来に向かって進んでいく姿は、感動。強い力を感じた。


担任の関先生

医師の真下先生

両親、祖父母……

高校生達へのアドバイスがすばらしい。

いい大人に恵まれている。


学んでなにかを与えられる人間になる。それが大学 へ行く意味だ》


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



す二人一組になってください

木爾チレン 双葉社 2024年9月


 

 

このクラスには『いじめ』がありました。それは赦されるべきことではないし、いじめをした人間は死刑になるべきです」
とある女子高の卒業式直前、担任教師による【特別授業(ゲーム)】が始まった。突如開始されたデスゲームに27人全員が半信半疑だったが、余った生徒は左胸のコサージュの仕掛けにより無惨な死を遂げる。
自分が生き残るべき存在だと疑わない一軍、虚実の友情が入り混じる二軍、教室の最下層に生息し発言権のない三軍――。

本当の友情とは?
無自覚の罪によるいじめとは何か?
生き残って卒業できるのは果たして誰か?


【ルール】
・二人一組になってください。

・誰とも組むことができなかった者は、失格になります。その回の失格者が確定したら、次の回へと続きます。

・一度組んだ相手と、再び組むことはできません。

・残り人数が偶数になった場合、一人が待機となります。

・特定の生徒が余った場合は、特定の生徒以外全員が失格になります。

・最後まで残った二人、及び一人の者が、卒業式に出席できます。

・授業時間は60分です。





体育の時間、奇数の人数にもかかわらず、自由に「二人一組になってください」って、いつも余る人がいるのに、酷だよね。


卒業式前の特別授業のルール読んで、どういう結果になるのだろうと、気になった。



友達だと思っていたのに、本当は、嫌われていたり。

いなくなってせいせいしたはずなのに、いなくなってから、寂しくなったり。

相手を思って、自分が身を引こうとしたり。

友情を確かめあったり。


このデスゲームをすることで、本音がみえてくる。

生徒たちの心の変化を読むのがおもしろい。


生徒たちの間で、スクールカーストができていること自体、おそろしいことだが、このカーストの下位の人からいなくならざるをえないのは、やはりというか、おそろしいことだ。


コサージュが、どう作用して死に至らしめているのか。

死体が転がっているのに、平然とゲームしてるなど、あり得ない話であるが、ゲーム感覚で読み進めると、なかなか面白い。

ルール、深く読み込まないと最後まで残れそうにない。


「無自覚の悪意」か。

いじめが、完全になくなるのはむつかしいだろうな。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐