爆弾
呉勝浩 講談社 2022年4月



 

 東京、炎上。正義は、守れるのか。 些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。 たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。 直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。 「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。 警察は爆発を止めることができるのか。 爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。



酔って自販機に当たり散らし店員を殴って捕まったスズキタゴサクと名乗る男。
この男の取り調べの話がずっと続く。
霊感が働くと爆発をほのめかすが、肝心なところは、記憶がないとはぐらかす。
スズキの話の中に、次の爆発の場所のヒントがあり、警官が、それを解いていく。
最初は、クイズの問答にどんな意図があるのかわからず、のらりくらりと取り調べを受けるスズキに嫌悪感を感じた。

読み進むうち、爆発を阻止できるのか?スズキの後ろに組織の存在があるのか?首謀者が誰で何の目的なのか?等、さまざまな疑問が生じ、先を読まずには、いられなかった。

スズキは、拷問も死も恐れてなくて人生を達観している。
スズキと話ていると人の醜い本音が見えてきて、恐ろしかった。

内容的には、好みの作品でないが、ミステリーとしてはおもしろい。

お気に入り度★★★★

クライマッチョ


監督 クリント・イーストウッド

出演 クリント・イーストウッド エドゥアルド・ミネット ナタリア・トラヴェン、 ドワイト・ヨーカム、 フェルナンダ・ウレホラ

 

 


アメリカ、テキサス。ロデオ界のスターだったマイクは落馬事故以来、孤独な独り暮らしをおくっていた。そんなある日、元雇い主から、別れた妻に引き取られている十代の息子ラフォをメキシコから連れ戻してくれと依頼される。男遊びに夢中な母に愛想をつかしていたラフォはマイクとともに米国境への旅を始める。そんな彼らに迫るメキシコ警察や、ラフォの母が放った追手。今、マイクは少年とともに、人生の岐路に立たされる―。 



十代の少年ラファを父親のもとに連れ返る旅。

マイク役のクリント・イーストウッドは、年老いたなあと思うが、それでも、カーボーイ姿は、様になっている。


老齢のマイクと少年ラファと闘鶏のニワトリマッチョ。

追っ手に追われたり、ほのかな恋があったり・・・・・・・・

この旅の行方は?


ラファは、愛に飢えている少年。

だから、強がっていたように思う。

マイクのことを最初から信じられたわけではないだろうが、いっしょに行動するうち、打ち解けていく。


特に大きな事件が起きるわけではないが、ふたりの交流がよかった。


お気に入り度★★★★


あかずの扉の鍵貸します

谷瑞恵 集英社 2021年10月






 

 封をしたい過去、あらぬ真実、果たされざる約束……秘密の扉に委ねてみませんか? 「まぼろし堂」と呼ばれるその複雑な造りの館には、時空を超えて潜めておきたい、さまざまな「人の歴史」が預けられていた――。 火事で家族を失った大学生の水城朔実(みずき・さくみ)は、自らを育ててくれた恩人に頼まれ、「幻堂設計事務所」、通称「まぼろし堂」を訪れる。あるじの幻堂風彦(げんどう・かざひこ)が案内してくれたのは、館内に迷路のように広がる部屋の数々。この「まぼろし堂」には、「あかずの間」を貸し出すというもう一つの顔があり、さらには訳ありげな下宿人たちを受け入れてもいて……。 金木犀香る北鎌倉の古い洋館を舞台に繰り広げられる、心あたたまるファンタジック・ミステリー。

 【目次】 一章 開けっぱなしの密室

 二章 地下室の向こうへ 

三章 天の鍵穴 

四章 いつかオルゴールが鳴る日 五章 木犀の香に眠る



水城朔実は、育ての親の老婦人から、あかずの間がほしいということをきっかけに「まぼろし堂」を訪れるが・・・・・・・・


あかずの間に入れたいのは、どんな出来事か?


このまぼろし堂の洋館、とても複雑な作りで、わくわくする。

下宿人たちは、個性的な人たちで、何かが起こりそう?



朔実は、親身になって、解決しようとする。

家主の風彦は、そっと見守っている感じ。


朔実が風彦に惹かれていく様子も、ほほえましい。


あかずの間に閉じこめるのは、大切な記憶。

無理にあけない方がいいようだ。




お気に入り度★★★★


月の光の届く距離
宇佐美まこと 光文社 2022年1月




女子高生、美優は予期しない妊娠をしてしまう。堕胎するには遅すぎると、福祉の手によって奥多摩にあるゲストハウス「グリーンゲイブルズ」に預けられる。そこには血のつながりよりも深い愛で結ばれた「家族」が暮らしていた。養子縁組、里親制度。小さな命に光を当てる、長編ミステリー


都立高生の美優は予期せぬ妊娠。相手の高校生は、逃げ腰、親から勘当。ひとりで産んで育てると家を出たもののあてはない。そんな時知り合ったNPO「ODORIBA」の千沙の紹介でゲストハウス「ゲイブルズ」に預けられることになった。

第二章で、ゲストハウスの明良の過去、
第三章で、華南子の過去が明らかになる。

その運命にどれだけ絶望したことだろう。
しかし、それを乗り越え、今、訳ありの子どもたちを育てているふたりに頭の下がる思いだ。

歌舞伎町には、性を売りものにする女性達が集まる。
そこには、お金のためだけではない彼女たちの寂しさがある。

明良は、歌舞伎町には通っていた頃、橋本という寡黙の職人に救われる。
明良を家に住まわせ、歓楽街に出入りする明良を何度もしくこく迎えにきてくれ、ホストクラブの経営者と差しで交渉し、まっとうな生活に戻してくれた。

どうしようもない親がいる中、他人に対しても、こんなに親身になってくれる大人の存在を忘れてはならない。

妊娠した美優の心の変化も丁寧に描かれていて、親になることの意味を考えさせられる内容だ。
さまざまな家族の形、愛の形があるのだと示している。

お気に入り度★★★★★

星守る犬

監督 瀧本智行

出演 西田敏行,、玉山鉄二、川島海荷 余貴美子、温水洋一、濱田マリ、塩見三省、中村獅童、岸本加世子、藤 竜也、三浦友和 


 

 


 北海道の山中に放置された車両内にて、死後半年経った身元不明の男性と死後一カ月の犬の遺体が見つかる。 市役所福祉課に勤務する奥津京介は、わずかな手がかりを元に、男と犬がやってきた道を遡る旅をはじめる。 旅を進めるにつれ、その男・おとうさんが病気、失業、離婚、一家離散の挙句家までも失い、唯一傍にいてくれた愛犬・ハッピーとともにオンボロ車で旅に出たことが明らかになる。 奥津は、これまでの自身の孤独な人生に想いを馳せ、おとうさんとハッピーに、自分とかつての愛犬クロを重ね合わせてゆく。 奥津の旅が終わりをむかえる時、おとうさんとハッピーがどのような最期を迎えたのかが明らかになる――。 



市役所職員の奥津が、亡くなっていた男性の手がかりを探す旅を続けるうち、その男性のことが、いろいろわかってくる。

その人は、さまざまな人と交流しながら旅を続けていたことを知る。

そして、奥津は、その男性といっしょにいた犬ハッピーと、自分と飼っていたクロを重ねあわせて考える。


飼い主が亡くなっても、ずっといっしょにいるハッピーの姿に泣ける。


北海道のひまわり畑がきれいだった。


お気に入り度★★★★

犬に関係した日本映画を二本見た。

まずは、

いぬのえいが


監督・脚本: 佐藤信介/永井聡 監督: 犬童一心/黒田昌郎/祢津哲久/黒田秀樹/真田敦 脚本: 山田慶太 

出演 中村獅童, 伊東美咲, 宮崎あおい, 小西真奈美, 佐藤隆太 


 

 


いぬを主軸にしたエピソードを6人の監督がリレー形式でつづっていく作品。犬を題材にしたアニメやミュージカルもあれば、子供の頃からずっと一緒だった飼い犬を失った哀しみを描く物語、柴犬ポチと空き地で遊んだ思い出をつづった物語など、それこそ様々な物語が紡がれていく。


 



六人の監督が作っているということで、アニメあり、ミュージカルあり、物語あり。

それの関係性がなく、まとまってない感じ。


でも、ぽちの話はよかった。

救急車を追いかけるぽちの姿や病院の前でずっと待っているぽちの姿に泣ける。


最後は、小さい時から、飼っている犬の一生を飼い主の立場から、気持ちが字で表現される。

次に同じ場面を犬の立場から、字で描きだす。

ジーンとした。


お気に入り度★★★



殲滅(せんめつ)特区の静寂 警察庁怪獣捜査官
大倉崇裕 二見書房 2023年1月




 

正体不明の巨大生物「怪獣」の度重なる出現に対抗すべく、専門省庁「怪獣省」が置かれ、発見・予報・殲滅の撃退プロセスを確立させた日本。怪獣の進行方向や攻撃方法を分析する予報官の岩戸正美は任務中、奇妙な事件に遭遇する。風力発電所の停止命令が届かなかった町で、瓦礫の下から見つかった死体。音響統制が敷かれた静寂の中で鳴り響いた一発の銃声。怪獣が生息していると噂される湖で失踪した調査官――そして、怪獣にまつわる事件には必ず、年季の入ったコートをなびかせた一人の中年男が現れる。警察庁特別捜査室の船村と名乗った男のことを、正美は噂で知っていた。怪獣に関連した特殊な事件を扱う「特別捜査官」。正美は、怪獣を巡る奇妙な事件の捜査に巻き込まれていく……。





怪獣の襲来が日常になった世の中。
怪獣との戦いを描いたものと思いきや、
その世の中で起こる
殺人事件の解明を描いた本格ミステリー。
恐ろしいのは、怪獣より、人間?

怪獣襲来なんて、恐ろしいことだが、
怪獣省を設置し、発見、予報、殲滅の撃退プロセスを確立させるとは、日本政府は捨てたものじゃない。

岩戸正美は、怪獣のことを知りつくしている 怪獣予報官。
彼らのおかげで、生活が守られている。
にもかかわらず、それが当たり前になってしまうと、文句を言う人が出てくるのは、世の常なのだろう。

こういう設定の中での殺人事件。
正美は、怪獣捜査官の船村と事件を追うことになる。

第一章 怪獣の上陸を回避するため、風車を止めるはずが止まらない地区があった。
第二章 完全音響統制を行う。待ち伏せする方向に進行中だったった怪獣は、進行を止めた。
第三章は、怪獣関連の通報が相次いでいる湖に正美は、調査を命じられる。
そこで、正美が見たものとは?

緊張感があった。

どの話も、人間の勝手な欲望、思い上がりからの犯罪で・・・・・・・・
おお、こわっ!

お気に入り度★★★★

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん 


監督 レミ・シャイエ


サーシャ : 上原あかり オルキン : 弦徳 サーシャの母 :吉田小南美 サーシャの父 :中西伶郎 トムスキー王子:前内孝文 ナージャ : 石原夏織 オルガ : 伊藤香菜子 ルンド : 徳森圭輔 ラルソン : 成澤卓 カッチ : 浅水健太朗 執事(男) : 瀬切海斗 アリノビッチ伯爵:熊谷貴弘 舞踏会ゲスト: 三好一平 舞踏会ゲスト: 榊拓也 モーソン : 中村精道


 

 





 東京アニメアワードフェスティバルでグランプリを受賞した長編アニメ。19世紀のロシア。北極探検の途中に消息を絶った祖父の汚名をそそぐため、14歳の貴族の子女・サーシャは真実を突き止めるための旅に出るが、想像を絶する困難が待ち受けていた。 



遭難した祖父の船の捜索を訴えるが、聞き入れてもらえない。

サーシャは、自ら、真実を求めて旅に出る。



サーシャの祖父を信じる強い気持ちがそこにある。



貴族の子女であるサーシャは、働いたこともなかったが、食堂で働き、船を待つ。

その後も多くの困難に出会うが、あきらめないサーシャの姿があった。



お気に入り度★★★★


水底のスピカ
乾ルカ 中央公論新社 2022年10月







その転校生は、クラス全員を圧倒し、敗北させた―― 夏休み明け、北海道立白麗高校2年8組に、東京からひとりの転校生がやって来た。汐谷美令――容姿端麗にして頭脳明晰。完璧な彼女は学校中から注目を集めるが、些細な事からクラスで浮いた存在になってしまう……。 学校祭準備で美令と友人となった、クラスで孤高を演じる松島和奈。そして美令が孤立する原因を作ってしまった、クラスのカースト上位である城之内更紗もまた、美令、和奈と深く関わってゆく。 それぞれ秘密を抱える三人が向かう先に待つものは、そして美令の「私、神様の見張り番をしているの」という言葉の意味とは……。 今、彼女たちの人生で、もっとも濃密な一年が始まった――。誰もがあの時を思い出す、青春群像劇の傑作! 最高に美しいラストシーンを、ぜひご堪能ください!! 「 今、私がひとりではないことが、奇跡なのだ――」



転校生の汐谷美令。
孤高を演じる松島和奈。
美令に「東京の人」というあだ名をつけた城之内更紗。
美令に頼まれ自転車を貸す青木萠芽。
萠芽の友達で明るく脳天気な赤羽清太。


特別にあこがれている和奈は、容姿端麗な上に成績優秀な転校生美令と仲良くすることで、自分も特別な存在と思われたいと、美令と行動を共にするようになる。
そして、あることをきっかけに、更紗とも仲良くなる。

美令の言う神様の見張り番とは?
美令が、毎木曜日、自転車を借りて海へ行くわけは?

和奈、美令、更紗。
この三人がこんなに親密な関係になるとは思わなかった。
そこに、男性ふたり、萠芽、清太が加わり、いい関係になっていく。


人は、他の人とどうして比べてしまうのだろう。
どうして、特別を求めるのだろう。




<農業は過去の通信簿を受け取り続ける仕事>
大学生の夏月の言葉で、新しい発見があったり・・・・
能天気なようで、みんなのことを心配する清太だったり・・・・


細かい所まで、彼らの心の揺れや葛藤が描かれていた。


悩みをさらけだすことができる、そんな友だちがいるってすばらしいことだ。
こういう関係、うらやましい。


お気に入り度★★★★★


思いで写真

監督 熊澤尚人
出演 深川麻衣, 高良健吾, 香里奈, 井浦新, 古谷一行、吉行和子
『ユリゴコロ』の熊澤尚人監督が執筆した原作小説を監督自ら映画化した人間ドラマ。写真が繋ぐ人と人との触れ合いを優しく描き、人が生きる豊かさと年齢を重ねる美しさを繊細に紡いでいく


祖母の葬式のために、故郷に帰った結子。
結子は、祖母に育てられたが、夢を追いかけ、東京で生活していたが、うまくいってなかった。
葬儀後、ずっとふさぎこんでいる結子に
市役所の一郎は、お年寄りが多いアパートの住民の遺影写真を頼む。


結子は母に捨てられたというトラウマがある。
祖母が母の話をしてくれるが、話の内容は、話すたびに変わって、それがウソだと気づく。
だからなのか、ウソが嫌いで許せない。

写真を依頼されたお年寄りの中にウソを言う人がいて、それは受け入れられない。
そんな結子が、地元で、高校時代の友人の一郎やお年寄りと関わっていくうち、心に変化があらわれる。

遺影写真というと葬儀→死を連想して負のイメージだから、思いで写真というネーミングがいいと思った。
それぞれの写真に写るお年寄りたちは、輝いてみえた。

お年寄りの吉行和子や古谷一行の演技が脇役でありながら、存在感があった。


お気に入り度★★★★★