今回はPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)を行う場合の実際の流れについてお話したいと思います。

 

着床前診断(以下、PGT)は、体外へ取り出した卵子を精子と受精させ、体内に戻す前の“胚”と呼ばれる状態でその胚の遺伝情報を調べる検査です。

そのため、まずは通常の体外受精治療の流れで進めることになります。

 

(詳しくは当院の“体外受精教室テキスト”もあわせてご参照ください。)

 

1.排卵誘発治療(卵巣刺激)
排卵誘発治療(卵巣刺激)は、本来であれば毎月1つのみ育つ卵子を複数個育てるために行われます。いくつかある方法から、ひとりひとりにあった方法を医師よりご提案させていただきます。

2.採卵(Day0)
卵巣から卵子を採取します。

3.体外受精・顕微授精(Day0)
体外に取り出した卵子と精子を受精させます。受精の方法には、卵子に精子を振りかける体外受精(IVF)と卵子に精子を直接注入する顕微授精(ICSI)の2種類があります。
実際の受精方法は、採卵当日の精子の状態や過去の治療歴、そしてご夫婦の希望をふまえ、採卵後に医師よりご提案させていただきます。

4.胚生検(Day5,6)



採卵当日に受精させて、2〜3日後には受精卵の細胞が2〜8つに分裂します。この状態を分割期胚(あるいは初期胚)と呼びます(図a)。
その後順調に成長が進むと、5〜6日目に胚盤胞と呼ばれる状態まで成長します(図b)。胚盤胞まで培養し、将来赤ちゃんになる部分の細胞(ICM:内細胞塊)を傷つけないように、将来胎盤などになる細胞(TE:栄養外胚葉)から細胞を一部採取(生検)します。胚盤胞の状態によっては細胞が採取できず、検査ができない可能性もあります。

細胞を採取した後の胚は、凍結保存します。

5.遺伝学的検査
採取した細胞を用いて、染色体の検査を行います。
検査には次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer:NGS)を利用します。この方法により、染色体の情報量に過不足があるかどうかを調べます。検査結果につきましては、検査実施日から約1ヵ月後に担当の医師よりご説明させていただきます。
※お電話ではお答えできませんので、必ずご来院をお願いいたします。

6.胚移植
遺伝学的検査の結果、染色体の情報量に過不足がないと考えられる胚のみを子宮に戻します。

 

PGT-Aご希望の方は、“説明資料(患者様用)”に必ず目を通していただき、診察にて参加希望であることを医師にお伝えください。

 

 

次回は、PGT-Aを行った場合の検査結果についてお話いたします。

 

以前の記事もご参照下さい

着床前診断(PGT)について① 着床前診断(PGT)とは~PGTの種類について

着床前診断(PGT)について② 医療行為として行う着床前診断(PGT-M, SR)について

着床前診断(PGT)について③ 臨床研究として行う着床前診断(PGT-A)について

着床前診断(PGT)について⑤ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)における検査結果について

着床前診断(PGT)について⑥ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)の限界について

着床前診断(PGT)について⑦ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)のメリット、デメリット

着床前診断(PGT)について⑧ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)よくあるご質問とお答え

文責:

[培養部門] 塚本 樹里 石田 詩織 薄田 早季

[認定遺伝カウンセラー] 中原 恵理

[不妊コーディネーター部門] 山本 健児  [理事長] 塩谷 雅英

 

 

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