今回からはPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)についてお話したいと思います。
この検査は通常の診療として行われるのではなく、臨床研究として実施されています。
この臨床研究は、染色体異常による流産や妊娠・出産率の低下が、着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)によって改善するかについて検討するものです。
日本ではいまや年間4万人以上の赤ちゃんが不妊治療によって誕生していますが、治療を受ける女性の高齢化などにより、なかなか妊娠しない方や流産を繰り返す方が増えています。その理由の一つに胚の染色体異常が挙げられます。
日本ではこれまでPGT-Aは行われていませんでしたが、2016年より日本でも一部の施設でPGT-Aの臨床研究が開始されました。
その結果、PGT-Aを実施していない群に比べ、PGT-Aを実施した群の移植あたりの妊娠率が高くなるという結果が得られました。
そこで今回、PGT-Aの有用性についてより多くの施設で検討を行うことになり、当院もこの研究に参加することを日本産科婦人科学会より認められました。
研究として行われる検査のため、希望すればどなたでも受けられるわけではなく、対象となる条件がきちんと決められています。
今回は対象となる方についてご説明します。
主な条件は次のいずれかに該当する方になります。
〇反復体外受精・胚移植(ART)不成功
体外受精・胚移植実施中で、直近の胚移植で2回以上連続して臨床的妊娠(※1)が成立していないご夫婦
〇習慣流産(反復流産を含む)
直近の妊娠で臨床的流産(※2)を2回以上繰り返し、流産時の臨床情報が得られているご夫婦
〇染色体構造異常
夫婦いずれかに妊娠に影響する染色体の形の変化(構造異常)を有するご夫婦
※1 胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)が確認できた妊娠
※2 胎嚢(赤ちゃんが入っている袋)が確認できた後の流産
この他にもいくつかの条件があり、上記の条件を満たしている場合でも対象とならない場合があります。また、本研究の参加件数には上限が設けられています。
以上により、ご希望頂いても今回の研究にはご参加いただくことができない場合があります。
次回は、PGT-Aを行う場合の流れについてお話いたします。
以前の記事もご参照下さい
着床前診断(PGT)について① 着床前診断(PGT)とは~PGTの種類について
着床前診断(PGT)について② 医療行為として行う着床前診断(PGT-M, SR)について
着床前診断(PGT)について④ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)実際の流れについて
着床前診断(PGT)について⑤ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)における検査結果について
着床前診断(PGT)について⑥ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)の限界について
着床前診断(PGT)について⑦ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)のメリット、デメリット
着床前診断(PGT)について⑧ PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)よくあるご質問とお答え
文責:
[培養部門] 塚本 樹里 石田 詩織 薄田 早季
[認定遺伝カウンセラー] 中原 恵理
[不妊コーディネーター部門] 山本 健児 [理事長] 塩谷 雅英
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