のれんの会計基準を変えたソニーの秘策。 | 連結会計よもやま話

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各種試験の受験生の皆さん。こんにちは。

 

前回は、三井住友銀行の会計操作が【逆取得】における吸収合併の規定の設置をもたらしたお話でした(企業結合に関する会計基準34項.41項.)。

今回は、ソニーの秘策がのれんの償却期間の延長をもたらしたお話です。

 

合併であれ、子会社化(連結)であれ、企業結合が頻繁に行われるようになった現代ではのれんも巨額な金額が計上されるようになりました。その先駆けとして、1989年にソニーがコロンビア・ピクャーズ(現ソニー・ピクチャーズ)を約6500億円で取得した際には、約4000億円もの巨額なのれんが発生しました。

 

その当時のれんは商法では営業権、連結原則では連結調整勘定と呼ばれ、5年均等償却とされていました(監査委員会報告第29号「連結財務諸表監査上当面の取扱い」1999年4月1日廃止)。

しかし、ソニーが第29号に従った場合、毎年約800億円もの巨額なのれん償却額を費用計上しなければなりません。

そこで、ソニーはコロンビア・ピクチャーズを米国子会社の傘下に置くことで(ソニーの米国孫会社)、のれんの償却について第29号の適用を回避し、米国会計基準を適用する秘策を採りました。当時の米国基準では償却期間は最長40年間でしたので、償却額は約100億円で済むこととなり、約700億円を軽減した訳です。

 

この一件は当時の大企業や会計業界に大変な衝撃をもたらし、改めて5年間という償却期間について考え直す契機となりました。

① 5年間は諸外国の償却期間より遥かに短い為、諸外国の企業と比べ遥かに巨額の費用負担を日本企業に強いてしまう。

② 償却期間の短さが巨額の企業結合を躊躇させてしまい、日本企業の国際競争力低下を招きかねない。

③ ソニーによる第29号の抜け道に倣う企業の出現が予想され、日本の会計基準の有名無実化が懸念される

その結果、1999年4月よりのれんの償却期間は最長20年間と規定されました。

旧 連結財務諸表原則 第四 三 2

企業結合に関する会計基準 32.

 

なお、ソニーは1995年の連結決算でコロンビア・ピクチャーズの業績不振からのれんの減損損失として約2650億円を一気に計上していますが、それ以前にこのような事例はありませんでした。

そして、ソニーの処理から遅れること約8年後!

漸く下記指針がオープンされました。

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

ソニーと言えば、数多くの革新的な製品を世に送り出した企業ですが、事業戦略や会計処理でも先駆的な事例を残している企業と言えるでしょう。

 

最後に、現在は国際会計基準・米国会計基準共にのれんに関する償却規定はなく、減損規定のみが設けられています。

 

これからも皆様に有意義な情報を提供して参ります。

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