大解剖シリーズ三回目はボーイングのベストセラー737のNG型から、もっとも日本で運航機数の多い800型をセレクトしました。
調べてみるとなかなか奥の深い人であったので、解剖してみることにしました。
例によって開発経緯やその他の派生型はwikiが詳しいので出典を確認の上そちらをご覧ください。
さて、観察していきましょう。
写真、文言等随時修正中。最終更新2025.08.28
【目次】
1.機体構成
基本構造は低翼配置・後退翼の主翼に中翼配置の水平尾翼と垂直尾翼という極めて一般的な構成となっています。
各部の詳細についてはこれ以降の章で順次見ていきます。
2.胴体
胴体の設計は707の設計がベースになっています。
先端はレドームになっており、気象レーダーが収められています。
コクピットウインドウは左右各3枚で、こちらも形状は707から変わっていません。両側中央の窓は内側に引き込む形で開けることができ、乗員の脱出・正面風防清掃の際に使われます。
レドームとの間に並ぶ10コの突起は空気整流の役割を持つボルテックスジェネレーターで、機体各部に同様の部品が置かれています。
初期の機体にはコクピットウインドウ上部にアイブロウウインドウがありましたが、航法技術の進展により不要な上に太陽光が差し込み操縦席の温度上昇につながるとのことで製造途中から廃止、既存の機体についても埋められる機体が出ています。
写真でコクピットの中になにやら緑色のものが見えると思いますが、これがHUD(Head Up Diplay)です。戦闘機では1980年代のF-15あたりからHUDを装備(F-4などは光学照準器だったので速度情報や姿勢は計器盤をみるしかなかった)していましたが、旅客機で装備されるようになったのは近年の話。737NGは世界で初めてHUDを装備できるようになった旅客機ですが、オプションなので全ての機体が装備しているわけではありません。また関連機器の設置に必要なスペースの問題から左席のみの装備であることも特徴です。
続いてドアを観察します。
ドアは3種類があります。
Type-I
L1ドアに適用されているType-Iは737のドアの中でも最大のサイズ。ヒンジが前方に見えますが、開ける際は一旦ドアの半分ほどを機内に潜り込ませ、それから一般の家庭のドアのように外に開く仕様になっています。
ドアの下に見える銀色のものはスカフプレート(scuff plate)といい胴体構造を保護するためのものです。
よってPBB、リフトローダーなど地上支援機材が接触する扉の開口部下縁(カーゴドア含む)に取り付けられています。
なので後述OWEにはついていないわけですね。
737全体を通してのドアの特徴はなんといっても下部のふくらみ。ここには脱出スライドが収納されています。
737での「ドアモード変更」とは、最下の金属棒を胴体にかませることを意味します。これを外せば(ドアモード:ディスアームド)写真のように開きますが、かませたまま開くとドアは開くものの金属棒は胴体側に引き留められるのでスライドが収納部より引き摺り出され、同時にガスを充填しスライドが展張する、というロジックになっています。
決して新しい設計ではありませんが、最新の737MAXでもこのドアが用いられています。これは既存の737に対するコモナリティの確保に由来すると言われています。
Type-II
R1,L/R4ドアに使用されているType-IIは高さこそType-Iと同様ながら幅がやや狭められています。
Type-III
最小のType-IIIは翼上非常口に使われ、左右各2枚の計4枚が配置されています。こちらのドアは上方向に跳ね上がる形で開きます。このドアを略称で表す場合Over-wing Exit に由来するOWEという表記が取られる場合があります。
カーゴドアは右側のみ、前後方各1箇所あります。内側に引き込む形で開き、中には床下貨物スペース(ベリースペース)があります。コンテナは搭載できずバラ積みですが、オプションで内部にスライドカーペットを装備することも可能です。
キャビンウインドウは非常口前方でいくつか飛んでいますが、これは機体フレームや空調系統のダクトが通っているためです。
そのため埋められている、というより元からないというのが適切です。
余談ですが、胴体を製造した時点では全ての窓が空いていて、組み立ての段階で各社の仕様に応じて一部の窓を埋めたりしています。街中でも配達用のワゴン車が窓を埋めていると思いますが、あれが近いですね。
これは製造後でも重整備で変更することができ、ここで「窓埋め」と呼ばれる窓型のパーツのことを「プラグ」と言います。
どういう日本語が適切なのかはまだよくわかりませんが、筆者は「プラグが嵌められている」という言い方をとっています。ドアがあったところをドアではなくしている場合は「ドアプラグ」と呼びます。
APUはL2ドア後方から空気を取り込みます。
胴体最後部排気口があり、排気はここから排出します。透明のケース(レンズ)は航法灯です。
胴体下面には空調関連の空気取り入れ口(ラムエアインレット)があり、主脚格納部付近には排気口があります。この排気口の形状はPIP(後述)で四角い形状に変更されています。
中にはPACKという空調のための機械が収められています。
せっかく空調系の話が出てきたのでここで与圧系統についても少し触れておきましょう。
と思ったのですが、なんとシステム上の字数オーバーで入り切りませんでした!!
頑張って噛み砕いたので、「与圧ってなんぞや」という方は後でこのリンクから飛んでいただくとおよそのイメージは掴めると思います。
↓↓「『【大解剖】737-800』 補足別巻 与圧・空調(AIR COND)システム」
3.主翼・補助翼
続いて操縦系統とその関連の装備品について見ていきます。
操縦系統はフライトコントロールともいい、FCという略称が使われることもあります(ただし軍用機のFCは火器管制系統を指すので前後文脈が必要)。
操縦系統の観点から737が特徴的なのは各動翼が操縦桿と物理的にケーブルで繋がれている点です。
もちろん油圧を介しているので一人でもコントロールできる重さではありますが、777などと違いFBW(Fly-by-Wire フライバイワイヤ)は737NGでも採用されていません。
主翼は一般的な後退翼です。フラップはインポート・アウトボードの2種が装備され、いずれもダブルスロテッドフラップになっています。
737クラシックでは上写真の通りトリプルスロテッドフラップだったので構造が簡単になりました。
展開はUP位置を含め9段階に設定でき、最大展開角度は40°です。
例えばスカイマークでは19列目付近で作動時の油圧サウンドを高音質で聴くことができます。
インボードフラップの内側は胴体の中に動作機構が収められていますが、それ以外の機構はフラップトラックフェアリングで覆われています。フルフラップでは動作機構の一部が姿を表しますが、これが普段はフェアリングの中に収められているというわけです。
こちらも737クラシックでは円錐形でしたが若干の形状変更が行われています。
最近ではほとんどの機体が翼端にブレンデッドウイングレットを装着しています。これは当初はオプションだったものの、後ほど標準装備になりました。
民間機には採用されていませんが、米海軍のP-8Aには計画のみに終わった737-800ERXに適用される予定であったレイクド・ウイングチップが備えられました。各種文献には「737-900ERの主翼(=レイクドウイングチップ)を使った」モデルと書かれることが多いですが、実際の737-900ERにはブレンデッド・ウイングレットが使用されておりレイクドウイングチップが民間型737に適用されることはありませんでした。
一部の737NGには従来のウイングレットに比べ上端部の形状を改良し、また根元にさらに下反角のついた小翼が組み合わさった「スプリットシミタールウイングレット」を装備しているものもあります。文脈がないとわかりづらいですが、従来のWLと区別して略称で示すのであれば「SWL」が良いかと思います。
これはオプションの装備品であり、写真のユナイテッドは全機がブレンデッドウイングレットからの換装です。
737MAXが装備するウイングレットは一見似ているもののATウイングレットという別物であり、上端部の形状や下反角翼の翼弦長などに相違点を見ることができます。
話が少し逸れたのでまた視線を-800に戻します。
インボード・アウトボードそれぞれのフラップに沿う形でスポイラーも装備されていて、インボードが1枚、アウトボードが5枚です。アウトボードスポイラーはフライトスポイラーとグランドスポイラーいずれの役も兼ねエルロンによるロール操作の補助もしますがインボードスポイラーはグランドスポイラー専門です。したがって減速・降下でスポイラーを使用する場合、アウトボードのみが動作します。
着陸時はスポイラーレバーをアームドにした上で、
・機速60kt以上
・WOWが接地検知
・スラストが フライトアイドル以下
・(RA)10ft以下
の条件が成立(=接地)すると動作します。
ただし制動力を高めるため一度ショックストラットが沈みGround判定が出ると4秒間はスポイラーがDeployするようになっています。
737-800にはオプションでSFP(Short Field Package)仕様機というものが存在します。これは略称の示すとおり短距離離着陸に主眼を置いた仕様ですが、わかりやすい改善点としてスポイラーの動作角増大が挙げられます。
日本では滑走路が比較的短い空港も少なくなく、また降雪域では制動力も低下することを見越してかこのSFPを採用する会社が半分を占めています。
上が非SFP、下がSFPで、いずれも接地直後のスポイラー展開状況を写したものです。
SFPのほうが展開角度が大きい(+約20°)のが見て取れます。SFPでは着陸後60ktまで減速すると自動的に非SFPと同じ角度まで戻り、その後パイロットの格納操作によって格納されます。この機能はSFP標準装備です。
離陸前のFCチェックでは操縦桿を左右に倒すとエルロンと連動してスポイラーが動作しますが、この場合はSFPでも非SFPの角度で展開します。
翼端付近にはエルロンとタブ(小さい補助翼)が装備されています。エルロンはロール操作を行うため上下動しますが、タブは常に水平を保つよう動作します。エルロンが動く時にタブを見ておくと水平を保つ様子ははっきりと見ることができます。
前縁には、エンジンパイロンを挟んでインボードに747と同じクルーガーフラップ、アウトボードにスラットが装備されています。
アウトボードは一般的なスラットで前方に迫り出します。
737クラシックと違い基本的に主翼は全面がライトグレー1色で塗られています。さらに各種マーキングが施されています。脱出経路指示がよく目立ちますが、その隣、黒と黄色の四角いマーキングは着氷を確認するための印です。このタイプは基本的に全日空のみ(過去にはスカイマークが767に、日本エアシステムでは一部の機種にそれぞれ使用歴あり)で、日航グループは黒線を使用しています。他のエアラインでは無印です。
主翼上面中ほどまで引かれた枠はCSFF(Cold Soked Fuel Frost)といい、低温域にて主翼表面に燃料が霜状に浮き出た場合、この枠内で、かつ一定の厚み以内であれば除氷しなくてもよい範囲を示します。こちらは2004年以降製造の機体について標準で塗装されていますが、各国の当局によってはCSFFの利用を認めていない場合(=許容範囲内であっても除氷)もあります。
CSFFは最近の機体では内側へ引き伸ばされ、またパイロン付近で曲線を描く仕様になっていますが、こちらの変更については公式声明どころか特にサイト類でも注目されておらず、詳細は不明です。ただし重整備の後こちらに更新されている機体も確認(※筆者調べ)されているので、新標準なのかもしれません。
更新CSFFには2種類あり、ほとんどが前者のパターンです。こちらはパイロンに線が重なるように引かれているのが特徴です。そして珍しいのが後者、線がパイロンに重ならないよう、回り込んでいるパターンで、737MAXに採用されているものです。日本ではJA73AB,ACの2機のみに適用されています。
オプションでスパー(主翼構造部)に沿ってウォークラインを引くこともできますが、こちらの日本での適用例は全日空の3機のみです。*写真のJA737Nからは消されてしまっている。海外ではよく見かけます。
CSFF(旧)のみとCSFF(新)+ウォークラインを比較。違いが見て取れます(下写真は737-900ER)。
アメリカではCSFFが認められていないため、CSFFなしでウォークラインだけ、という機体も存在します。
燃料は右主翼下面より給油します。
燃料タンクの配置は一般的な配置で、両主翼と翼胴内にあり、いくつかのエリアに区切られています。
垂直尾翼は一枚のラダーを備えるほか、比較的大型のドーサルフィンが特徴です。尾翼中程のピトー管については後述します。
ラダーは上写真においてグレーになっているところが相当します。上部には大きな切り込みが設けられているのも特徴です。
水平尾翼は左右各1枚の計2枚が装備されており、それぞれが全遊動式の水平安定板と1枚のトリムタブ付きエレベータによって構成されています。ホリスタ本体は操縦桿のトリムタブの操作によってモーターを介して作動、エレベータは操縦桿の前後操作によって作動します。
比較的大きめの上反角をもって取り付けられてる点も特徴的です。
4.ギア
ギアは前脚が1脚2輪、主脚が2脚各2輪と小型機としてはきわめて一般的な配置になっています。
前脚はステアリングを持ち、前方に振り上げる形で格納します。格納後は観音開きの2枚ドアによって覆われます。
主脚は2輪1組が左右に取り付けられ、外側ホイールはカバーで覆われています。
もちろんオートブレーキ(A/B)も備えられており、1~3とMAXの4段階の設定があります。
主脚は内側へ振り上げる形で格納されますが、ギアドアには覆われず外に露出した状態になります。なお上記のSFPにおいては主脚の取り付け角が1°違うそうですが…わかりません☺️
またPIP(後述)では主脚格納部の形状を改善し空気抵抗を削減しています。
5.エンジン
エンジンはCFM56-7Bシリーズで、推力に応じてCFM56-7B24/26/27などのラインナップが存在します。
カウルはインレットカウル、ファンカウル、リバースカウルの3つからなり、ファンカウルにはオイル関連のアクセスパネルのほかハザードステンシル(コーションマーク)が目立ちます。会社により注意書きが複数言語の場合もあります。
エンジンスタートバルブは専用の器具をここに差し込むことで外部からエンジンをスタートさせる際に使用します。日常のオペレーションで見かける機会はありません。
エンジンはパイロンを介して主翼に懸吊されています。
元々JT-3Dなどの細いエンジンを装備していた737は、737クラシックを開発する際(相対的に)大直径のCFM56を装備するためエンジンカウルの下面を平たくしましたが、NGにもこれは引き継がれています。
スラストリバーサー(=逆噴射装置)はカスケード方式を採用。リバースをかけるとリバースカウルが後方へスライドします。
JT-8を装備していた737オリジナル(-100,200)ではターゲット方式を採用、同じエンジンのC-1ではターゲットのデプロイ方向を横倒しにする方式が採用されました。737クラシック以降はCFM56に換装したことから以降737MAXに至るまでカスケード方式を採用し続けています。
なおカスケード前方に見えるフィンはカウルストレーキといい、空気整流を目的とする部品です。
内部にはあれこれ配管が通っていますが、737の場合防氷用高圧空気もエンジンから抽出するので、その配管なども通っています。
前述の通りカウルは3つからなり、後者2つは整備にあたって底部にある複数のラッチを外すことで左右に跳ね上げることができます。
またギアの項でやや触れたPIPとは、燃費向上パッケージのことを指します。
空気抵抗の削減を主として、空力面において改善が図られていますが、エンジンも例外ではありません。
目に見える違いとしてはカウル後方排気ノズルの形状変更が挙げられます。
このPIP適用のエンジンはCFM56-7BEと総称され、CFM56-7B24Eなど7B**Eとモデルネームを挟んで詳細に表記することができます。ちなみにA320用CFM56のPIP適用モデルはEではなくPが使われ、CFM56-5B4/Pなどと表されます。
6.アンテナ・外装品
アンテナ類の配置は以下のとおりです。
装備されているアンテナは標準的なものです。機体によってはWi-Fiが無かったり、あるいはSATCOMが装備されている場合もあります。また一部の機体にはID(Ice Detector=着氷検出)が追加で装備されていますが、数は多くありません。
垂直尾翼にもピトー管がありますが、こちらは速度計測用というよりも、操縦桿へリアルな操舵感覚を伝達するためのものです。
T-2でいうところのQフィールピトー管にあたるものです。737ではQフィールとは言わない..というよりQフィール自体がT-2/F-1独特の名称なのかもしれませんね。
写真ではマスキングされていますが、この機体はちょうど売却整備の過程で長期離脱していたもので、保管中に虫などが詰まらないようにシールされています。精密計測装置なのでつまりがあったり、あるいはこのシールを剥がし忘れたまま飛んでしまうと正確な情報が得られなくなってしまいます。
ところで本記事を出して以来完全に説明を失念していたのがピトー管です。
(Qフィールの話の後に本家を紹介するのもアレですが)飛行機の速度を計測するのがその役割です。
飛行中、高速の機外に露出したピトー管には大変な空気の力(全圧)がかかっているのは想像に難くありませんが、そこから大気圧(静圧)を差し引くことで単純に機体にかかる圧力を速度に換算して操縦席の速度計に表示する仕組みになっています。
飛行条件によっては氷が付着し計測に支障をきたす恐れがあるので、ここは加熱して氷ができないような仕組みも備わっています。
また胴体側面に4スミをカギカッコで囲まれたエリアがありますが、ここはRVSMエリアといい、その中央に置かれた小判形で銀色の部品をスタティックポート(静圧孔)と呼びます。
詳しい原理は省略しますがスタポは気圧高度取得用の計測装置であり、またそれが正常に機能することを条件に精密な垂直間隔での管制(=RVSM運航)を受けることができます。その計測に影響を及ぼさないよう、周囲は常にcleanにしなければなりません。その範囲がまさしくカギカッコで囲われたエリアというわけです。
会社により少々文言は異なりますがおよそ「THIS AREA MUT BE SMOOTH」といった内容の注意書きがステンシルされています。
このためか、デカールによる特別塗装機ではこのエリアを避けるように貼られているケースもあります。
上空では基本的にこの「気圧高度」というものを用いますが(大気状態によって誤差が出るため、補正を掛ける場合があります。気圧高度補正値、QNHというやつですね)、地上に近づくと今度は機体下方から電波を発射し、その電波が返ってくるまでの時間を計測することで高度を割り出す電波高度計というものもあります。これが(少し戻って恐縮ですが)アンテナ配置図における"RA"(Radio Altimeter)です。着陸前に「50..40..」とコールアウトする音声は有名です(GPWS=Ground Proximity Warning Systemもこの電波高度計からの高度情報によって作動します)。
アンテナ類は胴体中心線かはやや右にずらして配置されています。
尾部下面にはテイルスキッドがあり、テイルストライクに備えています。
テイルスキッドの近くにはドレインがあり、このドレインはAPU関連の排水を担っています。写真の機体はSFP-2につきドレインが曲げられていますが一般仕様の機体であれば直線のドレインが取り付けられています。
機番直下赤線の先にあるアンテナ状のものもドレインで、機内で発生した排水・排気を加熱・気化させた上で機外へ排出するものです。加熱されているので、HOTの注意書きが書かれています。
話がややそれたものの、テイルスキッドはSFPのオプションで2段階展張タイプにすることができます。着陸時のみ2段目まで展張し、接地後約5秒で元の位置へ戻ります。
JTAの738はSFPではあるもののテイルスキッドのオプションは適用していないのでぱっと見は標準仕様に見えます。
テイルスキッドのオプション適用機について、少なくともソラシドエアが「Type-2」と表記(FBにて)していましたが、これ以外に全く関連する文献を見つけることができず正式な呼称は不明です。
筆者は勝手にSFP-1,SFP-2として区別表記することに一旦決着しています。
余談ですが737の安全システムが実際に動作した事例を見てみましょう。
どの飛行機にもある装備ですが、今回絡んでいるのはTCWSというシステムです。
これはTake-off Configuration Warning Systemというシステムの略称で、直訳すると「離陸形態警報」になります。
離陸に備え設定したフラップやホリスタなど装置が必要かつ許容設定(Take-off Configuration)にあるかを判定している装置があり、これが不十分なまま離陸(スロットルレバーの押し込み)を検知すると警報が鳴り危険を知らせます。(フライトシミュレータアプリ、X-Planeで737を購入している方は、ノーフラップでスロットルを込めるとこの警報が聞けます)
もちろんチェックリストは実行されているはずですが、ヒューマンエラーを機体側から防止するために組み込まれているシステムです。
上の写真は実際にそのTCWSが作動したために離陸を取りやめた機体です。この後ゲートへ引き返し、この便は別機材で運航されました。エラー防止のためのシステムとはいえシステムがエラーを起こすこともあるので、仮に全ての設定が正しく完了していたとしてこのケースで再離陸がなされなかったということはTCWSの誤作動が疑われ(もちろん警報鳴り響く中飛ばすわけにもいかないので)引き返しの判断が下されたのかもしれませんね。
7.灯火類
灯火の配置などは決して特徴が多い方ではありませんが、ロゴライトがクラシックで翼端にあったものが水平尾翼上面に移されました。
胴体下にはリトラクタブルランディングライトがあります。名前の通り格納可能で、使用しない場合もあります。後期製造の機体にはそもそも装備されていません。
後期の機体ではLEDを採用。この仕様ではリトラクタブルは非装備です。
この仕様ではノーズからもランディングライトが撤去されているのが特徴です。
またLEDは翼端のみLEDの機体もあるので、そことランディングライトがLEDかどうかは別問題です。
またリトラクタブルが生きていても、その全てがLEDに換装されているタイプも(日本にはいませんが近場では韓国や中国に)存在します。
衝突防止灯(ACL)は回転式ではなく明滅式です。製造時期が後期の機体はACLが雫型に変更され、空気抵抗の削減が図られています。
初期の機体は円筒形のACLです。こちらでは空気抵抗が大きかったのかもしれません。
航空機に限らず電球というのは基本的に発光部分とそれを覆うケースから成ります。航空機用灯火の場合、発光部分のことをLIGHT-ASSY、それを覆うパーツをLENS-ASSYと呼ぶのだそうです。
ASSYとはAssembly(部品)の略号で、この形状変更は「レンズの形状が変わった」という言い方をすれば良いということになります。
近年では日航が2kuタイプのWi-Fi設置に伴いACLを移設するなどの動きもあります。
8.機内・機内装備品
・操縦席
操縦席は2席が設けられていて、写っていませんがさらに後方にジャンプシート(オブザーバーシート)が設置されています。
正面には計器晩が、両操縦席にスロットルレバーをはじめ各種装置が配置されています。
また写っていませんが天井に各種スイッチ類、後方壁面にサーキットブレーカが置かれています。
天井には主にエンジンスタータースイッチやライト・与圧・電気系統のスイッチが配置されています。
馴染み深いところでいうと離陸前の「ポーン」という合図を鳴らすスイッチもここにあり、操作した回数分「ポーン」が鳴ります。
全部はとても紹介しきれない(というかできないものもある)ので、ざっくりと計器盤を概観してみましょう。
まず正面計器盤の最上部はひさしのように若干手前へ飛び出しています(グレアシールドパネル)が、ここには左右をマスターコーションとファイアアラートに挟まれる形で自動操縦(オートパイロット=AP)関連の操作パネルが配されています。
高度や速度、方位、上昇率などをツマミを回して設定するとコンピュータが自動で機体をその通りに飛ばしてくれます。
また正面には5つの大きな画面が置かれています。それぞれモードを切り替えてさまざまな情報を表示することができます。
両端には時計があり、その隣には飛行機の速度・高度・姿勢を示すモニターがあり、飛行にまず必要な(プライマリ)情報を表示する役目があることからPFD(プライマリ・フライト・ディスプレイ)と呼ばれています。その隣には指定した航路や他機の位置・高度差を表示するディスプレイがあり、航法(ナビゲーション)に使うディスプレイであるからND(ナビゲーション・ディスプレイ)と呼ばれています。ウェザーレーダーが雲を検知した時、その距離や危険度も視覚的にこのモニターに表示されます。
ど真ん中にあるのはED(エンジンディスプレイ)を兼ねたEICAS(エンジンインジケータ&クルーアラーティングシステム)とよばれるディスプレイでエンジンの状況を主に表示しています。また各種エラーメッセージも表示可能です。
下にも似た内容を表示するモニタがありますが、エンジンディスプレイの予備計器の役割も担っています。
このパネルの隣にあるのがギアレバーで、これを上げ下げすることでギアが出入りします。
左席のPFDとEDの間には予備のPFDがありますが、もちろんこれは左右のPFDとは計測装置自体から切り離されていて、計測装置もしくは表示に異常があった際はこれを参考にします。
またペデスタルコントロールパネルは主に3つから成り立っています。
という前にこの「ペデスタル」という聞きなれない言葉、これはPEDESTALと英語で綴りますが、直訳すると「台」になります。
で、このペデスタルパネルは前方(奥)からFMC、スロットルレバー類、そして消火レバー、無線機などが備わったパネルの3つで構成されています。
FMCというのはフライトマネジメントコンピュータのことで、フライトプランをここにテンキーで入力していきます。いろいろ端折ると文字が打てる電卓みたいなものだと思うと掴みやすいですね。FPLに基づき航空路のウェイポイントをここに打ち込んでいきます。
スロットルレバーは有名ですね。エンジンにつながっていて(本当はFADECとかの話もあるんですがちょっと割愛)、前に押し出せばパワーが上がり、手前に引けばパワーが絞られるというわけです。1,2と書かれているのがそれぞれNo.1,No.2エンジンにつながっていることを示しています。
で、スロットルレバーの奥に見える小さなレバーを引き起こすとスラストリバーサーが作動します。
両脇にスポイラーとフラップを操作するレバーがあり、少し手前にパーキングブレーキのレバーもあります。
両脇には黒いドラムがありますが、ホリスタのトリムを取ることでガタガタと回ります(操縦室密着動画などで見えると思います)。
手前には本当にさまざまな装置が置かれているので一概に何の装置と言えないのが歯痒いところですが、無線機とか、あるいはエンジンに火災があった時の消火剤放出レバー、さらに手前側にはラダートリムのスイッチなどがあります。
操縦桿は各操縦席の正面に1つずつ配置されており、左右は繋がり連動します。
また足元にはラダーペダルがあり、飛行中の横滑りまたは高速度帯での地上滑走中の姿勢維持にこれを踏み込んで機首方向をコントロールします。
これらは全てケーブルで物理的につながっていて油圧によって操縦桿の動きが舵面へ伝達されます。
万一に備えて油圧は複数系統が用意されていますが、万一全油圧を喪失してもケーブルによって理屈上は操縦自体の継続が可能です。
低速度帯での機体のコントロールは、見づらいですが右席操縦桿の右下にあるステアリングティラーというハンドルで前輪のステアリングをコントロールします。
では操縦席を出てキャビンを観察してみます。
機内は単通路で、基本的に3-3配置となっています。航空会社にもよりますが、160席〜170席台が基本です。
2クラス設定の機材では上級クラスの座席幅、配置の関係から通路が折れているケースも散見(ex日航)されます。
またクラスディバイダーという仕切りによって上級クラスとエコノミークラスを仕切っている場合もあります。
クラスディバイダーがあってもなくても2クラス機でのエコノミー最前列は前にテーブルがないため肘掛けの中にテーブルを収納しているモデルが搭載されています。
これらは非常口でも同様(会社による)で、前席のテーブルが撤去されている席ではほとんどがこの肘掛けにテーブルを仕舞うタイプの席が設定されています。また非常口席の一列前は後方脱出経路を妨げないようリクライニングが制限されています。
機体によっては電源が設けられています。
737NGでは主に電源供給源はエンジン(の発電機)、APU(の発電機)、GPU(グランドパワーユニット=地上電源)の3つがあり、日本の国内線では主に前者2つが主流です。
駐機中はAPU、エンジン始動後はエンジンに電源を切り替えます。737では電源の特性上どうしても一度全電気を遮断してから新しい電源に繋ぎ直さねばなりません。この過程は一瞬ですが機内照明がチカっとしたり、ケータイの充電が一瞬途切れたり、あるいはアナウンスの途中に「ブチッ」という雑音にこの特性を見ることができます。
航空会社によっては機内にモニターを装備しています。
2010年代前半からはインテリアを刷新、ボーイングスカイインテリア(BSI)として装備できるようになりました。写真を比較するとオーバーヘッドビンの形状変更、間接照明の採用などの変化が見てとれ、やわらかな雰囲気になっているのがわかります。
日航本体では照明がLEDになりましたが、ビンの交換・サイドウォールの換装が行われていないためあれはBSIではありません。またカンタスにはオーバーヘッドビンのみBSIと同じものを採用している場合もあります。
キャビンの窓は形状自体は変わっていないものの、内装上は四角や丸みを帯びたものになっています。
いずれもサンシェードは上から引き下ろす仕様になっています。
非常口は上にハンドルがある関係でサンシェードは下から引き上げる仕様になっています。
また窓側の肘掛けは撤去されているか根元に一部残されているパターン、ないし非常口ドアに肘掛けが設置されている場合もありますがいずれもオペレーターによります。
頭上にはベルト・禁煙サインのほか、酸素マスク(格納状態)、スピーカー、読書灯、空調、コールボタンがまとめて配置されていて、これらを総称してPSU(Passenger Service Unit)と呼びます。
BSIではより操作性を向上したモデルを搭載しています。
空調ノズルの拡大図。左のノズルは完全に閉めた状態、右は全開にした状態です。
4つの突起がついたリングがありますが、これ全体を捻ると中心部の隙間が調整でき、そこで吹き出す空気量を調整するという仕組みです。
空調ノズルは風量・向きの調整が可能です。エアコンの風は圧縮空気がもとなのですが、エンジンスタートの際は圧縮空気をエンジンスターターに全振りするためエアコンが一時的に停止します。
一部の機材には救命いかだが搭載されていて、通路上にそのストウェージボックスが配されています。
ただし一部の会社ではそこに「Infant Life vest(幼児用救命胴衣」と書かれているためラフトの代わりにそれがあるのか、あるいは両方があるのか、これは謎です。
BSI仕様機ではキャビンの間接照明を妨げてしまうからか、ストウェージボックスに照明が取り付けられています。
機内中央、非常口席付近にはここが非常口であることを示すサインが設置されていますが、コンフィグに応じて三種類があるため今度の機材はどの仕様なのか、乗るたびに楽しみにすることができます。
↑センター配置(大型)
さて、今回も機内はだいぶ雑になりましたが737-800を解剖してみました。
内装については3年ほど立ってしまいましたがスカイマークに特化して新たに整理しました↓
日本で数多く活躍する737-800、書いてみるとそこそこ奥が深かったので、今度乗る機会があればぜひ機体各所をご覧ください。