人間秘宝館-梶誠さん

梶 誠。昭和8年生まれ。76歳。

農山村活性化の画期的なモデルとして梶さんが進めた
「カウロゲ(高嶺下)ファームビレッジ」が2010年に総務大臣表彰を受ける。

自称「キチガイ」

愛知県豊田市野林町(香嵐渓の足助町近く)に、
都市住民に移定住してもらえる森の村づくりを10年かけて行う。

現在ビレッジ内には、集合住宅と6戸の個人住宅が点在。
梶さんが、地元の人々と都市の人々を結び、新たな地域共同体が少しずつ生まれようとしている。

左手の指を、親指を残してすべて過去の事故で失う。

サムライの子孫としての自覚を持ち、不退転の覚悟と、
どんな障害があっても、それをエネルギーと楽しさに転化する術により、
他に例のない地域再生の実験が成功しつつある。


「カウロゲファームビレッジ」は、いまも進化の途上である。

人間秘宝館-小倉昇1

小倉昇。80歳。

岐阜県瑞浪市でウィークエンド百姓学校 校長を務め
農薬を使わない、牛を中心とした自然循環農法を提唱。
都市住民の自給農生活を指導している。

 週末の作業で自給できる農業
 一日3時間労働で成り立つ農業
 スポーツのように楽しめる農業

を提唱している。

牛や植物の都合は聴くことができるが、ヒトの都合はおかまいなしである。

つまり自分が人間であるということは、ほぼ忘れてしまっていると思われる。

人間秘宝館-小倉昇2
■日時/2010.03.24(水) AM 10:15~PM 14:40 
■参加者/10人

先回、黒柳さん・杉浦さん紹介によるカウロゲ・ファームビレッジ訪問に参加できなかった人のために、再訪を企画する。
梶ご夫妻により「ゆず味噌五平餅」でおもてなしを頂き、これがまた大変おいしく、心より感謝。
当日は生憎の雨模様であって十分景観を見られなかったのが残念であったが、集合住宅見学→梶さんの講話→個人住宅と周辺見学を一通り行うことで、あらましを掴んで頂けたのではないかと考えている。


●ユニークな足助職員集合住宅

《地域活性化の希有な成功モデルとしてのカウロゲF.V.》

地域活性化と地域共同体の再生は恐らく同様のことではないだろうか。
地域共同体の再生は、煎じ詰めれば「人」「人と人」というところに帰着していく。
梶さんという(本人に言わせればキチガイだ、と)人がいて、「限界集落」化した農山村に都市人の移定住を企てたわけだが、この企て自体は行政の政策として何十年も前からあり、必ずしも梶さんの案出によるものなのではない。

まず梶さんが地元の方々にこれを提起し、行政とも協力し、受け皿をつくった。都市の人々にも「新しいあるべきライフスタイル」として提案し、興味をもってもらう。そして農山村と都市の人々をつなぎ、相互の理解を促す……コトバで言うのは簡単だが、こうした活動には大小様々な障害が生まれるわけで、これを丹念にときほぐしていく努力は筆舌で表現できるものではない。

実はこのプロセスこそが「共同体の再生」そのものなのだということを、梶さんは教えてくれているのだ。

だから実現に10年、そしてできて以降もなお、この努力は続けられている。
共同体を維持していくための多くの行事やコミュニケーションの確保、そして更には居住者以外の都市部の人々に来てもらうための活動や、キッカケづくりの継続(炭焼き、菜園づくり、ビオトープづくり、われわれのようなビジターへの応対、自然学習……)。
ハードウェアやしくみで共同体の再生などできるものではない。
結局は「人」そして「人と人」なのだ。

●元・都市住民の住まいが点在するカウロゲファームビレッジ風景


《森林循環という考え方と、生き方》

梶夫人が言われる「この人は必要あって木を伐採しても、そのすべてを捨てずに必ず何かに役立てていく」と。
森林循環・自然循環という実感を伴った信念と実践を、梶さんは日々しているのだ。森林循環住宅の「事業化」ということを考えていく上で、最も大切なのはこの点かもしれない。
われわれの甘さがあるとすれば、ここかもしれない。
「楽しくなきゃ、やっちゃダメ」と梶さんは言う。ハタからみて大変なことでも、楽しくやっていれば心の負担にはならないのだよ、と。多くの人々が絡み、多様な障害が立ちふさがる中で、そんなことが可能だろうか。誰かがメンドウを起こしたとすれば、とりあえずメンドウを起こした人がワルイ、と考えるのではなかろうか。どこかでアタマをスイッチして「メンドウなこと」を「エネルギー」と「楽しいこと」に転化してしまう梶さん。
最も魅力的なのは、この人のアタマの中ではないだろうか。


《建築家3人が参加》

この日は名古屋・岡崎・安城より若手建築家3人(深谷朋子、岩間昭憲、西口賢)が参加してくれた。カウロゲF.V.に建てられている住宅への興味か、はたまた「新たなコミュニティビレッジ」への関心か。梶さんの人柄にひかれてのことか、あるいはそのすべてか……改めてお聴きしたいと考えている。
どうやらいまや住宅建築単体で終結できる時代ではなくなってきているようだ。「まち」という「人と人」のつながりの中で「住まい」はどうあるべきか、を捉えていくべきなのだろう。
「人と人」からさらに「人と自然」へ。森林循環住宅も単に「国産材大量使用」という観点だけでなく、こうしたひろがりを持ったアプローチに進化していかねば、と思うのである。


《皆さんのご意見を。そして次回は…》

カウロゲF.V.を紹介してくれた杉浦・黒柳のご両人に、次回の仕切りをお願いしようかと考えている。
カウロゲF.V.を学ぶ対象として、自分はこうしたい、こうする……という展開でどうだろうか。
予定日は4月12日~25日くらいの間で、仕切り人の都合により決まるが、日取りの都合についてご意見を。
またカウロゲF.V.その他についてのご意見を小早川のところにまでお寄せ頂きますようお願いします。

■日時/2010年3月15日
■参加者/計7名

《概 要》
ごぞんじの「香嵐渓」がある足助町に近い野林町 高嶺下地区。細い山道を辿って標高400mの山の中へ入り込む。と、眼前の森林の中に点在する、曲面形状の石垣をベースにしたスキップアップの集合住宅、直径40cmもありそうな本格的ログハウス、変形多角屋根の家、舟をモチーフにした多角形の建物……。ま、おそらく日本中どこを捜しても見当たらない、森とスーパーモダン(?)な住宅が対比的に融合した風景が目に刺さってくる。これが全国から見学者が訪れる「カウロゲ・ファームビレッジ」である。


人間秘宝館-カウロゲ
●山の中に突然あらわれるユニークな集合住宅。実は足助の役場の職員住宅であった。


人間秘宝館-カウロゲ
●印象的な面構えの住まい。

人間秘宝館-カウロゲ
●ここに街から移り住んできた家族が暮らす

人間秘宝館-カウロゲ
●移定住した家族は、現在6世帯


これを実現した立役者が梶 誠さん。76歳。徳川旗本家を先祖に持つ、いまだサムライスピリットを心に秘めた人である。
1998年、小学校廃校の危機を機に、地域消滅への危機感に駆られて動き始めた梶さん。12年の間には実に様々な障害があった。あったけれど、乗り越えてきた。乗り越えられたのはリクツや理性ではない。要するに「キチガイが1人おったっていいじゃないか」と、梶さんは言っている。途中行き倒れてもいいじゃないか、やらないよりやった方がいいじゃないか、と。


人間秘宝館-カウロゲ
●協力者が集まり4日間でつくったという梶さんの秘密基地(?)で。




人間秘宝館-カウロゲ
●合鴨農法を実践しているという田んぼ。

10年やってきたら、カタチになった。総務大臣表彰も受けた。しかし一番嬉しいのは、梶さん自身の中にあった「何か(DNA?)」が動き出したこと、見つかったことなのだろう。「今が一番幸せ」と言う。
100家族が応募して、1年かけて山の中体験をしてもらい、最終的に6家族がここに来て住み、新たな地域共同体がつくられつつある。
梶さんの名刺には「循環形森林活用の実践」とある。
われわれの、とりあえず最良の教師が、ここにいる。

アレンジしてくれた黒柳さん、杉浦さん、ありがとう。