共通テスト物理の解説と評価、その最終回です。
最後の問題を詳しく見て、最後に今回の胸痛テスト物理についての考察をしたいと思います。
第4問は、電子の電場、磁場内の運動についての出題です。
問題はいわゆる定番の問題ではなく、工夫された問題になっています。
難易度はどうでしょうか。
一つ一つを検証していきましょう。
第4問(問1)は電場中の荷電粒子の運動についての問題で、放物運動を絡めた応用問題ですが、それほど難易度が高いわけではありません。標準レベルの問題です。
粒子は電子のような、負電荷の粒子という扱いです。
アは電位差の問題ですが、抵抗とコンデンサーを連結した直流回路の問題として解けばいいでしょう。
そもそも、コンデンサーが充電されてしまうと、それ以上電流が流れなくなりますから、この装置の導線に流れる電流は0です。そのため、抵抗の両端の電圧は0になりますね。
したがって、電池の電圧V=極板間の電圧Edになります。
→アの答はEd
イは極板の正負を問う問題です。
負電荷の粒子が下向きに力を受けていることから、極板間の電場の向きが上向きであることが容易にわかります。
したがって、極板の正負は、Bが正、Aが負となりますね。つまり、Bの方がAより高電位ということになります。
→イの答はBの方が高い
では、これらを踏まえて解説を御覧ください。
→[18]の答は「3」アEd イ電位が高い
第4問(問2)(問3)は、電場中の負電荷粒子の放物運動についての計算問題です。これは標準レベルの問題ですね。放物運動の知識と、電場から受ける力の知識を組み合わせて解く問題です。
第4問(問2)は電場中の負電荷粒子が電場からされる仕事の計算問題です。
問題のレベルとしては標準レベルなのですが、電場中で移動する荷電粒子に静電気力がする仕事を計算する問題は、少しめずらしいタイプの問題ですね。
解きなれないためにどう解くか、困る人もいたと思います。
仕事の定義は「仕事=力✕力の向きの移動距離(変位)」ですから、この基本的な定義を負電荷粒子の電場中の運動に適用すれば、上の解説のようになります。
荷電粒子は結局、電場中を移動する間、電場から力を受け続けますが、極板間の電場の入口から出口まで移動する間、粒子の静電気力の向きの変位は「0」です。したがって、電場が粒子にする仕事も0になります。
別解として、Wを静電気力による位置エネルギーqV(この問題では-eV)の差として計算しても、同じ答えになります。
図のPの点の電位VpとQ点の電位Vqは等しいので、W=(-eVq)-(-eVp)=0となりますね。
→[19]の答は「7」仕事は0
第4問(問3)は、放物運動と電場から受ける力による加速度を組み合わせて、電場の強さを求める問題です。
応用問題で、計算も面倒ですが、難易度が高いという問題ではありません。標準レベルですが、力学的な運動と電磁気学的な要素を組み合わせることに慣れていない人には、少々難しいかもしれません。
答は解説の通りです。
→[20]の答は「3」
第4問(問4)は、磁場中の荷電粒子の運動についての問題です。(問4)は定性的な問題で、ローレンツ力に関わる基本中の基本問題です。
粒子は等速円運動をしているので、粒子が受ける力の向きは向心方向です。
Q点での向心方向は、図のdの向きになりますね。
→ウの答はd
粒子が負電荷であることを踏まえ、粒子が受けるローレンツ力の向きと磁場の向きの関係を、フレミングの左手の法則で確認しましょう。
負電荷粒子の場合は、粒子の進む方向が電流の逆向きに相当すると考えるとラクです。
これらを考え合わせると、磁場Bの向きは紙面の裏から表に向かう向きだとわかります。
→エの答は裏から表
よって、
→[21]の答は「8」
いよいよ、最後の問題です。
第4問(問5)は、電場中の放物運動と、磁場中の円運動を組み合わせた、総合問題です。
大学の筆記試験で出題されても違和感のない問題です。
共通テストの問題としては、難しいレベルです。
磁場中のローレンツ力と遠心力のつりあいから回転半径rをmとvで表します。
また、問3の結果と、電場中の軌道が変わらないという条件を「距離Lが変わらない」という条件と考えて、m’、v’とm、vの関係を求めます。
この2つを組み合わせることで、回転半径r’がrの何倍になるかを求めます。
手書きの解説を御覧ください。
電場中の軌道が変わらないという条件をどう扱うかが思いつかない場合、問題を解くことができなくなります。
そういう意味では、難問といえますね。
→[22]の答は「1」
問題全体を通じての評価:
共通テストの役割は、本来は基本的な理解がちゃんと身についているかどうかを確認することと、その教科にふさわしい思考力があるかどうかを確認することです。
そのためには、出題する内容はできるかぎり幅広い分野から選ぶことが重要です。
しかし、今回の出題を見る限り、むしろ大学の筆記試験に近い構成になっています。全分野からまんべんなく出題するのではなく、一つ一つのテーマを深く掘り下げて、応用力があるかどうかを試す出題になっています。
筆記試験の対策が進んでいる受験生には対応できても、例年の共通テストレベルを想定していた受験生には、厳しい問題になったと考えられます。
難しくなったのは今回だけで、来年は通常の出題レベルに戻る、ということならよいのですが。
ざんねんながら、共通一次、センター試験の歴史を振り返ると、一度難化した場合、翌年も難しいレベルが続くことが多いのです。通常のレベルに戻るのには二三年かかるかもしれません。
来年の受験生は、過去問だけでなく、筆記試験レベルの問題も意識して学習するとよいでしょう。
探究的な問題を増やすというのが共通テストのウリなのですが、今回の物理は探究的というより、筆記試験の問題を共通テスト用にスライドして利用した、という印象です。
そういう意味では、昨年、一昨年の物理基礎の出題の方が、探究的な問題を出題するのに成功していました。
ただし、物理基礎の受験生は文系の人が多いため、それをちゃんと解ける人が少なく、全国平均が満点の半分未満という事態が続きました。
これも、受験生のレベルを理解せずに問題をつくった結果でしょうね。
(今回の物理基礎は、標準レベルに戻り、全国平均も正常化しています。やれやれ)
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