物理サークル2023.10.21報告 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 土曜日に、物理サークルに行ってきました。

 今回は、いろいろ刺激的な話題が多く、議論百出。昔の物理サークルを思い出しました。

 では、例によって、ごく私的な視点での、サークル報告です。順序も発表通りではありません。

 正式な例会報告は、愛知物理サークルのウェブサイトをお待ち下さい。

 

 

 冒頭のイラストは『いきいき物理わくわく実験3』より。伊藤さんの発表。

 いろんなコウモリの超音波を可聴音にする装置を使って観測。コウモリの鳴き声はタイプが二種類あり、聞こえ方が違います。

 

 

 驚いたのは、それがいまは教科書にも載っているということ。これはびっくり。

 

 なお、伊藤さんからは別の面白い話もオフレコで聞きましたが、こちらはナイショなので、ここには書けません。『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てくるようなお話でございました。

 

 

 こちらは、本日一番議論を読んだ飯田さんの発表。

 いやあ、飯田無双、久々に見ました。

 ぼくには、今日、一番おもしろかった発表ですね。

 

 

 こちらは、飯田さんの十八番。生物をスケールで考えるというお話。上が元本です。

 

 

 象の足と人の手足。

 面積の比率から、象の体重を推測しようという計算。

 計算だと4.5トンだけど、実際は3トン。このずれはどこから、ということで、飯田さんは弾性相似という理論を持ち出しました。

 難しい理論なので詳細は省きますが、重力の影響で弾性体が変形するのを計算に加味する方法。これによれば計算値は2.8トンで、実際の値に近くなるとか。

 

 これに対し、うさぎは体重はそんなにないが足の面積は大きいぞ、とか、馬は体重が大きいが蹄の面積は小さいぞ、とか、異論続出。多種多様な生物を物理学で単純に比較はできないという異論も。

 

 

 飯田さんは弾性相似の実例として、自重のある長いばねを振動させました。この理論によると、ばねの周期Tはバネの長さlに比例する。実際に測定したら秒数がほぼ2倍。どうですか?という発表。

 

 これについては、ぼくが素朴な疑問をいくつか。

 1つめは、飯田さんは画面一番下の数式(ばねの周期の式)も使って周期が2倍になることを主張していますが、そもそもこの式は成り立たないのでは、という意見を述べました。

 なぜなら、この式は質量の無視できるばねの先端に重りをぶら下げたときの周期を表すもので、自重があり、重りをぶら下げていないばねの振動を表す式ではないからです。この式を当てはめて計算しても、測定値を裏付けることにはなりません。

 2つ目は、弾性相似の理論そのものが、このばねには当てはまらない、という意見です。

 たしかにTはlに比例しますが、その次の式、Tが質量Mの4分の1乗に比例する、というのが、ばねには当てはまりません。2倍長いばねは質量も2倍なので、Tは2の4分の1乗になるはずで、2倍にはなりません。

 どうしてこういうズレが生じるかというと、弾性相似は、大きさ(長さ)が2倍になると面積が4倍になり、体積が8倍になるという基本的なサイズの性質に重力の影響を加味したものですが、ばねの長さが2倍になるケースでは、面積も体積も2倍にしかならないので、条件に当てはまりません。

 

 まあ、これはぼくが指摘した部分だけですが、他の人からも意見百出。

 それに飯田さんがさらに答える、という構図で、あっという間に45分程の時間が。もう次の人に移ろう、という声にもさらに説明を続ける飯田さん。いやあ、こういう場面は昔の物理サークルでよく見かけた光景で、ぼくは懐かしく思いました。

 

 

 こちらは石川さんの10円玉光通信。懐かしい〜。

 

 

 ラジオの出力を光の強弱に変え、それを10円玉と同じ酸化被膜のある銅板で受け止める光通信の実験。10円玉よりは性能が上がりますが、それでも電流量は少ないので、アンプを2段にしてスピーカーから音を出しています。

 

 

 黒板は石川さんの波を別の視点で見てみようという発表ですが、ぼくは石川さんがドップラー効果で前方に出る波の振幅が後方に出る波の振幅より大きくなる、といったのが気になって、発表をろくに聞いていませんでした。

 

 のちのちわかったのですが、黒板の縦軸は変位ではなく密度。これなら、前方のほうが密度が高いので当たり前のお話でした。

 

 ぼくは変位のグラフと思い込んで、振幅は前方のほうが小さくなるのではないかと、一人、自分で計算をし続けていました。

 その結果が、こちら。

 

 

 音源が音速の2倍で進む場合の簡単な計算例で、前方に進む波の振幅が後方に進む波の振幅の√3分の1になることを説明しました。

 教科書などの図では同じ振幅に描かれています。まあ、これはこれでいいと思うのですが、厳密に音源から出る音のエネルギーを前方と後方で比べれば、振幅が異なることが示せます。

 

 前方と後方で波長が3倍違うので、振動数も3倍違います。空気分子の単振動のエネルギーはそれぞれが振幅の2乗と振動数の2乗に比例しますが、同じ時間に前方に進む波の個数と後方に進む波の個数は同じなので、当然、前方の波一個分に含まれる空気分子の数は、後方の方が前方より3倍ことなります。

 

 振幅の2乗×振動数の2乗×空気分子の数で、前方と後方に進む波1個分のエネルギーを表せますが、エネルギー保存により、同じ時間に前方に出るエネルギーの総量と後方に出るエネルギーの総量は同じです。

 黒板に書いた前方後方のエネルギーを=で結ぶと、振幅の2乗が3倍異なることが示せますね。

 

 

 こちらは真っ暗な中で撮影したので、ピントがあっていませんが、林さんの手作りバンデグラフです。放電の長さにみんな感嘆。市販品より性能が高いのです。やはり、帯電列の遠い材料をうまく使っているからでしょう。長持ちする材料より、性能のよい材料を選ぶのがポイント。手作りの良さですね。

 

 

 明るいところで見るとこんな感じの装置です。

 

 

 こちらは小野さんの発表。職場で昔のバイプリズムを発見したので、実験してみたとのこと。干渉模様を見るのに、昔は回折格子でなくバイプリズムを使っていたそうです。ぼくもバイプリズムの実験は初めて見ました。

 なかなか美しい干渉模様ですね。

 

 

 バイプリズムのかわりに凹面鏡に反射させることで、バイプリズムと似たような干渉をつくることもできます。その干渉模様はうまく撮れなかったので、割愛。

 

 

 杉本さんの釜鳴り実験。これ、中のニクロム線が管内いっぱいに広がるように螺旋状になっていますが、ニクロム線がまっすぐだと釜鳴りが起こりません。釜鳴りの上昇気流を起こすには、管内のある程度の範囲が一様にあたたまる必要があるようです。

 

 

 こちらは「釜鳴りをしている間は、空気が管の中へ入っていかない。線香の煙が入っていかないことでわかる」との杉本説に、みんなが異論を唱え、さっそく実験が始まりました。

 釜鳴りの間、上昇気流があって、線香の煙は下の口から吸い込まれ、上の口から出ていく様子がわかるぞ、という声多数。スギさんは首をひねりながら「いや、やっぱり入っていかないよ」と不満そう。

 

 

 懐かしい水は投影機ですが、井階さんはこれを難しい受験問題に応用。

 

 

 間隔の異なる複雑な波源の干渉模様でもっとも効く干渉はどの波源の組み合わせか、という実験。

 

 

 こんな感じの干渉模様です。

 ぼくの素朴な感想は「よくわからなかった」ですが、面白いとは思いました。

 

 漏れてる実験もあるかと思いますが、ご容赦を。

 では、また。

 

 

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