光速の謎〜これ、科学? | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 光と光速についての質問、第二弾です。

 まだまだ謎は深い。

 

Q【なぜ光は速いのか。また、どうしたら光より速く運動できるのか】1984/3年

 

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【ひろじのつぶやき】

 前回の超光速問題と同じ質問ですが、今回の回答はいろいろ。

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【回答A】1984/3年

 振動数によって異なり、プリズムによって分散するから。

 時間より速く運動すればいい。

【回答B】1984/3年

 光は電磁波だから速い。

 光より速くは運動できない。

【回答C】1984/3年

 光速を超えるにはどうしたらいいかわからないが、仮に超えたとしたらどうなるかという疑問がわいた。

 仮に光速以上のスピードで進む宇宙船に乗っていて、ふと後ろを振り向いたらどうなるのだろうか。後ろの壁から出た光は宇宙船すなわち観測者のスピードよりおそいから、光が目に達しないということになる。すると、なにが見えるのか。

 過去の出来事が見えるのかもしれないが、それはどういう風に見えるのだろう。また、見えるとしたら壁の存在は? また、自分の手を見たら?

 似たようなことだが、仮に光速以上のスピードで弾丸を飛ばすピストルがあったら、どうなるだろう。

 標的が人間だとすると「弾丸が当たってから引き金をひく動作が見える」ということになってしまうのではないか?

 大きな壁が光速以上のスピードで自分に向かって進んできているとすると、その壁があると思われる方向には、何が見えるのか。いくらか前の、壁の向こうの景色が見える? 壁は見えない? うーん、わからない。

 わかった! 光速は超えてはいけない速さなのだ!

 

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 回答Aは、論拠が分かりづらいですね。たぶん、「光は速いといっても振動数により速さが異なり、プリズムで分散を起こす」ということをいいたかったのでしょう。

 今回集めた回答の中では、物質中の光速について言及した唯一の回答です。

 質問者の「光速」はあくまでも真空中の光速なのですが、物質中では、物質との相互作用のなめ、光速はおそくなります。例えば、水中では真空中の75%くらい。

 これだけおそいと、核反応で大きな運動エネルギーを持った粒子、例えば電子などは、水中では光速を超えた速さになります。

 

 

 この場合、光速を超えることで光の衝撃波が生まれます。

 これが、各反応のときに見られる青いチェレンコフ光。

 「光速が最高速度」というのは、あくまでも「真空中」に限る話です。

 物質中なら、光速を超える粒子は存在可能なのです。

 回答Aの「時間より速く運動する」というのは、何を言おうとしているのか不明です。もう少し、詳しく書いてくれると、いわんとすることがわかったかもしれませんが。

 

 回答Bはいわゆる現代物理学の常識的な見解です。面白みはないですね。

 

 回答Cはそれに比べると非常に面白い。

 超光速問題に関わり、時間のずれについて考えています。

 「光速を超えるロケットに乗って後ろの壁を見たらどうみえるか」という疑問は、まさに若き日のアインシュタインが考えた疑問と同じです。アインシュタインは「光速で動きながら鏡を見たとき、自分の姿が果たして鏡に映って見えるか」という疑問を考え、それを後に相対性理論という形で解決したのです。

 回答者は意見をまとめきれていませんが、なかなかによい着眼点ですね。

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Q【光は真空中が一番速く伝わるということだが、真空中では何を媒質として進んでいるのか】1984/3年

 

【回答】

 音波の場合、媒質の密度が大きくなると音速が速くなり、光波の場合、媒質の密度が小さくなると光速が速くなる。音波と光波はまったく同じと考えることはできないと思う。

 光波がこのような性質を持っているとすると、振動が伝わるというより、粒状の性質を持っているといった方がいいと思う。

 例えば、ラッシュ時の電車の中を動き回ることには苦労するが、空いている時は楽に動くことができるのと、同じだと思う。

 また、粒状であるとしたら、真空中も伝わることができる。

 

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 いよいよ「光の媒質はなにか」という19世紀末最大の謎が登場。

 これに対し、回答者は「光は波でなく粒子と考えれば、真空中を伝わる時の媒質の問題は解決する」と答えています。これは、まさにニュートンの粒子説そのものです。なかなか、すぐれた思考ですね。ラッシュ時には動きにくいというのも、物質中を進む光と物質の相互作用を類推させるよい発想です。

 

 ニュートンは「ニュートンリング」と呼ばれる干渉装置も研究していますから、光の振動現象についての理解はありました。が、光が真空中を伝わってくるということから、光を波動と考えるのは無理があるとして、「光はある種の振動をともなった粒子である」という粒子説を主張しています。教科書などでは単純に「ニュートンの光の粒子説はヤングの干渉実験によって波動説に敗北した」みたいな記述がありますが、そんな単純なものではありません。

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Q【光の速度が人間の走る速度よりおそかったら、どうなるか】2019/2年

 

【回答D】

 人間の感覚がおかしくなると思う。光がおそいとその景色にだまされて、時間の流れの感覚がおそくなり、実際の時の流れと自分の感じている時の流れとの間に大きな差が生まれ、例えるなら浦島太郎のような状態になってしまうのではないか。

 光がないとおそらく何もできないので、光より速く行動できなくなり、光のおそいペースに合わせた行動をする。よって、時間の感覚がおかしくなり、限られた時間の中でやれることが少なくなると思う。

 

Q【なぜ光の速さはおそろしいくらい速いのか】2019/2年・2016/3年

 

【回答E】2019/2年

 光の速さがどのくらい速いのかは、見たことがないからわからない。「見たことがない」というより「見ることができない」。しかし、電灯の光が光っているのは「明るい」と見ることができる。

 光が伝わっているのは見られないのに、走っている物体は見られる。この違いはなにか。

 目は猛スピードで動く光のまぶしさに耐えられず、まぶしさから目を守るために見えなくなると思う。

 または、光が人間の目には見えないくらいの小さな塊で伝わっていくものとする。小さい光でもそれが伝わる光の速さは一瞬なので、すぐに「明るい」と感じることができるくらいの光が集る。

 

【回答F】2016/3年

 仮に光が速くないとします。

 もし光が人が歩く速さで進むとすると、いろいろな問題が起こります。

 例えば、野球のピッチャーが投げたボールはキャッチャーから見ると「ピッチャーが投げるより先にボールが来る」みたいなことが起こります。また、ちょっと走っただけで未来へ行けたりする訳です。そんなことは実際に起きないし、起きたら大変です。

 交通事故も多発するだろうし、人と人がうまくコミュニケーションをとることもできない。(自分の行動と他人の行動、他人の行動とその人の声、などでズレが生じる)そんな世界で、私達は生活していくことはできないでしょう。

 つまり、あらゆる物体は、光の速さを超えてはいけないのです。だから、光はとても速いのです。光が速いから私たちは生きていけるということです。

 この答では気に入らない人がいると思うので、もう少し考えます。

 光はすごく大きなエネルギーをもっている(与えられている)から速いのだとも考えました。

 私たちが目にしている物や景色は、光によって伝えられます。つまり「光を目でとらえる=見る」ということです。だとすると、人は物を見るとき「とても大きなエネルギー持っていて高速な光」を目でキャッチするということになります。

 それでは目が痛いのではないか。だから、やはり最初に考えたような答になってしまいます。

 

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 質問はそれぞれ異なりますが、回答者の発想が似ているので、ひとつにまとめました。

 回答者Dは、いずれも人間が「どのようにして光を感知しているか」という認識論で、光の問題を論じています。

 回答者Dは人間の感覚が光の速度によって決まっていることを、回答者Eは別の発想から光が小さな粒子でできていることを考えています。

 また、回答者Fは物事の順序が光の速度とそれを受け取る人間の認識により決まっているという発想です。

 いずれもユニークで、すばらしいですね。

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Q【光とはいったいなにか。真空を通るし、物にあたると跳ね返るし】1986/2年

Q【光速の7割の速さで走る列車があるとして、その列車の中を光速の5割の速さで人が走ると、人の速さは光速の12割となり、光速を抜くことになるが、正しいか。もしそうなら光速を追い抜いたことになり、時間が逆戻りして若返ることができないか】1986/2年

 

【回答G】

 光に速さがあるというからには運動をしている。運動をしているという以上は速度も加速度もあり、質量もあるといいたいが、よくわからない。

 たしかに、光速を追い抜きそうに思える。

 ところで、今までの質問や回答で光速だと歳を取らないというのがあった。

 光速を追い抜くと、ゆるやかに若返ると思う。光速に対し1の速度なら普通の歳のとり方をして、10なら歳を取らない、つまり不老不死となる。10を超えると、なにかしら若返ると推測します。

 浦島太郎の物語に似ている。

 そもそも「光速で歳を取らない」という意味がわかりません。

 

【回答H】

 光に質量はあると思う。蛍光灯の下にいくと、ぐっと重みを感じるから。

 光速を超えるのはありえない。電車の中を光速の5割で走るというのは、どこを地面にしているのか。

 今、ロケットに乗って地球を離れ、望遠鏡で地球を振り返って見ることにしよう。

 

 

 ロケットが光速の8割くらいのスピードで飛んでいくと、光が地球の映像を運びながらロケットの背後から抜かしていくので、この場合は、映像は時間の順番通りにちゃんと見える。

 ロケットが光速で飛ぶ場合、図のような状態で進んでいくので、永久的に同じ映像を見続けることになる。

 そして光速を抜かす場合、今度はロケットが光を後ろから抜かしていく。つまり、光を固定した状態で、ロケットが矢印の方向に進んでいくのだから、当然時間を遡っていくわけだ。

 

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 回答者Gは、質問者の論拠を打ち破ることができず、「7+5=12」を容認しています。しかし、回答者Hは、質問者のいう「5」が誰から見た速度なのかを問題にしています。これは、するどい指摘ですね。

 なお、当然ながら、彼らはまだ特殊相対性理論を学んでいませんので、光速に近い速度で飛ぶ物体の合成速度が「7+5=12」という、速度のおそい時の物理法則に従わないことを知りません。(相対性理論の合成速度の式はもっと複雑で、どんなに速い速度を足しても、その和が光速を超えることはありません)

 

 それはさておき、回答者Hの発想は、すばらしいですね。

 過去の映像は光に乗って進むので、ロケットから振り返った見た地球の姿は、過去→現在の順に、順当な見え方をする。

 この論理は非常にすぐれていて、感心します。

 図解されている(図はぼくが原画のイメージを損なわないように描き直しました)ため、非常にわかりやすいですね。

 ロケットが光速を超えると現在→過去の順に見えてくるというのが、慧眼です。

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Q【光には質量があるというが、光は重力で地球の中心に向かって落ちていくのか。そうなら地面にたまった光子はどこへ行くのか】1986/2年

 

【回答】

 光があまりにも速く動いているということと、光の質量がとても軽いということから、重力の影響はほとんど受けないのではないでしょうか。そうでなければ、世の中は真っ暗になってしまうと思います。

 

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 最後に、かんたんですが、ちょっと変わった質問とその回答を紹介しておきます。

 「光に質量があるなら、重力で落ちるはず」というのは、まさにその通り。

 ただし、たとえばりんごは地面に落ちますが、十分なエネルギーを持って動くりんごは、落ちながら進むので、そうかんたんには地面に落ちません。人工衛星は、このため、重力を受けて落ちながらも、地面から同じ高さを保っていて、地面に落ちないのですね。月も同様です。

 光は「静止質量」がゼロですが、エネルギーと同等の質量は持っていて、重力にちゃんと反応しています。地面に落ちてこないのは、人工衛星や月と同じ理由。回答者の「光の質量はとても軽いから」というのは、ポイントを抑えた回答ですね。

 質問の通り、「光が重力のために地面に落ちてしまう」ような世界があれば、たしかに真っ暗になります。それが、ブラックホール。

 何気ない質問と回答の中に、宇宙論の重要な要素が垣間見えていたので、紹介しておきました。

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 では、今回はこのへんで。

 

 *骨折から1ヶ月。しばらくの間、右手が使えず、いろいろ不便していましたが、先日、医者から「ゆっくりなら、右腕を真上に上げても良い」という許可をいただきました。今日から、そのリハビリを開始。右手の不自由でいろいろありましたが、いよいよ、通常状態への復帰ができそうです。

 

 

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