物理サークル2022.6.5報告〜パンデミック2年ぶりの本格再開 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 新型コロナ感染パンデミックで、愛知物理サークルの例会も、ほぼ2年間、開かれませんでした。昨年の11月に一度開かれましたが、再開という形にはなっていません。

 

 今回は、2年ぶりのサークル本格再開。盛況でした。

 

 今まではサークル予定日の告知をここでもやっていましたが、まだまだパンデミックが収まりきっていない状況なので、事前告知は自粛し、今回は報告のみです。

 なお、例によって、ここでのサークル例会報告は、あくまでも私的なものです。すべての発表者の記録を公平に載せることはしていません。

 完全な記録を読みたいという方は、やがてアップされる、物理サークルサイトの記事をお待ち下さい。

 

 今回は、新しい試みとして、愛知物理サークルのインスタグラム(straycatsaichi)を用いて、会の様子をライブ報告してみました。開いたばかりなので、フォロワーもありませんが、若い先生たちに見てもらえる場がいるかなと、インスタにしてみました。

 興味のある方は、どうぞフォローしてください。

 (ぼくのかわりにインスタやってくれる人がいると、一番いいんですが。だれか、代わってくれないかな・・・)

 

 

 

 今回、最初の発表はぼくだったのですが、自分で自分の発表は撮れないので、割愛。

 浮力と起電盆の実験紹介をしました。ついでに、このブログに書いた記事を2本、持っていきましたが、全体の進行を考えて、紹介は割愛。まあ、読んでもらえればいいかな、くらいの発想です。

 

 

 林ヒロさんの「電球の点く順番」実験。これについての詳細は前回の<遊>の報告で行いましたので、ここではさわりくらいの紹介で。

 

 

 話題になった実験なので、みんな、興味津々です。

 

 

 すみません、今回はちょっと、オシロの画面が見づらいですね。

 

 

 林ヒロさん考案の光速度測定装置(高振動数の発振回路を利用)で、A、B、Cの電球がどの順番で点灯するかを調べます。

 黄色いのが発振器の信号。青いのがLEDから出る光の信号。信号がずれているのは伝わるのに時間がかかるためですが、発振器からLEDのAまでは、回路の中でいろいろなことがあって、導線の距離通りの時間遅れにはなりません。そこで、LEDのAを基準とするためトリガーをかけ、LEDのB、LEDのCがどうなるかを調べました。

 

 結果として、AとCは同時に点灯し、Bは100nsほど遅れて点灯する、と出ました。だいたい、AとからBまでの導線(同軸ケーブルを利用)の距離を光速で進んだ時間分遅れることがわかりました。理論通りですね。

 これも、前回の<遊>の記事に書きましたので、今回は割愛します。

 

 

 こちらは岐阜の石川さん。コイルを回すことで地磁気で電磁誘導をおこし、方角を判断するという実験で、以前、『いきいき物理わくわく実験』で縄跳び発電として紹介したものの応用装置です。

 

 コイルの軸が東西を向いているのが最初の画像。

 

 当然、誘導起電力は最大になります。

 

 次は、軸を南北に向けた場合の画像。

 

 

 起電力が小さくなっていますが、0にはなっていません。「なぜだろう」と皆、一瞬首を捻りましたが・・・

 

 

 装置自体を傾けると誘導起電力は0に。

 「ああ〜、そうか〜!」と、みんな、納得。

 

 地磁気が地面に平行になっていないためでした。いわゆる「伏角」にあわせて装置を傾けると、誘導起電力を0にすることができます。

 

 さて、今回のハイライトシーンはこちら。

 

 

 こちらは動画から編集した画像ですので、少し粗いです。

 石川さんが、林さんの「電球の点く順序」に関わる電磁場理論を披露していたら、川上さんと飯田さんが参入して、カオスな状態に。かつての物理サークルの姿が復活。外野席から指を指して議論に加わる人もいます。いやあ、楽しいなあ〜!

 物理サークルはこうでなくっちゃ。

 

 

 

 

 

 こちらは、その石川さんの理論説明のための図。これで「わからん」「こうじゃないのか」「どうなってる」なんて議論が噴出。

 石川さんの説明は、正統的な電磁場理論をもとにしたもので、非常にクリアな説明だと、ぼくは思いました。しかし、議論は止まらず、祭り状態。

 うん、これだよな、愛知物理サークルは。

 

 

 こちらは標準理論とは違う、音波の伝達との類推。これも面白かった。

 

 スギさんが「石川さんの描いた空間を伝わる電場の向きが導線に垂直なのに、導線の自由電子が導線に平行に動くのは、矛盾しないか?」という、これまたまっとうな問題提起。

 さらにそこに林ヒロさんが参入し、てんやわんやになりました。

 導線に平行に進む空間の電磁場が導線内の電位を決めますが、進行にともなうタイムラグがあるので、導線内の微小な距離の間に電位差が生じ、それが自由電子を動かす、というのがヒロさんの解釈。(これで、あってるかな? ぼくは、このように理解しています)

 

 本来、この実験の基本イメージについての議論がなされるべきだったのですが、ヒロさんがLEDの回路中の電位についての謎質問をしたことで、皆、途中からそっちへシフト。物理サークルらしい、いつ果てるともない議論に突入していきました。

 

 

 今、飯田さんが執筆している本。

 その昔、三井川勝飯田で力学の本を出すべく用意したものが基本で、今回は飯田さんの書いたものを単独で本にするという企画のようです。飯田さんの「ライフワーク」といえるんじゃないでしょうか。

 

 

 こちらは、生徒と一緒にレールを動く棒の運動を研究したという話。どうにもわからないので、意見がほしいとのことでした。(すみません、初めて見る方なので、名前わかりませんでした。あとでわかったら、追加修正します)

 

 話の骨格は、こんな感じ。

 

 フレミングの力IBLを受けた棒は加速されていくが、いわゆる受験問題では、電磁誘導による起電力vBLを受けて等加速度運動にはならず、最終速度に達すると書かれている。

 しかし、電磁誘導による起電力は、使用した磁石の磁場、金属棒の長さと速度を実測した限りでは、到底使用している電池の起電力に及ばない。

 とすると、最終速度に達するためには、vBLによるブレーキ以外に、何かが働いていなくてはならないはず・・・

 

 興味深い話題でした。

 

 そもそも、レールの上を金属棒が走るケースを扱う受験問題は、実際に実験するとその通りにはならないので、受験問題としてふさわしいかどうかという議論もあるでしょうね。

 

 おそらく大きさのある金属棒がレールの上を回転しながら転がるときに、金属棒の各所で電磁誘導が起こり、そのジュール熱でエネルギーが失われ、最終速度に達するのではないか、というのが、今回の結論ですが、それを実証する明快な実験方法は見つかりませんでした。

 今後の課題、かな。

 

 

 伊藤政夫さんのケルビン発電機。

 これも生徒との共同研究。

 水のpHが関係するんじゃないか、いや、有意な差とは思えない・・・といった、議論があるとの報告でした。

 ぼくはこれを聞いていて、pHが変わるのはケルビン発電機で発電する仕組みの、「原因」ではなく「結果」だと思いました。

 

 

 大阪から駆けつけてくれた井本さん。アルキメデスの王冠の問題で、お風呂の湯があふれる逸話についての問題提起がありました。(これについては、ぼくもマンガ「アルキメデスと王冠」とその解説記事に詳しく描きましたので、興味のある方は御覧ください)

アルキメデスと王冠その1〜ミオくんと科探隊

アルキメデスと王冠その2〜ミオくんと科探隊

 

 みんなで水の入ったコップに十円玉を次々に入れていくゲームをしました。

 最後にこぼしたのは伊藤さんでした。2枚めの写真、水のこんもり具合がよく撮れていますね)

 

 

 こちらは、中学生に数学の体積の公式を理解してもらうのにピッタリのモデル。

 角錐が角柱の3分の1の体積であることが、一目瞭然。

 素晴らしい!

 

 

 こちらはパズル。折りたたんで、同じ色の四角で「田の字」を作るというもの。かなり難しいです。

 

 

 スギさんの回折格子による鏡像。0次の鏡像と1時の鏡像が見えています。

 

 通常は、これを鏡像ではなく回折像と呼びますが、スギさんはファインマンの鏡反射の理論を応用し、回折格子と鏡は同じ理屈で説明できるはずだとの見解を。(詳しくは、ファインマンの『光と物質のふしぎな理論』岩波書店を御覧ください)

 

 このCDによるライトの鏡像ですが、スマホのカメラは感度が良すぎて、明るいライトだと、2次の鏡像がぼやけてしまいました。弱い光の光源にしてもらい、無事撮影終了。人間の目って、感度がいいのに、眩しくなりすぎない・・・すごい性能ですよね。

 

 

 これがファインマンの理論。鏡の反射は通常の反射の法則に従う入射光と反射光だけでなく、鏡を経由するありとあらゆる経路を計算し、波動関数を合計しなくてはいけないという話。ファインマンは波動関数を向きを持つベクトルの→で表し、その矢印の足し算(連結)により、何が起こるかを計算してみせました。

 スギさんがここで解説しているのは、そのまとめ的なお話だと思います。

 写真に取る余裕がなかったので割愛しますが、回折格子の場合は半波長ごとに光の反射しない場所(けがいた場所)があり、そのため、光のベクトル和で残る部分が周期的に現れ、いわゆる回折像を作る、ということかな。

 

 

 

 こちらが、本日の締め。

 山本ヒサモリさんが「でんじろうがやってたやつだけど」との前フリで、スマホの自撮り用カメラ・レンズの上に水滴を垂らし、簡易的なレーウェンフック顕微鏡を作ってしまう、というのを見せてくれました。

 これはすごい。

 スマホ時代になった今だから、できる実験ですね。

 画面の左上が、自撮り用のカメラレンズに水滴を乗せ、さらにその近くにプレパラートを持ってきて撮影している風景。

 想像以上にクリアに撮れます。

 

【※】インスタによるライブ中継?は、思いの外大変だったので、次回はどうするか、迷っています・・・ほんと、だれか、やってくれないかなあ〜

 

 

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