なぜ寝ているとき夢を見るのか〜これ、科学？

　今回も質問リレーから。

【Gくんの質問】なぜ、夢を見るのか？（寝ているとき）

　夢と睡眠についての質問は、質問リレーの定番です。毎年のように登場しますね。

　例によって、文意を変えない程度に文章の修正等をしています。

【Hくんの回答】

　人は無意識のうちに夢を見る。と、いうことは、夢を見ることは人にとって、なにか意味のあることではないかと思う。

　夢は「脳が得た情報を整理するため」とかいわれている。

　が、夢の内容について考えてみると、明らかに非現実的なものもある。

【ひろじのつぶやき】

　いつの頃からか、「夢は記憶を整理するために見る」ということがいわれるようになり、それが誰でも耳にする一般知識になってきました。

　ところが、こういった「知識」は、質問リレーで問題について考えるときには、マイナス要素として働く場合が多いのです。

　実際、この夢の問題については、その知識に引きずられ、「夢は記憶を整理するために見ると聞いたことがあるので云々・・・」と、ほとんど論理展開せずに簡単に回答してしまう学生が多いのです。

　ですから、この「夢」の話は、思考力を普段から鍛えているかどうかの試金石にもなります。

　Hくんは、「記憶の整理」という知識は持っていたものの、自分の経験から「それで本当に正しいのか」という疑問を持ちました。

　敬愛するファインマンさんは、科学にとってもっとも必要な能力は「疑問を持つ心」だとおっしゃっています。質問リレーを行う意味は、そこにあるのです。

【Hくんの回答つづき】

　自分の見た夢の種類やパターンを書き出してみる。

＜現実的＞

　・起きて目が覚めると「なんだ夢か」とがっかりする良い夢。→したいこと、なりたいこと。

　　例：大金持ちになった。宝くじに当たる。部活で活躍した。

　・目覚めると「夢でよかった」と安心する悪い夢。→したくないこと、なりたくないこと。

　　例：友人や家族がいなくなった。部活の最後の大会でボロ負けした。

＜非現実的＞

　・空を飛ぶ。

　・魔法を使う。

　書いてみると、現実的な夢は、自分の感情や欲の気持ちが出ていると思った。

　非現実的な夢は、現実的なよい夢のように、こんなことをしてみたいという気持ちが表れていた。

　また、夢を見ずに朝目覚める人の方が多い。

　これらのことから、ぼくは「夢は感情を整理するために見る」のだと思う。

　うれしいことがあったり、何かをしたいと思ったら、よい夢を見て、

　いやなことがあったり、何かになったらいやだと思ったら、悪い夢を見るのだと思う。

　夢を見なかったら、精神的に安定している証拠なのでは。

　また、「予知夢」というものもあるので、夢についてはまだまだ科学的に証明するのは難しいと思いました。

【ひろじのつぶやき】

　Hくんは自分の体験をもとに、夢の役割を分析し始めました。

　このように、具体的な事例に当たって、検討するというのは、科学的な調査方法としては非常に優れています。理論物理の場合でも、いきなり抽象的な法則を考えるのではなく、具体的な事例を想定して理論が正しいかどうかを考えるのが有効です。（かのファインマンさんも、このやり方でいつも考えていると、書いていますね）

　夢について考えるときには、さまざまなアプローチ法がありますが、Hくんの場合は、人間の感情や精神状態を基本において論理展開しています。

　Hくんの回答を別のいいかたで表すと「夢は精神状態の安定を図るために見る」といえそうです。

　いわゆる「定説」を否定し、自分の思考で夢の正体にアプローチしているのが、すばらしいですね。

　このテーマは「質問リレー」では幾度となく取り上げられているので、また機会があれば、別の回答を紹介したいと思っています。

　なお、夢については、まったく別の側面からも、話題に上がっています。

　【なぜ、夢の中でこれは夢だと気づけないのか】というテーマです。

　こちらについては、以前、やはり「これ、科学？」の記事として紹介したものがありますので、そちらをご覧ください。（下記リンク、「脳とAI、そして夢」を参照）

　なお、最後にHくんがちょっとだけ触れた「予知夢」については、一筋縄ではいかないお話ですね。こちらも、いろいろな場面で話題に上るので、機会を見つけて紹介したいと思っています。