冒頭の科学者イラストは、本当はガリレオの弟子トリチェリにしたかったのですが、あいにく、トリチェリのオリジナルイラストはまだ描いてないので、師匠のガリレオ先生に代役をつとめてもらっておきます。
アメリカの『コンセプト物理』という有名な教科書を書いたヘーウィットさん。アメリカの教室で物理を学ぶ学生のために、1〜2分で実験を見せるという「Physics is Phun!」というビデオ教材を作っています。
そのなかに、ゴム板の中央にステンレス棒を通して裏側で引っかかるようにしたものを、椅子の上にただ置くだけで、棒を引っ張り上げるとゴム板に椅子がくっついてくるというパフォーマンスがあります。
ゴム板と椅子の座面の間が真空に近い状態になるので、上下から大気圧で押さえられるために、ゴム板と椅子がくっついてしまい、持ち上げることができる、という実験です。
何年か前、これを見せたいなと思い、ホームセンターでちょうどよいゴム板を探したのですが、最近はゴム板は人気がないのか、見当たりません。
そこで、原理はそのままで、発想を変えて、プラスチックの下敷きでやってみることにしました。今回はそのときの実験の様子を再現したものです。
ステンレス棒のかわりに、100円ショップで手に入れた少し大きめの吸盤を取っ手としてくっつけてあります。(この吸盤自体も大気圧を利用した装置なのですが)
ゴム板の場合は形が変形するので、ステンレス棒が裏側に少々飛び出していても平気なのですが、プラスチック板の場合はそうはいきません。その点、取っ手として吸盤をつかえば、下敷きの裏側はなめらかな平面のまま保たれますから、大気圧実験に使えるのでは、と考えました。
お試しで、よく使っているちゃぶ台の上に下敷きを乗せてみました。
このちゃぶ台の面はなめらかなので、下敷きを乗せると、ちゃぶ台と下敷きの間の空気はきれいに抜けてしまいます。
・・・で、吸盤の取っ手を持って引き上げると・・・
うまく、持ち上げることができました。
下敷きもちゃぶ台面もなめらかなので、下敷きは面に平行な方向には簡単にずれてしまいます。取っ手がちゃぶ台の中央に来るように気をつけて持ち上げました。
下敷きとちゃぶ台がすいつくように見えるのは、上と下から大気圧で押されているからです。大気圧が下から上にもかかっていることは、初心者にはわかりづらいので、これはそれがよくわかる実験になっていますね。
なお、背景にあるこたつ板もチャレンジしてみました。横へスライドするため、装置1つでは安定しなかったので、2つ使いました。
動画も撮りましたが、まだユーチューブにあげていないので、またいずれ。
なお、下敷きにつけた取っ手は接着剤でくっつけてもよかったのですが、下敷きとして再利用したかったので、吸盤をくっつけて取っ手にしました。
この装置は、下敷きの表面がつるつるなで粘着力がないので、ゴム板で実験するときにくらべると、大気圧の影響をよりはっきり感じることができます。
うちの小五の娘にどうしてこうなると思うと聞いてみたところ、「静電気!」という答えが帰ってきました。
大気圧より静電気の方が身近なんでしょうか・・・
「間の空気が抜けちゃうから、そとから押される大気圧でくっつくんだよ」
「じゃあ、別のものを間にはさんだら、くっつかなくなるの?」
間にそこらへんのものをはさんで、しばし、実験。
薄い紙切れを真ん中に入れたときは、その周辺部が閉じて空気の出入りを防ぐため、そこそこくっつきました。吸盤は空気が完全に抜けなくても、ある程度働きますから、それと同じですね。
ゴム版だと、中の様子が見えないので、透明な下敷きの方がよいのかもしれません。
ちょうどよいゴム板が手に入らなかったのが、かえってよかったようです。
何が幸いするか、わかりませんね。
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