モンキー裁判 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 上のイラストは一度使ったことがあります。

 

 小松左京が監修したSFドラマ『猿の軍団』に出てくるサルのおまわりさん。

 

 当時としては珍しい本格SFドラマで「サルは上手で投げられない」など、専門的な知識をふんだんにつかった構成がすばらしかったですね。

 

 事故でコールドスリープして、未来で目覚めた男の子と女の子、そして女先生。それに未来で出会った人類である青年の4人が、サルばかりになってしまったサルの世界の謎を解くため、サルの世界を彷徨うという設定です。

 

 裏番組が『宇宙戦艦ヤマト』と『アルプスの少女ハイジ』だったかな。視聴率的には『ハイジ』の圧勝で、『ヤマト』と『猿の軍団』は低視聴率。

 

 『ヤマト』もSFだったので、SF大好きッ子だったぼくは、どちらを見るか、すごく迷いました。どちらも低視聴率になるだろうなということは、当時のぼくにも予測がついたので、再放送されにくい実写ドラマの『猿の軍団』を見ることにしました。(家庭用のビデオ、VHSもβマックスもない時代です)

 

 思った通り『ヤマト』はその後、何度も再放送されましたが、『猿の軍団』の方はそれっきり。(何年か前、『猿の軍団』のDVDが出たときに、迷わず購入しました)

 

 最終回近く、ひみつを握るコンピューターに質問した「現在の人口は?」の答が、気の遠くなるような内容で、すごくショックを受けました。さすが、小松左京!

 

 その答は「4人」・・・つまり、サル世界を人類の生き残りを捜して彷徨う4人以外は、残っていないという結論です。

 

 このあと、物語はどう終わるんだろう・・・と、呆然となりましたね・・・

 

 さて、前振りはこのくらいにして、サル、というか、ヒトとサルの話題、つまり、進化論の話題であります。

 

 

 アウストラロピテクス(猿人)が人類のはしりに当たります。(最近は研究が進んで、人類の起源はもっと古くなっているようですが、ここでその話題はやめておきます)

 

 「人類の先祖は猿」というダーウィンの進化論は、日本ではすんなり受け入れられましたが、キリスト教の聖書を信じる人が多いヨーロッパ・アメリカなどでは、すごく非難されました。

 

 ダーウィンの進化論は、自然淘汰による進化であり、猿と人間が共通の祖先から進化したという結論なので、猿が変化して人間になったとはいっていないんですが、聖書を信じる人にとっては、そんなことは些細なことだったんでしょうね。

 

 この話題、少し踏み込んで扱いたいところですが、今回は、けっこう前に、別の場所で書いた記事を紹介します。【 】は今回補足した註になります。

 

 文体がこのブログ記事とは違いますが、当時の雰囲気を残すために、そのまま転載してあります。

 

 

***   ***   ***

 

モンキー裁判

 

 十数年前【現在から数えると二十数年前】に初めて渡米(死語だなあ)したとき【AAPTというアメリカの大学・高校の物理教師の会の全米大会で、このときはカルフォルニア州のサン・ルイス・オビスポという田舎町で行われました】、高校で物理を教えている年配の女性に「そういえば進化論を教えるのを禁じている州があるって聞いたんですけど、本当ですか?」と聞いてみた。その人は眉をひそめてアメリカ人独特の首の振り方をして「イエス。まったくばかばかしい(ストゥウーピッド)ことだけど」と教えてくれた。

 

 それは1925年(大正14年)のことで、南部のテネシー州で進化論を教えるのを禁じる州法が可決され、即日公布、施行された。

 この後、有名な「モンキー裁判」が行われ、全米の注目を集めたという話が、『少年少女科学名著全集7』の「裁かれた進化論」にも載っていた。ジュビナイル向けにもかかわらず、かなりディープな内容だった。

 

 もともとこの法律は進化論のことを全く知らない議員が「近頃子供達が学校から帰ると、聖書なんてナンセンスだ、というのを聞いて、これはなんとかしなければ」と思い、提案したものだそうな。それが全米を揺るがす大事件に発展したのは、もちろん仕掛け人がいる。

 

 当時31歳だった鉱山技師のジョージ・ラップレー博士が、この州法の馬鹿らしさを全米に伝えようと、独身の若い高校教師(したがって、失う物がなにもない男だ)ジョン・トーマス・スコープスに全米に州法の理不尽さを訴えかける「テストケース」にならないかと持ちかけた。

 

 ラップレーは町の警察署に出向いてスコープスが州法に違反していると宣誓し、彼を逮捕させたのだ。つまり、この一連の騒ぎは、現在では被害者側と見られているスコープス側が仕組んだ自作自演だったわけである。

 

 スコープス側は「アメリカ市民自由同盟」のバックアップを受け、裁判費用もそちらもち。被告人側は全米一の弁護士ダローが弁護師団を率いて、テネシーの大物政治家ブライアン(大統領選に三度も出馬経験がある)を筆頭とする検察側の証人団と対決した。街には全米からそれぞれの勢力の応援団が集まり、通りには縁日のように物売りが並んだという。

 

 結局、裁判は(テネシー州で、テネシー州の陪審員により評決が下されたのだから当然だが)被告側の敗訴となった。

 その後…翌年のテネシー州最高裁判所では、玉虫色の判決が出た。スコープスに科せられた罰金は免除されたものの、進化論禁止法は合法とされた。州法はそのまま残ったが、進化論は再び教えられるようになった…と、この小論には記されている。

 

 が、ぼくの記憶では、確か渡米の前に海外ニュースとして「州法に逆らって進化論を教えた教師が学校を辞めさせられた」というような記事があり、それを確かめたくて、前述の質問になったと思う。

 

 今晩の新聞でKKK【ご存じかと思いますが、クー・クルックス・クラン、白人優位主義の秘密結社です。映画監督マイケル・ムーアによれば、KKKは解散したようにみえて、全米ライフル協会として再生したということらしいですが】が急速に復活しつつあるという記事を読んだ。アメリカは百年前と何も変わっていないんだなあ。

 

***   ***   ***

 

 昔の記事はここまでです。

 

 聖書の神による創造説は、そのままでは世界の常識になりつつある進化論(ダーウィンの提唱した進化論に、突然変異を加えた新理論で、今ではどの国でも教えられています)に対抗できないため、現在では「インテリジェントデザイン」という、一見、科学っぽい名称でリニューアルされています。

 

 人類をはじめて月に送り、とんでもない量の核兵器を所有し、コンピューター技術の最前線を走るアメリカは、一方で、UFOや星占いを信じ、進化論になじめない国でもあります。

 

 SFもアメリカで生まれたといっていい分野ですが、一方で、ヨーロッパより100年ほど遅れて「魔女狩り」をやった国でもあります。

 

 科学と魔法が、なんだか渾然として存在する国・・・それがアメリカという国なんでしょうか・・・

 

 なお、このときのアメリカ珍道中記は、別記事「のらねこ、海を渡る」をご覧ください。

 

 

【参考】『少年少女科学名著全集7』「裁かれた進化論」中野五郎(国土社)

 

 

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