光の実験〜魔鏡とCD干渉板(付録:『いきいき物理マンガで実験』の訂正) | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 群馬科教協から帰ってきた翌日、わが家でちょっとした光の実験のお楽しみ会が催されました。といっても、ぼくが主催したのではなく、いっしょに群馬にいった林ヒロさんが企画したもの。

 

 そういうことなら職場の実験室だとラクチンなんだけど、日曜日で使いにくい状況。しかたなく、わが家へ装置類を運び込んで行うことに・・・

 

 前に紹介した光の三原色実験など、ぼくがよく授業で見せている実験を。

 

 用意をするためダイソーへ行ったとき、ふと思いついて、せっかくの機会なので、今までやったことのない実験にチャレンジすることに。100円の手鏡を買って帰りました。

 

 それが、冒頭の写真の右端に写っている桃色の手鏡。

 

 床に写っている光の中に「ごはん」とご飯の絵(娘の作品です)、それに「あ」という文字が見えます。「あ」の鏡文字も見えますね。

 

 これ、昔の科学者が来た人を驚かせるためにやったイタズラを再現したものです。

 

 もちろん、昔はライトではなく、日光を使っていますが、それ以外は同じやりかた。

 

 どうしたら、光の中で文字を書けるのでしょうか・・・

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 答はこちら。

 

 

 手鏡に水性サインペンで鏡文字を書いただけ。

 

 これに日光のような平行光線を当てると、サインペンの文字で吸収される場所からの反射光はありませんから、そこだけ暗い影のようになり、文字が書けます。

 

 原理がわかりやすくなるよう、鏡には最初に鏡文字でない「あ」を描き、反射光に「あ」の鏡文字の影ができることを見せました。(授業などで使うときは、もちろん、いきなり完成版を見せた方がいいですね)

 

 有名な「魔鏡」は鏡の表面に文字を書くのではなく、鏡の裏側に絵を掘ってなんども擦り、その絵の形のわずかな凹凸を裏面に作ります。そこで反射した光は凹凸の形に応じて明るさが変化し、反射光の中に裏面に描いた図柄がうっすらと現れます。

 

 ぼくの「魔鏡もどき」は、それをものすごく単純化した装置です。

 

 さて、この実験で一番大切なのは何かというと・・・

 

 ・・・光源です。

 

 最近のLED懐中電灯は、光源が一つでないものが主流。これだと、反射光の中の文字はまったく見えません。日光のような平行光線でないと、この実験はうまくいかないのです。

 

 そこで、登場したのが、前に光の3原色の実験をしたときに使った、カーマオリジナルのライト。

 

 

 これは光源のLED(たぶん高輝度)が一つで、レンズ面が異様に太い凸レンズになっています。点光源からの光を平行光線に近づけるために、非球面レンズを使っています。

 

 このライトのすぐれたところは、光が平行に、しかもほぼ一様に放出されることです。光の3原色実験も、その性質のおかげでうまくいきました。

 

 昔の記事の写真を、一部、再掲します。

 

 

 

 

 このLED光源から出る光のスペクトルは、回折格子で分解してみると、こんな感じです。

 

 

 蛍光物質も使って、自然光のスペクトルに近づけています。科学技術は日進月歩。すごいなあ。

 

 スペクトルを拡大すると、こうなります。

 

 

 うーん、やはり自然光とはちょっと違いますね。

 

 でも、このライトは他のライトに比べれば、物理実験用としてはかなり高性能。

 

 光の三原色の実験も、ライトが違うと、こんなにきれいに見ることはできません。

 

 このカーマオリジナルのライトは、人気商品のようで、今も電池売り場などの近くに置いてあります。値段は千数百円でした。光の実験を楽しみたい人は「買い」ですね。(いや、カーマから宣伝するように頼まれているわけではありません)

 

 この日は、いろいろな実験を次々に見せたのですが、自分でやったので、当然ながら、写真に撮っていません。

 

 でも、一つだけ、印象的なできごとがありましたので、その写真は撮りました。

 

 6月に出版した『いきいき物理マンガで実験』の「原子の光を見る」で、CDやDVDの印刷面をガムテープはがして、回折格子をつくるのを紹介しました。そのとき、p149の欄外に「インクジェットで印刷できるタイプのCD−Rははがれません」と書きましたが・・・

 

 ・・・できます!

 

 したの写真をご覧ください。

 

 

 きれいにはがれています。

 

 これ、じつは、この日、先生方と実験しているところに、小3の娘が乱入してきて、いっしょにいろいろやったんですね。冒頭の写真にも娘が写っています。

 

 先生方に「いやあ、インクジェット用のCD−Rは表面が安定しているのか、ガムテープをいくらこすりつけてもはがれないんですよ」などと説明していたのですが、その横で「やってみる!」と、娘がCD−Rにガムテープをぺたりと貼りました。

 

 「いや、お父さんも何度も試したんだから、無理だよ。まあ、やってみるのはいいけど・・・」

 

 といっていたら、べりっとはがれました。

 

 ぼくはCDの前面にガムテープを貼って、フチからはがそうとしたのですが、娘はあまりこだわらず、いろんな貼り方をしていました。

 

 そしたら、中央の穴のあいているところから、印刷面がぺろりときれいにはがれたんですね。

 

 みんな、びっくり。

 

 「そうか! CDの印刷面ははがれにくいように、とくにフチのあたりを頑強にしているんだな!」などの意見が飛び交いました。

 

 ぼくたちがいろいろ話し合っている間に、娘はCD−Rをきれいに透明にしてしまいました。

 

 それが写真右です。

 

 ところで、CD盤の裏は、光を当てると虹色になりますね。

 

 

 こんな感じ。この日に来た先生に見せてもらった教科書「科学と人間生活」には、CDが回折格子と同じ働きをしている記事も書いてありました。

 

 上の写真や、教科書で紹介されているのは、反射光の干渉ですが、こうやって印刷面をはがすと、透過光の干渉が見えるようになります。

 

 

 ぼくの記憶する限りでは(記憶があいまいでごめんなさい)、ぼくがCDの印刷面をはがせば透過型の回折格子として使えることを知ったのは、愛知物理サークルの伊藤さんの発表だったと思います。

 

 では、今回はこのへんで。

 

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