2002年8月、スウェーデンのルンド大学で4日間、GIREP(ICPE:物理教育国際委員会)学会に参加したあと、ノルウェーのベルゲン→オスロ—→ストックホルムを経由して日本へ。
冒頭の写真はルンド市のルーンストーンで、ルーン文字がよく見えたので記念に撮りました。
ルーン文字が赤くなっているのは、もともとではなく、よく分かるように後になって色づけしたものだそうです。
ルーン文字については、以前べつのウェブサイトを持っていたときにまとめたことがあるのですが、そのサイトはプロバイダの契約を変えたときに閉鎖されてしまいました。
いずれ、余裕のあるときに、ここに再録したいと思っています。
ノルウェーでは、日本に留学したことがあるという大学生っぽい若者がツアーガイドをしてくれました。トオルという名前ですが、日本人の血は入っていません。みんなは「日本人みたいな名前だなあ」と感心しきりだったのですが、ぼくはピンと来て、ちょっと聞いてみました。
「ひょっとして、トール神ですか?」
「よく知っていますね。そうです。神様のトールの名をいただきました。ノルウェーでは、よくある名前です」
やっぱり・・・
トール神はオーディンが絶対神になる前まで、北欧で最高位にあった雷神です。でっかいハンマー「ミョルニル」を持って何もかも打ち倒す力の神。単純な暴力から知略へと変化する歴史の流れとともに、絶対神の位置を知の神オーディンに奪われました。だから、ギリシャ・ローマ神話で絶対神ゼウス(ユピテル)に振り分けられた木曜日が、後のヨーロッパではトール神に振り分けられています。「木曜(THURSDAY)」は「THORの日」です。北欧三国の言葉では、木曜を表す言葉が「トールの日」にあたる言語になっていて、英語よりわかりやすい。
オーディンよりトールの方が人気があるといいますが、やはり北欧によく行くという人から聞いた話では、オーディンという名の人もけっこういるとか。そういえば、ちょっと前にやっていたアニメ「タイガーマスクW」にも、オーディンという名のプロレスラーが登場していたなあ・・・
曜日の名前の起源については、以前書いたことがあります。詳しくは、別記事「七曜の起源」(下記リンク参照)をご覧ください。
トールくんの話で思い出したことが一つありました。
ノルウェーは曇天の日が多いので、クルマは常時ヘッドライトがつくように作られているという話をしてくれました。その頃は、日本ではまだお昼にライトをつけるという習慣がなかったので、この話をきっかけに、突然議論が持ち上がりました。
といっても、メンバーがメンバーですから、社会的意義(交通事故が起こりにくくなるといった)は話題になりません。
トールくんが「ライトをつけてもガソリンは減らないからだいじょうぶ」と一言いったのが、火をつけました。
「そんなはずはない。エネルギー保存則からいっても、ライトをつけたぶんだけ、余分にエネルギーが使われているのだから、燃料は余分に減るはずだ」
「ちゃうちゃう! そもそもライト以前の話で、クルマが動くだけですごいエネルギーロスがあるんだ。だから、ライトをつけようがつけまいが、ほとんど関係ない」
「そんなばかな! ライトで使った分は減るはずだし、誤差の範囲ではすまないだろう」
勝手にわんわんと議論を続けるぼくたちを(いや、ぼくはその議論には入っていなかったと思いますが)あきれたように眺めるトールくん。
「こんなことでこんなに長い間議論できる人たちがいるんですね・・・」とのたもうたのは、彼が口火を切ってから1時間くらいたったときでしょうか・・・
さて、ノルウェー経由で帰るときの旅程表も、他の資料といっしょに見つかりました。コペンハーゲン大学を見てきたり、フィヨルドを見学したりと、まあ理系の旅程になっているんですが、オスロ市内観光をした日だけ、なにやら特別なメモが。よく見てみると、他のメンバーはオスロ市内観光をしているのですが、ぼくとオクサンだけは別行動しています。あっちへふらふら、こっちへふらふらと、町中を散策していたようです。
その証拠写真(笑)も見つけました・・・次の写真は、オスロ市役所の正面に飾られているレリーフです。何かのガイドブックで市役所に北欧神話のレリーフが飾られているというのを読んで、どうしても行きたかったんですね。
下から見上げながら、がんばって撮影したものです。
フリッグ。北欧神話の女神ですね。
不死身のバルデルが、宿り木(たぶん、イチイの木)の矢で絶命するエピソード。
ユグドラシル(生命樹・宇宙樹などと訳されます)の3本の根ののうちの1つの地下に住んでいる竜、ニードホッグ。
フレイが部下に命じ、策略の限りを尽くして、美女ゲルダと合うエピソードをレリーフにしたものらしい。コメントには「FROY AND GERD MEET」とだけ書かれていました。
ノルンの姉妹がユグドラシルの樹に水をやっている。
ウルド=過去、ヴェルダンディ=現在、スクルド=未来。
運命の女神ノルンの三姉妹は、泉から水をくみ、土と混ぜ合わせてユグドラシルの樹皮が腐るのを防いでいます。
ミョルニルを持ったトール神の出撃。
ちょっとピントがあっていませんが、これは北欧神話のアダム。パネルの説明には「ASK」とありました。
こちらは北欧神話のイブ。パネルの説明には「EMBLA」と書かれていました。
オーディンが乗る8本足の馬スレイプニル。ラグナロクのときにオーディンを乗せて出動。
レリーフのコメントには「VIDAR CONQUERS THE WOLF FENRIS」とありました。
FEIRISはフェンリルのことなので、ラグナロクの時に大暴れしてオーディンに害をなす荒ぶるオオカミ。
ラグナロクの前に闘神ティルが片腕を犠牲にしてフェンリルを捕まえ、魔法のヒモで岩にくくりつけたという逸話があるので、おそらくそれにあたるレリーフなのでしょう。
3匹のシカがユグドラシルの樹で葉っぱを食べている。
このシカの由来はよくわかりません。
ユグドラシルの頂点にいる鷲。下の方にリスがいますが、このリスはラタトリスという名で、竜のニードホッグのところから「不愉快な言葉」や「侮辱」を運んでくるため、鷲はノイローゼ気味。
コメントには「ラグナログの警告」と書かれていました。フェンリルが遠吠えしているのが象徴的ですね。
今回は、科学にはほとんど関係のないオハナシでした。
本当に「ヨーロッパからお届け」になっちゃいますね(笑)・・・
ま、たまにはよし、ということで。
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