100円ショップワイヤーでつくるワイヤーモーター | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 年末は、正月まで、実験で夜更かししてしまいました。

 

 クリップモーター、コイルモーター、ファラデーモーターなどを、家庭で手に入る材料でできないかと試行錯誤。

 

 そもそも、実験用品としてよく使うエナメル線(ホルマル線)は、理科教材で買うと一巻き数千円しますから、家庭で行う実験には不向き。ホルマル線は、いっけん裸銅線に見えますが、表面はプラスチック樹脂でコーティングしてあって、コードとして使えます。当然、使うときは両端をヤスリがけして通電するようにしてから使います。(以前、とある進学校で実験したとき、ホルマル線を「ちょうちょ結び」して延長している班があり、絶句したことがあります。もちろん、その班は、「電気が来ない〜!」と悲鳴を上げていましたが・・・これは、笑えない笑い話ですね)

 

 かといって、ホームセンターなどで、ホルマル線を適当な長さで切り売りしているのも、ほとんど見たことがありません。

 

 ・・・と思って、先日、100円ショップを覗いてみたら、ありました!

 

 

 ホビー工作用のアルミワイヤー。いろいろな径のものがありますが、100円ショップで手に入るもので最も細いのは径1mmのものなので、これを使いました。(実験用のホルマル線は、0.1mmのものまである。普通に回路部品として使うのは、径0.3〜0.5mmのものが多い。「いきいき物理わくわく実験」のクリップモーターも、この太さのホルマル線を使っている)

 

 これ、ホビー用なんですが、ちゃんと表面が合成樹脂で皮膜してあります。おそらく見た目に色をつけてキレイにするためだと思われますが、これは非常にありがたい! 被膜導線として使えます。アルミは銅に近い電気抵抗(より正しくは電気抵抗率です:温度によりますが、アルミの方がおおむね1.5倍ほど大きい)ですから、なによりですね。なお、同じ長さで同じ重さのコイルになるように導線の太さを選んだ場合は、アルミの方が銅のコイルより電気抵抗が小さくなります。(*1)

 

(*1)電気抵抗について、ご指摘もいただきましたので、以下、少しくわしく追加しておきます。

 電気抵抗は導線の形により異なります。電気抵抗率は単位太さ、単位長さで導線を作ったときの電気抵抗になります。電気抵抗率はアルミの方が銅よりざっと1.5倍大きいのですが、発電所から送電する場合、発電所に近い場所など条件により銅でなくアルミの電線が使われる場合があります。それは、銅はアルミより3倍強重い(密度が3倍強ある)ので、同じ重さの電線を作る場合は、アルミを使った方が太い電線をつくることができるからです。計算式は省きます(いずれ、べつの記事で書きます)が、同じ重さの電線を作った場合、アルミの電線の電気抵抗は、銅の電線の2分の1になります。よく「アルミの電線の方が銅の電線より電気抵抗が小さい」といわれるのは、このことを意味しています。

 なお、手元にある雑学本『[モノの作り方]がズバリ!わかる本』(素朴な疑問探求会編:河出書房新社)には、アルミニウムは銅と「同じ重さにした時、銅にくらべ5倍の電気を流す」と書かれていますが、「5倍」というのがどこから出た数字なのかはわかりません。おそらく、なんらかのミスだと思われます。

 

 

 さっそく、クリップモーターなど、モーター関連の実験を、このアルミワイヤーでやってみました。

 

 まず作ってみたのが、レジェンド実験、クリップモーター。

 

 直径がホルマル線の2倍あるので、さすがに小指の頭(直径1cm)ほどの大きさの回転子は作れませんでした。

 

 

 これは直径3cmのワイヤーモーター。7〜8回巻いてあります。

 回転子が大きくなったので、クリップも大きめのものを使いました。

 

 普通の磁石でもよかったんですが、次の実験のことも考え、やはり100円ショップで手に入るネオジム磁石(商品名は「超強力磁石」・・・なんだか、商売の裏側は難しそうですね)

 

 ぶんぶん回ります。大成功。

 

 コイルの軸のヤスリがけの仕方については、別記事「レジェンド実験クリップモーター」をご覧ください。

 

 ヤスリがけに使った台は、ホームセンターで袋つめ放題100円で手に入れた端材です。布ヤスリもわりとお得なセット。何種類かがセットになっていて、安価なものです。

 

 

 ちなみに、家で実験したので、ミノムシコードもなく、コードはそのへんにあったものをクリップに絡みつけて使いました。もう適当です。

 

 ミノムシコードは必需品で、10本組で安いセットもありますから、電気関係の実験が好きな人はネットで購入するといいかと思います。今回ぼくがやったように、むりやり線を絡みつけるなどのやり方は、接点が不安定で余分な時間を食うので、あまりお薦めできません。

 

 ついでに、ファラデーモーターも作ってみました。

 

 アルミワイヤーは軽くて銅より合成があり、扱いやすいので、ホルマル線で作るより楽かなと思ったんですが、どんぴしゃ! 銅のホルマル線で作るより簡単でした。

 

 

 立体的でちょっとわかりにくいかもしれませんが、磁石の下には4段重ねしたネオジム磁石がくっつけてあります。(それでも、100円ショップで4コ100円)

 

 部品を見た方がわかりやすいので、次の写真。

 

 

 横から見るとこんな感じです。

 ファラデーモーターは水銀を入れた容器の真ん中に磁石を立て、上から斜めに吊した金属棒と水銀の間に電流を流すというものです。磁石の磁場から、金属棒に流れた電流がフレミングの力を受けて、磁石の回りを回転するという装置で、この世に初めて誕生したモーターですね。

 

 現在のモーターは、このファラデーモーターの性能を上げたものです。(見た目は全然違いますが)

 

 ファラデーのように上から金属棒を吊し、しかも摩擦を極力抑えて、水銀も使わずに同じものを作るのは、できないわけではありませんが、大変です。原理を見せるだけなら、摩擦を抑えて、有毒な水銀を使わずにやりたいですね。

 

 ファラデーモーターは基本的に、フレミングの力を受けて、金属棒が磁石の回りを回転するという装置。

 

 運良く、今発売されているネオジム磁石は、フェライト磁石(黒い磁石)と違って、本体が通電できます。見た目にも金属っぽい銀色をしていますね。

 

 そこで、水銀のかわりに、このネオジム磁石をそのまま使って、金属棒に電流を流すという発想になります。

 

 これはすでに、「いきいき物理わくわく実験3」で紹介された「単極モーター」で利用されています。単極モーターでは、導線が受ける反作用の力で、ネオジム磁石の方が回っています。ネオジム磁石を固定し、導線の方を動けるようにすれば、導線が回転するファラデーモーターになります。

 

 摩擦を減らすのは、上から導線を吊らず、導線をヤジロベエの形にして、乾電池に乗せるという方法で実現しています。もう一度、さきほどの写真を見てみましょう。

 

 

 ヤジロベエの「足」が電池のマイナス極の金属面の上にありますね。

 

 「足」を取り囲むように一周している円形のワイヤーは、回転したヤジロベエが不安定になって電池から飛び出すのを防ぐための「防壁」です。円形ワイヤーの両端をセロテープで電池にくっつけてあります。

 

 

 こんな感じですね。

 

 これ、結構使えて、ヤジロベエが結構安定して回るようになりました。

 

 短いですが、回っている動画をyoutubeに上げておきましたので、ご覧ください。

 

ファラデーモーターwith100円ショップワイヤー

 

 さて、ここで、新しいものを。

 

 「手作り大型コイルモーター」の記事にありますが、大型にするときは、クリップモーターの作り方をそのまま拡大しただけでは、たとえ数回巻きのコイルでも、コイルの上下で、半周分の重さの差が出て、回転が安定しません。

 

 でも、その半周分を、バランスをとるためにコイルに(電気的な接合はない状態で)接着することで、力学的には非常に安定し、大型化したコイルモーターも、スムースに回るようになります。

 

 では、その逆に、巻き数を極限まで減らして、半周しかしないコイルモーターも可能ですよね?

 

 

 この写真をよく見ていただくとわかりますが、コイルにはなっていません。下半分は一つながりのワイヤーですが、上半分は別に切ったワイヤーを、紙にセロハンテープで貼ってあるだけです。上半分のワイヤーは単純に回転するときの力学的なバランスを取るためだけのものです。

 

 コイルの軸のヤスリがけは、通常のクリップモーターと同じです。

 

 ただ、「片方は半面だけヤスリがけし、ほう片方は全面ヤスリがけする」というのが、「いきいき物理わくわく実験」以降、定番になってしまっていますが、実際には、軸の両方とも、同じサイドを片面だけヤスリがけする方法で十分回ります。

 

 この究極半周ワイヤーモーターは、直径2cmくらいです。さすがに電池1つだと回転しにくかったので、電池を3〜4個直列につないで使ったら、なんとか回りました。(普通のクリップモーターやコイルモーターでは、電池を増やす代わりに、巻き数を増やして、同じ効果を得ています)

 

 100円ショップのアルミワイヤーは、(本来の用途とは違うんでしょうが)物理実験では侮れないスグレモノですね。(*)

 

(*)ただし、むき出しのアルミの表面はびっくりするくらい早く酸化して、導電性が劣化しますので、実験直前に紙やすりで磨くことをお忘れなく。

 

 

【PS】ご指摘を受けて、一文を訂正しました。ありがとうございました。最初の文は「電気抵抗」と「電気抵抗率」の区別を曖昧なまま書いた記事だったため、そこを正確にした文章で訂正してあります。なお、「電気抵抗」については、(*1)に、よりくわしくコメントを書いておきましたので、そちらをご覧ください。

 

※この実験を収録した物理実験の本『いきいき物理マンガで実験』、その姉妹本である物理理論の本『いきいき物理マンガで冒険』が、日本評論社より発行されています。最後に立ち読みサイトやアマゾンへのリンクバナーがありますので、ぜひご利用下さい。

 

 

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