夏休み実験シリーズ、今回は紙コップとストローでつくる教訓茶碗です。
コップに水を入れると、最初はだんだんとたまっていくのですが、注ぎすぎてある量を超えると、底から水がだだ漏れするというもの。よくばりもほどほどに、という教訓を体現したコップです。
イラストで表すとこんな感じ。
昔からある民芸品の「教訓茶碗」ですが、原理がわかれば、紙コップとストローでも作れます。やってみましょう。
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ところで、今回のイラストは、じつは「いきいき物理わくわく実験3」のために描いたものですが、途中で実験がバージョンアップしたために、新しく書き直すことになり、お蔵入りしたものです。
今回は、バージョンアップする前の基本的な教訓茶碗の作り方を載せました。
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さて、最初のイラストを見るだけでは、なにがどうなっているのかわかりませんね。
これはじつは、サイホンを利用した装置なんです。
サイホンとは・・・
例えば器に溜めた水を捨てたい場合に、いちいち柄杓ですくって捨てていてはたいへんです。ホースを用意し、それを器の水に沈めてから、ホースの片方は器の水につけたまま、もう片方は指で口を塞いでから、器の外、器の底より低い場所に出します。
こうすると、気圧差を利用して、器の中の水を器の外に、自動的に出すことができるんですね。
これをサイホンといいます。
教訓茶碗は、このサイホンを上手く利用した装置です。
では、作り方を見てみましょう。
ジャバラのあるストローは、100円ショップでも手に入ります。ジャバラのあるあたりを上の図を参考にしてハサミで切り、紙コップにストローと同じくらいの穴をあけて、突っ込んで下さい。ストローと紙コップの底は、ボンドなどで接着します。水が漏れないように、ボンドを十分乾かしてください。
図には「プラスチックのコップ」とありますが、紙コップでつくると内部構造が見えないので、より面白くなります。プラスチックカップを使った場合は、中がみえないような紙の覆いをかぶせて実演し、その後、覆いを外して中の構造を見せると面白いでしょう。
このストローがサイホンとなります。
ここに水を入れると・・・
最初はこのように水がたまります。ストローの中には、図の青色の部分まで水が入りますが、黄色の部分は空気のままです。
水面が上がると、ストローの中の水がだんだん増えます。水面がストローの一番上を超えると、ストローの中は水で満たされます。このストローがサイホンの役割をします。ストローの右側の口より、ストローの左側の口の方が低いので、大気圧の差により、水がストローの右側の口から左側の口へ、どんどん移動します。
ストローの右側の口から水面が離れると、水の排出が止まります。
これが、教訓茶碗の原理。
知ってしまえば、簡単ですね。
では、ここで、問題。
次の「新・教訓茶碗」はどうやったら作れるでしょうか。
【1度きり教訓茶碗】
教訓茶碗と同じく、入れすぎると、ある量を超えたところで水がほとんど全部底からこぼれますが、この後がちょっと違います。
普通の教訓茶碗は、もう一度同じことを繰り返せます。また水を注ぐと、ある量を超えないうちはなみなみと水が注げますが、ある量を超えるとまた底からこぼれます。
でも、「1度きり教訓茶碗」の場合は、1度こぼれてしまった後、次に水を注ぐと、注いだ分どんどんこぼれていってしまい、まったく水がたまらなくなります。
ここでの教訓は、「1度やった失敗はそうかんたんに取り返せない」ということになるでしょうか。キビシイ教訓ですね。
【逆教訓茶碗】
教訓茶碗の正反対で、ちびちびと入れると入れた分ぜんぶこぼれてしまうんですが、どばっと大量にいれると、今度は逆にこぼれなくなるというものです。
ここでの教訓は「小さな欲より大きな欲」ということですね。
これらの新・教訓茶碗については、「いきいき物理わくわく実験3」(日本評論社)の「進化する教訓茶碗」に、原理と作り方が書いてありますので、そちらをご覧ください。
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