錯視・錯覚の物理学2〜先進科学塾講座より | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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〈(2)第2段階 目のレンズから視細胞まで(生理現象)〉

 

・グループ実験 目玉モデル

 

ひろじ「では、目に入った光が網膜に写るとき、何が起きているのかを調べてみましょう。班に1つずつ、目のモデルがあります。虫眼鏡が目のレンズ、トレース紙が網膜に当たります。目玉は丸いんですが、この四角の箱もレンズがあり、網膜があるという点では目玉と同じです。レンズを景色に向けて除き、トレース紙の位置を動かして像が鮮明に写るところを捜してください」

 

 

ひろじ「どうですか? 見えますか?」

参加者「逆さだ」

ひろじ「そうですね。網膜には景色の像が逆立ちして写ります」

 

 

・グループ実験 盲点

 

ひろじ「では、どうしてぼくたちにはこれが普通に見えるんでしょう? ぼくたちは目でものを見ています。網膜に写った像を視細胞がとらえるのは生理的な現象です。目の構造や性能のために、すべてがありのままに見えているかどうかはあやしい。それを調べましょう。スギさん、お願いします」

スギ「あー、では、手もとに配布したシートを切り離して、このカードを作ってください」

 

 

スギ「これの×を右目だけで見ながら、このカードを近づけたり遠ざけたりしてください。そうすると、隣のニコちゃんマークが見えなくなる場所があります。そこが盲点です」

 

 

スギ「視細胞からのびる視神経が束になっているところには、視細胞がないので、そこに当たった光は見えないんですね」

 

 

 スギさんの説明を図にすると、こんな感じ。頭頂部から見下ろした顔の右半分の図です。

 ところで、このカードを前後させる方法だと盲点が見えないという参加者がけっこういました。こういう人には次のようなやり方を試してもらいました。

 

 

 1本のペンの頭を右目で見て、もう1本のペンを図のように遠ざけていきます。途中で、このペンの頭が消える場所があります。そこを通り過ぎるとまた見えてきます。

 

スギ「このとき、盲点に入ったニコちゃんマークは真っ黒にはならず、背景に溶け込んでいます。これは、脳の方で補完しているんですね」

 

・グループ実験 逆立ちする影

 

スギ「それはまたあとの話です。じゃ、次はいま切り離したもう一方の紙を使います。黒い●が印刷されている四角い紙です。虫ピンを配りますから、この黒丸の真ん中をピンで刺して、小さな穴を開けてください。開けましたか? それでは、これを二つに折って、この図のようにピンを刺して立て、穴の方から覗いてください。何が見えますか?」

 

 

スギ「そう、普通にピンが見えますね。網膜に写った逆さまの像を脳で変換して元通りの姿にみえているんですね。では、今度は逆側から覗いてみてください」

 

 

参加者「逆さだ!」

スギ「見えにくい人は、ピンを持って、下の方から上にせりだしてください。ピンの頭が上の方から降りてくるのが見えます」

参加者「見えないな」(けっこう多数)

スギ「あー、もっと目をピンに近づけてください。ピンの頭越しに向こうの穴の中を覗くと、わりと大きな影のような逆立ち像が見えます。見えましたか−?」

 

スギ「これは何かというと、1つめの実験はピンホールレンズを通して向こうのピンの逆立ちした像を網膜に写しているんですが、2つめの実験では、ピンホールはただの光源で、そこから出る光がピンの影(逆立ちしていない)をそのまま網膜に写しているんです。網膜に写る影が逆立ちしていないので、脳の変換で逆に逆立ちした影にみえちゃっているんですね。じゃあ、ここで交替します」

 

・グループ実験 2種の視細胞

 

ひろじ「今度は視細胞の種類について、ちょっとした実験をしてみましょう。視細胞には、色を区別する錐体(すいたい)と、明暗を区別する桿体(かんたい)の二種類があります。錐体は緑、青、赤に反応しますので、TVやコンピュータディスプレイもこの3色の組み合わせで作られています。つまり、ぼくたちは3色タイプの目を持っているんですね。遺伝的に2色タイプの人もいます。でも、最近の研究で女性には赤い色の範囲で2色を識別できる4色タイプがいることがわかってきたそうです。さて、錐体は網膜の中央部に集中していて、桿体はその回りにあります。したがって、色が見えるのはまっすぐ正面を中心にしたある範囲までなんですね。それを確かめてみます」

 

 

ひろじ「お手元のプラスチックピンを右手に持ち、左手の人差し指を左目で見ながら、右手のピンを外側から内側へぐるっと動かしてください。右目じゃないのは、色を確かめる実験中、盲点を通過しないようにするためです。ピンを動かしていくと、最初に目の縁にピンの形が見えますが色は分かりません。さらに動かすとピンの色が見えてきます」

 

 

ひろじ「右目でやるときは逆にしてやってください。それでも見づらい人もいると思います。その場合は、指を下に持ってきて、それを片目で見つめながら、ピンを頭の上の方から下ろしてみてください。これなら、盲点の位置を気にすることもありませんし、左右の動きの時より確認しやすいでしょう」

 

ひろじ「夜空を見ているとき、目の隅に星が見えて、そっちを振り向くと星が見えなくなる経験があるんじゃないかと思いますが、これも同じ原理です。網膜の中央部にある錐体は色には強いんですが、明暗には弱いので、桿体で見えていた星が錐体では見えなくなることがあります。夜、目の隅に幽霊のようなものが見えてそっちを見ると見えないということもありますが、これも同じですね」

 

・グループ実験 補色残像

 

ひろじ「視細胞の実験の最後に、補色の実験をやってみましょう。部屋を暗くしてください。では、プロジェクターの写真をみてください」

 

 

ひろじ「白黒の風景写真です。この後、別の写真を見た後、もう一度この写真を見てもらいます」

 

 

ひろじ「50数える間、写真のどこか1点を見つめていてください。視線を動かさないように。いいですか。1・2・3・・・・・・48・49・50!」

 

 

ひろじ「グレーのはずの写真が、一瞬、色づいて見えましたか? これは残像効果と呼ばれる現象で、前に見ていた色の補色が見えます。補色というのは、二つの色の光を混ぜたとき白色になる組み合わせをいいます」

 

 意外でしたが、一瞬でなく、ずいぶん長く補色が見え続ける人もいました。

 もとの写真はこちらです。さすがにここまで鮮明には見えませんが、ほんのりと空は青く、草は緑に見えます。

 

 

ひろじ「補色の残像がどの段階で生じているのかは難しいでしょうね。視細胞の段階かもしれないし、脳内かもしれません。ここでは、他の視細胞に関わる実験との絡みで、紹介しました。では、次はもっとも複雑で難解な第3段階、脳で起こる現象です。物理学の観測をする上で、これがやっかいな錯覚を生じ、研究を混乱させます。じっくり、見て行きましょう」

 

・・・その2 ここまで

 

※記事中の実験タイトルを書き忘れていましたので、追加しました。

 

 

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