雨の中どっちが濡れる? | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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雨の中01
 

とっぴ「やほお!」
ひろじ「やあ、お久しぶり。きょうは何?」
あかね「ひろじさん、まえに、【質問リレー】で雨の話を紹介してたでしょ」
ひろじ「ええと・・・何だっけ?」
むんく「雨・・・どっちが濡れるか・・・」
ひろじ「ああ、あれか。駅から家まで雨の中を帰るとき、歩いた方が濡れるか、走った方が濡れるか、ってやつ?」
とっぴ「そうそうそう! ちょっと前に雨が降った日に、それを思い出して、ろだんとやってみたんだ。学校から家まで、歩いて帰るのと、走って帰るのと、どっちが濡れるかって」
ひろじ「おもしろいことをするね。で、どうだったの」
とっぴ「えへへ、それが、どっちもびしょ濡れで、わかんなかった・・・」
ろだん「今度は、タライを持って走るか・・・いや、走ると体の前面も濡れるから、タライじゃだめだな」
むんく「全身にスポンジをつけて走る・・・」
ひろじ「たいへんだね・・・実験するより、議論した方がいいかも」
とっぴ「それで、みんなで話したんだけど、今度は意見が分かれちゃって・・・ぼくは走った方が濡れないと思うんだけど。だって、雨の中にいる時間が短いもん!」
あかね「わたしは、どっちも同じだと思うけど。駅と家の間の距離が同じなんだから、雨に濡れる量は同じよ」
ろだん「そうかな。おれは走った方が濡れると思うぜ。こないだの実験でも、早く走るほど、雨が斜めに降ってきて、体の前面が濡れただろ」
むんく「ぼく、保留。考え中」
ひろじ「見事に分かれたね。もう少し詳しく聞かせてよ。おもしろそうだ。それぞれが、自分の考え方を整理して、他の人にわかるように話してみたら?
とっぴ「雨の中にいるから濡れる。まず、これが基本。だから、雨の中にいる時間を少なくすれば濡れなくなると思うんだ。だから、駅から家まで、走った方が濡れないよ」
ろだん「いやいや、速く走れば走るほど、雨が斜めに降ってくるのは、誰でも経験してるだろ。極端な話、ほとんど動かなけりゃ、服の前面は濡れない訳じゃん。でも、走ると雨が斜めに降ってきて、服の前面が濡れるようになるだろ。だから、速く走るほど、服の前面が濡れて、びしょびしょになるはずだ」
あかね「どうかなあ。わたしは、駅と家の間の距離は、速く走っても歩いても同じだから、同じだけ濡れるんじゃないかと思うの。家に帰る人があびる雨粒は、駅と家の間にある雨粒でしょ。だから、その雨粒の数は、走る速さには関係ないんじゃないかしら。ほら、この絵を見て。駅と家の間にある、四角形abcdの雨粒を横切って進むんだから、この四角形の中の雨粒が体を濡らすでしょ」
 

雨の中04
 

とっぴ「なんかヘンだぞ。雨は上から下に降ってる。これだと、雨粒が空中に浮いてることになるじゃん」
あかね「だいじょうぶよ。雨粒はたしかに下へ動いているけど、次々に上から新しい雨粒が補充されるから、いつもこの四角形にある雨粒の数は同じはずよ」
ろだん「走るほど雨筋が斜めになってくるのが、この図だとわからないぞ。実感と違うなあ」
むんく「でも、これは数学的には正しい。四角形から下に落ちる分、上から落ちてきて補充されるんだから、雨の速度には関係なく、この人が家に帰るまでに体が浴びる雨粒の数は、この四角形に入っている雨粒の数と同じ。だから、あかねのいう通り、雨の中を突っ切って走るときに体の前面が濡れる分は、この四角形の中の雨粒の量だと思う」
ろだん「ん~~、おれはナットクできないなあ」
とっぴ「濡れるのは、体の前ばかりじゃないだろ。雨は上から下に降っているんだから、頭が濡れる分はどうなのさ」
あかね「あ・・・」
ろだん「頭が濡れる分か・・・ええと、頭の上から雨が降ってくるから・・・こんな感じかな。四角形bcfeの中の雨が、頭に降り注ぐ。bcは・・・ええと、雨の速度×時間・・・」
とっぴ「何の時間?」
ろだん「そりゃあ、この人が駅から家に着くまでの時間だろ。その間、雨はこの人の頭に降り注ぐんだから」

 

 

 

雨の中05
 

あかね「まあ、そうね。じゃあ、この人がゆっくり走っているときはその時間が長くて、図のbcが長くなるってこと?」
ろだん「うーん・・・そうなるかな」
むんく「数学的には、そうなる」
とっぴ「なんだか、わからないなあ。もしそうだとしたら、どうなるの」
あかね「この人が速く走れば、駅から家までかかる時間が短くなるから、この図のbcが短くなる。だから、そのときは四角形bcfe内の雨粒の量は少なくなる。・・・ってことは・・・速く走れば走るほど、頭が濡れる量は減るってこと?」
とっぴ「あ! それ、ぼくの考え方だ!」
あかね「たまたまよ!」
ろだん「なんだか、すっきりしないな。やっぱり、雨粒が動いていないとピンと来ない」
とっぴ「あ・・・前に、動く自分から見た相手の速度の話、やったよね」(*1)
むんく「相対速度」
あかね「ええと、雨が真下に降っていて・・・この人が右向きに動くと・・・雨は斜め左下に降る・・・」
 

 

 

 

雨の中02
 

ろだん「こうか?」
あかね「うん、そう。この人・・・Aくんの速度が増えると、雨粒の相対速度の角度θがだんだん大きくなる」
とっぴ「で、雨に濡れるのはどう考えるわけ?」
あかね「もう、とっぴ、自分で考えてよ!」
むんく「このまま考えればいい・・・この相対速度の向きに雨が降ると考えればいいから・・・こんな感じ」
 

 

 

雨の中03
 

とっぴ「あ、そうか!」
ろだん「Aくんが遅いときが、実線の図だな。Aくんが駅から家まで帰る間にAくんの前面cdに当たる雨粒は、四角形abcd中の雨粒になる。この四角形の体積の中になる雨粒の数を数えれば、濡れる量がわかるわけだ」
あかね「Aくんが速くなると、点線の図ね。相対速度の角度θが大きくなるから、ダッシュのついた四角形abcdは、図のようになるわね。でも、abcdの平行四辺形の体積は、底面cdが同じで、高さgdが同じだから、どちらも体積は同じ。だから、雨粒の数も同じで・・・ほら、Aくんの前面が濡れる量は同じよ!」
ろだん「おいおい、まだ、頭の分があるぜ。四角形bcgeの体積は、底面cfが同じで、高さつまり面beとcfの距離が、Aくんが速くなったダッシュのついた方が小さくなる。ってことは・・・頭の濡れる量は、Aくんが速い方が少ないってことだ!」
とっぴ「え、え、え・・・? じゃあ、Aくんが雨で濡れる量は・・・!」
あかね「前面が同じで、頭は速い方が少ないから・・・Aくんが速く走った方が、濡れ方は少ないことになるわね」
とっぴ「やほー! あかね、もう一回いってみて!」
あかね「もう! とっぴがいった通り、走った方が、濡れ方が少ないわよ!」
とっぴ「やったーっ!」
むんく「でも、前面の濡れ方は同じだから、とっぴの最初の意見も間違い」
ろだん「おれは、全部間違いだーっ!」
ひろじ「どうやら、結論が出たようだね」
あかね「へんね。さっきまでみんなで話していたときには、こんなふうにならなかったのに」
ひろじ「前半のあかねちゃんの考え方も正しいし、後半のむんくくんの考え方も正しい。どちらも、同じ結論で、体の前面が濡れる量は走っても歩いても同じで、頭の濡れる量は走った方が少ない。いいんじゃないかな」
とっぴ「でも、どっちも、難しかったなぁ」
ひろじ「そういうときは、極端なケースを考えるといいよ。超高速で走る場合と、止まっている場合。Aくんが超高速で走るときは、頭はいっさい濡れなくて、体の前面はあかねちゃんがしめした最初の図の四角形abcd内の雨粒の分になるけど、止まっているときは、体の前面の濡れる量はなくなるけど、いつまでも雨の中にいるから、頭は果てしなく濡れることになる。つまり無限に濡れるわけだ。どっちが多いかは、明らかだね」
とっぴ「あーっ、それ、ぼく、いちばんわかった!」
あかね「そっか! そうね!」
ろだん「おれも、それはよくわかるぞ」
むんく「最後の図は、Aくんが超高速で走ったときには2つ目の図になり、Aくんが止まっているときには3つ目の図になる・・・」
ひろじ「その通り。止まっているときには、3つ目の図の四角形の高さbcが無限に長くなるね」
あかね「おもしろいな。いろんな考え方が、一つにまとまるのね」
むんく「数学的にもつながってる」
とっぴ「質問リレーの問題って、オモシロイな。今度、別のも考えてみようぜ」
あかね「あら、今日は『ぼくが勝った~!』って、自慢しないのね」
とっぴ「うーん・・・議論はみんなに負けた気がするから・・・」
ひろじ「議論が深まれば、誰が勝ったかなんて、どうでもいいんじゃないかな」
とっぴ「あ、そうだね!」
あかね「とっぴ、今日は少し大人になれたんじゃない?」
とっぴ「あかね~~」

(*1)関連記事「宇宙の中心はどこ?」前編をご覧ください。
 

 

 
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