白鵬が休場を決めた。すでに14回目だというから呆れる。前半で負けが込み優勝の見込みが立たなくなると、休場するのが常套手段となってしまった。白鵬が不在の時は、チャンスとばかりに鶴竜が賜杯をかっさらってきた。でも、もう白鵬の時代じゃないだろう。日本出身の横綱、大関の誕生を強く期待したい。

 貴乃花以来14年ぶりに日本出身の横綱になった稀勢の里は、左肩のけがをきっかけに8場所連続で休場したあげく、1場所勝ち越したものの、本調子に戻らず引退した。体に恵まれていたが、心の強さが足りなかった印象だ。

 しかし、いま白鵬に勝った遠藤をはじめ、朝乃山、正代ら力のある日本出身の力士が台頭してきた。朝乃山は遠藤のような技の切れこそないが、横綱、大関に負けない力強さ、安定感がある。正代もあごが上がらなくなり、相撲に重厚さが出てきた。こうした力士たちが、日本の大相撲の次代を担ってほしい。そうしなければ、何百年も前から日本の力士たちが営々と受け継いできた相撲の精神が途絶えてしまいかねない。

 日本の相撲は、古事記に起源があり、宮中行事を経て、祭りなどで神に奉納する「神事」になったと言われる。いまでも天覧試合が行われ、伝統は受け継がれている。だからこそ、力士には心・技・体の向上とバランスが求められる。とくに注連縄をしめ、「神」として土俵入りという儀式までする「横綱」という存在は、鍛え抜かれた体に、研ぎ澄まされた技、そして何より尊敬されるべき精神をそなえていなければならない。残念ながら、この十数年、包み隠さず言えば「白鵬の時代」は「勝つための相撲」に固執し、とくに「心」の面で、横綱の品位に欠けていた。今さら一つひとつあげへつらうことはやめるが…。

 その理由について、私は「外国人力士だから」などとは言わない。日本領で生まれたので厳密には外国出身ではないが、大鵬のように、外国人の血が流れていても、気品を感じさせ、尊敬に値する横綱は存在したからである。それを白鵬たちに教えてこれなかった協会にこそ問題があるとしか思えない。

 だからこそ、日本勢が新たな横綱、大関として黄金時代を築き、相撲の精神を取り戻してほしいのだ。遠藤29歳、正代28歳、朝乃山25歳。昔ならちょっと遅咲きだけど、この3人に頑張ってほしい。そう、1人忘れていた。炎鵬25歳。彼も相撲の面白さを倍増させている。これからの大相撲にエールを送ろう!                        (2020.1.15 風狂老人日記)