取調室
「ご飯食べてますか?」
「…まぁ…」
陽世はだいぶんやつれた顔をしていた
「食欲わかなくて」
「無理しない程度にちゃんと食べてくださいね。しんどかったらしんどいって遠慮なく言ってください」
「はい…」
しばらくの後、陽世が口を開いた。
「いつから気づいてたんですか」
「何がですか」
「私が未来虹ちゃんを殺したってことです」
「強いて言うなら、2回目にあなたの家に行ったときですね」
「私そんな変なこと言いましたか」
「言ってないですよ。ただ…」
「ただ?」
「1回目行ったとき飾られてた写真が2回目行った時は倒されてたのが気になりました。あなたと髙橋さんのツーショットの写真。髙橋さんの家にも同じ写真が飾られてましたけど、森本さんの家にはなかった写真です。そこで気づきました。きっと、あなたと髙橋さんの関係になにかしらがあったのかなと」
「そんなとこで」
「普通写真を倒すなんてせーへんよ」
「そうですよね」
「まあそれは置いといて、今日はあなたにプレゼント」
「なんですか」
「はい、これ。たぶんちょっと前に髙橋さんが書いてたんとちゃうかな。改めて髙橋さんの家探したら奥の方から出てきたん」
菜緒が透明な袋から封筒と便箋を取り出した。
「どうぞ。捜査がとりあえず終わったからあなたにあげる。もし髙橋さんが生きてたら、近々渡すつもりやったんとちゃうかな」
陽世へ
元気してますか?
今日は本気のお願いがあってこの手紙を書いてます。
まずは急に別れよなんて言ってごめん。
あの時は正直どうかしてた。
たぶん何言っても許してくれないと思ってる。
それでも私は、やっぱり陽世が好きだ。
陽世なしで生きていくのは私には無理な話だった。
怒るなら怒って欲しい
殴るなら殴って欲しい
それでも私は陽世が好きだから。
「そんな…未来虹ちゃん勝手すぎるよ」
「あなたの気持ちはじゅうぶん理解できるけど、本当に好きなんやったら話聞いてあげてもよかったんやない?」
「そうですけど…」
「別にそこに関してはあなたに責任があったわけではないと思うけど、本当に好きなんやったらさ、ほんまに放したくなかったんやったらさ、もっとしっかり掴んで放したらあかんよ。自分から取り返しに行くぐらいでね」
「そうですね」
「さて、用事は済んだから私は戻るわ」
「ありがとうございました」
「あ、そうそう。髙橋さんの家はしばらくは森本さんが管理しといてくれるみたいよ。とりあえずあなたが勾留されてる間はね。家に戻れるようになったら森本さんとどうするか話し合って」
「ありがとうございます」
「それは森本さんに言っときなさい」
「最後に一つだけいいですか」
「なに?」
「もう一人の刑事さんと付き合ってますよね」
「そうよ、分かった?」
「分かります。末永くお幸せに」
「ありがとう。あなたにこの言葉をそのまま返してあげれないのが残念だけど」