棄てた恋と棄てられた恋 #17 | 五月雨ゆか

五月雨ゆか

稚拙な文章ですが趣味で小説書いています。内容はすべてフィクションです。























「軽く追い払うつもりで押したら、そのままバランス崩して…そのまま下まで…」



「なんでその時すぐに救急車を呼ばなかったんですか?すぐに呼べば助かったかもしれないのに」



「怖かった。私が自分の手で未来虹ちゃんを殺したって…その事実を受け入れたくなかった。周りに人はいなかったから、そのまま走って逃げて、そのまま電車に乗りました」



「髙橋さんのことそんなに好きなんだったら、元に戻りたいって言われたときに素直に応じればよかったじゃないですか。髙橋さんから言ってくれたんじゃないんですか?」



「どうせ私の気持ちなんか分からないですよね。小学校の時からずっと好きで高校生になってやっと付き合えて大学入った途端に別れよって言われて、それでいて急に復縁なんてついていけるわけないですよ。私の心はグチャグチャでした」



「髙橋さんを好きになったのはなにかきっかけがあったんですか?」



「小学校の時、いじめられてた私を助けてくれたんです。意識し始めたのは、その時からです。ちゃんと思いを伝えるまで8年かかりました」



「あったね、そんなこと。ずっと一緒にいたもんね」



「茉莉ちゃんいつから知ってたの?」



「未来虹が陽世を助けたときから知ってたよ。最初は助けてくれたからずっと一緒にいるんだと思ってたけど、中学入ったぐらいには分かってたよ」



「そうなんだ。もっと早く言ってくれたらよかったのに」








「では山口陽世さん、髙橋未来虹さんの殺害容疑でご同行願います」



「はい。あ、茉莉ちゃんこれ」



「なんの鍵?」



「うちの鍵。しばらく預かってて」



「了解」



「行きましょうか」



美玖とすみれが陽世を間に挟む形でパトカーに連れていった。











「最初から陽世が犯人だって分かってたんですか?」



「証拠はなかったですが、疑うに足る理由はいくつかありました。予想とは少し違ってましたが山口さんと髙橋さんがただの友達や幼馴染み以上の関係であることはすぐに察しがつきました。後になってですが最初に山口さんにお話を聞いたとき髙橋さんについての話が全く出てこなかったのも気になりました。2回目に行ったときも犯人は見つかったんですか?の言葉が出てきたのは我々が帰る直前でした。まるで、犯人を知っているかのように感じました」



「ふわぁー鋭いですね」



「山口さんの家、綺麗にしといてあげてくださいね」



「はい、大丈夫です」