棄てた恋と棄てられた恋 #16 | 五月雨ゆか

五月雨ゆか

稚拙な文章ですが趣味で小説書いています。内容はすべてフィクションです。























あの日は前の日夜までゲームしてたから少し寝坊しちゃって、仕方ないから電車で行くことにしたんです。



20年近くここに住んでるので、近道とかはいろいろ知ってます。



さっき刑事さんが言ってたルートも、もちろん知ってたのでそれで行くつもりでした。



未来虹ちゃんに会ったのは本当にたまたまです。







「陽世!」



振り返ると歩道橋のたもとに未来虹が立っていた。



「ひさしぶり」



「…ひさしぶり」



「元気してる?」



「まぁまぁかな」



「そっか」



少し気まずい沈黙が流れた。



「あのさ、この前くれた手紙のことなんだけど」



「…」



「私からもよりを戻して欲しいかなって」



「ここ数ヵ月連絡もしてこなかったくせに?」



「それは本当にごめん」



「どういう風の吹きまわし?影山さんに振られでもしたの?」



「そういう訳じゃないんだけど…陽世といたときの方が楽しかったっていうかさ、毎日刺激があって楽しかったなって」



「…」



「なんて言うかさ、私からアプローチしたのもあるんだけど、影さんになんかぞんざいに扱われてるっていうか、いまいちこっちを見てくれないんだよね。やっぱり高校の時みたいに陽世と一緒にいれた方が楽しかったなって」



「それが自分から振った相手に言う言葉なの。自分で何言ってるか分かってる?」



「それは本当に分かってる。でもありきたりかもしれないけど陽世と会わなくなって寂しくなった。会わなくなって本当に毎日が楽しかったんだって思い知らされた」



「…」



「ねえ、陽世。もう1回私とやり直してくれない?」



「自分から別れてって言っててさ、都合よすぎると思わない?あの時の私の気持ち考えたことある?本当に生きてる心地しなかったんだよ!ずっと一緒にいたのにさ!突然別れてって言われてこっちは何も言えなかったのに。ちょっと自分勝手すぎるよ」



「それは本当に分かってる」



「未来虹ちゃんそればっかじゃん!大学が別になったとか大学で先輩と仲良くなったのは別にどうだっていい。だけど私は…私は…未来虹ちゃんと一緒にいたかった。ただそれだけなのに、それだけだったのに!」



それを言いきると陽世は未来虹から逃げるように全力で歩道橋を登った。



「待って陽世!」



慌てた未来虹も陽世を追いかけて歩道橋を登った。



「陽世待ってって!」



「未来虹ちゃんのバカ!」ドン