発表会の人々④・メメさんと陽子ちゃん | 浜田真実*文筆と朗読「まほろふ舎」

浜田真実*文筆と朗読「まほろふ舎」

昭和の終り頃、シャンソン喫茶「銀巴里」にて歌手デビュー。平成の中頃に、心と身体を整えるボイトレ教室「マミィズボイススタイル」オープン。「声美人で愛される人になる」「説得力のある声をつくる」等出版。この頃は「しげのぶ真帆」名義で、文章を書き朗読もしています。

MeMeさんが、最初にレッスンに来てくれたのは、今から5年前。
声を出すことすら怖いと言っていた。
実際、声が出にくかった。

体調を崩されたことがきっかけだったけれど、今までの自分の生活がみんな崩れたようでとても混乱されていた。

それでもMeMeさんは、歌った。
やがて、驚くほど音域も拡がり、うちの発表会も4回全てに出演してくれた。

その間に、MeMeさんはおばあちゃまになった。
娘さんがフランスの方と結婚されたので、とてもハンサムなふたりの男の子のおばあちゃまだ。
しかも、出産後のお手伝いに、フランスに長期滞在されたりもする。

下の娘さんはニュージーランドで暮らす。
だから、時々、会いに行ったりもする。

家族のために、世界を飛び回るMeMeさん。

そして、空も飛ぶ。
飛行機から飛び降りる。

スカイダイビングの経験者だというから、最初に聞いた時にはひっくり返った。
家族全員で、スカイダイビングの体験者。
5年前のMeMeさんからは想像もつかない。

MeMeさんの歌が、広々としていて温かいのは、MeMeさんの世界の広さ。
そして、家族への愛の深さ。

MeMeさんは、いつの間にかマミィズボイススタイルメンバーの柔らかい光になり、欠かせない存在となっているドキドキ

~~~~☆

陽子ちゃんは、壮絶な人生を生きてきた。
よく乗り越えて、生きて来てくれたねと、私は陽子ちゃんの姿を見つめる。

初めて会ってから6年。

最初は、声を出すことにも表現することにも怯えていた。
かたくなに、いろいろなことを拒んでいた。
迷って悩んで、いつも落ち込んでいた。

そんなに人間は怖くないのに。
大丈夫なのに。
と思ったけれど、陽子ちゃんの苦しかった過去のことを思うと、無理もないことなのかもしれない。

いつの頃からだろう。
陽子ちゃんは、ぐいぐいと強くなった。
芯が通って来た。

自分の壮絶な人生を吹き飛ばすくらいの逞しさを身に付けた。

「真実さん、いい~グッド!!!」
と陽子ちゃんが笑ってくれると、私も安心して一歩を踏み出せる、心強い存在になった。

発表会の幹事を引き受けてくれた陽子ちゃんに、以前の戸惑いや怯えはない。
新しい参加者さんをフォローし、動き回ってくれている。
頼もしくて、誇らしくて、安心して仕事を任せていられる。
ありがとう、陽子ちゃん。

声がしっとりと落ち着いて来た。
強い表現も出来るようになった。

詩やエッセイを朗読する陽子ちゃんは、真っ直ぐに伸びる竹のように根が強く、しなやかに風に揺れてとても美しい。