発表会の人々③・しょうこちゃんと悦子さん | 浜田真実*しげのぶ真帆 文筆と朗読の「まほろふ舎」

浜田真実*しげのぶ真帆 文筆と朗読の「まほろふ舎」

昭和の終り頃、シャンソン喫茶「銀巴里」にて歌手デビュー。平成の中頃に、心と身体を整えるボイトレ教室「マミィズボイススタイル」オープン。「声美人で愛される人になる」「説得力のある声をつくる」等出版。この頃は「しげのぶ真帆」名義で、文章を書き朗読もしています。

きっと、随分たくさんの人が、しょうこちゃんのダンスを楽しんでいるはずだ。
だって、しょうこちゃんは、ずっとディズニーランドで踊っていたから。

幼い娘を抱っこして、人垣の後ろから、パレードを眺めていた。
本の原稿を叩かれて一睡も出来なかった日も、泣きながらパレードを観ていた。
夢のように華やかなパレードの前で、泣いたり笑ったりしていた。

しょうこちゃんは、そこにいた。
観客のあらゆる視線や思いを受けて、笑顔で踊っていた。

しょうこちゃんがパレードで踊っていた10年の間に、娘は私と同じくらいの身長に成長し、抱っこを卒業した。
本は無事に出版され、私は図太くたくましく成長した。

しょうこちゃんも、ディズニーランドを卒業し、今度はフィットネスクラブのインストラクターになった。
寄り添うように、会員さんの指導をする。

だけど、身体だけのケアでは行き届かないと感じたしょうこちゃんは、心理カウンセラーの勉強も始めた。

それは、きっと笑顔で踊り続けていたしょうこちゃんが、たくさんの人の思いを受け取ってきたという証拠。

ダンスで魅了するだけでなく、自分の声や思いで、直接関わるということを選んだのは、思いを受け取る感受性の豊かさが、そうさせたのだと思う。

発表会のしょうこちゃんは、同僚の男性のギターで歌った。
声を発することのなかった踊り手が、真っ直ぐに声を届けた。

素朴で、ピュアな響きは、しょうこちゃんのこれからを祝福するような光に満ちていた音譜

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悦子さんは、2級建築士の資格保持者。
パソコンスクールで、CADを教えている。
噂によると、試験の前には、机を叩いて厳しく指導したりもするらしい。

絶対、そんな人には見えない。
ご主人と仲良しで、ご主人のギターで路上ライブなどでにこやかに歌っているから。

でも、試験の後にノドを痛めて枯れた声で歌っていることがあるので、やっぱり厳しい指導はしているのかもしれないなぁと思う。

建築の世界は、厳しいものね。
だから、悦子さんは歌って踊ってバランスをとっているのかなと思う。

自主制作でCDも制作中。
ダンスも習っているし、相当、アクティブな人だと思う。

だけど、私の前にいる悦子さんは、いつも何だかちょっと緊張している。
随分慣れてくれた様子だけど、でも、緊張が伝わってくる。

私は、そんなに怖くないのになぁ。
いや、それはきっと、歌に対する思いの強さの表れ。

歌いたいのだ、悦子さんは。
とても真っ直ぐに、真面目に。

でも、舞台に乗る人は、もっとワルで良いのになぁと思ったりもするけど、変なことをたきつけると、ご主人に叱られるかな。

お前と一緒にするなって。

発表会では、ご主人のギターに、義理のお兄さんのカフォンで歌姫してた悦子さん。
でも、今度は、ソロで行くのも良いですよ。

CADを教えている時のように、熱く激しく。
そして、大胆に、自由に、ね!メラメラ

私は、そんな開き切った悦子さんを感じてみたいと思っている。